歯周病で失われた歯槽骨や歯周組織は、症例によっては再生を目指せる場合があります。その代表的な治療法がGTR法(歯周組織再生療法)です。この記事では、GTR法の仕組みや適応症、治療の流れ、他の再生療法との違い、費用や注意点についてわかりやすく解説します。

GTR法(歯周組織再生療法)とは?

GTR法(Guided Tissue Regeneration)は、歯周病によって失われた歯槽骨・歯根膜・セメント質の再生を目的とした高度な外科的治療です。

まずフラップ手術(歯肉剥離掻把術)により歯肉を切開し、感染した歯石や不良肉芽組織を徹底除去。
その後、骨欠損部に**吸収性メンブレン(人工膜)**を設置し、再生環境を整えます。

この「膜で組織の再生を誘導する」治療がGTR法です。

GTR法(歯周組織再生療法)
GTR法(歯周組織再生療法)

GTR法の適応症

GTR法はすべての症例に適応できるわけではなく、症例選択が非常に重要です。

適応となるケース

・🦴垂直性骨欠損(歯根に沿って深く骨が失われた状態)
・🦷軽度の分岐部病変(Ⅰ度)

GTR法が適応となる垂直性骨欠損の一例
GTR法が適応となる垂直性骨欠損の一例

下顎5番近心部に深い**垂直性骨吸収(赤矢印)**が確認されます。このように、歯根の側面に沿って縦方向に骨が失われる「垂直性骨欠損」は、GTR法(歯周組織再生療法)の適応になりやすい代表的ケースです。感染を除去し膜でスペースを確保することで、歯周組織の再生が期待できます。

適応外となるケース

・水平性骨吸収(全体的に骨が減少)
・分岐部Ⅲ度病変(貫通性骨欠損)

特にⅢ度分岐部では、ヘミセクションや抜歯も視野に入れた判断が必要になります。

分岐部Ⅲ度病変:GTR法が適応できない進行した骨欠損
分岐部Ⅲ度病変:GTR法が適応できない進行した骨欠損

赤矢印が示す大臼歯の分岐部には、根の間を貫通する高度な骨吸収が認められ、リンデの分類でⅢ度に該当します。
GTR法(歯周組織再生療法)は、分岐部病変の適応がⅠ度までとされており、Ⅲ度のように進行したケースでは効果が期待できないため適用外となります。

なぜ歯周組織は再生するのか?

通常、歯周治療後は上皮が先に増殖し、骨の再生スペースを占拠してしまいます。

そこでGTR法では
メンブレンを設置 → 上皮の侵入を遮断
骨・歯根膜の再生スペースを確保

これにより「新付着(結合性付着)」が成立します。

再生スピードの目安
約1ヶ月で1mm程度(個人差あり)

GTR法のリスクと注意点

GTR法は術者依存性が高い高度治療です。

主なリスク
・膜の露出 → 感染リスク増加
・適合不良 → 再生不良
・術後管理不良 → 成果低下

そのため、歯周外科に熟練した歯科医師による施術が不可欠です。

GTR法の基本ステップ

GTR法の基本ステップ
GTR法の基本ステップ

1️⃣ メンブレンの試適・トリミング
2️⃣ フラップ手術+感染組織除去
3️⃣ メンブレン設置
4️⃣ 縫合 → 約1週間後に抜糸

膜は吸収性のため再手術不要です。

膜の種類と特徴

吸収性膜
吸収性膜
吸収性膜(メンブレン)のトリミング
吸収性膜のトリミング

吸収性膜

1回の手術で完結
再生状態を直接確認できない

非吸収性膜

再生状態を確認可能
2回手術が必要

歯周再生療法には以下の選択肢があります。

・GTR法(膜による再生誘導)
リグロス(bFGF製剤)
エムドゲイン(エナメルマトリックス)

臨床成績は大きく変わらないとされますが、

GTR法:技術依存性が高い
リグロス・エムドゲイン:術式がシンプルで安定

併用療法でさらに効果を高める

GTR法は単独だけでなく併用も有効

・リグロス+GTR → 薬剤の流出防止
・骨補填材(Bio-Ossなど)併用 → スペース維持強化

ただし併用は自費診療となります。

費用の目安

・GTR法:1歯 52,000円
・GTR+リグロス:1歯 82,000円

※フラップ手術・レントゲン・投薬含む

GTR法は、適切な症例であれば
**「抜歯しかない」と言われた歯を残せる可能性がある治療**です。

ただし重要なのは
✔ 適応症の見極め
✔ 術者の技術
✔ 術後のメインテナンス

これらが揃って初めて、長期的な成功につながります。

関連記事

歯周病治療
歯周病
歯周病
リグロスとは?保険で受けられる歯周組織再生療法|効果・適応症・費用
リグロスとは?保険で受けられる歯周組織再生療法|効果・適応症・費用
歯周病
歯周ポケットが深いと言われた方へ|何mmから危険?原因・治療・改善方法
歯周ポケットが深いと言われた方へ|何mmから危険?原因・治療・改善方法
歯科口腔外科
CGF(濃縮成長因子)とは?自分の血液を使った再生医療|インプラント・歯周病・抜歯後の治癒をサポート
CGF(濃縮成長因子)とは?自分の血液を使った再生医療|インプラント・歯周病・抜歯後の治癒をサポート
歯周病
歯周外科手術とは?歯周病が進行したときの治療法・痛み・費用・術後の流れ
歯周外科手術とは?歯周病が進行したときの治療法・痛み・費用・術後の流れ
歯周病
根分岐部病変とは?原因・症状・治療法・抜歯を避ける方法
根分岐部病変とは?奥歯の歯周病が進行すると、歯を失うリスクが高まる

歯周病で骨が溶けていても、すべてのケースで抜歯が必要になるわけではありません。骨の減り方や歯周組織の状態によっては、GTR法をはじめとした歯周組織再生療法が適応となる場合があります。

当院では精密検査を行い、お口の状態に合わせた最適な治療方法をご提案しています。「できるだけ歯を残したい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!