伝えたい! 歯の疑問:痛み・腫れ・膿・出血・偶発症

歯科アナフィラキシーショック
の原因と症状と対応

皆様の健康をトータルサポート。

歯科でのアナフィラキシーショックの原因は歯科麻酔薬などアレルゲンの暴露。症状は蕁麻疹、腫れなどの皮膚症状、呼吸器症状です。

血圧低下と頻脈、重症化で徐脈から心停止することも。

対応は生体情報モニタ、水平位+下肢の挙上、酸素投与、アドレナリンの筋注、AEDでの心肺蘇生など。アナフィラキシーショックなら江戸川区篠崎の歯科医院。

目次


  • Instagram
  • 友だち追加

歯科麻酔でのアナフィラキシーショック

1

アナフィラキシーショックの原因

アナフィラキシーショックとは


アレルギーの原因となるアレルゲン(抗原)が体内に入ることにより、複数の臓器にアレルギー症状が起こり、生命に危険を与える状態のことをいいます。

歯科における原因物質

アレルゲン(抗原)として局所麻酔薬、抗生物質、鎮痛薬、ラテックスなど主な原因となります。

その他、ホルムアルデヒド含有根管治療剤、水酸化カルシウム系根充剤、止血用ゼラチン貼付剤など。

アナフィラキシーショックの機序

免疫をつかさどる肥満細胞の表面に存在するY抗原特異的IgE抗体に抗原(アレルゲン)が結合(抗原抗体反応)することで肥満細胞内の化学伝達物質が血中に放出(脱顆粒)されます。

放出された化学伝達物質(ケミカル・ メディエーター)が血管などに影響を与え、様々な症状が発現します。

2

アナフィラキシーショックの症状

血圧低下と頻脈(初期)から徐脈(末期)

化学伝達物質(ロイコトリエン、ヒスタミンなど)が血中に放出されることによって、血管透過性亢進と漏出が起こります。分りやすく言うと血管壁がスカスカになり、血管内の液体成分(血液など)が血管壁から外に漏れ出す状態です。


血管内の液体成分が少なくなることで血圧低下が起こります。また、化学伝達物質の中には血管拡張作用を持ったものもあります。


これらのメカニズムによりアナフィラキシーショックが起こった時には急激な血圧低下が起こります。代償性に血流を増やす必要で初期には頻脈となります。※ 症例の中には最初から徐脈となる場合もあります。



皮膚・粘膜症状(蕁麻疹や腫れ)

アナフィラキシーショック患者の約90%に蕁麻疹などの皮膚症状や口腔内の粘膜症状が現れます。蕁麻疹は体のどこに現れるか分からないので、アナフィラキシーショックを疑ったら足や腕、お腹などの衣類をめくって確認することが重要です。

また、口の奥側(喉周辺)が腫れていないかのチェックも重要です。喉が詰まってしまうと呼吸困難に陥るからです。


アナフィラキシーショックに対する対応が適切に行われないと、病態は悪化し、徐々に脈はゆっくり(徐脈)となり、最終的には心停止となります。


アナフィラキシーは、このように循環器系に大きなダメージを与えます。

アナフィラキシーショックで血圧低下、脈拍は頻脈、酸素飽和度低下
アナフィラキシーで血圧低下、頻脈(初期)、酸素飽和度低下

正常血圧:120mmHg未満/80mmHg未満

脈拍の正常値:60〜100回/分

酸素飽和度(SpO2)の正常値:99~96%

アナフィラキシーの主要症状 皮膚・粘膜症状(蕁麻疹や腫れ)
皮膚・粘膜症状(蕁麻疹や腫れ)

血管から液体成分が外に漏れ出すことにより、体表面から見ると、赤く腫れているように見えたり、ブツブツの蕁麻疹となって現れます。皮膚・粘膜症状はアナフィラキシーの主要症状です。

腫れる(浮腫)が舌や喉、咽頭部で起こると上気道を閉塞させ、窒息の危険性があります。

気管支収縮による呼吸器症状(喘息や呼吸困難)
気管支収縮で呼吸器症状(喘息や呼吸困難)

化学伝達物質のロイコトリエンには気管支収縮作用があります。そのため、喘息の様な症状となり、息を吐くときに喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイする音)が起こります。

気管支が狭くなっているので息が苦しくなり、呼吸困難となります。

血管収縮や呼吸状態が悪いので酸素飽和度は低下します。

3

アナフィラキシーショックと血管迷走神経反射の鑑別

歯科麻酔学第7版第14章

アナフィラキシーと血管迷走神経反射は発現状況や血圧低下など似ている点があります。最大の鑑別ポイントは皮膚症状(蕁麻疹、腫れ、痒み)の有無です。

アナフィラキシーショック 血管迷走神経反射
発生確率 極めて少ない。
歯科麻酔(リドカイン)による発症確率
1/100万人~150万人
極めて多い。
既往歴 既往歴が無い場合がある。 7~8割に既往歴がある。
発現状況 アレルゲン(抗原)の
暴露後(局所麻酔や投薬後)。
緊張・痛みなどのストレスが与えられた直後。
症状 皮膚症状(蕁麻疹、腫れ、痒み)
血圧低下
頻脈(初期)から徐脈(末期)
※ 例外:最初から徐脈もあり
呼吸症状(喘息様、呼吸困難)
「意識消失(失神)」「顔面蒼白」「発汗」
徐脈(心拍数が60回/分以下)⇒血圧低下
経過 持続的で、ショックへと移行し、
自然回復はない
一過性で、通常自然回復。

歯科でアナフィラキシーショックが起きた時の対応

119番に通報

アナフィラキシーと疑った場合には必ず救急車を呼ぶ必要があります。専門病院での処置が必要だからです。救急車が到着するまでに歯科医院で出来ることを下記に列挙します。



5分以内の処置が生死を分ける

救急車を呼んでから到着まで平均すると約9分かかります。アナフィラキシーショックが起きた場合、5分以内の処置を行わないと死亡リスクが急激に上がります。 特に下記のエピペンの注射はためらってはいけません。エピペンの注射で急激に症状が改善します。仮にアナフィラキシーショックでなかった場合でもエピペンの注射を行ったことによるリスクは極めて低いからです。



2相性アナフィラキシー

治療が上手くいって症状が改善した患者であっても、数十分~数時間後に症状が再発する事があります。これを2相性アナフィラキシーといます。原因ははっきりとしませんが、少なくとも24時間は入院した上、経過観察が必要です。

1

生体情報モニタ

生体情報モニタ

バイタルサインの評価

生体情報モニタは、人間のバイタルサイン(心拍数、血圧、酸素飽和度など)をモニタリングする装置です。バイタルサインを継続的に測定して記録し、患者の状態に異常が起こった時に警告音などで知らせます。

アナフィラキシーと診断したら生体情報モニタをセットし、継続的にバイタルサインの評価を行います。

2

水平位+下肢の30cm挙上

水平位+下肢の30cm挙上

頭部への血液量を増やす

血圧低下で頭部への血流量が低下します。寝たまま足を30cm程持ち上げる(クッションなどの支えを入れる)ことで、足の血液を心臓に戻しやすくし、頭部への血流量を増加させる効果が期待出来ます。

3

酸素投与

酸素投与

十分な量の酸素吸入

上気道や舌の浮腫があったりすると呼吸困難になっている場合があります。また、酸素飽和度が低下しているため、十分な量の酸素投与(6~8リットル/分)を行います。

4

アドレナリン(エピペン)の筋肉注射

アドレナリン(エピペン)の筋肉注射

アドレナリン0.01mg/kgの筋注

アドレナリン0.01mg/kgを大腿前外側部に筋注します。(最大量:成人0.5mg、小児0.3mg )

エピペンは、ペン形アドレナリン自己注射器として開発されたもので、太ももの外側部に強く押し当て数秒間待てば自動的に必要量が注入される仕組みになっています。

黄色の製剤:アドレナリン0.3mg-体重30kg以上の方

緑色の製剤:アドレナリン0.15mg-体重15kg~以上30kg未満の方

5

心停止時の心肺蘇生

AEDによる心停止時の心肺蘇生

AEDによる心肺蘇生

AEDは、自動体外式除細動器のことで、心臓が痙攣を起こして止まってしまった時に電気ショックを与える装置です。

当院に設置してあります。

スポンサーリンク

アナフィラキシーショックのご相談は江戸川区篠崎駅の歯医者
ふかさわ歯科クリニック篠崎

ふかさわ歯科クリニック篠崎院長 歯科医師の深沢一

執筆者 院長 深沢一

お気軽にご相談下さい。
相談・カウンセリング受付中
電話:03-3676-1058

東京都江戸川区、千葉県から来院多数、
都営新宿線篠崎駅から徒歩1分のふかさわ歯科クリニック篠崎

診療時間

月〜金曜日 土曜日 日曜日
9:00〜19:30 8:00〜18:00 8:00〜17:30

アナフィラキシーショック関連コンテンツ

ストレスが原因で過呼吸に!死ぬかと思った過換気症候群の治療法

ストレスが原因で過呼吸に!死ぬかと思った過換気症候群の治療法

歯科では局所麻酔や痛みがストレスとなり過呼吸が過換気症候群を誘発。症状は息苦しさ、しびれ、泣く、立ち上がれないなど。死ぬのではないかとパニック状態に!深く早い呼吸が低Ca血症の原因で、テタニー症状が起こります。女性やパニック障害で繰り返します。対処法はゆっくりとした複式呼吸です。…

血圧低下と徐脈になる血管迷走神経反射(デンタルショック)の治療法

血圧低下と徐脈になる血管迷走神経反射(デンタルショック)の治療法

血管迷走神経反射(デンタルショク、疼痛性ショック)は、歯科治療では局所麻酔や痛みなどのストレスが原因で徐脈から血圧低下となり、脳への血流低下で「気分が悪い」「意識が遠のく感じ」「顔面蒼白」「発汗」などの症状が。重度の場合、意識消失(失神)も。治療は横になり足を高く上げ、脳への血流を促すことで改善出来ます。…

高血圧症患者の歯科治療ガイドライン 発症防止のための注意点

高血圧症患者の歯科治療ガイドライン 偶発症防止のための注意点

高血圧症患者の歯科治療の偶発症は、局所麻酔後の異常高血圧(意識障害、頭痛、吐き気)が挙げられます。アドレナリン含有の局所麻酔薬は注意が必要です。異常高血圧の対応は、頭部を高くしますが、血圧が下がらない場合には、ニフェジピンカプセルの内服が有効です。…

糖尿病患者の歯科治療ガイドライン偶発症防止のための注意点

糖尿病患者の歯科治療ガイドライン偶発症防止のための注意点

糖尿病患者の歯科治療では、血糖コントロールの目標を空腹時血糖値<130mg 、HbA1c<7,0とします。血糖降下薬やインスリン使用中の患者には低血糖のリスクがあり、症状が出たらブドウ糖摂取が有効です。 アドレナリン含有の局所麻酔は原則禁忌ですが、アドレナリン量が微量で血糖値上昇は少ないと言えます。…

カテゴリ

ふかさわ歯科
クリニック篠崎のご案内

患者様の
「こうしてほしい」を実現します。
ふかさわ歯科クリニック篠崎では、納得いくまでのカウンセリング、安心してお子様を預けられるキッズスペースと保育士、
可能な限り痛くない無痛治療、拡大鏡・セファロ・血液の遠心分離機・拡大鏡・レーザー・ポイックウォーター・画像解析システムなどの
最新機器を利用した総合治療を実施しております。
また、診療室は個室・半個室・防音個室があり、ベビーカーや車いすでも入って頂けるスペースを確保しています。
地域に密着した歯科医院をこれからも目指して行きます。

診療についてのご相談

お電話またはフォームにてご連絡ください。

03−3676−1058
オンライン予約
診療時間
9:00~13:00    
14:30~19:30    
8:00~13:00          
14:00~18:00
14:00~17:30            

※祝祭日も同様です。概ね最終受付時間は、診療終了時間の30分前です。

ブログを見る