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「差し歯の根元が黒くなってきた気がする…」そんなお悩みはありませんか?
それは“ブラックマージン”と呼ばれる現象かもしれません。
メタルボンドや硬質レジン前装冠など、金属を使った差し歯や被せ物の根元が黒ずむ状態を指し、見た目の印象だけでなく、歯茎や補綴物の健康にも関わる重要なサインです。

ブラックマージンは自然には治らず、放置するとさらに目立ってしまう可能性もあります。
しかしご安心ください。近年は金属を使わない補綴治療や歯茎の再生治療により、審美的にも健康的にも改善が可能です。

本記事では、ブラックマージンの原因から治療法、予防のポイントまでを歯科医の視点でわかりやすく解説します。
見た目も健康もあきらめたくない方は、ぜひ最後までご覧ください。

🔍 ブラックマージンの定義と特徴

ブラックマージンとは、差し歯(クラウン)や被せ物の根元が黒ずんで見える現象を指します。とくにメタルボンドクラウンや硬質レジン前装冠など、内側に金属を使用した補綴物で起こりやすく、歯茎が後退したときに金属部分が露出することで目立ちます。

主な原因には、以下のようなものがあります。

  • 💠 金属フレームの透けや露出
  • 🌿 歯茎の退縮(加齢・歯周病)
  • クラウンや接着剤の劣化

こうした現象は見た目の印象を大きく損なうだけでなく、補綴物の寿命や歯茎の健康にも影響を及ぼすため、放置せず適切な対応が求められます。

📷ブラックマージンの画像

メタルボンドの被せ物に出来たブラックマージン
メタルボンドの根元のブラックマージン

この画像は、メタルボンドクラウンのブラックマージンが目立つ症例です。歯茎の後退により金属部分が露出し、境目が黒ずんでいます。また、虫歯の進行や補綴物の劣化も見られ、治療が必要な状態です。

硬質レジン前装冠の根元に出来たブラックマージン
硬質レジン前装冠の根元のブラックマージン

この画像は、硬質レジン前装冠のブラックマージンが発生した症例です。歯茎が後退し、メタルフレームが露出することで、歯と歯茎の境目が黒ずんでいます。

❌ ブラックマージンに関する誤解と真実

ブラックマージンは見た目の問題から誤解されやすい症状ですが、以下の点に注意が必要です。

  • 虫歯と誤解されやすい
     → ブラックマージンは虫歯ではなく、金属や歯茎の変化によって起こります。
  • 自然に治るものではない
     → 放置しても改善せず、むしろ悪化することが多いため、治療が必要です。
  • すべてのクラウンに起きるわけではない
     → 金属を使用していないオールセラミッククラウンやジルコニアクラウンでは起きにくいです。

ブラックマージンは、**単に被せ物が古くなったから起こるわけではありません。**歯や歯茎、補綴物のさまざまな要因が関係しています。以下に代表的な原因を詳しく解説します。

ブラックマージンとメタルタトゥーが同時に発生
📷ブラックマージンとメタルタトゥーが同時に発生

🧲 金属の影響(メタルタトゥーとの関係)

ブラックマージンの大きな原因のひとつが、補綴物に使われている金属の影響です。
とくに**メタルボンドクラウンや金属コア(メタルコア)**を使用している場合、**金属イオンが歯茎に沈着して黒く変色する「メタルタトゥー」**が発生します。

  • 金属の溶出が歯茎に沈着し、黒ずみを引き起こす
  • 歯茎が薄い方は特に目立ちやすい

※この現象は自然には消えず、金属を使わない素材への交換が必要です。

⏳ 経年劣化によるクラウンの変化

補綴物は経年とともに劣化し、ブラックマージンの原因となることがあります。

  • 金属の酸化や腐食により境目が黒ずむ
  • 接着剤(セメント)の溶解で隙間が生じ、汚れがたまりやすくなる
  • 補綴物と歯の適合性がズレてくることで、黒い影が現れることも

📉 歯茎の退縮による影響

年齢とともに歯茎が下がることで、クラウンの根元の金属部分が露出し、ブラックマージンが目立つようになります。

主な要因は以下のとおり:

  • 👴 加齢による自然な退縮
  • 🦷 歯周病の進行
  • 🪥 過度なブラッシング圧
  • 🦷 咬み合わせの負担による歯茎ダメージ

🏗 メタルボンド・硬質レジン前装冠の構造的限界

メタルボンドや硬質レジン前装冠といった金属を含む補綴物では、構造上どうしてもマージン(境目)部分に金属が露出してしまいます。

  • 歯茎が下がるとその金属が見えてしまう
  • 保険適用クラウンほど露出しやすい傾向

この構造的な弱点は、ブラックマージンを避けられない最大の要因でもあります。

🛠️メタルボンドの構造上の問題

メタルボンドの構造上の問題
メタルボンドの構造上の問題

左図の様にメタルボンドクラウンは、金属フレームの上にセラミックを焼き付けた構造のため、マージン(歯と補綴物の境目)に金属が僅かに露出することがあります。特に歯茎の退縮が進行すると、ブラックマージンが目立ちやすくなるのが問題です。

ブラックマージンの対策

この対策として右図の様なポーセレンマージンがあり、マージン部分にもセラミックを焼き付けることで金属の露出を防ぐことができます。ポーセレンマージンを採用することで、ブラックマージンを回避し、より自然な仕上がりになります。ただし、適合精度や強度の管理が必要なため、専門的な技術が求められます。

🛠️硬質レジン前装冠の構造上の問題

保険適用の硬質レジン前装冠は、金属フレームの表面にレジン(樹脂)を盛り付けた補綴物ですが、マージン部(歯と被せ物の境目)に金属が露出するという構造上の問題があります。特に歯茎が後退するとブラックマージンが目立ちやすくなるのが欠点です。

硬質レジン前装冠の構造上の問題
硬質レジン前装冠の構造上の問題
硬質レジン前装冠のブラックマージン
硬質レジン前装冠のブラックマージン

差し歯は、歯茎の中に約2mm深く埋め込むように装着します。しかし、装着から数年が経過すると、歯茎が下がり、差し歯の根元部分の金属がわずかに露出して目立つようになります。これが、**差し歯の付け根が黒く見える「ブラックマージン」**の原因の一つです。

ブラックマージンの対策

この対策として、オールセラミックやジルコニアクラウンへの交換が有効です。長期的なブラックマージンのリスクを回避するためには、メタルを使わない補綴物を選択するのが最適です。

🧱 セラミック治療でも起きるケースとは?

「オールセラミックだから安心」と思われがちですが、中の土台が金属(メタルコア)であれば透けて黒ずむことがあります。また、接着不良により境目が黒ずむことも。

  • メタルコア → セラミック越しに黒く透ける
  • 接着剤の劣化 → 隙間に汚れがたまり変色

ファイバーコアへの変更や、適切な接着方法で回避可能です。

⚠️ 不適合な補綴物がもたらすリスク

被せ物の精度が低いと、境目にすき間が生じやすく、ブラックマージンだけでなく虫歯や歯周病の原因にもなります。

  • 適合不良 → 汚れ・細菌が侵入しやすい
  • クラウンがズレて審美性も機能性も低下

ブラックマージンは自然に治ることはなく、必ず専門的な治療が必要です。症状の原因や歯茎の状態に応じて、治療の内容は異なります。ここでは、代表的な治療ステップや審美歯科での対応方法を詳しく紹介します。

🩺 治療ステップと概要

ブラックマージンを改善するには、以下のステップに沿った治療が行われます。

  1. 歯周病の治療で歯茎を健康な状態に整える
     歯茎が炎症や退縮を起こしている場合、まずはスケーリングや再生療法で歯周病を改善する必要があります。
  2. メタルコア(金属の土台)を除去し、ファイバーコアへ変更
     金属コアがあると黒ずみの原因になります。金属を使わないグラスファイバー製のファイバーコアに交換することで、歯茎への透けや影を防げます。
  3. オールセラミックまたはジルコニアなどの金属フリー補綴物へ交換
     被せ物そのものに金属を使わないことで、ブラックマージンやメタルタトゥーの再発を予防します。

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歯周病の治療

差し歯や被せ物の歯茎が下がる理由として歯周病が挙げられます。まず、歯周病の治療を優先して行い、歯茎が十分引き締まった状態で差し歯の作り替えを行います。

歯周病
歯周病

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メタルコアからファイバーコア

差し歯や被せ物とメタルコア(金属製の土台)を外します。虫歯を除去して新しい差し歯に作り変えます。

メタルコア
メタルコア

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ファイバーコアを装着

メタルコア(金属製の土台)から金属を使わないファイバーコアに変えます。

ファイバーコア
ファイバーコア

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オールセラミッククラウンかジルコニアクラウン

オールセラミッククラウンやジルコニアクラウンなど金属を使わない差し歯や被せ物に変えることでブラックマージンやメタルタトゥーを防ぐことが出来ます。

オールセラミッククラウン
オールセラミッククラウン

🎯 審美歯科での具体的アプローチ

審美歯科では、見た目と機能の両立を目指して、次のような材料・方法が用いられます。

  • オールセラミッククラウン
     透明感が高く、自然な仕上がり。金属を含まないため、ブラックマージンが起きないのが最大のメリットです。
  • ジルコニアクラウン
     強度が高く、奥歯にも適応しやすい素材。白くて硬いセラミックなので、見た目も耐久性も両立できます。
  • 接着材の選定も重要
     古い接着剤が原因で境目が黒ずむことも。最新の接着性レジンを用いて密着性を高めることが大切です。

📷オールセラミックでブラックマージンの治療例

ブラックマージン
ブラックマージン

メタルボンドの被せ物が装着されています。歯茎が下がって黒い歯根が露出して、ブラックマージンが出現しています。同時に歯茎も黒ずむメタルタトゥーが現れています。

また、歯周病で歯茎が腫れて丸くなっています。

前歯3本をオールセラミックで治療
前歯3本をオールセラミックで治療

歯周病の治療を行ない歯茎が引き締まった状態で、3本の前歯をメタルコアからファイバーコアに変え、オールセラミックで治療しました。差し歯や被せ物の根元の黒い部分が消え、歯茎の黒いメタルタトゥーも薄くなってきています。

🌱 歯茎の再生治療(歯肉移植・レーザー)

ブラックマージンが歯茎の退縮によって目立っている場合、クラウンの交換だけでは不十分なこともあります。そのようなケースでは、歯茎自体を治療する必要があります。

  • 歯肉移植術
     患者自身の歯茎を移植し、後退した部分をカバー。自然な歯茎の高さと色を再現できます。
  • レーザー治療
     軽度の黒ずみや歯茎の形を整える処置に有効。痛みや腫れが少ない点がメリットです。

🧬 歯周病治療と併用が必要なケース

ブラックマージンが歯周病と関連して発生している場合は、補綴物の交換だけでは根本治療になりません。

  • スケーリング・ルートプレーニングによる歯石除去
  • **歯周組織再生療法(リグロス等)**の併用
  • 必要に応じて歯周外科治療で歯茎の回復を図る

これらをしっかり行うことで、再発を防ぎ、補綴物の寿命も延ばすことができます。

ブラックマージンの治療は、審美性と機能性の両方を回復するため、自費治療が中心となります。ここでは、治療にかかるおおよその費用を項目別に解説します。

💸 治療別の費用目安と内訳

治療内容税込費用の目安特徴
🦷 オールセラミック約132,000円/1本金属不使用で審美性◎・前歯に最適
🦷 ジルコニアクラウン約110,000円/1本強度と見た目のバランスが良い・奥歯にも適応
🧱 ファイバーコア約20,900円/1本金属を使わず、歯茎の黒ずみを予防
🌱 歯肉移植約50,000〜100,000円/1部位歯茎の高さや色調を自然に回復

※ 上記はあくまで目安であり、症例や医院によって異なります。

⚠️ 保険と自費の違いを理解しよう

ブラックマージンの治療は、審美目的の側面が強いため、保険の適用は非常に限られています。

✅ 保険が適用される可能性のある例

  • 補綴物の不具合で虫歯や歯周病が発生している場合
  • 保険適用範囲のCAD/CAM冠による対応(※部位によって制限あり)

❌ 保険が適用されない主な治療

  • オールセラミックやジルコニアクラウンへの交換
  • ファイバーコアへの変更
  • 歯肉移植やレーザーによる審美治療

ブラックマージンは発生してから治療するよりも、事前に防ぐことが最も効果的です。ここでは、治療時の選択や日々のケア、歯科医院でのメンテナンスを通じた予防法を詳しく紹介します。

🦷 ブラックマージンが起きにくい治療の選び方

補綴物(クラウンや差し歯)を選ぶ段階で、金属を使わない素材を選ぶことでブラックマージンのリスクは大幅に減らせます。

  • オールセラミッククラウン
     金属を一切使用せず、自然な透明感と審美性を実現。歯茎の黒ずみリスクなし。
  • ジルコニアクラウン
     白くて硬いセラミック素材。強度が高く、奥歯にも適応可能。
  • ファイバーコアの使用
     金属コアの代わりに使用するグラスファイバー製の土台。透けやメタルタトゥーを防止します。

🪥 自宅でできるセルフケア

日常的な口腔ケアは、歯茎の退縮や歯周病の予防=ブラックマージン予防につながります。

  • 🪥 柔らかめの歯ブラシ
     歯茎に優しく、退縮を防ぎます。毛先が細いタイプが◎。
  • 🧵 デンタルフロス・歯間ブラシ
     被せ物の境目や歯間部をしっかり清掃。プラークや細菌の除去に有効です。
  • 💧 洗口液(マウスウォッシュ)
     歯周病予防に効果的なクロルヘキシジン入りフッ素配合タイプがおすすめ。
     アルコールフリーなら刺激が少なく、毎日使いやすいです。

🏥 歯科医院での定期メンテナンス

どれだけ丁寧にセルフケアをしていても、自分だけでは完全に予防しきれないのが現実です。定期的なプロのチェックとクリーニングを受けることが、長期的な予防につながります。

  • 📅 3〜6ヶ月に1回の定期検診
     補綴物の状態や歯茎の健康をチェック。早期発見・早期対応がカギ。
  • PMTC(プロフェッショナルクリーニング)/エアフロー
     着色やバイオフィルムを除去し、歯と歯茎を清潔に保ちます。
     とくに補綴物周囲のプラーク除去に効果的です。

ブラックマージンに関しては、多くの患者さまから不安や疑問の声が寄せられます。ここでは、よくある質問とその答えをQ&A形式でご紹介します。

Q1. ブラックマージンは自然に治りますか?

➡️ ❌ 自然には治りません。

ブラックマージンは、金属補綴や歯茎の退縮などによって生じる変化であり、放置しても元に戻ることはありません
むしろ時間の経過とともに、金属の露出が進んだり、黒ずみが広がったりして、見た目の悪化や虫歯・歯周病のリスクが高まることもあります。

🦷 根本的な解決には、補綴物の交換や歯茎の治療が必要です。

Q2. どこで相談すればいいですか?

➡️ 審美歯科や補綴治療を専門にしている歯科医院がおすすめです。

ブラックマージンは、見た目の美しさと機能性のバランスが重要な症状です。以下のポイントをチェックしましょう。

✅ 審美補綴の経験が豊富な歯科医院
✅ オールセラミックやジルコニア治療の症例が多い
✅ 歯肉移植など歯茎の再生治療も対応可能
✅ 治療前に写真や模型でしっかり説明してくれる

💡 Googleマップや医院の公式サイト、SNSなどで症例実績や口コミを参考にするのも効果的です。

Q3. 治療費が心配です…

➡️ まずは無料カウンセリングで相談しましょう。

ブラックマージンの治療は保険適用外になるケースが多く、自費診療となるため、費用に不安を感じる方も少なくありません。

🔍 そこで大切なのが、事前のカウンセリングと見積もりの確認です。

  • あなたの歯や歯茎の状態に合わせた治療プランを提案してもらう
  • 材料ごとの違いや費用の内訳を丁寧に説明してくれる医院を選ぶ
  • 分割払い(デンタルローン)などの支払い方法があるか確認する

💬 納得してから治療に進めるように、遠慮なく相談しましょう。

ブラックマージンは、見た目の美しさだけでなく、歯茎の健康や補綴物の寿命にも大きく関わる問題です。
一度発生すると自然には治らないため、予防・早期発見・適切な治療がとても重要です。

✅ 予防:金属を使わない素材+丁寧なセルフケア

  • オールセラミックやジルコニアクラウンを選ぶことで、金属露出のリスクをゼロに。
  • ファイバーコアを土台に使うことで、歯茎の黒ずみを防止。
  • 毎日の歯ブラシ・フロス・洗口液を使った正しいケアが、歯茎の退縮予防につながります。

✅ 治療:審美歯科での金属除去+歯茎再生

  • ブラックマージンの主な対処法は、金属を含む補綴物を除去し、金属フリーのクラウンに交換すること。
  • 歯茎が下がっている場合は、歯肉移植やレーザー治療によって見た目も機能も改善可能です。

✅ 再発防止:定期的な検診とメンテナンス

  • 3〜6ヶ月ごとの定期検診で、補綴物や歯茎の状態をチェック。
  • PMTCやエアフローなどのプロフェッショナルケアで、長期的に美しく健康な口元を維持できます。
江戸川区篠崎でブラックマージン治療なら当院へ

差し歯や被せ物の根元が黒ずんで気になる方へ。ブラックマージンは、金属の影響や歯茎の後退によって発生し、放置するとさらに目立つことも。当院では、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミックなど、審美性を重視した治療を行い、自然で美しい口元を取り戻します。

江戸川区篠崎駅近くの当院なら、最新の審美歯科治療を受けられます! ブラックマージンにお悩みの方は、ぜひご相談ください。カウンセリング受付中!

歯周ポケットを掃除し改善するセルフケア法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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