虫歯を長期間放置したり、合わなくなった被せ物やブリッジをそのまま使用したりすると、補綴物の周囲から虫歯が再発し、歯を残すことが難しくなる場合があります。

今回ご紹介するのは、多数の歯に重度の虫歯がみられ、既存の被せ物やブリッジにも不適合が認められた症例です。

残せる歯を慎重に見極めながら感染源を取り除き、被せ物や部分入れ歯を用いて、お口全体の噛み合わせと見た目の回復を図りました。

※治療方法や治療結果には個人差があります。

重度の虫歯と補綴物の不適合が認められた初診時の状態

重度の虫歯と補綴(被せ物)不良の症例

初診時には、上下の顎に多数の虫歯が認められ、一部の歯では歯冠が大きく崩壊していました。

特に、歯と歯ぐきの境目(歯頸部)や歯根付近まで進行した虫歯が複数みられました。

また、以前に装着された金属冠やブリッジの一部には適合不良が認められ、補綴物と歯の境目から虫歯が再発している部位もありました。

一部の補綴物は脱離しており、噛む機能だけでなく、見た目にも影響している状態でした。

歯頸部う蝕と二次う蝕

歯と歯ぐきの境目を中心に広範囲の虫歯が認められ、黒褐色の変色や歯質の欠損がみられました。

過去に治療した歯でも、被せ物や詰め物と歯の境目にすき間が生じたり、清掃が難しくなったりすると、周囲にプラークが蓄積して虫歯が再発することがあります。

このような虫歯は**二次う蝕(再発虫歯)**と呼ばれます。

二次う蝕が被せ物の内部や歯根方向へ進行すると、残っている健康な歯質が少なくなり、歯を保存することが難しくなる場合があります。

歯冠が大きく崩壊した重度の虫歯

下顎前歯部の一部では、虫歯によって歯冠の大部分が失われ、歯根だけに近い状態となっていました。

一般的な虫歯の進行度では、このように歯冠がほとんど崩壊し、歯根だけが残った状態をC4と表現することがあります。

ただし、C4だから必ず抜歯になるわけではありません。

残っている歯質の量や歯根の状態、歯周組織、根尖部の病変、虫歯の広がりなどを総合的に評価し、保存できるかどうかを判断します。

歯を支えることが難しい場合や、感染のコントロールが困難と判断された場合には、抜歯を検討します。

被せ物・ブリッジの再評価

既存の金属冠やブリッジにも適合不良がみられたため、補綴物を含めたお口全体の再評価が必要でした。

多数の歯に問題がある場合、一部分だけを治療しても、噛み合わせや清掃性に問題が残ることがあります。

そのため今回は、虫歯の治療だけでなく、残存歯・欠損部・噛み合わせを含めた包括的な治療計画を立てました。

1.残せる歯と抜歯が必要な歯を見極める

まず、口腔内診査やレントゲン検査などを行い、虫歯の進行範囲、歯根の状態、歯を支える骨、根尖部の病変などを確認しました。

そのうえで、それぞれの歯について保存できる可能性があるか、抜歯が必要かを慎重に判断しました。

重度の虫歯では、「どの歯を残すか」という判断が、その後のお口全体の治療計画を左右します。

2.虫歯や感染源を取り除く

保存が困難と判断した歯については抜歯を行い、感染源を除去しました。

残せる可能性のある歯については、虫歯の除去や必要に応じた根管治療などを行い、補綴治療を行うための口腔内環境を整えていきました。

3.被せ物と部分入れ歯で噛み合わせを再構築

虫歯や感染に対する治療を行った後、残っている歯と欠損部の状態を確認しながら、被せ物や部分入れ歯による補綴治療を行いました。

多数の歯を失っている場合には、単に空いた部分を補うだけではなく、左右の噛み合わせや残存歯への負担、清掃のしやすさなどを考慮することが重要です。

今回は機能面だけでなく、前歯の見た目にも配慮しながら治療を進めました。

前歯をメタルボンドクラウンで修復

上顎前歯部には、メタルボンドクラウンを装着しました。

メタルボンドクラウンは、金属製のフレームの表面に歯科用セラミックを焼き付けた被せ物です。

金属による強度を確保しながら、前歯の色や形を整えられることが特徴です。

今回の症例では、虫歯や補綴物の問題がみられた前歯部を治療し、歯の形態や口元との調和を考慮して修復しました。

部分入れ歯で失った歯を補う

上下顎の臼歯部では、失われた歯を補うために部分入れ歯を装着しました。

奥歯を失った状態では、食べ物を噛みにくくなるだけでなく、残っている歯に負担が集中することがあります。

部分入れ歯によって欠損部を補うことで、噛む機能の改善と残存歯への負担の分散を図りました。

部分入れ歯には、残っている歯にかけるクラスプ(留め具)などを使用し、義歯の安定を図ります。

重度う蝕・補綴不良症例の治療後(正面観)

重度う蝕・補綴不良症例の治療後(正面観)
重度う蝕・補綴不良症例の治療後(正面観)

部分入れ歯のパラタルバー(上顎咬合面観)

今回使用した上顎の部分入れ歯には、左右の義歯をつなぐ**パラタルバー(口蓋バー)**が設けられています。

部分入れ歯のパラタルバー(上顎咬合面観)
部分入れ歯のパラタルバー(上顎咬合面観)

パラタルバーは上顎の口蓋部分を横切る金属製の連結装置で、左右の義歯床を一体化させる役割があります。

主な目的は次のとおりです。

  • 義歯全体の強度を確保する
  • 義歯のたわみや変形を抑える
  • 義歯を安定させる
  • 噛む力を分散させる

金属を使用することで、必要な強度を保ちながら比較的薄く設計できることも特徴です。

パラタルバーの違和感は?

装着直後は、舌がパラタルバーに触れることで違和感を覚えることがあります。

特に、発音や飲み込みの際に気になる場合があります。

義歯への慣れ方には個人差がありますが、使用を続けるうちに違和感が軽減するケースも少なくありません。

違和感や痛みが強い場合、義歯が安定しない場合などは、無理に使い続けず歯科医院で調整を受けることが大切です。

「虫歯で歯がボロボロになったから、すべて抜かなければならない」とは限りません。

重度の虫歯でも、歯根や周囲の骨などの状態によっては、根管治療や補綴治療によって保存できる可能性があります。

一方で、無理に保存することで感染を繰り返したり、その後の治療計画に悪影響を及ぼしたりする場合もあります。

そのため、残すことだけを目的にするのではなく、一本一本の歯の状態とお口全体の将来を考えて判断することが重要です。

重度の虫歯を治療して被せ物や入れ歯を装着しても、それで治療が完全に終わるわけではありません。

被せ物の境目や部分入れ歯のクラスプがかかる歯は、プラークが残りやすくなる場合があります。

定期的なメンテナンスでは、主に次のような点を確認します。

  • 被せ物や入れ歯の適合状態
  • 虫歯が再発していないか
  • 歯周病が進行していないか
  • 噛み合わせに変化がないか
  • 残っている歯に過度な負担がかかっていないか
  • 日常のブラッシングが適切にできているか

ご自宅では歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなどを適切に使用し、被せ物や残存歯の周囲を清潔に保つことが大切です。

重度の虫歯と被せ物・ブリッジの不適合が重なっている場合、一部分の虫歯だけを治療するのではなく、お口全体を評価した治療計画が必要になることがあります。

今回の症例では、残せる歯と保存が難しい歯を見極め、虫歯や感染に対する治療を行ったうえで、被せ物と部分入れ歯によって噛み合わせの再構築を図りました。

歯が大きく崩れていても、治療方法は歯の状態によって異なります。

「歯がボロボロでどこから治療すればよいか分からない」「被せ物やブリッジが次々に外れる」「奥歯がなくて噛みにくい」といった場合は、放置せず、まず現在のお口の状態を詳しく調べることが大切です。

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虫歯が大きく進行していても、すべての歯を抜歯するとは限りません。残せる歯を見極め、虫歯や感染の治療、被せ物・入れ歯などを組み合わせて、お口全体の噛む機能と見た目の回復を目指します。

「歯がボロボロで治療できるか不安」「被せ物が外れた」「しっかり噛めない」とお悩みの方は、早めにご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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