オーラルフレイルとは

  • フレイル状態の高齢者は要介護状態へ進む負の連鎖を断ち切る事が重要です。
  • 口の機能が低下する病気をオーラルフレイルと言います。
  • 「ペコぱんだ」「パタカラ」など舌の体操やトレーニングでオーラルフレイル(口腔機能低下症)を予防し改善することで全身のフレイルの改善にもつながります。

オーラルフレイルをそのまま放置すると、低栄養や全身の虚弱などを引き起こし、寝たきりの要介護状態になってしまう怖いものなのです。

ここでは、オーラルフレイル症状のチェックの仕方、予防や改善するための舌や唇の体操やトレーニング方法などについて解説します。

 78歳の母ですが食べ物が歯と頬の間に挟まると言うのです。

歯が悪い訳ではないので歯科で改善することはなく、老化による咀嚼力や嚥下力の低下と諦めていますが、白いご飯や肉などは食べずにやわらかいパンばかりを好んで食べるようになり心配しています。何か改善方法はないでしょうか?

 80代の父ですが、最近食事の量がめっきり減っています。

聞くと余り食事が美味しくないと言っています。何が原因でしょうか?

オーラルフレイル(口腔機能低下症)

オーラルフレイルの定義

オーラルフレイル
オーラルフレイル

口腔機能が低下した状態

滑舌、嚥下機能、口腔乾燥、咀嚼機能などの口腔機能低下症の症状が見られた状態を指します。

老化に伴う様々な口腔の状態の変化に、口腔健康への関心の低下や心身機能の予備能力の低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、更にはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程をいます。柏スタディーより引用

オーラルフレイルは国民の啓発に用いる用語(キャッチフレーズ)である一方、口腔機能低下症は検査結果に基づく疾患名です。

オーラルフレイルのリスク

  • 身体的フレイル:2.4倍
  • サルコペニヤ:2.1倍
  • 要介護認定:2.4倍
  • 総死亡リスク:2.1倍

チェックリスト

□ 滑舌低下思い通りにしゃべることが困難になった。
□ 嚥下機能の低下物を飲み込む嚥下運動がうまくいかず「むせる」ようになった。食べたものが気管を通して肺に入ってしまい誤嚥性肺炎を起こすようになった。

食事を喉に詰まらせてしまうことがよくある。

食事量が減った気がする。
□ 口腔の乾燥唾液分泌の減少により口腔乾燥症状が出て食事中に水やお茶を飲みながら流し込むようにしないと食事が出来なくなった。
□ 咀嚼機能の低下歯や入れ歯の調子は悪くないのに噛むのが困難になった。

診断基準

7項目の内3項目以上が該当した場合、オーラルフレイルと診断。

  • 口腔衛生状態不良
  • 口腔乾燥
  • 咬合力低下
  • 舌口唇運動機能低下
  • 低舌圧
  • 咀嚼機能低下
  • 嚥下機能低下

オーラルフレイルの人の食事

食事が美味しくない
食事が美味しくない

食事が美味しくない

オーラルフレイルの人は食事を「とてもおいしい,おいしい」「楽しい」と感じる人が少なく、食事量を「多い,やや多い」「ふつう」と感じる人が多いことが統計的に分かっています。

これは、口腔機能の低下が原因です。要介護状態に至る前にオーラルフレイル予防グッツなどを使い、口腔機能の改善に努めることが求められます。

普段の食事で噛み切れる硬さの食材の品目により咀嚼能力を判定し、オーラルフレイルの程度を推測します。

摂食嚥下障害の基礎疾患

Disease

 脳血管障害

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など。

Disease

 神経変性疾患

筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症など。

Disease

  認知症

脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など。

オーラルフレイルで窒息事故

Food

 原因食品

圧倒的に餅が多いですが、普段食べているパン・ご飯・おにぎり・魚介類・肉類・果物類・飴・団子類・ミニカップゼリー・こんにゃくゼリーなどでも窒息事故が発生しています。

High risk

 窒息リスクの高い人

  • 認知機能の低下がある人。
  • 奥歯が無くても入れ歯を使用せず、臼歯部で噛めない人。※ 義歯を使用すると窒息リスクが低下します。
  • 自食している人。

舌の運動機能とオーラルフレイルは密接な関係があります。『食べること』は、舌、唇、頬などの筋肉を複雑に働かせることが必要です。 中でも舌は、重要な働きを持っています。そこで舌の運動機能を測定することでオーラルフレイルの診断が出来ます。

舌圧測定器

舌圧測定器
舌圧測定器

舌の運動機能レベルを測定

舌圧測定器は舌の運動機能を最大舌圧として測定する機器です。

口腔機能低下症の診断基準として30kPaを下回ると咽頭部に食物留渣が起こりやすくなり、20kPa以下では誤嚥を生じやすくなります。

舌圧は60歳を超えた辺りから減少し、80歳代では25kPa前後となります。

舌は食べ物を口の中で受け止めたり、喉の奥に送り込んだり様々な働きをします。そういった働きには舌の力(舌圧)が必要です。

オーラルディアドコキネシス

健康君ハンディ
健康君ハンディ

「パ」「タ」「カ」を測定

健康君ハンディの開始スイッチを押すとブザー音とともに測定を開始して「パ・タ・カ」発音の回数を自動的にカウントします。

パパパパ・・・、タタタタ・・・、カカカカ・・・とそれぞれ続けて5秒間できるだけ早く発音します。1秒間あたりの数を図り、6.0以上なら問題ありません。6.0未満でも、もともと滑舌の悪い場合なのは、問題なしとします。

「パ」「タ」「カ」を測る理由

「パ」

唇をしっかり閉じることは咀嚼・食べる為に重要です。同様に唇をしっかり閉じることで発音される「パ」の発声によりその機能を評価します。

「タ」

上手に飲み込む為には、舌の前方の動きが重要です。舌の前方が口蓋に触れることで発音される「タ」の発声によりその機能を評価します。

「カ」

飲み込む際には、舌の奥の部分の機能が重要です。舌の奥の方が軟口蓋に触れることで発音される「カ」の発声によりその機能を評価します。

食べる事は次の三段階で行われます。

  • ステップ 捕食
  • ステップ 咀嚼
  • ステップ 嚥下

オーラルフレイルの進行とともに、これらの機能が低下し、食物を正しく飲み込めず誤嚥性肺炎や窒息事故を起こします。そこで、舌や唇の筋肉の運動や体操を行うと嚥下機能、咀嚼機能を向上させることが出来ます。

ペコぱんだ

ペコぱんだ
ペコぱんだ

舌のトレーニング

左からSS(ブルーぱんだ)=5kPa、S(ピンクぱんだ)=10kPa、MS(ムラサキぱんだ)=15kPa、M(グリーンぱんだ)=20kPa、H(イエローぱんだ)=30kPa。やわらかめから初めて筋力アップを目指しましょう。

通常はS(ピンクぱんだ)から初めてH(イエローぱんだ)まで使えるよう舌のトレーニングをしましょう。

S(ピンクぱんだ)が、最初からは難しい方には SS(ブルーぱんだ)から始めます。

食べ物が口腔内に残る方に

口腔から咽頭へ食塊を送る動作は、舌の力が弱くなると適切に行えません。そのため、口蓋部や舌根部に食べ物が残ってしまいます。

機能は多少落ちますがスプーンで代用出来ます。

ペコぱんだの使い方

ペコぱんだの使い方
ペコぱんだの使い方

構成

トレーニング部・位置決め部・持ち手部。

くわえ方

図の様な向きでくわえます。

使い方

  • ペコぱんだのトレーニング部を舌の上に乗せて位置決め部を歯でくわえます。
  • 舌でトレーニング部を繰り返し押し潰します。

1日3回、週3回以上がお薦め

目標

舌の筋力アップ
  • ペコぱんだの固さの目安:頑張って押しつぶせる硬さ。
  • しっかり押しつぶしを5回×3セット×3回/1日。
舌の筋力アップ
舌の筋力アップ

目標

舌の持久力を付ける

  • ペコぱんだの固さの目安:簡単に押しつぶせる硬さ。
  • ゆっくり押しつぶしを10回×3セット×3回/1日。
舌の持久力を付ける
舌の持久力を付ける

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ペコぱんだ

パタカラ

パタカラ
パタカラ

口輪筋のトレーニング

パタカラを唇と歯列の間に装着し口輪筋を使って唇を閉じる動作をします。これを繰り返すことで唇周辺の表情筋が鍛えられ口唇閉鎖の力がアップします。

表情筋は、副交感神経と関係があり、刺激を与えることで自律神経系を刺激して認知症の予防・改善や、各種身体機能の改善、寝たきりの予防などが期待出来ます。

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パタカラ

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パタカラ

あいうべ体操

あいうべ体操
あいうべ体操

舌機能・嚥下機能の改善と強化

「あいうべ体操」は、口呼吸を鼻呼吸に改善していく事を目的に考案された口の体操のことですが、口の周りの筋肉をしっかり動かすことや、舌を動かすことで、食事をする為の筋肉の体操に大変有効です。

考案者は、福岡のみらいクリニック院長今井一彰先生です。

①~④を1日10セットX3回を目安に毎日続ける。

  • 【あ】「あー」と口を大きく開く。
  • 【い】「いー」と口を大きく横に広げる。(口角を上方、後にしっかり引く)
  • 【う】「うー」と口を強く前に突き出す。(口をすぼめ、口の周りの筋肉をギュッと力を入れる。)
  • 【べ】「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす。

あいうべ体操の動画

喉のアイスマッサージ

喉のアイスマッサージ
喉のアイスマッサージ

経鼻経管栄養や胃瘻の方向け訓練

口から食べられないために経鼻経管栄養を行っている人や胃瘻の方に一番最初にやる訓練です。

冷たい刺激、触る刺激で嚥下反射を誘発するトレーニング方法です。

やり方

氷水に浸した大きめの綿棒で喉の奥の方(軟口蓋や舌の付け根)を刺激します。綿棒を抜いてから患者さんに飲み込みを促します。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、歯科治療は保険診療を主体に診療を行っております。江戸川区篠崎にて、オーラルフレイルの治療をご検討の方へは当院までお気軽にご相談下さい。
保険証の期限切れにご注意ください。保険証の確認が取れない場合は保険診療として取り扱うことができません。

また、マイナンバーカードによるマイナ保険証での受診にも対応しています。

【動画】なかなか取れない舌苔の完全除去方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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