- 1. 初診時の口腔内所見
- 1.1. 重度の虫歯と残根が多数認められる状態
- 1.2. 多数歯の欠損・歯冠崩壊による咀嚼機能の低下
- 1.3. 歯周組織の状態も確認
- 1.4. 診査・診断と治療計画
- 2. 保存できる歯を慎重に見極める
- 2.1. 保存が困難と判断した歯
- 2.2. 保存できると判断した歯
- 3. 仮義歯を活用して噛み合わせを確認
- 3.1. オーバーデンチャーの考え方を取り入れた仮義歯を装着
- 3.2. 仮義歯を使用する目的
- 4. 前歯部に仮歯を装着して確認
- 4.1. プロビジョナルクラウンを装着
- 4.2. 仮歯で確認すること
- 5. 最終的な補綴治療
- 5.1. 保険診療で被せ物と部分入れ歯を製作
- 5.2. 部分入れ歯による欠損部の補綴
- 6. 咬合崩壊が進んでいても治療できる場合があります
- 6.1. 関連記事
- 7. 歯がボロボロでも、諦めずにご相談ください
- 8. 【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
- 9. 筆者・院長
- 9.1. 深沢 一
- 9.1.1. メッセージ

重度の虫歯や歯周病、多数歯の欠損などが進行すると、噛むために必要な歯や歯冠が失われ、安定した噛み合わせを維持することが難しくなる場合があります。
このように、複数の歯の問題によって噛み合わせや咀嚼機能が大きく損なわれた状態は、一般に「咬合崩壊」と呼ばれます。
咬合崩壊が進むと、食べにくさだけでなく、発音や見た目などにも影響することがあります。また、残っている歯に負担が集中する場合もあります。
今回は、多数の歯に重度の虫歯や欠損が認められた患者さんに対し、保存できる歯を見極めながら、仮義歯と仮歯を活用して段階的に噛み合わせを整え、保険診療で最終的な補綴治療を行った症例をご紹介します。
初診時の口腔内所見
重度の虫歯と残根が多数認められる状態
初診時には、上顎・下顎ともに多数の歯で大きな歯冠崩壊が認められました。
歯冠の大部分が失われ、歯根の一部だけが残っている「残根」の状態となっている歯も認められました。
また、プラークや歯石の沈着もみられ、虫歯だけでなく歯周組織を含めた口腔内全体の状態を改善する必要がありました。

多数歯の欠損・歯冠崩壊による咀嚼機能の低下
奥歯の欠損や多数の歯の歯冠崩壊によって、安定した咬合を維持することが難しい状態でした。
このような咬合崩壊では、残っている歯に負担が集中したり、歯の位置や咬合関係が変化したりすることがあります。
本症例でも、口腔内全体の状態を診査し、咀嚼機能を回復するために全顎的な治療計画が必要と判断しました。
歯周組織の状態も確認
歯肉には発赤や腫脹がみられ、プラークや歯石の沈着も認められました。
歯周病の診断や重症度の評価は、歯周ポケット検査、出血の有無、歯の動揺度、X線検査による歯槽骨の状態などを総合して行います。
そのため、虫歯の治療だけでなく、歯周組織の状態を確認しながら口腔内環境を改善していく必要がありました。
診査・診断と治療計画
本症例では、多数の歯に重度の虫歯や欠損が認められ、噛み合わせと咀嚼機能が大きく損なわれていました。
そこで、それぞれの歯について保存できるかを慎重に判断し、必要な感染源の除去や歯周治療を進めながら、口腔内全体の噛み合わせを再構築する治療計画を立てました。
保存できる歯を慎重に見極める
歯冠が大きく崩壊しているからといって、必ずしも抜歯になるとは限りません。
一方、歯根や歯周組織の状態によっては、歯を残すことが難しい場合もあります。

保存が困難と判断した歯
本症例では、上顎左側犬歯について、残存歯質、歯根、歯周組織などの状態を総合的に評価した結果、長期的な保存が困難と判断し、抜歯を行いました。
歯を保存できるかどうかは、一つの所見だけで決まるものではありません。
残存歯質の量、歯根破折の有無、虫歯の進行範囲、歯周組織の支持、根尖部の状態、歯の動揺度、補綴治療が可能かどうかなどを総合的に評価して判断します。
保存できると判断した歯
一方、前歯部を中心とした一部の歯については、残存歯質や歯根、歯周組織、根尖部などを診査し、その後の補綴治療も考慮したうえで保存を目指すこととしました。
必要に応じて、
- 根管治療
- 再根管治療
- 支台築造
などを行い、最終的な被せ物や義歯を支える歯として活用しました。
歯冠が大きく失われていても、残存歯質や歯根、歯周組織などの条件によっては、適切な治療によって保存できる場合があります。
仮義歯を活用して噛み合わせを確認
オーバーデンチャーの考え方を取り入れた仮義歯を装着
保存歯の治療や感染源への対応を進めながら、咀嚼機能と咬合関係を確認するために仮義歯を製作しました。
本症例では、残存歯や歯根を利用するオーバーデンチャーの考え方を取り入れています。
オーバーデンチャーとは、残っている歯や歯根を利用して装着する義歯です。
残存歯の状態や治療計画によって適応は異なります。

仮義歯を使用する目的
咬合崩壊がみられる症例では、最初から最終義歯を製作するのではなく、治療途中に仮義歯を使用して口腔内の変化や使用状況を確認することがあります。
仮義歯を使用することで、
- 咀嚼の状態
- 咬合関係
- 発音
- 見た目
- 義歯の安定性
- 患者さんの使用感
などを確認できます。
また、必要に応じて咬合の高さや歯の位置などを調整し、その結果を最終的な補綴治療の設計に反映させます。
前歯部に仮歯を装着して確認
プロビジョナルクラウンを装着
根管治療などを行い保存した歯には、前歯部を中心に仮歯(プロビジョナルクラウン)を装着しました。
仮歯は、治療途中の歯を保護したり見た目を補ったりするだけでなく、最終的な被せ物を製作する前の評価に利用することがあります。

仮歯で確認すること
本症例では仮歯を使用しながら、
- 歯の長さや位置
- 前歯部の見た目
- 発音
- 上下の歯の接触関係
- 歯肉との関係
- 清掃のしやすさ
などを確認しました。
多数歯の欠損や歯冠崩壊によって咬合関係が大きく変化している場合には、必要に応じて仮義歯や仮歯を使用しながら咬合状態を確認し、最終補綴へ移行します。
最終的な補綴治療
保険診療で被せ物と部分入れ歯を製作
仮義歯や仮歯を使用しながら咬合状態や口腔内の状態を確認した後、最終的な補綴治療へ移行しました。
前歯部には保険診療の被せ物を装着し、歯を失っている部分には保険適用の部分入れ歯を製作しました。
※使用できる被せ物の種類や保険適用の範囲は、治療する歯の位置や口腔内の状態、治療時期の保険制度などによって異なります。

部分入れ歯による欠損部の補綴
本症例の義歯では、口蓋側に設置するバーや残存歯に維持を求めるクラスプなどを用いて、欠損部を補いました。
部分入れ歯の設計は、欠損している歯の位置や本数、残存歯の状態、噛み合わせなどによって異なります。
治療後は、治療前と比較して咀嚼に必要な咬合接触が得られ、前歯部の形態や欠損部も補うことができました。
ただし、補綴治療後も口腔内の状態は変化するため、定期的なメインテナンスと義歯・噛み合わせの確認が必要です。
咬合崩壊が進んでいても治療できる場合があります
「歯がボロボロだから、もう治療できないのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、多数の歯に重度の虫歯があったり、すでに何本もの歯を失っていたりしても、すべての歯を抜かなければならないとは限りません。
まず、
- どの歯を保存できるのか
- どの歯の抜歯が必要なのか
- どのように噛み合わせを回復するのか
- 被せ物や入れ歯をどのように組み合わせるのか
を口腔内全体で検討することが大切です。
本症例では、保存できる歯には根管治療などを行い、仮義歯や仮歯を使用して咬合状態を確認しながら、最終的に被せ物と部分入れ歯による補綴治療を行いました。
咬合崩壊の程度や残っている歯の状態によって治療方法は大きく異なりますが、保険診療の範囲でも、口腔機能の改善を目指せる場合があります。
「虫歯が多すぎて歯医者に行きにくい」「歯が何本もなくなってしまった」「食事がしにくい」という場合も、諦めずに一度歯科医院でご相談ください。
関連記事
歯がボロボロでも、諦めずにご相談ください

重度の虫歯や多数の歯の欠損があっても、残せる歯を見極め、被せ物や入れ歯などを組み合わせることで、噛む機能の改善を目指せる場合があります。お口全体の状態を確認し、一人ひとりに適した治療方法をご提案します。
「食事をしっかり楽しみたい」「人前で笑える口元を取り戻したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





