目次

「歯石取りを続けても歯ぐきの腫れが治らない…」
「歯周病が進行しているので手術が必要と言われた…」
「歯ぐきを切ると聞いて不安…」

このようなお悩みはありませんか?

歯周病は初期のうちは歯磨きやスケーリング(歯石除去)、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)などの基本治療で改善することが多い病気です。しかし、歯周病が進行し、歯周ポケットの奥深くまで感染が及んでいる場合には、基本治療だけでは十分な改善が期待できないことがあります。

そのような場合に選択される治療が歯周外科手術です。

歯周外科手術は、歯ぐきを開いて目で確認しながら感染組織や歯石を除去したり、失われた歯槽骨や歯周組織の再生を目指したりする治療です。

この記事では、

  • 歯周外科手術が必要になるケース
  • 手術の種類
  • 治療の流れ
  • 痛みや術後の経過
  • 費用
  • よくある質問

について、できるだけわかりやすく解説します。


歯周外科手術とは、歯周病によって深い歯周ポケットが形成され、通常の歯石取りだけでは改善が難しい場合に行う外科治療です。

歯ぐきを一時的に開くことで、歯周ポケットの奥深くに付着した歯石や細菌、炎症を起こした組織を直接確認しながら除去できます。

また、症例によっては失われた骨や歯周組織の再生を目的とした再生療法を組み合わせることもあります。

フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)の症例

下顎6番・7番の歯肉を切開・剥離して歯根面露出した状態。歯周ポケット深部に付着した歯石や感染性肉芽組織を徹底的に除去します。

歯周外科手術(フラップ手術)
歯周外科手術(フラップ手術)

次のような場合には、歯周外科手術をご提案することがあります。

  • SRP後も歯周ポケットが深い
  • 歯ぐきの腫れや出血を繰り返す
  • 歯ぐきから膿が出る
  • レントゲンで骨吸収が進行している
  • 垂直性骨欠損が認められる
  • 歯周病の進行を止めたい
  • 歯をできるだけ残したい

すべての歯周病で手術が必要になるわけではありません。まずは歯周基本治療を行い、その結果を評価したうえで適応を判断します。

フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)

最も一般的な歯周外科手術です。

歯ぐきを開いて歯根や骨を直接確認しながら、歯石や感染した肉芽組織を取り除きます。

感染源を取り除く治療ですが、失われた骨は基本的に再生しません

主な目的

  • 深部の歯石除去
  • 炎症組織の除去
  • 歯周ポケットの改善
  • 歯周病の進行抑制

メリット

  • SRPでは届かない部位まで清掃できる
  • 炎症の改善が期待できる
  • 歯周ポケットが浅くなり清掃しやすくなる

注意点

  • 歯ぐきが下がることがある
  • 骨は再生しない
  • 知覚過敏が起こることがある
  • ブラックトライアングルが目立つことがある

歯周組織再生療法

歯周病で失われた骨や歯根膜などの再生を目指す治療です。

すべての患者さんに適応できるわけではなく、骨の欠損形態などを総合的に判断して適応を決定します。

適応症例:上顎6番

赤矢印部にみられるような垂直性骨吸収は、適切な条件が揃えば歯周組織再生療法で回復をめざせるタイプの骨欠損です。根面に沿って骨が深く失われていますが、深い“縦型”の欠損は再生処置が適応となりやすい形態です。
赤矢印部にみられるような垂直性骨吸収は、適切な条件が揃えば歯周組織再生療法で回復をめざせるタイプの骨欠損です。根面に沿って骨が深く失われていますが、深い“縦型”の欠損は再生処置が適応となりやすい形態です。

適応にならない:下顎6番の根分岐部病変

歯周組織再生療法の適応症とは?
歯周組織再生療法の適応症とは?

下顎4番には歯周組織再生療法の適応となる垂直性骨欠損が認められます。一方、下顎6番は根分岐部病変を伴っており、歯周組織再生療法の適応が難しい症例です。

リグロス法

FGF-2(線維芽細胞増殖因子)を用いて歯周組織の再生を促す方法です。

保険適用となる場合があります。

GTR法

特殊な膜(メンブレン)を用いて、歯周組織が再生しやすい環境をつくる治療です。

エムドゲイン法

歯の発生時に近い環境を再現し、歯周組織の再生を促す方法です。

歯肉切除術

歯ぐきが過剰に増殖している場合や、浅い歯周ポケットを改善する場合に行われます。

歯ぐきの形態を整えることで、清掃しやすい口腔内環境を目指します。

歯肉形成術

歯ぐきの退縮や形態を改善し、見た目や清掃性の向上を目的として行う手術です。

デンタルX線診断

デンタルX線診断

写真は、上顎2番(側切歯)の歯肉にフィステル(膿が出る場所)が形成されたので、問題の部位を特定する為に、フィステルからガッタパーチーポイントを入れてデンタルレントゲンを撮影したものです。

フィステル形成の原因が根尖病巣か歯周病かの鑑別は、ガッタパーチーポイントの先端が赤丸で示されたところで止まっている為、歯周病が原因と特定されます。

歯肉の切開剥離
歯肉の切開剥離

歯肉の切開剥離

写真は表面麻酔後、浸潤麻酔をして上顎1番中央部から3番の遠心部にかけてメスで歯肉を切開し、骨膜剥離子で歯肉剥離して骨面を露出させた所です。上顎2番(側切歯)の近心及び遠心に大量の不良肉芽(ふりょうにくげ)組織が認められます。

フラップ手術は重度歯周病で歯がグラグラして今にも抜けそうな症例には適応出来ません。

不良肉芽組織の除去と歯根面の滑沢化
不良肉芽組織の除去と歯根面の滑沢化

不良肉芽組織の除去と歯根面の滑沢化

不良肉芽組織の除去と同時に、超音波スケーラーとハンドスケーラー(グレーシー・キュレット)などの器具を用い、歯根面の滑沢化を行った所です。この一連の手術のことをフラップ手術(歯肉剥離掻爬手術)と言います。

レントゲン写真で確認したように、上顎2番の近心側に深い垂直性の歯周ポケットが存在している事が分ります。

歯肉の縫合
歯肉の縫合

歯肉の縫合

剥離した歯肉を元に戻し、縫合します。症例によりコーパックなどの歯周包帯剤の使用も行います。

抗生物質と痛み止めの投与を行い、翌日に口腔内洗浄を行います。

約1週間後に縫合した糸を抜きます。

① 精密検査

歯周ポケット検査やレントゲン検査を行い、炎症や骨吸収の状態を確認します。

必要に応じて原因歯を詳しく調べます。

② 局所麻酔

十分に麻酔を行ってから治療を開始するため、治療中の痛みはほとんどありません。

③ 歯ぐきを開く

歯ぐきを丁寧に切開し、歯根や骨を確認します。

④ 感染組織・歯石の除去

深い歯周ポケット内に残っている歯石や感染した組織を取り除き、歯根面を滑らかに整えます。

必要に応じて再生療法を併用します。

⑤ 縫合

歯ぐきを元の位置へ戻して縫合します。

術後は必要に応じて歯周包帯を使用する場合があります。

⑥ 抜糸

通常は約1週間後に抜糸を行います。

その後も定期的な経過観察とメンテナンスを続けます。

手術は痛いですか?

手術中は局所麻酔が十分に効いているため、強い痛みを感じることはほとんどありません。

術後は麻酔が切れると痛みや腫れが生じることがありますが、多くは数日で落ち着きます。

必要に応じて痛み止めや抗菌薬を処方します。

一般的な経過は次のとおりです。

当日

  • 麻酔が切れると違和感や軽い痛みが出ることがあります。

2~3日

  • 腫れや違和感が最も出やすい時期です。

約1週間

  • 抜糸を行います。

約1か月

  • 歯ぐきの状態が徐々に安定します。

約3か月

  • 治癒状態を確認し、歯周病の再評価を行います。

手術後の注意点

治癒を順調に進めるため、以下の点に注意しましょう。

  • 強いうがいは控える
  • 飲酒や激しい運動は数日控える
  • 喫煙は治癒を妨げるため控える
  • 処方薬は指示どおり服用する
  • 歯磨きは指示された方法で行う
  • 定期的な受診を続ける
  • 深い歯周ポケットを改善できる可能性がある
  • 歯石や感染組織を直接除去できる
  • 歯周病の進行抑制が期待できる
  • 歯を長く残せる可能性が高まる
  • 清掃しやすい口腔内環境を目指せる
  • 歯ぐきが下がることがある
  • 知覚過敏が起こることがある
  • ブラックトライアングルが目立つことがある
  • 定期的なメンテナンスが必要
  • 症例によっては再発する可能性がある
ブラックトライアングルの出現
ブラックトライアングルの出現

保険診療では、歯周基本治療を行っても改善が認められない場合などに適応となります。

保険診療(3割負担の目安)

  • フラップ手術:約2,000円/1歯
  • 歯肉切除術:約960円/1歯

※検査料、再診料、投薬料などが別途必要になります。

再生療法については、治療方法によって保険適用・自費診療が異なります。

歯周外科手術を受ければ歯周病は治りますか?

歯周病は慢性疾患であり、手術だけで完全に治るものではありません。

手術後も毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを続けることが大切です。

手術後は仕事を休む必要がありますか?

多くの場合、翌日から通常の生活が可能です。

ただし、手術範囲が広い場合や腫れが予想される場合は、無理をせず安静に過ごすことをおすすめします。

保険は使えますか?

一定の条件を満たせば保険診療で受けられる治療があります。

一方、再生療法の一部は自費診療となる場合があります。

手術をしないとどうなりますか?

歯周病が進行すると、歯を支える骨がさらに失われ、歯の動揺が進行し、最終的には抜歯が必要になることがあります。

適切なタイミングで治療を受けることが、歯を長く残すために重要です。

関連記事

歯周病治療
歯周病
歯周病
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)とは?歯周病治療の流れ・痛み・費用
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)とは?歯周病治療の流れ・痛み・費用
歯周病
リグロスとは?保険で受けられる歯周組織再生療法|効果・適応症・費用
リグロスとは?保険で受けられる歯周組織再生療法|効果・適応症・費用New!!

歯周外科手術は、進行した歯周病に対して行われる専門的な治療です。

すべての患者さんに必要となるわけではありませんが、基本治療だけでは改善が難しい場合には、天然歯をできるだけ長く残すための重要な選択肢となります。

当院では、歯周病の進行度や骨の状態を丁寧に診査・診断し、患者さん一人ひとりに適した治療方法をご提案しています。

「手術が必要と言われたけれど不安」「本当に歯を残せるのか相談したい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!