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「歯周病がかなり進行しているので、抜歯になるかもしれません。」

そんな説明を受けて、不安な気持ちでこのページをご覧になっている方も多いのではないでしょうか。

確かに、重度の歯周病では歯を支える骨が失われ、抜歯が必要になることもあります。しかし、すべてのケースで抜歯が避けられないわけではありません。

骨の減り方や歯の状態によっては、歯周組織再生療法という治療によって、歯を支える骨や歯ぐきの再生を目指せる場合があります。

その代表的な治療法が、**「リグロス療法」**です。

リグロスは、日本で開発された歯周組織再生剤で、一定の条件を満たせば健康保険が適用されます。

この記事では、

  • リグロスとはどのような治療なのか
  • どのような歯周病に適しているのか
  • 保険で受けられる条件や費用
  • 治療の流れや注意点

について、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。

**「できるだけ自分の歯を残したい」**とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

「歯周病で溶けた骨は元に戻らない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。

以前はそのように考えられていましたが、現在では条件がそろえば歯周組織の再生を目指す治療が可能になっています。

その一つがリグロス療法です。

リグロスは、歯周病で失われた

  • 歯槽骨(歯を支える骨)
  • 歯根膜
  • 歯ぐき

などの歯周組織の再生を促す薬剤で、2016年から健康保険で使用できるようになりました。

自由診療しか選択肢がなかった時代に比べ、多くの患者さんが治療を受けやすくなっています。

リグロスには**FGF-2(線維芽細胞増殖因子)**という成分が含まれています。

この成長因子には、

  • 骨の再生を促す
  • 血管を新しく作る
  • 細胞の増殖を促進する
  • 傷ついた歯周組織の修復を助ける

といった働きがあります。

そのため、歯周病で失われた組織の回復が期待できます。

リグロスは、すべての歯周病に使用できるわけではありません。

最も効果が期待できるのは、**垂直性骨欠損(垂直性骨吸収)**と呼ばれるタイプです。

これは、骨が部分的に深く失われている状態で、骨の壁が残っているため再生しやすい特徴があります。

特に、

  • 3壁性骨欠損(骨欠損が3壁によって囲まれている)
  • 歯周ポケットが6mm以上
  • 中等度~重度の歯周病

では、良好な治療結果が期待できるケースがあります。

垂直性骨欠損(垂直性骨吸収)とは?

歯槽骨が部分的に深く破壊され、歯周ポケットが深くなっている状態です。

歯周組織再生療法の適応症:垂直性骨吸収
歯周組織再生療法の適応症:垂直性骨吸収

垂直性骨欠損(垂直性骨吸収)の症例

下顎1番にみられる垂直性骨吸収。条件が整えば、歯周組織再生療法(リグロス)で回復を目指せます。
下顎1番にみられる垂直性骨吸収。条件が整えば、歯周組織再生療法(リグロス)で回復を目指せます。
同症例の口腔内写真:下顎前歯部の歯肉が下がり、垂直性骨欠損に対応する部位です。
同症例の口腔内写真:下顎前歯部の歯肉が下がり、垂直性骨欠損に対応する部位です。

※実際に適応となるかどうかは、レントゲンやCT、歯周検査などをもとに総合的に判断します。

残念ながら、すべての症例で再生療法が行えるわけではありません。

例えば、

  • 骨が全体的に減っている水平性骨吸収
  • 重度の歯の動揺
  • 根分岐部Ⅲ度病変
  • コントロール不良の糖尿病
  • 喫煙習慣がある
  • 免疫抑制剤を使用している

などでは、期待する効果が得られにくいことがあります。

「歯周病の重症度」だけではなく、「骨の残り方」が治療の可否を左右する重要なポイントです。

水平性骨吸収とは?

歯槽骨が全体的(水平)に深く破壊され、歯周ポケットが深くなっている状態です。

適応されない症例:水平性骨吸収
適応されない症例:水平性骨吸収

水平性骨吸収(水平性骨欠損)症例

矢印部分:歯周病で骨が全体的に下がる“水平性骨吸収”の所見。
矢印部分:歯周病で骨が全体的に下がる“水平性骨吸収”の所見。
「矢印部分:歯周病で骨が均一に低下する“水平性骨吸収”の所見。
矢印部分:歯周病で骨が均一に低下する“水平性骨吸収”の所見。

根分岐部Ⅲ度病変とは?

奥歯の根の分かれ目(根分岐部)の骨が大きく失われ、器具が反対側まで貫通してしまうほど進行した重度の歯周病です。

重度感染症例(根分岐部Ⅲ度病変)症例

根分岐部Ⅲ度病変:再生療法(リグロス)が適応できない進行例
根分岐部Ⅲ度病変:再生療法(リグロス)が適応できない進行例

リグロスは、いきなり使用できる治療ではありません。

まずは歯周病の原因となる細菌や歯石を取り除き、炎症を改善させることが大切です。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 歯周検査・レントゲン検査
  2. スケーリング
  3. ルートプレーニング(SRP)
  4. 再評価
  5. リグロス適応の診断
  6. フラップ手術とリグロスの使用
  7. 定期メンテナンス(SPT)

基本治療で改善しない深い歯周ポケットに対して、再生療法を検討します。

リグロス治療の実際の症例

リグロスは、歯周病で失われた歯を支える骨や歯周組織の再生を目指す治療です。まずは歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)で炎症を改善し、その後の再評価でリグロスが適応できるかを判断します。

上顎犬歯遠心部の歯周病症例

上顎犬歯に深い歯周ポケット
上顎犬歯遠心部の深い歯周ポケット
犬歯遠心部の歯周ポケットのX線所見:3壁性骨欠損
犬歯遠心部の歯周ポケットのX線所見:3壁性骨欠損

リグロスの準備

リグロスは粉末薬剤と溶解液を専用シリンジ内で無菌的に混合して使用します。手術前に適切な温度管理や使用期限を確認し、安全に使用できるよう準備します。

リグロスの調製
リグロスの調製

フラップ手術

歯ぐきを切開して骨欠損部を露出し、炎症性の不良肉芽組織や歯石、感染した組織を丁寧に除去します。歯根面を滑らかに整え、再生しやすい環境を作ります。

フラップ手術-歯肉剥離
フラップ手術-歯肉剥離
不良肉芽組織除去と歯根面滑沢化
不良肉芽組織除去と歯根面滑沢化

リグロスの塗布

骨欠損部へリグロスを直接注入します。骨の欠損が大きい場合は、人工骨(骨補填材)を併用することで薬剤を安定させ、再生環境を維持しやすくすることがあります。

リグロスの塗布
リグロスの塗布

歯ぐきの縫合

薬剤や人工骨が動かないよう歯ぐきを丁寧に縫合し、必要に応じて歯周パックを使用します。創部を安定させることが治療成功の重要なポイントです。

歯ぐきの縫合
歯ぐきの縫合

術後の経過観察

術後は定期的に経過を確認し、歯周ポケットの改善や骨の再生状況を評価します。再生療法の効果を長く維持するためには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンス(SPT)の継続が欠かせません。

手術では歯ぐきを開き、

  • 感染した組織
  • 不良肉芽組織
  • 歯石

を丁寧に除去します。

その後、骨欠損部へリグロスを注入し、必要に応じて人工骨(骨補填材)を併用します。

最後に歯ぐきを縫合し、組織が安定した状態で治癒するよう管理します。

はい。

一定の条件を満たした場合は健康保険で治療を受けられます。

目安として3割負担の場合、

  • 1歯:約7,000~9,000円
  • 2歯:約13,000円前後

となります。

※検査料、レントゲン、投薬などは別途必要です。

手術後には、

  • 腫れ
  • 軽い痛み
  • 歯ぐきの赤み
  • 一時的な白っぽい変化

などがみられることがあります。

多くは時間の経過とともに改善しますが、強い痛みや腫れが続く場合は早めの受診が必要です。

また、口腔がんの既往がある方には原則として使用できません。

リグロスは、薬を入れれば終わりという治療ではありません。

再生した組織を長く維持するためには、

  • 毎日の丁寧な歯磨き
  • 禁煙
  • 糖尿病のコントロール
  • 定期的なクリーニング
  • SPT(歯周病メンテナンス)

を継続することが非常に重要です。

リグロスは、多くの研究で有効性が報告されている治療法ですが、すべての症例で同じ結果が得られるわけではありません。

患者さんごとの骨の状態や歯周病の進行度、術後のセルフケアなどによって治療結果は異なります。

国内の臨床研究では、多くの症例で歯周ポケットの改善や歯槽骨の再生が報告されていますが、治療効果には個人差があります。

そのため、「必ず歯を残せる」「骨が完全に再生する」といった治療ではありません。

※「成功」の定義は、歯周ポケットの改善、骨の再生、動揺の安定など複合的に評価されます。

再生療法の有効性:2〜3mmの歯槽骨再生
再生療法の有効性:2〜3mmの歯槽骨再生

各大学でのリグロスによる歯周組織再生療法の効果の研究

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歯周病で歯を支える骨が減っていても、症例によってはリグロスを用いた歯周組織再生療法が選択できる場合があります。当院では精密な歯周検査を行い、お口の状態を詳しく確認したうえで、患者さん一人ひとりに適した治療方法をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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