- 1. 根面う蝕をレジン修復し、白金加金メタルコア・ジルコニアクラウンで治療した症例
- 1.1. 初診時|差し歯周囲の根面う蝕と歯根面の黒変
- 1.2. 根面う蝕のレジン修復とコアの再構築
- 1.2.1. 白金加金メタルコアとは?
- 1.3. ジルコニアクラウンによる前歯の補綴治療
- 1.4. 補綴後3か月の経過
- 1.5. 被せ物を長く良好な状態に保つにはメンテナンスが大切
- 2. 差し歯の根元が黒くなったら歯科医院で確認を
- 2.1. 関連記事
- 3. 差し歯の根元の黒ずみ、気になっていませんか?
- 4. 【動画】ホワイトスポットをアイコンで治す
- 5. 【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
- 6. 筆者・院長
- 6.1. 深沢 一
- 6.1.1. メッセージ

前歯は見た目の印象に大きく関わるだけでなく、食べ物を噛み切る、発音を助けるといった役割も担っています。
長年使用している差し歯では、歯ぐきが下がって歯根面が露出したり、被せ物と歯の境目付近に虫歯が生じたりすることがあります。
今回ご紹介するのは、上顎前歯に装着されていた硬質レジン前装冠の周囲に、歯肉退縮による歯根面の露出や根面う蝕などが認められた症例です。
う蝕部分の修復や支台歯の処置、コアの再構築を行ったうえで、ジルコニアクラウンによる補綴治療を行いました。
治療前から補綴後3か月までの経過をご紹介しながら、前歯の被せ物を良好な状態に保つためのメンテナンスについても解説します。
根面う蝕をレジン修復し、白金加金メタルコア・ジルコニアクラウンで治療した症例
前歯の差し歯を長期間使用していると、「歯の根元が黒く見える」「歯ぐきが下がってきた」「差し歯と歯の境目が気になる」といった変化がみられることがあります。
こうした黒ずみの原因は着色だけとは限りません。歯肉退縮による歯根面の露出や根面う蝕、補綴物周囲の状態などが関係していることもあります。
今回の症例では、上顎前歯の硬質レジン前装冠周囲に歯根面の露出や黒変、根面う蝕などが認められたため、う蝕部分の修復と補綴物の再製作を行いました。
初診時|差し歯周囲の根面う蝕と歯根面の黒変

初診時、上顎中切歯・側切歯には硬質レジン前装冠が装着されていました。
エアフローによるクリーニングでバイオフィルムやステインを除去し、歯面や補綴物周囲の状態を確認したところ、以下の所見が認められました。
- 歯肉退縮に伴う歯根面の露出
- 差し歯と歯の境目付近の黒変
- 露出した歯根面に生じた根面う蝕
- 補綴物と支台歯の境界部に確認が必要な部分
- プラークが停滞しやすい部位
歯肉が退縮すると、それまで歯肉に覆われていた歯根面が露出することがあります。
歯冠部の表面は主にエナメル質で覆われていますが、歯根面は主にセメント質やその内側の象牙質から構成されています。これらはエナメル質とは性質が異なり、露出した根面ではう蝕が生じるリスクが高くなるため注意が必要です。
また、長期間使用している被せ物では、経年的な変化や歯肉退縮、う蝕などによって、歯と補綴物の境界部の状態が変化することがあります。
境界部にプラークが停滞しやすい状態が続くと、補綴物周囲に二次う蝕が生じるリスクが高まります。
そのため、差し歯の根元が黒く見える場合には、見た目だけで判断せず、着色なのか、歯根面の露出なのか、う蝕が生じているのかなどを歯科医院で確認することが大切です。
根面う蝕のレジン修復とコアの再構築

治療では、まずう蝕の範囲や支台歯の状態を確認し、必要な部分の処置を行いました。
う蝕部分のうちコンポジットレジンによる修復が可能と判断した部位については、う蝕組織を除去したうえでレジンによる直接修復を行いました。
コンポジットレジンは歯の色に近い材料で、う蝕の範囲や部位などの条件によっては、歯質をできるだけ残しながら修復できる方法の一つです。
さらに既存の補綴物を除去して支台歯の状態を確認し、最終的な被せ物を支えるためのコアを再構築しました。
本症例では、上顎前歯の支台築造に白金加金を使用したメタルコアを選択しています。
白金加金メタルコアとは?
白金加金は、金を主体に白金などを加えた歯科用貴金属合金の一つです。
歯科補綴では、
- 十分な機械的強度を得やすい
- 耐食性に優れている
- 歯科用金属として長く使用されてきた実績がある
- 鋳造によって支台歯の状態に応じた形態を製作できる
といった特徴があります。
ただし、白金加金を使用すれば必ず補綴物の適合性や耐久性が高くなるというわけではありません。
コアの材料だけでなく、残っている歯質の量や歯根の状態、支台歯形成、被せ物の設計、噛み合わせなど、さまざまな要素を考慮して治療方法を選択する必要があります。
本症例ではこれらを検討したうえで、白金加金メタルコアによる支台築造を行いました。
ジルコニアクラウンによる前歯の補綴治療
コアを再構築して支台歯を整えた後、上顎前歯にジルコニアを用いたクラウンを装着しました。
ジルコニアは、セラミック系の歯科材料としてクラウンやブリッジなどに広く使用されています。
主な特徴として、
- 強度が高い
- 金属を使用しない補綴が可能
- 材料そのものの色調が比較的安定している
- 表面を適切に仕上げることで滑沢な状態を得られる
ことなどが挙げられます。
また、セラミック系材料の表面は適切に研磨・仕上げされていれば滑沢な状態を保ちやすく、補綴物周囲を清掃しやすい環境づくりにもつながります。
ただし、「ジルコニアだからプラークが付着しない」というわけではありません。
補綴物の形態や表面性状、歯と被せ物の境界部の状態、歯磨きなどのセルフケアによってもプラークの付着状況は変わります。
そのため、ジルコニアクラウンを装着した後も適切なセルフケアと定期的なメンテナンスが必要です。
本症例では、周囲の歯や歯肉との調和を考慮しながら前歯部の補綴治療を行いました。
補綴後3か月の経過

ジルコニアクラウン装着後3か月の経過観察では、補綴物および周囲組織の状態を確認しました。
診査時には、
- クラウンと周囲組織の状態
- 歯肉の炎症の有無
- 補綴物周囲のプラークの付着状況
- 噛み合わせ
- セルフケアの状態
などを確認します。
本症例では、3か月経過時点で補綴物周囲に明らかな問題は認められず、歯肉の状態も安定していました。
一方、天然歯にはステインの沈着が認められました。
ステインはコーヒーやお茶、食品、喫煙などさまざまな要因によって歯の表面に付着する着色です。ステインそのものが虫歯というわけではありませんが、定期的に口腔内を確認することで、着色だけでなくプラークの付着やう蝕、歯周組織の変化などを早期に発見できる場合があります。
被せ物を長く良好な状態に保つにはメンテナンスが大切
被せ物を装着した歯も、天然歯と同じように継続的なセルフケアと歯科医院での定期的なチェックが大切です。
クラウンそのものが虫歯になるわけではありませんが、被せ物の周囲に残っている天然歯にはう蝕が生じる可能性があります。
また、プラークが蓄積すれば、被せ物周囲の歯肉に炎症が生じることもあります。
そのため、
- 歯と被せ物の境界部を丁寧に磨く
- 歯間ブラシやデンタルフロスを適切に使用する
- 定期的に歯科医院で補綴物や歯肉の状態を確認する
- 必要に応じて歯科医院でクリーニングを受ける
ことが大切です。
適切に製作・装着された補綴物であっても、その後の口腔内環境やセルフケア、噛み合わせなどによって状態は変化します。
治療が終了した時点をゴールとするのではなく、定期的に状態を確認しながら維持していくことが重要です。
差し歯の根元が黒くなったら歯科医院で確認を
差し歯の根元が黒く見える原因は一つではありません。
たとえば、
- ステインなどの着色
- 歯肉退縮による歯根面の露出
- 根面う蝕や二次う蝕
- 金属を使用した補綴物や支台築造に関連する色調
- 補綴物と歯の境界部の変化
- 歯周組織の状態
などが関係している可能性があります。
そのため、「黒くなっているから虫歯」「被せ物を交換すれば治る」と自己判断することはできません。
特に前歯は見た目への影響が大きいため、黒ずみだけでなく「歯ぐきが下がってきた」「被せ物の境目が気になる」「以前と見た目が変わってきた」と感じた場合には、早めに歯科医院で状態を確認することをおすすめします。
原因や歯の状態を診査したうえで、クリーニング、う蝕治療、補綴物の修理・再製作など、必要に応じた治療方法を検討します。
関連記事
差し歯の根元の黒ずみ、気になっていませんか?

差し歯の根元の黒ずみは、着色だけでなく、歯ぐきの退縮や虫歯などが関係していることがあります。気になる変化があれば、まずは歯の状態を確認しましょう。
「差し歯の根元が黒い」「前歯の見た目を改善したい」「古い差し歯をやり直したい」という方は、お気軽にご相談ください。
【動画】ホワイトスポットをアイコンで治す
【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





