ドライマウスとは

  • ドライマウスの原因は、唾液腺の破壊を伴うシェーグレン症候群、糖尿病、口腔癌の放射線治療などと、唾液腺は正常のストレス(神経性)、更年期障害、薬の副作用、口呼吸、老人性(加齢による筋力低下)、腎不全などに分類されます。
  • 口の中が乾く症状を口腔乾燥症と言い、対策や処方薬は原因ごとに異なります。

ドライマウスの原因

ドライマウスの原因となる疾患には、唾液腺が器質的障害を受けて発症するものと唾液腺の障害が無いのにもかかわらず、唾液分泌が低下するものに大別されます。

唾液腺の破壊あり

  • シェーグレン症候群
  • 糖尿病
  • 口腔癌の放射線治療

唾液腺は正常

  • ストレス(神経性)
  • 更年期障害(女性ホルモン減少)
  • 薬の副作用
  • 口呼吸
  • 老人性(加齢による筋力低下)
  • 腎不全

ドライマウスの発症頻度

ドライマウスの原因別頻度
ドライマウスの原因別頻度

1位 ストレス性( 神経性)のドライマウス

ドライマウスの原因で最も多いのがストレス性( 神経性) のドライマウスが約30%で、次にシェーグレン症候群によるドライマウスが約8%です。

それらに続けて、 薬の副作用、 糖尿病、腎不全、 更年期障害、加齢などと続きます。

唾液腺障害によるドライマウス対策

シェーグレン症候群

唾液腺が破壊されるシェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群(臓器特異的自己免疫疾患)と診断されれば、難病指定されているため医療費が全額無料です。また、日本において患者数は約50万人いると言われています。

シェーグレン症候群の代表的な症状は「口腔乾燥」と「目の乾燥」、「皮膚の紅斑(発疹)」などです。

シェーグレン症候群では涙腺と唾液腺など全身の外分泌腺にリンパ球浸潤を伴った組織破壊が起きます。口腔乾燥症状は、唾液腺の腺房細胞の破壊、委縮、消失などにより唾液分泌低下が発現します。

処方薬

処方薬としてはサラジェン、漢方薬の白虎加人参湯、五苓散などの内服薬です。

対策

頻回のうがい、人工唾液(サリベート®エアゾール)の噴霧、口腔内用保湿ジェルの塗布など局所の対処療法が推奨されます。

糖尿病

糖尿病性ドライマウス

糖尿病性ドライマウス

日本において糖尿病患者は1,000万人、糖尿病予備軍は1,000万人と言われています。

糖尿病患者の糖を含んだ尿は浸透圧が高く、水分を尿管に引っ張る力が強くなります。その結果、多量の尿が排出され、脱水症状とともに口の渇きが発現します。

また、血糖値上昇によるグルコーススパイクにより唾液腺が傷害を受けて唾液分泌が低下すると考えられています。

糖尿病の治療

糖尿病の改善を最優先し、内科の専門医を受診してください。

対策

頻回のうがい、人工唾液(サリベート®エアゾール)の噴霧、口腔内用保湿ジェルの塗布など局所の対処療法が推奨されます。

口腔癌の放射線治療

口腔癌の放射線治療

唾液腺の放射線障害

近年になって口腔がんの発生頻度が高まっています。口腔がんの治療で放射線を照射すると大唾液腺(耳下腺、舌下腺、顎下腺)などが破壊されるため唾液分泌に障害が発生します。

症状は放射線照射量に比例し、放射線治療の初期から発現します。

処方薬

処方薬としてはサラジェン、漢方薬の白虎加人参湯、五苓散などの内服薬です。放射線により唾液腺の障害が起こっているためシェーグレン症候群と同様な処方薬です。

対策

頻回のうがい、人工唾液(サリベート®エアゾール)の噴霧、口腔内用保湿ジェルの塗布など局所の対処療法が推奨されます。

唾液腺は正常であるドライマウス対策

ストレス


ストレス性(神経性)のドライマウス

ストレス性(神経性)ドライマウス

ストレスなどの精神的要因が原因のドライマウスは、口腔乾燥症状を訴える患者の約30%に及んでいます。

超高齢社会が進行する中、価値観の変化、人間関係の希薄化、失業、離婚、死別などの喪失体験、過重労働による健康障害、睡眠障害、 PTSD (心的外傷後ストレス障害)など様々なストレスにより、唾液分泌は低下します。

ストレス社会の低年齢化が顕著になるとともに、ドライマウス患者の低年齢化も起こっています。そのため、小学校高学年から中学生の子供がドライマウス症状を訴えるケースも散見されます。

ドライマウスは、唾液の本来の機能である口腔内細菌に対する抗菌作用や自浄作用を低下させます。それに伴って口臭発生の危険性も伴っています。

ドライマウスは、子供の口臭や自臭症の原因の一つとなっています。

歯科心身症・不安神経症の対策

唾液は十分出ているのに、思い込みや誤解からドライマウスが一生治らないのではないかという不安の堂々巡りを行ってしまう方がいます。

こういった方は、ポジティブにとらえる思考や目の前のことに集中する生活習慣(編み物やタイルのカビを落とすなど。)で改善することがあります。

唾液腺は自律神経(交感神経と副交感神経)の二重支配

安心

 副交感神経

リラックスした状態では副交感神経が優位となり、唾液分泌機能が促進します。


不安

 交感神経

ストレスが掛かると交感神経優位になり唾液分泌機能が抑制されます。


ストレス解消法

  • 腹式呼吸⇒不安の解消。
  • 筋弛緩法⇒拳を握る、離す。
  • 自律神経訓練法⇒両手両足がだんだん暖かくなる。
  • イメージ療法⇒楽しいのんびりした時の思い出。
  • 痛くなるストレッチ⇒痛みに集中。
  • アンガー マネージメント(怒りのコントロール)⇒ 怒りを覚えたら8秒数える。
    (怒りの原因よりも自分が起こったことの記憶の方がいつまでも記憶に残りストレスになる。)

更年期障害

更年期障害のドライマウス

女性ホルモン減少でドライマウス

40代から女性ホルモンが減少し更年期障害が起こると言われています。それに伴ってドライマウスの患者さんが増えるため相関関係があると考えられています。

唾液腺には女性ホルモンの受容体(レセプター)が存在します。そして、体中を巡る女性ホルモンは唾液腺を介して唾液中にも女性ホルモンが分泌されます。このことは唾液腺の機能を維持するために女性ホルモンが重要であるエビデンスになっています。

女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の二つがありますが、その内エストロゲンが減少すると膣の乾燥や口腔乾燥など様々な乾燥症状が起こることがあります。

ホルモン補充療法

閉経後の女性は刺激時唾液の分泌量が減少することが多く、ホルモン補充療法により改善を認めます。

ホルモン補充療法は、欧米では2人に1人が受けていますが、日本では乳癌・子宮癌のリスクが高まるとネガティブキャンペーンがされているため7%に止まっています。

ホルモン補充療法は安いための様々な不定愁訴が改善されては困るというのが反対派の医師の本音ではないでしょうか?

対策

更年期障害によって起こるドライマウスは女性ホルモンを増やすことで改善されます。女性ホルモンを増やす食べ物は大豆イソフラボンやビタミンE、レソルシル酸ラクトン類などです。

薬の副作用

薬の副作用でドライマウス

病気の処方薬でドライマウス

薬の副作用でドライマウスが発生します。成人病で代表的な高血圧、高コレステロール、動脈硬化などの薬が唾液の分泌を阻害します。その他の疾患と薬剤は下記表の通りです。

処方薬がドライマウスを起こす例

処方薬がドライマウスを起こす例

  • 高血圧→交感神経優位→ドライマウス
  • 高血圧→降圧薬服用→ドライマウス
  • 不安・不眠→抗不安薬・睡眠薬→ドライマウス

処方薬の減量・変更・中止

処方薬が原因のドライマウスでは、唾液腺は破壊されていないので機能は維持されています。

従って薬を減量するか中止します。あるいは薬を変更することで唾液分泌が回復する可能性があります。

薬剤の変更や中止は主治医とよく相談することが必要です。

対策

頻回のうがい、人工唾液(サリベート®エアゾール)の噴霧、口腔内用保湿ジェルの塗布など局所の対処療法が推奨されます。

ドライマウスを起こす処方薬一覧

向神経薬

対象疾患薬剤名
抗うつ薬アナフラニール、トリプタノール、ルジオミール
抗不安薬(睡眠導入剤)セルシン、デパス、ハルシオン
抗精神病薬セレネース、コントミン、ヒルナミン
抗てんかん薬テグレトール
抗パーキンソン薬パーロデル、ドプス、シンメトリル

その他の薬

薬効分類薬剤名
降圧剤・抗不整脈薬ノルバスク、アダラート;カルシュウム拮抗薬
抗アレルギー薬ポララミン、アタラックス、アレジオン
消化性潰瘍治療薬ケタプロン
抗コリン薬ブスコパン、バップフォー
気管支拡張剤メプチン、テオドール
利尿剤ラシックス
鎮痛剤ロキソニン、ボルタレン

口呼吸、鼻づまり、睡眠時無呼吸症候群

更年期障害のドライマウス

睡眠中のドライマウス

起きている時は問題ないが、寝ている時に口の中や舌が乾いて起きてしまったり、起床時のネバネバ唾液で不快症状が出る場合には、口呼吸、鼻づまり、睡眠時無呼吸症候群、睡眠中の体勢などの病気が原因と考えられます。

特に子供に多いのですが、口をポカンと開けて口で呼吸をする口呼吸が成人になっても持続する様な場合にはドライマウスだけで無く様々な弊害が発生します。

対策

夜中に口が乾いて目が覚めてしまう場合には、枕元にペットボトルを用意しておくと安心して眠れるようです。また、保湿装置(プレート)の使用も効果的です。

睡眠時無呼吸症候群ではシーパップやマウスピースなどの使用で改善する場合があります。

睡眠中の体勢が悪い場合には抱き枕の使用で改善する場合があります。

加齢による筋力低下

加齢による筋力低下

老人性ドライマウス

唾液は安静にしていると少しずつ口腔内に分泌されます。これを安静時唾液といます。一方、咀嚼などの刺激が加わった時に出る唾液を刺激唾液と呼びます。

以前は、加齢とともに唾液分泌量が低下すると思われていましたが、刺激唾液量は殆ど変化が無いことがわかってきました。

しかし、加齢とともに口輪筋、咬筋、頬筋などの咀嚼筋群の筋力が低下(オーラルフレイル)する人が増えてきます。咀嚼機能が低下すると唾液分泌が十分になされずドライマウスになることがあります。つまり、心身共に健康な老人の口は乾かないということが出来ます。

対策

唾液腺マッサージやあいうべ体操など口腔周囲筋の筋力を強化することで唾液分泌を促します。

保湿剤配合のジェルをスポンジブラシなどで塗布したり、乾燥した口腔粘膜に直接スプレーによる噴霧が効果的です。

漢方薬の白虎加人参湯、五苓散の投薬が有効な場合があります。

入れ歯にはカンジダ菌が付着し増殖しやすいので、抗真菌剤のミコナゾールゲルを義歯粘膜面に塗布するとカンジダ菌の増殖が抑えられます。ミコナゾールゲルは塗り薬なので副作用は殆どありません。

腎不全

人工透析でドライマウス

人工透析でドライマウス

腎不全の患者は32万人にます。週に3回の人工透析の際に大量の水を体内から抜き取ります。そのため強いトライマウスが発生します。(欧米で腎移植が主流で、人工透析の頻度は低い。)

対策

頻回のうがい、人工唾液(サリベート®エアゾール)の噴霧、口腔内用保湿ジェルの塗布など局所の対処療法が推奨されます。

虫歯予防効果もあり唾液分泌を促すキシリトールガムを噛む。砂糖の入っている飴などは虫歯の原因になるのでNGです。

口の中が乾いた時の対策

人工唾液、保湿スプレー、保湿ジェルは対処療法ですが、コエンザイムQ10は唾液分泌そのものを促進する可能性があります。

また、唾液腺が壊れていないドライマウスのケースであれば運動療法として唾液腺マッサージや「あいうべ体操」も効果的です。

唾液が少ないと感じたら

人工唾液、保湿スプレー、保湿ジェル

対処療法

人工唾液
サリベート®エアゾール

人工唾液サリベート®エアゾールは処方せんが必要です。
シェーグレン症候群による口腔乾燥症、 頭頸部の放射線照射による唾液腺障害の口腔乾燥症に、通常1回に1〜2秒間口腔内に1日4〜5回噴霧します。

保湿スプレー
アクアバランス

市販されています。
携帯に便利なスプレータイプの保湿剤なので、外出先などで口の渇きが気になる時にも手軽に使用できます。

amazonで購入
アクアバランス

楽天で購入
アクアバランス

保湿ジェル
コンクールマウスジェル

アルコールフリーで、乾燥部位に刺激を与えない口腔保湿剤。
ジェルタイプの保湿剤なので、お口に潤いを与えるだけでなく蒸発を防ぐ効果があるため長時間保湿ができます。

amazonで購入
コンクールマウスジェル

楽天で購入
コンクールマウスジェル

保湿プレート

保湿プレートに保湿ジェルを入れる

保湿プレートに保湿ジェルを入れて寝る

上顎の口蓋を覆うように保湿装置(マウスピース)を作ります。夜寝る前に保湿ジェルを入れて口腔内に装着して寝ます。

義歯を装着している患者さんであれば、義歯の粘膜面に保湿剤を塗布して寝るのも有効です。

保湿ジェルは市販のものであればどれを使っても大きな違いはありません。

ただし、市販されている保湿ジェルは口腔化粧品に分類されています。そのため、「使用後は吐き出して下さい。」となっています。

夜寝ている時、口が乾くことを防止するためにこういった使い方をするのはいささか懸念が生じます。

唾液腺マッサージ

唾液腺マッサージ

唾液腺マッサージのやり方

【耳下腺】

耳の前辺りを後ろから前へ軽くマッサージします。約10回×2回/日

【顎下腺】

下あごの骨の直ぐ内側を親指で軽く押します。五ヶ所×10回×2回/日

【舌下腺】

下顎の先端の内側を親指で軽く押します。10回×2回/日

あいうべ体操

あいうべ体操
あいうべ体操

あいうべ体操とは

「あいうべ体操」は、口呼吸を鼻呼吸に改善していく事を目的に考案された口の体操のことですが、口の周りの筋肉をしっかり動かすことや、ベロを動かすことで、食事をする為の筋肉のトレーニングに大変有効です。

即効性はありませんが、長期間トレーニングすることで唾液分泌促進効果が期待出来ます。

還元型コエンザイムQ10

還元型コエンザイムQ10
還元型コエンザイムQ10

唾液分泌を促進するサプリメント

還元型コエンザイムQ10は、抗酸化作用とATP産生作用を有し、唾液分泌障害を改善する効果があります。

コエンザイムQ10には還元型と酸化型がありますが、還元型がより効果的です。

amazonで購入
還元型コエンザイムQ10

楽天で購入
還元型コエンザイムQ10

酸化ストレスによる唾液分泌減少に有効

ドライマウスの患者の酸化ストレスが極めて高いことがわかっています。

酸化ストレスにより老化すると考えられていますが、唾液腺も酸化ストレスによって錆びてしまって唾液分泌機能が低下したものと考えられます。

酸化ストレスの原因として排気ガス粒子、酒、大気汚染、紫外線、ストレス、タバコ、食品添加物残留農薬などが考えられます。

こういった酸化ストレスが体を錆びさせる活性酸素・フリーラジカルを大量に発生させます。

問診票でチェックしてみましょう

お口の症状、目の症状、関節の症状、最近の生活など、ドライマウス(口腔乾燥症)の診断に必要な項目を問診票でチェックしてみましょう。

当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しております。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、ドライマウスの治療をご希望の方は、ふかさわ歯科クリニック篠崎の歯科口腔外科までお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!