
「口を閉じるとあごにシワができる」「口呼吸が気になる」「フェイスラインのたるみが気になる」――こうした症状には、“オトガイ筋”というあご先の筋肉が関係していることがあります。
オトガイ筋は小さな筋肉ですが、口元の見た目だけでなく、発音・飲み込み・鼻呼吸・歯並びにも深く関わる重要な筋肉です。特に、矯正治療や口腔機能の分野では、筋肉バランスの評価がとても重要視されています。
この記事では、オトガイ筋の役割や衰えによる影響、トレーニング方法、歯科・矯正治療との関係について専門的にわかりやすく解説します。
オトガイ筋の役割
オトガイ筋(おとがいきん)は、下あごの前方にある表情筋のひとつで、主に下唇やあご先の動きに関わっています。小さな筋肉ですが、口輪筋などの口腔周囲筋と協調して働き、口元の動きや表情、口唇閉鎖などに関係しています。

主な働きとして、次のようなものがあります。
- 下唇を持ち上げたり前方へ突出させたりする
- あご先の皮膚を持ち上げる
- 口唇を閉じる動きを補助する
- 発音や嚥下などの口腔機能に関与する
- 口唇閉鎖を介して呼吸様式とも関連する
オトガイ筋が収縮すると、あご先の皮膚が持ち上がります。そのため、口を閉じる際にオトガイ筋へ強く力が入ると、あご先に細かな凹凸が生じ、いわゆる「梅干しじわ」が目立つことがあります。
オトガイ筋と鼻呼吸の関係
オトガイ筋そのものに「鼻呼吸を維持する」という直接的な働きがあるわけではありません。
一方で、オトガイ筋は口唇閉鎖に関与するため、口唇周囲の筋機能や呼吸様式と関連することがあります。
安静時に自然に口を閉じられることは、鼻呼吸を行いやすい状態を保つうえで重要です。しかし、口呼吸になる原因はオトガイ筋だけではありません。
鼻炎や鼻づまりなどによる鼻腔通気の問題、アデノイド、歯並びや顎の骨格、舌の位置、口唇閉鎖機能、長年の習慣など、さまざまな要因が関係します。
そのため、「オトガイ筋が弱いから口呼吸になる」「オトガイ筋を鍛えれば鼻呼吸になる」と単純に考えることはできません。
口がいつも開いている、口を閉じるとあご先に力が入る、口呼吸が続いているといった場合には、オトガイ筋だけではなく、鼻呼吸の状態や舌位、歯並び、噛み合わせ、口腔周囲筋の機能などを総合的に確認することが大切です。
オトガイ筋は口腔周囲筋とのバランスが重要
口元の機能は、オトガイ筋だけで成り立っているわけではありません。
口輪筋や頬の筋肉、舌などが協調して働くことで、口唇閉鎖、発音、咀嚼、嚥下などの機能が保たれています。
特に歯科・矯正歯科では、オトガイ筋が「強いか弱いか」だけを見るのではなく、口を閉じるときに過剰な力が入っていないか、舌が適切な位置にあるか、正しい嚥下ができているかなど、口腔周囲の筋機能を総合的に評価することが重要です。
口を閉じるとあごに梅干しじわができる場合には、オトガイ筋が弱いのではなく、口唇を閉じるためにオトガイ筋が過剰に働いている可能性もあります。
そのため、自己判断でオトガイ筋だけを鍛えるのではなく、必要に応じて歯科・矯正歯科で口腔機能や歯並び、噛み合わせなどを確認することが大切です。
オトガイ筋が過緊張・機能低下すると起こること
オトガイ筋は、下唇や口輪筋などと協調して働き、口元の動きや口唇閉鎖に関わっています。
ただし、オトガイ筋だけが口呼吸や歯並び、顔貌を決めているわけではありません。歯並びや噛み合わせ、舌の位置、口唇の機能、鼻の通り、骨格など、さまざまな要因が関係しています。

あご先に「梅干しじわ」ができる
口を閉じたとき、あご先に細かなシワが集まって「梅干し」のように見えることがあります。これは、口唇を閉じようとしてオトガイ筋が強く収縮することで生じることがあります。
特に、上下の唇を自然に閉じにくい「口唇閉鎖不全」がある場合には、口を閉じるためにオトガイ筋へ余分な力が入り、梅干しじわが目立つことがあります。
ただし、梅干しじわがあるからといって、必ずしも病気や異常があるとは限りません。歯並びや顎の骨格、口唇の形態なども関係するため、気になる場合には総合的な評価が必要です。
口呼吸と関係することがある
オトガイ筋を含む口唇周囲の筋肉は、口を閉じた状態を保つために関わっています。
ただし、「オトガイ筋が弱いから口呼吸になる」と単純に考えることはできません。
口呼吸には、鼻炎や鼻づまり、アデノイドなどによる鼻呼吸のしにくさ、歯並びや顎の骨格、舌の位置、口唇閉鎖機能、習慣など、さまざまな要因が関係します。
そのため、口が開いていることが多い場合には、筋肉だけに注目するのではなく、鼻呼吸ができているか、歯並びや噛み合わせに問題がないかなども確認することが大切です。
発音や飲み込みに関係することがある
発音や嚥下(飲み込み)は、舌・口唇・頬など複数の筋肉が協調して行う複雑な運動です。
オトガイ筋もその一部として口唇周囲の動きに関わっていますが、オトガイ筋単独の機能低下によって発音障害や嚥下障害が起こるとは限りません。
発音や飲み込みに問題がある場合には、舌の動きや舌位、口唇閉鎖、咀嚼機能などを含めて口腔機能全体を評価する必要があります。
フェイスラインとの関係
オトガイ筋はあご先の表情や下唇の動きに関係するため、その緊張状態によって口元の見え方が変化することがあります。
一方、フェイスラインや二重あご、顔のたるみには、皮膚の弾力、皮下脂肪、加齢による組織の変化、骨格など多くの要因が関係しています。
そのため、「オトガイ筋が衰えると顔がたるむ」「オトガイ筋を鍛えれば二重あごが改善する」と一概にいうことはできません。
オトガイ筋のトレーニングは、必要に応じて口腔機能の改善を目的として行われることがありますが、美容的なフェイスライン改善を保証するものではありません。
オトガイ筋は鍛えたほうがよい?
オトガイ筋は、誰でも積極的に鍛えればよいという筋肉ではありません。
口を閉じるときにあご先へ強く力が入る人では、すでにオトガイ筋が過剰に緊張していることがあります。このような場合、自己流でさらに筋肉へ負荷をかけることが適切とは限りません。
大切なのは、オトガイ筋だけを鍛えることではなく、舌・口唇・頬などを含めた口腔周囲筋のバランスを整えることです。
歯科や矯正歯科では、必要に応じて口腔筋機能療法(MFT:Oral Myofunctional Therapy)が行われることがあります。
MFTでは、舌の位置や動かし方、口唇閉鎖、嚥下、呼吸などを確認し、患者さんの状態に応じたトレーニングを行います。

自己流のトレーニングには注意
インターネットなどでは、「あごを鍛える」「口を強く閉じる」といったさまざまなトレーニングが紹介されています。
しかし、梅干しじわが目立つ人では、オトガイ筋が弱いのではなく、口を閉じるためにすでに過剰に働いている可能性があります。
この状態で「強く口を閉じる」運動を繰り返すと、本来改善したい筋肉の使い方とは異なる動作を強化してしまう可能性があります。
口呼吸や口唇閉鎖、歯並びなどが気になる場合には、自己流でオトガイ筋だけを鍛えるのではなく、まず原因を確認することが大切です。
オトガイ筋と歯並び・矯正治療の関係

歯並びや噛み合わせは、歯そのものだけで決まるわけではありません。
舌が内側から歯を押す力と、唇や頬が外側から加える力のバランスも、歯列の安定に関係しています。
特に、口唇を自然に閉じにくい場合や、嚥下時に舌を前方へ押し出す癖などがある場合には、矯正治療とあわせて口腔周囲筋の機能を評価することがあります。
必要に応じてMFTを取り入れ、舌位や嚥下、口唇の使い方などを整えることで、矯正治療後の歯列を安定させるための一助となる場合があります。
ただし、筋機能のトレーニングだけで歯並びや骨格そのものを改善できるわけではありません。歯列や骨格に問題がある場合には、矯正歯科的な診断・治療が必要になります。
まとめ
オトガイ筋は、下唇やあご先の動き、口唇閉鎖などに関わる表情筋です。
口を閉じたときにあご先へ「梅干しじわ」ができる場合には、オトガイ筋が弱いのではなく、口を閉じるために過剰に働いている可能性があります。
また、口呼吸や歯並び、発音、嚥下などはオトガイ筋だけで決まるものではなく、舌の位置や口唇機能、鼻呼吸、歯列、顎の骨格など複数の要因が関係しています。
そのため、オトガイ筋だけを自己流で鍛えるのではなく、口腔周囲の筋肉や呼吸、歯並びなどを総合的に確認することが大切です。
「口を閉じるとあごにシワができる」「いつも口が開いている」「口呼吸や歯並びが気になる」といった場合には、歯科・矯正歯科などで相談し、原因に応じた対応を検討しましょう。
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「梅干しじわ」「口呼吸」はお口からのサインかも

口を閉じるとあごに梅干しじわができる、いつも口が開いている、口呼吸や歯並びが気になる――こうした症状には、オトガイ筋だけでなく、舌の位置や口唇の機能、歯並び・噛み合わせなど、さまざまな要因が関係していることがあります。
自己流で筋肉を鍛える前に、まずはお口の状態を確認することが大切です。気になる症状がある方は、当歯科医院へご相談ください。
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





