誤嚥性肺炎と歯周病の関係とは

  • 誤嚥性肺炎は、口腔機能の低下により誤って食物が肺に入ってしまう疾患です。
  • 食べ物と一緒に歯周病菌などの口腔内細菌が肺に感染し炎症を起こします。
  • 誤嚥性肺炎の症状には、発熱、呼吸困難、咳、胸痛、喀痰の増加、全身の倦怠感などがあり、他の肺炎と同様に現れます。

誤嚥性肺炎の原因菌と歯周病菌の関係性とは?

誤嚥性肺炎の原因菌

歯周病菌

  • P.g菌-Porphyromonas gingivalis (ポルフィロモナス・ジンジバリス)
  • F.n菌-Fusobacterium nucleatum (フソバクテリウム・ヌクレアタム)
  • E.c菌-Eikenella corrodens (エイケネラ・コローデンス)
  • Capnocytophaga属 (カプノサイトファーガ属)

※ 歯周病を発症する病原菌はこれ以外にも数多くあります。歯周病菌の同定をするには細菌の遺伝子検査・リアルタイムPCR検査が必要です。

口腔常在菌

  • Streptococcus milleriなどのビリダンス連鎖球菌
  • Bacteroides oralisなどのバクテロイデス属
  • Peptostreptococcus属 (ペプトストレプトコッカス属)
  • Moraxella catarrhalis (モラクセラ・カタラーリス)
  • Actinomyces israelii (アクチノマイセス・イスラエリィ)

その他の原因菌(院内感染含む)

  • 黄色ブドウ球菌
  • 大腸菌などの腸内細菌
  • 緑膿菌
誤嚥性肺炎の原因菌
誤嚥性肺炎の原因菌

歯周病の方は

歯周病があると歯肉から出血や膿が出るため、口の中の様々な細菌が増殖しやすい環境となります。

「むせる」という喉の反射で食べ物が肺に入るのを防いでいますが、高齢者や要介護者などの場合「むせる」という喉の反射が起こらず、周囲の人が気付かないまま誤嚥していることがあります。

誤嚥することを前提として口腔内の細菌を出来うる限り減らす為の口腔ケアが重要となります。

誤嚥性肺炎を起こしやすい人は?

誤嚥性肺炎を起こしやすい人は?
  • 高齢者
  • 脳卒中を起こした方(寝ている間に少ずつ歯周病菌の入った唾液が肺に流れ込み、肺炎を引き起こします。)
  • 認知症の方
  • 要介護者
  • 手術後(体の抵抗力が下がっているため)

誤嚥性肺炎の予防対策

1

口腔清掃

歯ブラシがうまく使えない方は、電動歯ブラシを使うと効率よく歯垢や舌苔(舌の汚れ)を清掃することができます。

2

抗菌性洗口剤でうがい

当院ではポイックウォーターを用いてうがいをすることを推奨しています。

3

ベッドの角度

食事中は30度~60度ベッドを起こす。頭の後ろに枕を入れて顎を引かせると誤嚥しにくくなります。

椅子に座った状態の食事でも顎を引くことによって誤嚥しにくくなります。

4

食事時間と食事内容

食事の時間は30分ぐらいが適当です。食事内容は液体状のものや細かい刻み食よりも、少し粘り気のあるゼリー状やペースト状のものが誤嚥しにくい。

5

食事の順番

最も誤嚥が起こりやすいのは、食事の準備運動が出来ていない「食べ始め」と疲れが出てくる「食べ終わり」です。

食べ初めには、ゼラチンゼリーなど飲み込みやすい食べ物から始め、食べることに馴れたら普通の食べ物にします。食事の途中、飲み込みが難しい場合には、ゼラチンゼリーと交互に食べてもらう。食べ終わりには飲み込みやすく残留しにくいゼラチンゼリーなので締めくくる。

6

舌のトレーニング

誤嚥性肺炎を予防し改善するには舌の力を増すトレーニングが有効です。また、それ以外にもオーラルフレイル状態を脱するための訓練方法があります。

誤嚥性肺炎の治療

肺炎の治療は、抗生物質での治療となりますが、高齢者や要介護者の方は抵抗力が弱くなっているので、肺炎が長引きます。抗生物質の利かない耐性菌ができてしまったりして、命にかかわることもあります。

摂食嚥下障害

摂食嚥下障害の症状

摂食嚥下障害の症状

先行期(認知期)

食べ物を認知して口に取り込む時期。

摂食嚥下障害の症状

食べ物を食べてくれない拒食や食べ物を食べるスピードが速い「詰め込み食べ」。

詰め込み食べの症状として、一口分の量が多く、まだ噛み終わっていないのに食べ物を再び口に持っていき、飲み込めなくなる。

STEP
1

準備期(咀嚼期)

咀嚼して唾液と混ぜて食塊を作る時期。

摂食嚥下障害の症状

奥歯で食べ物を噛み潰すことが出来ずに食塊形成不良のまま丸飲みしてしまう。

STEP
2

口腔期

口腔から咽頭へ食塊を送る時期。

摂食嚥下障害の症状

食物を舌で喉の奥の方に運ぶことが出来ずに口腔内(口蓋や舌根付近)に残ってしまう。

STEP
3

咽頭期

嚥下反射で咽頭から食道へ食塊を送る時期。

摂食嚥下障害の症状

誤嚥や喉に食べ物が残ってしまう咽頭残留や窒息など。

声帯の上に食物や唾液が侵入することを咽頭侵入といます。そして声門よりも下に入ることを誤嚥といます。

誤嚥しても咳反射が起こらないものを不顕性誤嚥と言います。

STEP
4

食道期

食道の蠕動運動で食道から胃まで食塊を送る時期。

摂食嚥下障害の症状

一度飲み込んだ食物を吐き出してしまう嘔吐など。

STEP
5

肺炎の年齢別死亡率と誤嚥割合

寺本 信嗣 2001年 東京医科大学八王子医療センター

肺炎で死亡する人は主に70歳以上

クラブで黄色くなっている部分が70歳以上の高齢者です。肺炎で死亡する人の90%以上を65歳以上の高齢者が占めています。

一方、60歳代前半までは肺炎で死亡する人は殆どいないことがわかります。

肺炎患者の中で誤嚥性肺炎の割合

肺炎で入院する患者さんの中で、40歳代までは誤嚥が認められた人はいませんが、50歳代から徐々に増加し、60歳代で半数以上に誤嚥が認められています。

90歳を超えると90%の患者さんに誤嚥が認められています。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、患者様の大切な歯を1本でも延命するため、軽度歯周病から重度歯周病に至るまで様々な対策を行い、歯周病予防をはじめ、早期発見・早期治療で症状の改善・維持を行い、抜歯回避に努めております。

江戸川区篠崎で誤嚥性肺炎になっていて歯周病予防・歯周病治療をご希望の方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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