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✅ 「歯茎から膿が出ている…」そんな症状に気づいたとき、多くの方が「自然に治るのかな?」と不安に感じます。実は膿は、歯周病や歯の根の感染など、口の中で炎症が進行しているサインです。放置すると歯を失ったり、全身の健康に影響を及ぼす危険もあります。

本記事では、歯茎から膿が出る原因・治療法・応急処置・予防法まで、歯科医がわかりやすく解説します。

歯茎から膿が出るのはどんな状態?🤔

歯茎から膿(うみ)が出るのは、口の中で強い炎症や感染が進んでいるサインです。
典型的な症状としては以下が挙げられます。

  • 歯茎の腫れや痛み
  • 強い口臭(膿のにおい)
  • 噛むと違和感や痛みが出る

👉 膿は自然に治ることはほとんどなく、放置すると症状が悪化します。

歯茎から膿が出る主な原因
歯茎から膿が出る主な原因

歯周病の進行

歯周病菌が歯ぐきの奥に入り込み、膿がたまると歯茎から排出されます。

歯根の感染(根尖性歯周炎)

虫歯が進行して神経が死んでしまった歯の根の先に膿が溜まるケースです。

フィステル(瘻孔)の形成

膿の出口として歯茎に小さな穴(白いプツッとしたできもの)ができる状態です。

親知らずの炎症(智歯周囲炎)

親知らずの周りに食べカスや細菌がたまり、膿が出ることがあります。

1. 歯周病により歯周ポケットから排膿している症例

この画像は、右下5番(下顎の第一小臼歯)の歯頚部から膿が排出している様子を示しています。
以下に、臨床的な解説を詳しくまとめます。

歯周病が原因で歯茎から膿がでる症例
歯周病が原因で歯茎から膿がでる症例

🦷 状態の概要

赤い矢印の指す部分に、歯と歯ぐきの境目(歯頚部)から白っぽい膿が確認できます。
このような状態は、**歯周組織の感染(歯周膿瘍)**によって起こることが多く、歯肉の深部に細菌感染が生じ、炎症性の膿が歯肉縁から排出されています。

🔍 推定される原因

  1. 進行した歯周病(歯周ポケット内感染)
     プラークや歯石によって歯根面に炎症が広がり、歯周ポケット内に膿がたまる。
  2. 深い歯周ポケットの形成
     ポケット内に酸素の少ない環境が生じ、嫌気性菌が増殖して膿を生じる。
  3. 噛み合わせや清掃不良による悪化
     金属冠の縁や歯石の残存が感染の温床となっている可能性が高い。

⚠️ 放置した場合のリスク

  • 膿が排出されても炎症の根本原因(感染細菌)は残ったまま
  • 再発を繰り返し、歯を支える骨(歯槽骨)の吸収が進行。
  • 最終的に歯の動揺や喪失につながる危険があります。

💊 治療の方向性

  • 歯周ポケットの洗浄と消毒
  • 抗菌薬(局所または全身投与)による感染制御
  • 歯石除去やルートプレーニング(歯根面の清掃)
  • 状況によっては歯周外科処置を行い、ポケットを改善。
重度の歯周炎により歯肉が大きく腫れ、歯根面に強い汚れと炎症が認められる状態。深い歯周ポケット内に感染組織が残存している。
重度の歯周炎により歯肉が腫れ、歯根面に強い汚れと炎症が認められる状態。深い歯周ポケット内に感染組織が残存している。
フラップ手術(FOP)後、歯根面の徹底したデブライドメントにより感染組織が除去され、歯肉内部が清潔になった状態。炎症源が取り除かれ、治癒を促す環境が整った。
フラップ手術(FOP)後、歯根面の徹底したデブライドメントにより感染組織が除去され、歯肉内部が清潔になった状態。炎症源が取り除かれ、治癒を促す環境が整った。

🪥 予防と再発防止

  • 定期的な歯科クリーニング(3〜4か月ごと)
  • 正しいブラッシングフロス・歯間ブラシの併用
  • 噛み合わせや被せ物の適合確認も重要

■ フィステルとは?

フィステル(瘻孔)は、**歯の中や根の先で炎症が起き、溜まった膿の出口として歯ぐきにできる“排膿の通り道”**です。
写真のように小さな白っぽいふくらみ・ニキビのような形で現れ、押すと膿が出ることもあります。

フィステル(瘻孔)は、歯の根の炎症でできる膿の出口。
虫歯がない左下1番の内部で感染が起きています。
フィステル(瘻孔)は、歯の根の炎症でできる膿の出口。
虫歯がない左下1番の内部で感染が起きています。
フィステルから挿入したガッタパーチャが左下1番の根尖に到達。
膿の原因となっている感染源を正確に示しています。
フィステルから挿入したガッタパーチャが左下1番の根尖に到達。
膿の原因となっている感染源を正確に示しています。

■ なぜ虫歯がないのに膿が出るのか?

原因歯(左下1番)に虫歯がなくても、以下のような理由で根の先に炎症が起こることがあります。

● ① 過去の小さな外傷(ぶつけた、噛みしめた)

前歯は外傷を受けやすく、**打撲による歯髄壊死(神経が死ぬ)**が後年になって炎症として現れることがよくあります。

● ② 噛みしめ・歯ぎしりによる慢性的な負担

強い咬合力が続くと、歯髄の血流が低下し、神経が徐々に弱って炎症が起こる場合があります。

● ③ 過去の治療歴によるダメージ

小さな処置や、古い樹脂の影響で神経が弱ることもあります。(今回写真では該当なしだが一般的原因)

■ 今起きている状態(写真の解説)

  • フィステル:根の先でできた膿が歯ぐきから出てきている状態
  • 原因歯(左下1番):虫歯は無いが、内部の歯髄が壊死し根尖に感染が広がっている可能性が高い

膿が出ているため痛みが軽減することもありますが、根の先に感染が残っている限り治癒はしません

■ 治療方法

● ① 根管治療(神経の管のお掃除)

原因歯の内部を清掃・消毒し、感染源を取り除く治療です。
フィステルは、原因を除去すると数日〜数週間で自然に消失します。

● ② 外科的治療(必要な場合)

まれに感染が強い場合や根の先の形態が複雑な場合には、
歯根端切除術など外科的に膿の袋を除去することもあります。

■ 放置してはいけない理由

  • 感染が広がり、骨が溶ける
  • 周囲の歯ぐきや歯にも影響
  • フィステルが閉じる→再度腫れるを繰り返す

根本治療をしないと、炎症は必ず戻ります。

  • 膿を自分で潰すのはNG ❌
  • 強く押したり揉んだりしない
  • 口を清潔に保ち、ぬるま湯や食塩水でうがい
  • 痛みが強い場合は冷たいタオルで頬を冷やす

※あくまで一時的な対処であり、必ず歯科を受診することが必要です。

症状に応じて歯科では次のような治療を行います。

  • 膿の排出と消毒
  • 抗生物質の投与
  • 歯周病治療(スケーリング・ルートプレーニング)
  • 根管治療(歯の神経の治療)
  • 保存が難しい場合は抜歯

👉 適切な治療を行えば、痛みや腫れは改善し、再発も防げます。

  • 毎日の歯磨き+デンタルフロス
  • 定期的な歯科検診(3〜6か月ごと)
  • 規則正しい生活習慣(禁煙・バランスの取れた食事)

小さな炎症の段階で治療できれば、歯を守る可能性は大きく高まります。

  • 歯茎から膿が繰り返し出る
  • 強い口臭や腫れがある
  • 熱や全身のだるさを感じる

これらの症状がある場合は、すぐに歯科を受診しましょう

江戸川区篠崎で歯茎のトラブルにお悩みの方へ 🏡

歯茎から膿が出る症状は、放置すると歯を失うリスクがある深刻なサインです。
江戸川区篠崎駅南口徒歩1分の当歯科クリニック では、歯周病治療や根管治療に力を入れており、症状に合わせた最適な治療をご提案します。
「膿が出て心配」「どこで相談すればいいかわからない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。

【動画】ステイン着色汚れをクリーニングするエアフロー

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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