ジルコニアクラウンとは

  • グラデーションタイプのジルコニアディスクの開発でフルジルコニアクラウンのデメリットである低い審美性が格段に向上し、メリットである強度に透明性が加わり実用的になっています。
  • しかし、一歯だけの治療の場合、ジルコニア表面にセラミックを焼き付けるジルコニアセラミッククラウンの方が審美性に優れるすることもあります。

ジルコニアクラウンによる審美修復治療

ジルコニアは硬度が固く調整が難しい被せ物です。したがって嚙み合わせの調整が難しいという難点があります。ふかさわ歯科クリニック篠崎では、この問題を技術力で克服しています。しっかりと治療すれば口腔内に負担をかけることはありません。現在、銀歯の被せ物でお悩みの方は方は、お気軽にご相談下さい。

ジルコニアクラウン

ジルコニアとは

1892年にジルコニウム鉱物(Zr)が発見されます。金属であるジルコニウムの酸化物の粉末( Z ro2/二酸化ジルコニウム) を焼き固めたものがジルコニアです。

2023年現在、日本において約200万本以上のジルコニアが患者さんの口の中に入れられていると推定され、今後もさらに需要が伸びる予想です。

ジルコニアの融点は2,715°Cと極めて高く、スペースシャトルの外壁断熱保護材として使用されたり、対摩耗性が高いためF1カーのブレーキディスクなどに使用されています。これは高温高圧下のもとでの耐久性に優れていることの証です。

人工ダイヤモンドとして装飾品としての価値もあります。

ジルコニアとセラミックの違い

酸化物の焼結体のことをセラミックと言います。ジルコニアは金属酸化物の焼結体であることから、金属であるということも出来ます。一方で、セラミックでもあると言えます。

そのためジルコニアのことをジルコニアセラミックと呼ぶ場合もあります。

※ 用語で混乱
人工歯の内側をジルコニアで作り、外側に陶材(セラミック)を焼き付けて作る歯もジルコニアセラミックと呼ぶ場合があります。

ジルコニアクラウンとは

前歯6本がジルコニアクラウン
前歯6本がジルコニアクラウン

グラデーションタイプのジルコニアディスクが開発されたことでジルコニア単体(フルジルコニアクラウン)で前歯の審美的作成が可能になりました。

写真の様に前歯6本を同時に作成する場合にはフルジルコニアクラウンでも審美的に作成出来ます。

一方、1本だけの場合で、隣の歯との色合わせがフルジルコニアクラウンでは困難な症例では表面の見える部分のみに陶材(セラミック)を焼き付けるジルコニアセラミックで作成することがあります。

ジルコニアクラウンの種類

種類

 フルジルコニアクラウン

発売当初のジルコニアディスクは、透明性がなく、且つ真珠(オパール)の様にピカピカ光るため、見るからに人工物に見えてしまい審美的に満足のゆくものではありませんでした。そのため、ジルコニア単体(フルジルコニア)では審美性の要求度が高い前歯には使いづらく、目立たない奥歯のみに適応していました。

その後、技術革新が進み、色が何層にも重ねられたグラデーションタイプのジルコニアディスクが発売されると透明性も増し、ステイン(色付け)を付与することでほぼ天然歯と見分けが付かないくらい審美性が向上しました。

そのため、現在ではジルコニア単体で作るフルジルコニアクラウンが主流になり、費用も従来よりも安く抑えることが出来るようになりました。

しかし、前歯で1本~2本のみを補綴する場合で、フルジルコニアクラウンでは隣接する天然歯と同じような色にするのが困難な場合には、表面のみをセラミックで作成するジルコニアセラミッククラウンで作成することもあります。

種類

 ジルコニアセラミッククラウン

ジルコニアを前歯に使う場合には噛むところなどベースになる部分はジルコニアで作り、見える表面部分のみにポーセレン(陶材)を焼き付けて作るジルコニアセラミッククラウンが主流になりました。

この方法は、従来からある内側が金属で、外側がセラミック(ポーセレン)のメタルボンドと同じような作り方です。そのため費用が増してしまうばかりが、セラミック部分が欠けてしまう欠点があります。つまり、ジルコニアのメリットである耐摩耗性や強度を十分に生かせないという欠点があります。

ジルコニアクラウンの作り方

ジルコニアディスクをミリングマシンで削り出す

ジルコニアディスクをミリングマシンで削り出す

削った歯の状態を口腔内スキャナーを用いてデジタルデータとしてパソコンに保存するか、アナログではシリコン印象材などを用い印象採得を行い石膏模型を作ります。

これらを技工所に送り、口腔スキャナーのデータはそのまま、石膏模型の場合には、それをデジタル化した後パソコン上でデザインし、ミリングマシン(加工機)でジルコニアディスクから人工歯を削り出します。

削り出されたジルコニアの歯は焼成、仕上げ研磨などの工程を経て歯科医院に届きます。

つまり、技工所においては、完全にデジタルで行う作業となります。

※ ジルコニアリスクから20本ほどの歯を削り出すことが出来ます。

ジルコニアクラウンのメリット

① 強度

ロングスパンのブリッジにも適用可能
ロングスパンのブリッジにも適用可能

ロングスパンのジルコニアブリッジにも適用可能

ジルコニアは強くて硬い特性があり、フルジルコニアクラウンによりロングスパン(長く連続)のジルコニアブリッジにも適用可能となり、審美歯科治療の範囲が拡大しました。

ジルコニアは硬くて強いため、めったに欠けたり割れたりすることがありません。そのため補綴物の寿命が伸びました。

従来は、ロングスパンのブリッジには全て金属を使うか、内側に金属で補強するメタルボンドクランが主流でした。

ヘミデスモゾーム結合

ヘミデスモゾーム結合
ヘミデスモゾーム結合

歯肉とジルコニアクラウンの高い親和性

イラストは、インプラントの上部構造にジルコニアクラウンを使った場合のヘミデスモゾーム結合(緑色の部分)の様子を模式化したものです。

部分安定化ジルコニア

ジルコニアは結晶構造が緊密でチタンと比較しても、細菌やバクテリアなどが繁殖しにくいため、歯肉と接触する部分に使うのは極めて有効です。

天然歯のエナメル質と歯肉との間に存在するへミデスモゾーム結合(上皮付着)がジルコニアと歯肉との間でも起こると考えられています。

ヘミデスモゾーム結合が獲得出来れば歯周ポケットの深部への細菌の侵入を防げる可能性が高まります。そのため、インプラントの上部構造には最適と考えられます。

ジルコニアクラウンが歯肉と接触する部分のみにサンドブラスター処理を行うことで効率よくヘミデスモゾーム結合を誘導出来ると考えられています。

その他のメリット

利点

 金属アレルギー

ジルコニアクラウンやジルコニアインレーは、金属を使わない「メタルフリー素材」なので金属アレルギーの方にも安心して使用出来ます。

利点

 ブラックマージンやメタルタトゥー

金属を内側に使ったメタルボンドの治療では歯茎との境目に黒いライン(ブラックマージン)が出来たり、金属から溶け出すイオンによって差し歯の歯茎が黒くなるメタルタトゥーといった現象が起こることがありますが、ジルコニアではそういった問題は発生しません。

ジルコニアクラウンのデメリット

欠点

脱離し易い

5年脱離率:ジルコニアクラウン4.7%、メタルボンドクラウン0.6%(2017年 学会誌)。

学会発表によると治療から5年間でジルコニアクラウンが取れる割合はかなり高めです。

しかし、歯面及びジルコニア内面に付着した唾液や血液などの接着阻害因子を適切に除去することで接着力はかなり高まります。また、ジルコニア内面のサンドブラスター処理や接着剤の適切な使用により脱離のリスクを低減させることが可能です。

欠点

保険適用外

ジルコニアによる歯科治療は保険適用外なのでやや高価です。

欠点

ジルコニアセラミッククラウンは割れやすい

ジルコニアクラウンの表面にセラミックを焼き付けるジルコニアセラミッククラウンは、セラミック部分が割れやすいのがデメリットです。フルジルコニアクラウンは強度があるので割れにくいメリットを持ちます。

欠点

除去が困難

何らかの原因でジルコニアクラウンを除去する必要がある場合、硬すぎて除去が困難です。通常、専用の除去バーを使い低速で時間をかけて除去します。

ジルコニアが硬くて強い理由

ジルコニアの物性

外力でジルコニア結晶構造が変化

外力でジルコニア結晶構造が変化

ジルコニアクラウンなどの被せ物に噛み合わせの外力が加わってクラックや亀裂が入ると、正方晶が単斜晶と呼ばれる結晶構造に変化します。

その時4%膨張することでクラックや亀裂部分を埋め、ジルコニア本体が破壊しないような機序が発現します。これがジルコニアが強い理由です。

部分安定化ジルコニア

ジルコニアは単斜晶という結晶構想で安定化します。

そこへさらに物性を高めるために3%のY2O3(酸化イットリウム)を配合します。

すると正方晶という結晶構造(部分安定化ジルコニア)に変化して歯科用の材料として使用出来るようになります。

ジルコニアクラウンの曲げ強さ( MPa )

ジルコニアクラウンの曲げ強さ( MPa )
ジルコニアクラウンの曲げ強さ( MPa )

各種素材の曲げ強さの比較

グラフは各種歯科材料(陶材、硬質レジン、ハイブリットレジン、アルミナ、ジルコニア)に折り曲げる力を与えた時、破壊されるまでの強度を比較したものです。

ジルコニアの曲げ強さは1400( MPa )とメタルボンドに使われる陶材(ポーセレン)に比べ圧倒的に高いことがわかります。

ジルコニアクラウンの硬さ( MPa )

ジルコニアクラウンの硬さ( MPa )
ジルコニアクラウンの硬さ( MPa )

各種素材の硬さの比較

グラフは各種歯科材料(硬質レジン、ハイブリットレジン、金パラ、陶材、ジルコニア)に圧縮力を加えた時、破壊されるまでの強度を比較したものです。

ジルコニアの硬さは1200( MPa )で、陶材(ポーセレン)や金属の金パラなどよりも圧倒的に硬いことがわかります。

人工ダイヤモンド・キュービックジルコニア

人工ダイヤモンド・キュービックジルコニア

宝飾品のキュービックジルコニア

ジルコニアにY2O3(酸化イットリウ ム),CaO(酸化カルシウム),MgO(酸化マグネシウム)などの酸化物を添加して固溶させると結晶構造が立方晶に変化して室温でも安定して存在で出来るようになります。これを安定化ジルコニアと言います。

これをキュービックジルコニア(cubic zirconia, CZ)とも呼び,透明で高い屈折率を有しています。ダイヤモンドの様な見た目から人工ダイヤモンドとして用いられることがあります。

ジルコニアクラウンの費用

自費治療

保険適用外です。


治療内容
内訳値段
オールセラミック前歯、奥歯共通(すべてをセラミック作るクラウン)¥132,000
(税抜き ¥120,000)
メタルボンド前歯、奥歯共通(内側は金属で外側がセラミックで作るクラウン)¥115,500
(税抜き ¥105,000)
ジルコニアセラミックジルコニアフレームにセラミックを焼き付けるクラウン¥110,000
(税抜き ¥100,000)
フルジルコニアすべてジルコニアで作るクラウン¥92,400
(税抜き ¥84,000)
ファイバーコア前歯・奥歯共通 グラスファイバーの土台¥20,900
(税抜き ¥19,000)
※ すべてをジルコニアで作るフルジルコニアクラウンは、
ややテカリが強く、審美性に劣ります。

江戸川区篠崎で銀歯の被せ物についてお悩みの方は、ぜひふかさわ歯科クリニック篠崎までご相談下さい。当院では、ジルコニアクラウンだけでなくメタルボンドやオールセラミッククラウンなど様々な治療法をご提案出来ます。費用や患者様の状態に合わせて適切なアドバイスをさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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