- 1. エムドゲインによる歯周組織再生療法とは
- 1.1. エムドゲインとは?歯周組織の再生を目指す治療法
- 1.2. 世界で認められている再生療法
- 1.3. エムドゲインはどのように歯周組織を再生するの?
- 1.4. エムドゲインで再生が期待できる組織
- 2. 他の歯周組織再生療法との違い
- 3. エムドゲインが適応となるケース
- 4. 治療の流れ
- 4.1. エムドゲイン法(歯周組織再生療法)の術式
- 4.1.1. STEP1 歯周基本治療終了後の状態
- 4.1.2. STEP2 フラップ手術
- 4.1.3. STEP3 エムドゲインゲルの塗布
- 4.1.4. STEP4 歯ぐきの縫合
- 4.1.5. STEP5 歯周パックで保護
- 5. 術後管理が治療成功のポイント
- 6. 費用と保険適用について
- 7. まとめ
- 7.1. 関連記事
- 8. 歯を残すための選択肢、一緒に考えてみませんか?
- 9. 【動画】歯周病の手遅れの症状
- 10. 筆者・院長
- 10.1. 深沢 一
- 10.1.1. メッセージ

「歯周病で歯を支える骨が溶けています」と診断され、「もう歯を抜くしかないのでは」と不安を感じていませんか。歯周病で失われた歯周組織は自然に元へ戻ることはありませんが、症例によってはエムドゲインを用いた歯周組織再生療法によって再生を目指せる場合があります。
本記事では、エムドゲインの仕組みや適応症、治療の流れ、費用、リグロスとの違い、治療後の注意点まで、歯科医師がわかりやすく解説します。歯をできるだけ残したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
エムドゲインによる歯周組織再生療法とは
エムドゲインとは?歯周組織の再生を目指す治療法
エムドゲインは、歯周病によって失われた歯槽骨・歯根膜・セメント質といった歯を支える組織の再生を目指す歯周組織再生材料です。
主成分は、歯が生える過程で重要な働きをする**エナメルマトリックスタンパク(エナメルマトリックスデリバティブ:EMD)**で、ブタ歯胚由来のタンパク質から作られています。生体との親和性が高く、多くの研究で安全性が確認されています。
エムドゲインを歯周病で失われた骨の部分へ応用することで、歯の発生時に近い環境を再現し、歯根膜・セメント質・歯槽骨の再生を促すことが期待できます。
従来の歯周病治療が「炎症を抑えて進行を止めること」を目的としているのに対し、エムドゲインは失われた歯を支える組織そのものの再生を目指す点が大きな特徴です。

世界で認められている再生療法
エムドゲインは1990年代にヨーロッパで実用化され、日本でも厚生労働省の承認を受けています。
現在では50か国以上で使用され、100万人を超える患者さんに応用されてきた実績があります。
また、多くの臨床研究により、
- 安全性
- 再生効果
- 長期的な治療成績
が報告されており、世界的に広く行われている歯周組織再生療法の一つです。
エムドゲインはどのように歯周組織を再生するの?
通常の歯周病治療では、治癒の過程で歯ぐきの上皮が先に治ってしまうため、本来の歯周組織が十分に再生することは難しいとされています。
一方、エムドゲインを使用すると、
- 歯周組織の細胞が増殖・分化しやすい環境を整える
- 歯根膜やセメント質の形成を促す
- 歯槽骨の再生をサポートする
といった働きが期待できます。
特に歯根膜の再生は、歯にかかる力を適切に吸収し、歯を長く維持するうえで重要な役割を果たします。
※再生の程度や治療結果には個人差があり、すべての症例で同じ効果が得られるわけではありません。
エムドゲインで再生が期待できる組織
エムドゲインでは、歯を支える重要な3つの組織の再生が期待できます。
- 歯根膜:歯と骨をつなぎ、噛む力を吸収するクッションの役割
- セメント質:歯根の表面を覆い、歯根膜を付着させる組織
- 歯槽骨:歯を支える顎の骨
これらが再生することで、歯を支える土台の回復が期待できます。
他の歯周組織再生療法との違い
歯周組織再生療法には、エムドゲイン以外にもリグロスや**CGF(自己血由来フィブリン)**などがあります。
| 再生療法 | 主な特徴 |
|---|---|
| エムドゲイン | 歯の発生過程を再現し、生理的な歯周組織の再生を目指す自由診療 |
| リグロス | 成長因子(bFGF)を利用した保険適用の再生療法 |
| CGF | 患者さん自身の血液から作製し、他の再生療法と併用されることが多い |
それぞれに特徴があり、どの治療が適しているかは骨の欠損形態や歯周病の進行度によって異なります。
そのため、患者さん一人ひとりの状態を詳しく診査・診断したうえで、最適な治療法をご提案します。
エムドゲインが適応となるケース
エムドゲインは、すべての歯周病に適応できるわけではありません。
特に適応となりやすいのは、
- 垂直性骨欠損(骨が縦方向に溶けている)
- 深い歯周ポケット(目安として5mm以上)
- 単根歯を中心とした症例
などです。

一方で、
- 喫煙習慣がある
- 糖尿病のコントロールが不十分
- 骨が全体的に水平に吸収している
といった場合には、十分な再生が期待しにくく、適応とならないことがあります。
最終的にはCTやレントゲン、歯周組織検査などをもとに総合的に判断します。
治療の流れ
エムドゲインによる歯周組織再生療法は、次のような流れで行います。
- 検査・診断
- 歯周基本治療(歯石除去・プラークコントロール)
- フラップ手術(歯周外科治療)
- エムドゲインの塗布
- 縫合・術後管理
手術時間の目安は約60分です。
治療後は数か月かけて組織の治癒が進み、最終的な評価は6か月〜1年程度で行います。
再生した組織を長く維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。

エムドゲイン法(歯周組織再生療法)の術式
STEP1 歯周基本治療終了後の状態
まず、スケーリングやルートプレーニングなどの歯周基本治療を行い、歯ぐきの炎症をできる限り改善させます。
見た目には健康な歯ぐきに見えても、歯ぐきの内部では歯槽骨が大きく失われたまま残っていることがあります。
このような骨欠損は通常の歯周病治療だけでは回復が難しく、再生療法を検討する場合があります。

STEP2 フラップ手術
局所麻酔を行い、歯ぐきを丁寧に開いて治療部位を直接確認します。
歯根に付着した歯石や細菌、炎症を起こした組織を徹底的に除去し、再生しやすい環境を整えます。
骨が縦方向に大きく失われた「垂直性骨欠損」は、エムドゲインの適応となる代表的な症例です。

STEP3 エムドゲインゲルの塗布
歯根表面を専用の薬剤で処理した後、エムドゲインゲルを骨の欠損部へ塗布します。
欠損の大きさによっては、人工骨を併用し、再生環境をより安定させることもあります。
エムドゲインは自由診療ですが、症例によっては保険診療で行えるリグロスが適応となる場合もあります。

STEP4 歯ぐきの縫合
処置後は歯ぐきを元の位置へ戻し、細い糸で丁寧に縫合します。
傷口が安定するよう、症例に応じて適切な縫合法を選択し、治癒しやすい環境を整えます。
STEP5 歯周パックで保護
術後は、歯ぐきを保護するために**歯周パック(コーパック)**を装着します。
歯周パックには傷口への刺激を減らし、治癒を助ける役割があります。
通常は約1週間後の抜糸時に歯周パックも一緒に取り外します。

術後管理が治療成功のポイント
エムドゲインで再生した組織は、治療直後は非常にデリケートです。
そのため、
- 指示されたブラッシング方法を守る
- やわらかい食事を心がける
- 禁煙する
- 定期的なメンテナンスを受ける
ことが重要です。
セルフケアや定期管理が不十分になると、再び歯周病が進行し、治療効果が十分に得られない場合があります。
費用と保険適用について
エムドゲインは自由診療となり、費用の目安は1歯あたり約5万~15万円です。
一方、リグロスは一定の条件を満たした場合に保険診療で受けられます。
どちらが適しているかは、費用だけでなく、骨の状態や歯周病の進行度、期待できる治療効果を踏まえて総合的に判断することが大切です。
まずは精密検査を行い、ご自身のお口の状態に合った治療法について歯科医師と十分に相談しましょう。
まとめ
エムドゲインは、歯周病で失われた歯槽骨・歯根膜・セメント質の再生を目指す歯周組織再生療法です。歯を支える組織の回復が期待できるため、「できるだけ自分の歯を残したい」という方にとって有力な治療の選択肢となります。
ただし、すべての症例に適応できるわけではなく、骨の状態や歯周病の進行度、全身の健康状態を十分に評価したうえで治療法を選択することが大切です。また、治療後のセルフケアや定期的なメンテナンスが、再生した組織を長く維持するための重要なポイントとなります。
歯周病で骨が溶けてしまったと診断された場合でも、症例によっては歯を残せる可能性があります。気になる方は、まずは歯科医院で精密検査を受け、ご自身に適した治療法について相談してみましょう。
関連記事
歯を残すための選択肢、一緒に考えてみませんか?

歯周病で骨が溶けてしまった場合でも、症例によっては歯周組織再生療法が適応となることがあります。精密検査を行い、お口の状態に合わせた最適な治療法をご提案します。大切な歯をできるだけ長く残したい方は、お気軽にご相談ください。
【動画】歯周病の手遅れの症状
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。








