「毎日歯みがきをしているのに、歯ぐきの腫れや出血がなかなか改善しない…」
「歯周病の治療を受けているのに、また悪くなってしまった…」

このような症状の背景には、**「レッドコンプレックス(Red Complex)」**と呼ばれる病原性の高い歯周病菌が関係している可能性があります。

レッドコンプレックスは、重度の歯周病患者で多く見つかる3種類の細菌の総称です。これらの細菌は歯周ポケットの奥深くで増殖し、歯ぐきだけでなく歯を支える骨(歯槽骨)まで破壊し、歯周病を急速に進行させることが知られています。

さらに近年では、糖尿病や心血管疾患、アルツハイマー病など全身の健康との関連についても研究が進められています。

この記事では、

  • レッドコンプレックスとは何か
  • 3種類の歯周病菌それぞれの特徴
  • 放置することで起こるリスク
  • 効果的な予防法・治療法

について、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。

レッドコンプレックスとは、重度歯周病との関連性が非常に高い3種類の嫌気性細菌の総称です。

これらの細菌は酸素の少ない歯周ポケットの深部で増殖し、歯周組織に炎症を引き起こすだけでなく、歯を支える骨を破壊して歯周病を進行させます。

レッドコンプレックスに分類される細菌は次の3種類です。

  • Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)
  • Tannerella forsythia
  • Treponema denticola

これらは単独でも病原性を持っていますが、お互いに協力しながら増殖することで、より強い病原性を発揮することが大きな特徴です。

レッドコンプレックスを構成する3種類の歯周病菌

P. gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)

P. gingivalisは、「歯周病菌の代表格」ともいわれる細菌です。

毒素や酵素を産生して歯周組織を破壊するだけでなく、免疫機能をすり抜けながら感染を拡大させる能力を持っています。

主な特徴
  • 強い炎症を引き起こす
  • 歯周組織や歯槽骨の破壊を促進する
  • 免疫反応を回避しやすい
  • 血流へ侵入する可能性がある

近年では糖尿病や動脈硬化、心血管疾患、アルツハイマー病との関連についても多くの研究が報告されています。

Tannerella forsythia

Tannerella forsythiaは、歯ぐきの腫れや出血などの炎症症状に深く関与する細菌です。

慢性的な歯肉の炎症を引き起こし、歯周ポケットの奥で増殖しやすい特徴があります。

主な特徴
  • 歯ぐきの腫れを悪化させる
  • 出血しやすい歯ぐきをつくる
  • 歯周ポケット深部で増殖しやすい

Treponema denticola

Treponema denticolaは、らせん状の形をした「スピロヘータ」の一種です。

運動性が非常に高く、歯周組織の内部へ入り込みながら他の歯周病菌と協力して感染を広げます。

主な特徴
  • 組織の深部へ侵入しやすい
  • 他の細菌と協調して病原性を高める
  • 重度歯周病患者で多く検出される

レッドコンプレックスが危険視される最大の理由は、3種類の細菌が「チーム」となって歯周病を悪化させることです。

歯垢(プラーク)の中でバイオフィルムを形成すると、細菌は外部からの刺激に強くなり、歯みがきだけでは除去しにくくなります。

その後、

  1. プラークが形成される
  2. バイオフィルムが成熟する
  3. 歯周ポケットの奥へ侵入する
  4. 炎症物質や毒素を放出する
  5. 歯槽骨の破壊が進行する

という流れで歯周病が進んでいきます。

そのため、セルフケアだけでは改善が難しく、歯科医院での専門的な治療が必要になることも少なくありません。

レッドコンプレックスが増殖すると、次のような症状がみられることがあります。

歯ぐきから血が出る

歯みがきのたびに出血する場合は、歯ぐきに炎症が起きているサインです。

歯ぐきが腫れる・膿が出る

感染が進行すると歯周ポケット内で膿がたまり、歯ぐきが腫れたり痛みを伴ったりすることがあります。

強い口臭

嫌気性菌が作り出す揮発性硫黄化合物(VSC)によって、腐敗臭のような口臭が強くなることがあります。

歯がグラグラする

歯槽骨が破壊されると歯を支える力が弱くなり、歯が動くようになります。さらに進行すると抜歯が必要になるケースもあります。

歯がグラグラして前歯が前方に倒れてきています
歯がグラグラして前歯が前方に倒れてきています

近年では、PCR(遺伝子)検査によって歯周病菌の種類や量を調べられる歯科医院もあります。

検査では、

  • 存在している細菌の種類
  • 細菌数
  • 重症化リスク
  • 再発リスク

などを把握できる場合があります。

特に次のような方では検査が役立つことがあります。

  • 歯周病を何度も繰り返している
  • 糖尿病がある
  • 家族に重度歯周病の方がいる
  • インプラント治療を予定している

※検査の実施状況は歯科医院によって異なります。

毎日のセルフケア

歯周病予防の基本は、歯垢をためないことです。

特に重要なのは、

  • 歯周ポケットを意識したブラッシング
  • 歯間ブラシやデンタルフロスの使用
  • 就寝前の丁寧な歯みがき

を毎日続けることです。

抗菌性洗口液の活用

補助的なケアとして、抗菌成分を含む洗口液を使用する方法もあります。

代表的な成分には、

  • CPC
  • IPMP
  • CHX(歯科医院で処方・使用される場合があります)

などがあります。

ただし、洗口液だけで歯周病が改善するわけではないため、ブラッシングとの併用が重要です。

歯科医院での専門的なクリーニング

成熟したバイオフィルムの中に潜む細菌は、自宅での歯みがきだけでは十分に除去できません。

そのため歯科医院では、

  • スケーリング
  • ルートプレーニング(SRP)
  • PMTC
  • エアフロー(適応に応じて)

などを組み合わせながら、歯周病菌を減らしていきます。

症状に応じて定期的なメインテナンスを受けることが、再発予防につながります。

近年の研究では、レッドコンプレックスに含まれる細菌は、お口の中だけでなく全身にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。

例えば、

  • 糖尿病:歯周病と糖尿病は互いに悪影響を及ぼすことが知られています。
  • 心筋梗塞・脳梗塞:歯周病菌が血流へ入り込み、血管の炎症や動脈硬化との関連が研究されています。
  • アルツハイマー病:P. gingivalisが産生する毒素との関連について研究が進められています。
  • 妊娠・早産:歯周病による炎症が早産や低出生体重児出産のリスクに関与する可能性が報告されています。

ただし、これらは「関連性」が示されているものであり、歯周病菌が直接すべての疾患の原因になると断定されているわけではありません。

レッドコンプレックスは、重度歯周病の進行と深く関わる3種類の歯周病菌です。

歯ぐきからの出血や腫れ、口臭、歯のぐらつきなどの症状がある場合は、これらの細菌が増殖している可能性があります。

歯周病は初期には自覚症状が少なく、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。しかし、毎日のセルフケアに加え、歯科医院での定期検診や専門的なクリーニングを継続することで、細菌をコントロールし、歯周病の進行を抑えることが期待できます。

「歯ぐきの腫れが続く」「歯みがきで出血する」「口臭が気になる」といった症状がある方は、放置せず早めに歯科医院へ相談し、お口の状態を確認してもらいましょう。

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歯ぐきの出血や腫れ、口臭などは、歯周病のサインである可能性があります。気になる症状がある場合は、そのままにせず早めにお口の状態を確認することが大切です。当院では、お口の状態を丁寧に診査し、将来も健康な歯を維持できるようサポートいたします。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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