リグロスとは

  • 歯周組織再生剤「リグロス」は、歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法の一つで、歯周病で歯槽骨が垂直性骨吸収を受けた部位の歯槽骨や歯根膜を再生する先進医療として2016年9月、日本において、製造販売承認が得られました。
  • フラップ手術(歯肉剥離掻把術)後、リグロスを塗布し、歯槽骨や歯根膜を効果的に再生させる歯周組織再生療法の一つです。

歯周組織再生剤リグロス:保険適用された最新治療法の全貌

歯周組織再生剤リグロスは保険適用

保険適用のリグロス

2016年12月より「リグロス歯科溶液キット」(科研製薬)として販売が開始されました。同時に保険適用され、一般歯科医院においても使えるようになりました。

リグロスの作用機序

リグロスの有効成分であるヒト型リコンビナント成長因子として塩基性線維芽細胞装増殖因子(FGF-2)をフラップ手術時に骨欠損部に填入することで歯周組織の再生を促す効果が期待できるものです。

歯周組織再生療法とは

歯周病の進行で歯槽骨の破壊が進んだ場所の骨の再生を可能にするのが歯周組織再生療法です。以前から自由診療でエムドゲインという薬剤が用いられ、相当の治療成績を収めていました。リグロスは、同じ様な機能として、骨欠損した場所の再生が期待できる保険適用の歯周組織再生剤として注目を集めています。

また、歯周病で破壊された垂直性骨吸収部位にメンブレンを設置して上皮が入り込むのを防ぐことで歯周組織を再生する方法「GTR法」という歯周組織再生療法もあります。

リグロスの効果の程度は?

骨の再生量は2~3mm

リグロスによる歯周組織再生療法での歯槽骨の再生量は2~3mm程です。従って、歯槽骨が吸収(破壊)されたすべてを再生する分けではありません。

これは、他の歯周組織再生療法(エムドゲイン、GTR)などでも同様で、それぞれ大差はありませんが、リグロスの方がやや効果が高いようです。

また、骨の増加量の確認のため、術後にレントゲン撮影をしても明瞭に写らないこともあります。

歯周組織の全体的な改善

歯周ポケットが減少し、歯周病の不快症状(出血、自発痛、咬合痛、歯の動揺)などが少なくなり、再発リスクが減少します。

リグロスの適応症

垂直性骨吸収(垂直性骨欠損)

歯槽骨の一部分だけが垂直方向に吸収(破壊)された歯周病にリグロス歯周組織再生療法は適応可能です。

歯槽骨の吸収(欠損)の状態を詳細に分類すると1壁性から4壁性があります。例えば、3壁の骨が残っている場合を3壁性骨吸収と呼びます。歯根の周りに残っている骨の壁が多いほどリグロス歯周組織再生療法の適応になります。

3壁性骨吸収ではポケット状に破壊された歯槽骨内にリグロスが留まりやすいため最も適応症例となります。

② 大臼歯の根分岐部病変

大臼歯の根分岐部病変に適応可能です。ただし、リンデの分類 1度(根分岐部病変の水平性骨欠損が、頰舌側的に1/3以下にとどまっている)に限ります。

リグロスの禁忌症

水平性骨吸収(水平性骨欠損)

水平性骨吸収(水平性骨欠損)

歯周病で破壊された歯槽骨の吸収には、骨の一部が垂直方向に吸収を受ける垂直性骨吸収(垂直性骨欠損)と歯槽骨全体が水平的に破壊される水平性骨吸収(水平性骨欠損)の二つのタイプに大別されます。

歯根の周りの歯槽骨が水平方向に均等に吸収(破壊)される水平性骨吸収ではリグロスの適応にはなりません。

口腔癌の患者

現在、口腔癌(悪性腫瘍)があるか、過去に口腔癌があり、現在は治癒している患者さんに対すリグロスの使用は禁忌です。

リグロスの薬効成分は分化度の低い細胞に作用し、増殖させる効果があります。悪性腫瘍の細胞も未分化細胞が多くあり、リグロスの作用機序と似ているため、癌の進行を早めるリスクがあるからです。

ただし、リグロスは口腔内に局所的に作用するため、全身に悪性腫瘍があっても、問題ではありません。

リグロスの副作用

重要な潜在的リスク

投与部位における悪性腫瘍の増殖及び転移促進。

副作用

投与部位における歯周組織の過剰増生、歯肉白色化、歯肉紅斑、歯肉腫脹。

リグロスの術式

CASE STUDY

リグロスの調製

リグロスの調製

リグロスは、薬剤と溶解液が一つのシリンジの中に入って、左右のプランジャーロッドを交互に押すことで無菌的に調合することが出来るようになっています。この作業は手術前に行っておきます。

上顎犬歯に深い歯周ポケット

上顎犬歯に深い歯周ポケット

上顎犬歯遠心部に深い歯周ポケットがあり、スケーリング・ルートプレーニングなどの歯周基本治療を終了した後、歯周ポケットのディブライトメントを繰り返すメンテナンスに移行しましたが、症状は安定しているものも歯周ポケットが深い状態。

犬歯歯周ポケットのデンタルエックス線

犬歯歯周ポケットのデンタルエックス線

上顎犬歯の奥側に3壁性の深い垂直性の骨吸収(骨欠損)が認められます。同部位のスケーリングやルートプレーニングなどで徹底的な歯石除去。歯周ポケット内をエアーフローでディブライトメントしたり、PMTCを繰り返すメンテナンスに移行。

フラップ手術-歯肉剥離

フラップ手術-歯肉剥離

症状は安定しているものもプロービング値が大きい状態に変化はなく、垂直性骨吸収があるのでリグロスを併用したフラップ手術を実施。犬歯歯肉のほぼ中央から縦切開を加え、4番(小臼歯)方向に向けて歯肉を剥離。プローブにて歯周ポケットの深さを測ると8mm。

不良肉芽組織除去と歯根面滑沢化

不良肉芽組織除去と歯根面滑沢化

不良肉芽組織の徹底した除去と歯根面の滑沢化を実施。歯周基本治療(歯石取り)では、歯根面の汚染されたセメント質は、可能な限り残すような治療方針です、しかし、フラップ手術を実施する際、リグロスなどの歯周組織再生剤を併用する場合には汚染されたセメント質は、完全にとってしまっても問題ないと考えています。

リグロスの塗布

リグロスの塗布

リグロスの入った投与ホルダーの先に貼薬針を挿入し、吸収した歯槽骨のポケット状になった領内にリグロスを満たします。

リグロスは、粘調性があるとはいうものの、流れ出てしまう懸念が拭えません。そこで、人工骨を併用すれば、より安定的にリグロスがその場にとどまるのではないかという印象です。

歯肉の縫合

歯肉の縫合

今回は、5番(第二小臼歯)の遠心部にも深い歯周ポケットがあった為、切開範囲は6番(第一大臼歯)の近心部まで行っています。

第二小臼歯遠心部には、リグロスと人工骨の骨補填剤(Bio-oss)を混ぜたものを使用しています。

フラップ手術後の注意点

約1週間後に抜糸を行います。手術の翌日までは手術部位を歯磨きしないでください。軽くうがいをする程度に留めて下さい。2日目以降は優しく歯磨きしても構いません。

リグロス治療手術後の注意事項については親知らずの抜歯後の注意に準じます。

各大学でのリグロスによる歯周組織再生療法の効果の研究

歯周外科手術の費用

手術名費用
フラップ手術1歯あたり 約2,000円※ 保険診療で行うには、この他に投薬料、歯周組織基本検査、歯周組織精密検査、各種指導料、再診療などが加算されます。また、保険適用のルールとして、フラップ手術の実施前にスケーリングやルートプレーニングが完了したにもかかわらず治癒しない場合に適用出来るとされています。
歯肉切除術1歯 960円※ その他、加算項目はフラップ手術に準ずる。
※ フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)、歯肉切除術は保険適用(自己負担3割の場合の治療費)です。

生命保険による手術給付金

フラップ手術は給付金の対象外となっている生命保険会社が殆どの様です。また、歯周組織再生療法(バイオ・リジェネレーション法)は保険給付対象であったものが2020年4月1日から支払対象外となったようです。

詳細は各自加入の保険会社に問い合わせて下さい。

リグロスの保険費用

例)上顎4番5番の二本に対してフラップ手術後、リグロスを応用した場合

上記の様に、フラップ手術も保険適用です。2歯のフラップ手術とリグロスを合わせた自己負担分の治療費の合計は約13,000円です。

1本の場合には7000円~9000円くらいが目安です。この他にレントゲン撮影費用、投薬費用、指導料、再診料などが加算されます。

リグロスが保険適用される条件

歯科医院に初診で行ってリグロスをして下さいとお願いしても保険適用されません。

保険には厳格なルールがあって、まず、歯周組織の検査を行います。次に歯石除去を行い、再び歯周組織の検査を行います。

深い歯周ポケットが残っているようなら、さらに SRP などの処置に入ります。再び歯周組織の検査を行い、歯周外科(フラップ手術)が必要なのかを判定します。

この時点になって初めてリグロスが必要と判断された場合にのみ使用が認められます。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、患者様の大切な歯を1本でも延命するため、軽度歯周病から重度歯周病に至るまで様々な対策を行い、歯周病予防をはじめ、早期発見・早期治療で症状の改善・維持を行い、抜歯回避に努めております。

江戸川区篠崎で歯茎再生治療のリグロスをご希望の方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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