仮義歯と仮歯を活用した全顎的咬合再構成

重度の虫歯や歯周病を長期間放置すると、多数の歯が失われたり崩壊したりして、正常な噛み合わせが維持できなくなることがあります。この状態を「咬合崩壊」と呼びます。

咬合崩壊が進行すると、食事がしづらくなるだけでなく、発音障害や見た目の問題、顎関節への負担など、さまざまな機能障害を引き起こします。

今回は、多数歯に重度虫歯を認めた患者さんに対し、仮義歯と仮歯を活用しながら保険診療で咬合再建を行った症例をご紹介します。

重度虫歯と残根が多数存在する状態

初診時には、上顎・下顎ともに多数の歯が重度に崩壊していました。

噛み合わせが崩壊した初診時の口腔内所見
噛み合わせが崩壊した初診時の口腔内所見

歯冠がほとんど失われている歯も多く、一部は歯根のみが残る「残根状態」となっていました。虫歯は深部まで進行し、歯の大部分が黒褐色に変色していました。

また、歯石やプラークの沈着も著しく、口腔内環境は極めて不良な状態でした。

咬合崩壊による機能障害

奥歯の欠損や歯冠崩壊により、本来の噛み合わせの高さ(咬合高径)が大きく失われていました。

その結果、

  • 前歯への過度な負担
  • 歯の傾斜や移動
  • 歯列の乱れ
  • 咀嚼機能の低下
  • 発音障害
  • 審美性の低下

などが認められました。

歯周病の併発

歯肉には発赤や腫脹がみられ、慢性歯周炎の併発も疑われる状態でした。

本症例は、

  • 多発性重度う蝕
  • 慢性歯周炎
  • 多数歯欠損
  • 咬合崩壊

を伴う全顎的な咬合再建症例と診断しました。

まず感染源を除去し、口腔内環境を改善したうえで、失われた噛み合わせを再構築する治療計画を立案しました。

上顎咬合面観による詳細評価と保存可能歯の判定
上顎咬合面観による詳細評価と保存可能歯の判定

抜歯が必要な歯

上顎左側犬歯では、

  • 歯冠崩壊
  • 歯根破壊
  • 高度な歯槽骨吸収

が認められたため、保存は困難と判断し抜歯を選択しました。

保存可能な歯

一方で前歯部の多くは、

  • 根の長さが十分残っている
  • 歯周支持組織が保たれている
  • 根尖病変が軽度

であったため、

  • 根管治療
  • 再根管治療
  • 支台築造

を行うことで保存可能と判断しました。

歯冠が大きく失われていても、歯根の状態が良好であれば残せるケースは少なくありません。

オーバーデンチャー型仮義歯を装着

感染源の除去と保存歯の処置を進めながら、咬合の回復を目的としてオーバーデンチャー型の仮義歯を製作しました。

オーバーデンチャーとは、残存歯や歯根を活用しながら装着する義歯です。

オーバーデンチャー型仮義歯の装着と咬合再構成
オーバーデンチャー型仮義歯の装着と咬合再構成

仮義歯の役割

仮義歯には次のような重要な役割があります。

  • 噛み合わせの高さの回復
  • 咀嚼機能の回復
  • 発音の改善
  • 見た目の回復
  • 残存歯の保護
  • 最終補綴設計の評価

いきなり最終的な入れ歯を作るのではなく、まず仮義歯で口腔機能を安定させることが重要です。

プロビジョナルクラウンを装着

根管治療後の保存歯には、前歯部を中心に仮歯(プロビジョナルクラウン)を装着しました。

仮歯は単なる見た目の回復だけではありません。

. 前歯部仮歯(プロビジョナルクラウン)による審美・機能評価
. 前歯部仮歯(プロビジョナルクラウン)による審美・機能評価

仮歯の目的

仮歯によって、

  • 歯の長さ
  • 歯並び
  • 発音
  • 咬合関係
  • 歯肉との調和

を詳細に評価できます。

特に咬合崩壊症例では、失われた咬合高径をどの程度回復するかが重要であり、仮歯による検証が欠かせません。

保険診療による機能回復

咬合が安定した段階で最終補綴へ移行しました。

前歯部には硬質レジン前装冠を装着し、欠損部には保険適用の部分入れ歯を製作しました。

前歯部には硬質レジン前装冠、欠損部には保険適用の部分入れ歯
前歯部には硬質レジン前装冠、欠損部には保険適用の部分入れ歯

最終義歯の特徴

義歯には、

  • パラタルバー(口蓋バー)
  • ワイヤークラスプ

を採用し、保険診療の範囲内で十分な強度と安定性を確保しました。

これにより、

  • 咀嚼機能
  • 発音機能
  • 審美性
  • 義歯の安定性

を良好なレベルまで回復することができました。

重度虫歯によって噛み合わせが崩壊していても、適切な診査・診断のもとで保存可能な歯を活用しながら治療を進めれば、保険診療でも十分な機能回復が期待できます。

特に、

  • 仮義歯
  • 仮歯(プロビジョナルクラウン)
  • 根管治療
  • 部分入れ歯

を段階的に活用することで、無理なく咬合再建を進めることが可能です。

「もう歯がボロボロだから治せない」と諦めてしまう前に、一度歯科医院でご相談ください。重度の咬合崩壊であっても、適切な治療計画によって食事や会話を楽しめる口腔環境を取り戻せる可能性があります。

江戸川区篠崎で重度虫歯による噛み合わせの崩壊にお悩みの方へ

「歯がボロボロでどこから治せばいいかわからない」「奥歯を失って噛めない」「入れ歯しかないと言われた」――そんなお悩みはありませんか。

重度虫歯や歯周病によって噛み合わせが崩壊した状態でも、残せる歯を適切に保存しながら、仮義歯や仮歯を活用して段階的に噛み合わせを再建できる場合があります。

江戸川区篠崎では、まず精密な検査を行い、保存可能な歯と抜歯が必要な歯を慎重に診断します。そのうえで、根管治療や歯周治療、仮義歯による咬合回復を進め、患者様のご希望やご予算に合わせて保険診療を中心とした治療計画をご提案いたします。

「食事をしっかり楽しみたい」「人前で笑える口元を取り戻したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。重度の咬合崩壊症例にも対応し、機能性と見た目の回復を目指した治療を行っています。

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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