「自分はタバコを吸わないから大丈夫」と思っていませんか?

タバコの煙は、喫煙している本人だけでなく、周囲にいる人の健康にも影響を及ぼします。自分ではタバコを吸わなくても、他人のタバコの煙を吸い込む「受動喫煙」によって、さまざまな病気のリスクが高まることがわかっています。

特に子どもや妊婦がいる家庭では注意が必要です。

さらに近年では、タバコの煙が消えたあとも、衣類や家具、壁などに残った成分に触れる「三次喫煙(サードハンドスモーク)」についても研究が進められています。

この記事では、受動喫煙の仕組みや健康への影響、子どもや妊婦へのリスク、三次喫煙、歯ぐきや歯周病との関係、家庭でできる対策についてわかりやすく解説します。

受動喫煙とは、自分ではタバコを吸っていないにもかかわらず、他人の喫煙によって発生したタバコの煙にさらされることです。

タバコの煙には、ニコチン、一酸化炭素、発がん性物質など、多くの有害物質が含まれています。

受動喫煙については、「これ以下なら安全」といえる曝露量は確立されていません。そのため、できるだけタバコの煙にさらされない環境をつくることが大切です。

日本でも受動喫煙による健康への影響が問題となり、2020年4月に改正健康増進法が全面施行され、多数の人が利用する施設では原則として屋内禁煙となっています。

タバコに関連する煙を理解するときは、「主流煙」「副流煙」「呼出煙」の違いを知っておくとわかりやすいでしょう。

主流煙

喫煙者がタバコから直接吸い込む煙です。

副流煙

火のついたタバコの先端から立ち上る煙です。

副流煙は、喫煙者が吸い込む主流煙とは発生条件が異なるため、一部の有害物質について主流煙より高い濃度が測定されることがあります。

ただし、これは「周囲の人が喫煙者本人より多くの有害物質を取り込む」という意味ではありません。

実際に体内へ取り込まれる量は、煙の濃度だけでなく、喫煙者との距離、換気状況、部屋の広さ、曝露時間などによって変わります。

呼出煙

喫煙者がタバコを吸ったあとに吐き出す煙です。

周囲の人は、副流煙や呼出煙などが混ざった空気を吸い込むことで受動喫煙にさらされます。

タバコの煙には、多くの化学物質が含まれており、その中には人体に有害な物質や発がん性物質も含まれています。

そのため、自分自身が喫煙していなくても、タバコの煙に繰り返しさらされることで健康への影響を受ける可能性があります。

厚生労働省では、受動喫煙との因果関係を推定する科学的証拠が十分とされているものとして、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)などを挙げています。

国内では、受動喫煙がなければ年間約15,000人がこれらの疾患で死亡せずに済んだとする推計もあります。

成人の非喫煙者では、受動喫煙によって次のような病気のリスクが高まることがわかっています。

  • 肺がん
  • 虚血性心疾患
  • 脳卒中

受動喫煙は、肺だけでなく心臓や血管にも影響を及ぼします。

「自分は吸っていないから関係ない」と考えず、家庭や職場などでタバコの煙を吸い込む環境がないか確認することが大切です。

子どもは受動喫煙の影響を受けやすい

乳幼児や子どもは身体が発達途中にあるため、家庭内の受動喫煙には特に注意が必要です。

子どもの受動喫煙は、

  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)
  • 気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症
  • 中耳疾患
  • 喘息発作の増加や重症化
  • 呼吸器症状
  • 肺の発育への影響

などと関連することがわかっています。

特に乳幼児は自分で喫煙環境から離れることができません。

そのため、子ども自身ではなく、周囲の大人が受動喫煙を避けられる環境を整えることが重要です。

子どもへの影響

子どもへの影響 受動喫煙と乳幼児突然死症候群の関係

妊娠中の受動喫煙にも注意

妊婦自身がタバコを吸っていなくても、家庭や職場などで受動喫煙にさらされることで、妊娠や胎児に影響を及ぼす可能性があります。

特に、妊娠中の受動喫煙と低出生体重との関連については科学的な根拠が示されています。

また、早産などとの関連も報告されています。

元の記事で挙げられていた「流産・早産・低体重児出産・胎児発育不全」のすべてを、受動喫煙によって同程度に「リスクが高まる」と断定するのは適切ではありません。

妊娠中はできるだけタバコの煙にさらされない環境を整えることが大切です。

タバコの煙そのものを吸い込む受動喫煙とは別に、「三次喫煙(サードハンドスモーク)」と呼ばれる曝露があります。

タバコを吸ったあと、その煙に含まれるニコチンなどの成分は、

  • 衣類
  • カーテン
  • ソファ
  • カーペット
  • 車内

などに付着・残留することがあります。

これらの残留物に触れたり、ほこりとともに取り込んだりすることで、タバコ由来の化学物質に曝露する可能性があります。

三次喫煙はどのくらい危険?

ここは受動喫煙と区別して考える必要があります。

受動喫煙については、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中などとの因果関係について多くの科学的根拠があります。

一方、三次喫煙については、室内表面などにタバコ由来物質が残留することや、人がそれらに曝露する可能性は示されていますが、どの程度の曝露によって、どのような病気がどれくらい増えるのかについては、まだ研究が進められている段階です。

そのため、「三次喫煙が病気を引き起こす」と断定するのではなく、特に乳幼児がいる家庭では不要な曝露をできるだけ減らすという考え方が大切です。

子どもの歯ぐきに黒褐色の色素沈着がみられることがあります。

これは「歯肉メラニン色素沈着」と呼ばれ、健康な子どもにもみられることがあります。

歯ぐきが黒いからといって、必ずしも病気や受動喫煙が原因というわけではありません。

一方、国内の研究では、小児の歯肉メラニン色素沈着と、喫煙者との同居期間などとの関連が報告されています。

したがって、

「歯ぐきが黒い=受動喫煙」

と判断することはできませんが、受動喫煙が歯肉の色素沈着に関係する可能性は指摘されています。

歯ぐきの色が気になる場合は、色だけで判断せず、歯科医院で歯ぐきの状態を確認してもらいましょう。

喫煙が歯周病の重要なリスク因子であることは、数多くの研究から明らかになっています。

喫煙によって歯周組織の免疫反応や血流などに影響が生じ、歯周病の発症・進行や治療後の治癒に悪影響を及ぼすことがあります。

では、自分自身はタバコを吸わず、受動喫煙だけの場合はどうでしょうか。

非喫煙者を対象とした研究では、受動喫煙への曝露と歯周炎との間に関連がみられたという報告があります。

ただし、能動喫煙と歯周病との関係ほど科学的根拠が確立しているわけではありません。

そのため、

「受動喫煙によって歯周病になる」

と断定するのではなく、

「受動喫煙も歯周病と関連する可能性が報告されている」

と理解するのが適切です。

「家族に煙を吸わせないため、ベランダで吸っている」という方もいるでしょう。

屋外での喫煙は、同じ室内で喫煙する場合と比べれば、家族が直接タバコの煙にさらされる量を減らせる可能性があります。

しかし、

  • 開いた窓やドアから煙が室内に入る
  • 喫煙者の衣類などにタバコ由来物質が付着する
  • 集合住宅では周囲の住戸へ煙が流れる

といった可能性があります。

そのため、ベランダで吸えば受動喫煙やタバコ由来物質への曝露を完全に防げるとはいえません。

換気扇や空気清浄機だけでは十分ではない

「換気扇の下なら大丈夫」「窓を開ければ煙は外へ出る」と考える方もいます。

しかし、換気や空気清浄機だけでタバコの煙への曝露を完全になくすことは困難です。

特に家庭内で子どもや妊婦への受動喫煙を防ぐには、

室内や車内を完全禁煙にすること

が重要です。

タバコを吸う部屋を分けるだけでは、十分な受動喫煙対策にならない場合があります。

家庭での受動喫煙を減らすためには、次のような対策が重要です。

家や車の中では吸わない

家族が直接煙を吸わないよう、室内や車内を禁煙にしましょう。

窓を開けたり換気扇を使用したりしても、受動喫煙を完全に防ぐことはできません。

子どもの近くでは吸わない

乳幼児や子どもは、自分自身で喫煙環境を避けることができません。

家庭だけでなく、外出先でも子どもがタバコの煙にさらされないよう注意しましょう。

妊婦の周囲では吸わない

妊娠中の受動喫煙をできるだけ避けるため、本人だけでなく家族や周囲の人の協力も大切です。

可能であれば禁煙を検討する

受動喫煙を根本的に減らすには、喫煙者本人が禁煙することが最も確実な方法です。

禁煙が難しい場合は、禁煙外来など医療機関のサポートを利用する方法もあります。

日本では、望まない受動喫煙を防ぐため、改正健康増進法が2020年4月に全面施行されました。

多数の人が利用する施設では原則として屋内禁煙となり、学校、病院、児童福祉施設、行政機関の庁舎などでは、より厳しい受動喫煙対策が求められています。

ただし、施設の種類や条件によって適用されるルールは異なります。

法律による規制だけでなく、家庭でもタバコの煙にさらされない環境を整えることが大切です。

受動喫煙は、自分ではタバコを吸っていない人にも健康への影響を及ぼします。

特に、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中などとの因果関係が明らかになっており、子どもでは乳幼児突然死症候群(SIDS)、呼吸器感染症、中耳疾患、喘息などへの影響が知られています。

また、歯科領域では、喫煙が歯周病の重要なリスク因子であることが明らかになっています。受動喫煙についても、歯周炎や子どもの歯肉メラニン色素沈着との関連を示す研究がありますが、因果関係が十分に確立していない部分については慎重に考える必要があります。

さらに、タバコを吸ったあとに衣類や家具などへ残る「三次喫煙」についても研究が進められています。

大切なのは、「煙が見えなければ大丈夫」「別の部屋やベランダで吸えば完全に安全」と考えないことです。

家族、特に子どもや妊婦を受動喫煙から守るためには、室内や車内を禁煙にし、できるだけタバコの煙やタバコ由来物質にさらされない環境を整えることが重要です。

歯ぐきの黒ずみや腫れ、出血など、お口の変化が気になる場合には、色や症状だけで自己判断せず、歯科医院でお口の状態を確認してもらいましょう。

関連記事

歯周病
喫煙と歯周病の深い関係|タバコが歯ぐきや歯に与える影響と禁煙の重要性
喫煙と歯周病の深い関係|タバコが歯ぐきや歯に与える影響と禁煙の重要性
審美歯科
黒い歯茎とは?原因・治療・予防を解説|ピンク色の健康な歯茎を取り戻す方法
黒い歯茎とは?原因・治療・予防を解説|ピンク色の健康な歯茎を取り戻す方法
江戸川区篠崎の小児歯科|歯医者嫌いにさせない診療・虫歯予防
小児歯科

ご自身が吸わなくても、受動喫煙によってタバコ由来の物質にさらされることがあります。歯ぐきやお子さまのお口について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!