歯科治療で過換気症候群

  • 歯科では局所麻酔や治療の痛みがストレスとなり過呼吸から過換気症候群を誘発します。
  • 症状は息苦しさ、体のしびれ、泣く、立ち上がれない、テタニー症状などです。
  • 死にそうになるほどパニック状態になります。
  • 対処法は複式呼吸ですが、紙袋再呼吸法は推奨されません。

過呼吸から過換気症候群へ

歯科治療で起こる過換気症候群

歯科治療においては、局所麻酔時の痛みや治療中の痛みなどのストレスが個人の持つキャパシティーを超えた時、精神的不安が強くなり呼吸数が増加し、過換気症候群を発症します。

呼吸数が増加して過呼吸になり過換気症候群を誘発すると言えます。つまり、過呼吸は症状で、過換気症候群は病名と言うことも出来ます。

当院では、可能な限り痛みを起こさないために局所麻酔の前に表面麻酔や針の無い麻酔器を使って局所麻酔の痛みを軽減させています。

症状

自覚症状として「息苦しい」「息が出来ない」「身体がしびれる」「吐き気」[精神的に不安定で泣いてしまう]「足に力が入らなくて立ち上がれなくなる」「テタニー症状」などが挙げられます。

他覚的症状として「深く早い呼吸」が認められます。しかし、本人は過呼吸になっている自覚が無く、「もう死ぬのではではないか」と思うほどパニック状態になるのが一般的です。

発症メカニズム

痛みや恐怖心などのストレッサーが原因でパニック状態になり、呼吸数が異常に増加(過呼吸)して発症するのが過換気症候群です。過呼吸では、深い呼吸が連続するため二酸化炭素の吐き過ぎ状態となり、動脈血中のCO2分圧が低下します。

動脈血中の二酸化炭素が減ることで、血液はアルカリ性になります。これを呼吸性アルカローシスと言います。

脳の血管は、二酸化炭素の分圧低下により、収縮する作用があります。この為、過換気症候群の時に頭痛の症状がでるのは脳血管の収縮によるものと考えられます。

また、動脈血中のカルシュウムイオンの減少で起こる低カルシュウム血症が「しびれ」や「テタニー症状」を誘発します。

過換気症候群の診断

テタニー症状

「しびれ」「テタニー症状」

過呼吸により血液PHが7.5以上に上昇することで低ルシュウム血症になります。これにより、「しびれ」や「テタニー症状(写真)」が発現することがあります。

血中のカルシュウムイオンの減少は、筋肉の正常な動きを妨げます。そのため、手指が曲がった状態になる「テタニー症状」や「体のしびれ」などが現れます。

ただし、テタニー症状はすべての症例で出るわけではありません。一方、「体がしびれて動けない」「体がしびれて立てない」などの症状は多くのケースで現れます。

呼吸数

呼吸数の正常値 (成人,安静時):12~18回/分。つまり、約5秒に1回呼吸します。

過換気症候群を発症をした場合、1分間に30回以上、酷いケースでは60回以上の過呼吸になることがあります。

血圧・脈拍数

過換気症候群では血圧は上昇し、脈拍数は増加する傾向にあります。

若い女性やパニック障害の患者に多い

若い女性やパニック障害などの精神疾患を持っている方に発症し易い傾向があります。

過換気症候群は繰り返す

初発の事は少なく、過去に何回か過換気症候群を経験している人に多く見られます。

また、本人または家族が歯科医師へ過去の発症履歴を伝えることで、診断の助けになります。

過換気症候群の治し方

ゆっくりと腹式呼吸
ゆっくりと腹式呼吸

ゆっくりと腹式呼吸

もし、歯科治療中に過換気症候群が起こった場合、治療を中断します。ユニットチェアを起こして座位/半座位の姿勢にします。

患者さん本人は「自分はもう死ぬのではないか」と思ってしまうほどパニック状態になっていることが多く、強い不安を感じています。

過換気症候群は重篤な病態ではなく、命に関わるようなものでないことを伝えます。

次に、ゆっくりと腹式呼吸をする様に指示します。

腹式呼吸は、お腹に手を当ててお腹が凹むのを確認しながら。口からゆっくりと息を吐きます。息を吸う時は、お腹が膨らむのを確認しながらゆっくりと鼻で行います。

呼気再呼吸は非推奨

現在、紙袋再呼吸法(ペーパーバッグ呼吸法)は推奨されていません。

これは、呼気再呼吸を行っても改善しないという報告が多数あるばかりか、逆に呼気再呼吸を行って病態を悪化させることもあるからです。

※ 紙袋を使った再呼吸法ならまだ良いかもしれませんが、誤ってビニール袋を使うと酸欠になってしまうリスクがあります。

重篤な場合には抗不安薬投与

歯科治療時に起こった過換気症候群で、腹式呼吸法を行っても改善しない重篤な場合には、抗不安薬のジアゼパム,ミダゾラムなどの投与をします。静注が基本です。

過換気症候群を繰り返す場合何科を受診?

普段から過換気症候群を繰り返す場合には、精神科や心療内科の受診をお薦めします。過換気症候群の根本原因が不安や痛みなどのストレスが原因になっているからです。

近年では、コロナによる抑圧された状態が、よりストレスを増強させる要因の一つとなっている可能性も否定出来ませんね。

当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しております。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、過換気症候群になり易い方へ配慮した歯科口腔外科の治療をご希望の方は、ふかさわ歯科クリニック篠崎までお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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