前歯は見た目の印象に大きく関わるだけでなく、噛む・話すといった機能面においても重要な役割を担っています。本症例では、前歯部に装着されていた補綴物周囲の歯頚部露出やう蝕を契機に、歯根部の評価・処置、コアの再構築を行い、その後ジルコニアクラウンによる補綴治療を実施しました。初期状態から治療、さらに補綴後3か月経過時の口腔内の変化を通して、前歯部補綴における適合性、清掃性、そしてメンテナンスの重要性について考察します。

前歯の差し歯を長年使用していると、「歯の根元が黒く見える」「歯ぐきが下がってきた」「差し歯の周囲が虫歯になった」といったトラブルが起こることがあります。

今回ご紹介する症例では、上顎前歯の硬質レジン前装冠周囲に歯頚部う蝕(歯の根元の虫歯)と歯根面の黒変が認められたため、レジン修復と補綴治療を行いました。

初診時:差し歯周囲の歯頚部う蝕と歯根面の黒変

上顎前歯の補綴物周囲にみられる歯頚部トラブルとう蝕
上顎前歯の補綴物周囲にみられる歯頚部トラブルとう蝕

初診時、上顎中切歯・側切歯には硬質レジン前装冠が装着されていました。

エアフローによるクリーニングでバイオフィルムやステインを除去した後も、以下の問題が確認されました。

  • 歯肉退縮による歯根面の露出
  • 差し歯の境目に生じた黒変
  • 歯頚部う蝕(根面う蝕)
  • 補綴物周囲の適合不良
  • 清掃不良によるプラークの停滞

歯肉が下がると、本来歯ぐきに覆われていた歯根面が露出します。歯根面はエナメル質に比べて軟らかく、虫歯が進行しやすいため注意が必要です。

また、古い差し歯では歯と被せ物の境目にわずかな隙間が生じ、そこから細菌が侵入して二次う蝕を引き起こすことがあります。

歯頚部う蝕のレジン修復とメタルコアの再構築

歯頚部う蝕へのレジン修復と前歯部コアの再構築
歯頚部う蝕へのレジン修復と前歯部コアの再構築

治療ではまず、歯頚部に発生した虫歯を除去しました。

虫歯が比較的小さい部分については、コンポジットレジンによる直接修復を行い、歯の形態と清掃性を回復させています。

さらに既存の補綴物を除去すると、支台歯の状態改善が必要と判断されたため、上顎前歯には白金加金メタルコアを装着しました。

白金加金メタルコアの特徴

白金加金は、

  • 強度が高い
  • 耐食性に優れる
  • 長期安定性が高い
  • 適合精度に優れる

といった特徴を持つ歯科用貴金属です。

適切なコアを築造することで、最終的な被せ物の適合性や耐久性の向上につながります。

ジルコニアクラウンによる前歯の審美回復

コア築造後、上顎前歯にはジルコニアクラウンを装着しました。

ジルコニアは現在の補綴治療において代表的なセラミック材料であり、

  • 天然歯に近い審美性
  • 高い強度
  • 変色しにくい
  • プラークが付着しにくい

という特徴があります。

従来の硬質レジン前装冠と比較すると、長期的な色調安定性や清掃性に優れています。

治療後は前歯部の見た目が大きく改善し、歯頚部の不自然な黒変も解消されました。

補綴後3か月の経過

前歯部ジルコニアクラウン補綴後3か月の経過観察

ジルコニアクラウン装着後3か月の経過観察では、

  • クラウンの適合状態は良好
  • 歯肉の炎症は認められない
  • 補綴物周囲の状態は安定

していました。

一方で、天然歯にはステインの沈着が認められ、日常のセルフケアや定期的なプロフェッショナルクリーニングの重要性が再確認されました。

どれほど精密な被せ物を装着しても、メンテナンスを怠ると再び虫歯や歯周病のリスクが高まります。

差し歯の根元の黒ずみは単なる着色ではなく、

  • 二次う蝕
  • 歯肉退縮による歯根露出
  • 被せ物の適合不良
  • 歯周病

などのサインである可能性があります。

特に前歯は見た目への影響が大きいため、症状が軽いうちに対処することが大切です。

「差し歯の根元が黒い」「歯ぐきが下がってきた」「被せ物の境目が気になる」という方は、早めに歯科医院で診査を受けることをおすすめします。

差し歯の根元が黒くなったら早めの受診を

差し歯の根元が黒く見える、歯ぐきが下がって境目が目立つ、被せ物の周囲が虫歯になっている――このようなお悩みはありませんか?

差し歯の周囲には二次虫歯(再発虫歯)が発生することがあり、放置すると歯の保存が難しくなる場合があります。特に歯肉退縮によって露出した歯根面は虫歯になりやすく、見た目の問題だけでなく歯の寿命にも大きく影響します。

江戸川区篠崎の当歯科医院では、歯頚部う蝕のレジン修復、白金加金メタルコアによる支台築造、ジルコニアクラウンによる審美的かつ機能的な再治療を行っています。

「差し歯の根元が黒い」「前歯の見た目を改善したい」「古い差し歯をやり直したい」という方は、お気軽にご相談ください。早期発見・早期治療が大切な歯を長持ちさせる第一歩です。

【動画】ホワイトスポットをアイコンで治す

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!