初期舌癌と口内炎の違い

  • 口内炎と初期舌癌の見た目や見分け方を解説。
  • 舌の側面に潰瘍や赤、白、赤と白の混在するできものが現れたら要注意。
  • 舌癌の初期症状には痛みはほぼ無く、進行スピードが極めて早いのが特徴。

初期舌癌と口内炎の見分け方

 舌ガンは気づきにくい病気?

半年前から口内炎の症状があるのに突然ステージ4を宣告された芸能人の堀ちえみさん。リンパ節郭清術と舌の60%を切除する11時間にわたる手術。舌ガンは気づきにくい病気なのでしょうか?

 舌がんの検査は口腔外科?

舌の側面がヒリヒリして少し赤くなっていますが、しこりでは有りません。舌がんの検査は特別に口腔外科などで受けないと発見できないものでしょうか?

有名人が口腔癌を告白し、テレビで放送されると心配になりますよね。口腔癌の進行スピードは極めて早く末期癌となりやすく、広範囲に摘出手術が必要となり嚥下や発音などに機能障害が起こり易い特徴があります。

放射線を使うと唾液腺に障害が起こりやすく、唾液の分泌低下を起こし、生活の質が低下します。

ここでは、口腔癌の中でも最も頻度の高い舌癌、歯肉癌の特徴や初期舌癌と口内炎との症状や見た目の違いについて解説します。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎
アフタ性口内炎

口内炎の特徴

写真は、舌に出来た口内炎です。一般に口内炎と言えば、写真の様なアフタ性口内炎を指すことが多いです。

アフタ性口内炎は直径2~10mmの白っぽい楕円形の潰瘍です。周囲が赤くなるのが特徴です。

口内炎は、アフタ性口内炎以外に潰瘍性口内炎、壊疽性口内炎、カタル性口内炎の4つに大別されます。

口内炎の見た目

頬粘膜にできた口内炎

頬粘膜にできた口内炎


最後臼歯奥の頬粘膜にできた長径5mmの楕円形の口内炎です。

かさぶた状の白い潰瘍を作り、周りは発赤しています。

下顎の歯茎にできた口内炎

下顎の歯茎にできた口内炎


下顎2番相当部の歯茎にできた長径4mmの楕円形の口内炎です 。

境界部分が赤くなっているのが明瞭にわかります。

下顎の可動粘膜部分にできた口内炎

下顎の可動粘膜部分にできた口内炎


下顎の可動粘膜部分にできた長径3mmの楕円形の口内炎です 。周囲の発赤はほとんど見られません。

上顎口蓋部にできた口内炎

上顎口蓋部にできた口内炎


上顎口蓋部にできた長径5mmの楕円形の口内炎です。境界部がわずかに赤くなっているのが認められます。

初期舌癌が疑われる粘膜病変の見た目

舌癌を見た目や触診だけで鑑別診断することはできません。たとえ大学病院の口腔外科専門医であってもです。

確定診断のためには組織を一部取り顕微鏡で細胞の変化を観察する生検が必要です。下記写真は舌癌が疑われる粘膜病変です。

舌の裏に出来たびらん状のできもの

舌の裏に出来たびらん状のできもの


火傷したようにも見えます。もし接触痛がないのであれば口内炎ではありません。

びらん状の出来物の周りを指で触って、しこりがあるようなら歯医者さんをすぐに受診する必要があります。

舌の側面のびらん状の粘膜病変

舌の側面のびらん状の粘膜病変


舌の側面にできた直径2mm程のびらん状の粘膜病変です。

見た目は口内炎のようにも見えますが、境界の赤変は認められません。このような変化でも舌癌の可能性は否定できません。

舌の側面に出来た3cm~4cmの潰瘍

舌の側面に出来た3cm~4cmの潰瘍


赤色と白色の混在が認められ、部分的に陥没している所が認められる。

潰瘍の周りを指で触診し、しこりがあるようなら舌癌の可能性が高まります。

舌の側面に出来たできもの

舌の側面に出来たできもの


舌の側面にできたできもので、全体が白っぽく変化し、部分的に赤く陥没した場所も認められます。

白い部分を擦っても取れない、 触っても痛くない、 周りにしこりがあるなどの症状があれば舌癌の可能性があります。

初期舌癌と口内炎の見た目と症状の違い

口内炎と初期舌癌の比較一覧

口内炎初期舌癌
痛み接触痛があり再発を繰り返します。初期舌癌では痛みはほとんど無く、舌を動かした時の違和感程度。
治癒期間1~2週間程度で自然治癒。歯科医院で処方するオルテクサー口腔用軟膏5g塗布で1週間以内で治癒。自然治癒しない。ケナログ軟膏をつけても治癒しない。
しこり小さなしこりが出来ることがありますが、口内炎の治癒とともに消失します。癌の周囲にしこり(硬結)が出来て堤防状に隆起することがあります。舌にしこりを感じることがありますが、自然治癒しません。
見た目直径2~10mm 程度の白っぽい潰瘍を作り周囲が赤い。赤色、白色、赤と白の混在は要注意。
好発部位舌に出来る場合、好発部位は特定しません。舌の側面に出来ることが殆どです。

初期の舌癌画像一覧

舌癌は、舌の側面に出来ることが最も多く、次いで舌の裏側です。下記写真の舌癌は、全部がほぼステージ1の状態ですが、舌癌の進行スピードは極めて早く、約1ヶ月でステージ2となってしまいます。

「様子を見ましょう」は絶対NGです。できる限り早く歯科を受診して下さい。東京歯科大学の写真を転載しています。

初期舌癌-潰瘍型

初期舌癌-潰瘍型


舌の側面に出来た潰瘍型のステージ1の舌癌です。白と赤の混在が認められ部分的に陥没している箇所があります。

舌癌の周囲にしこり(硬結)が出来て堤防状に僅かに隆起しています。

初期舌癌-白板型

初期舌癌-白板型


舌の側面に出来た白板型のステージ1の舌癌です。舌粘膜の見た目は白っぽく変化し白板症との鑑別が必要です。

初期舌癌-肉芽型

初期舌癌-肉芽型


舌粘膜が盛り上がって粒状の肉塊を形成しています。見た目は白と赤の混在です。

初期舌癌-びらん型

初期舌癌-びらん型


舌粘膜の表皮が一部欠損し、下部組織が露出してただれている状態です。見た目は口内炎の様にも見えますがステージ1の舌癌です。

口腔癌予防は1ヶ月に一度のセルフチェック

舌癌のセルフチェック

鏡で舌癌のセルフチェック

鏡で舌癌のセルフチェック


歯磨きの時に1ヶ月に一度でいいので舌全体の見た目を鏡でチェックしてみて下さい。

セルフチェックのやり方は明るいところで鏡を見ながら舌を目一杯突き出します。

特に舌の側面に「赤いもの」「白いもの」「潰瘍状のもの」「白と赤の混在」「口内炎の様なもの」が出来ているかチェックします。

2週間経っても治らない場合には直ぐに歯医者を受診して下さい。

指でつまんで「しこり」のチェック

指でつまんで「しこり」のチェック


舌の側面を中心に指で摘むようにして「しこり」がないかのチェックも行って下さい。

舌癌は舌の中にできている場合があります。つまり、表面には全く変化がなくても「しこり」がある場合には歯科の受診を行ってください。

歯肉癌のセルフチェック

歯肉癌のセルフチェック
歯肉癌のセルフチェック

歯茎の腫れをチェック

イーの形に口を開き、歯茎が腫れていないかチェックして下さい。歯周病であれば丁寧に歯磨きすれば1週間~10日以内に腫れは取れてきます。

歯肉癌と歯周病による腫れの見た目は大変似ていることがあります。 1週間以上腫れが引かない時には直ちに歯医者を受診して下さい。

ふかさわ歯科クリニック篠崎には江戸川区歯科医師会口腔がん検診認定医が在籍しており、口腔がん検診を実施しています。 また、虫歯や歯周病のメンテナンスで来られる患者様には口腔癌検診も合わせ行っております。舌癌や歯肉癌など口腔癌を早期発見するためにご活用ください。江戸川区篠崎周辺で、口腔がん検診をご希望の方は当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】舌癌や歯肉癌の初期症状を口内炎などと比較

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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