目次

夜間、口を開けたまま眠ったり、呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群によるいびき、日中でもお口をポカンと開けたままなどの症状を持つ子供のお母さんはさぞかし心配でしょう。

これらの症状はアデノイド肥大や口蓋扁桃肥大が原因なのかもしれません。アデノイド肥大についてまとめました。

1. アデノイドとは?

鼻呼吸を妨げるアデノイド(咽頭扁桃)の肥大、鼻ポリープ(鼻茸)の模式図
アデノイド(咽頭扁桃)の肥大、鼻ポリープ(鼻茸)の模式図

アデノイド(咽頭扁桃)はリンパ組織

アデノイド(咽頭扁桃)は、鼻の奥(上咽頭)に位置するリンパ組織の一つで、免疫機能の一端を担っています。特に幼児期には、細菌やウイルスと戦う役割があり、成長とともに徐々に小さくなります。

口を大きく開けてもらい覗き込んでも「のどちんこ」の裏側にあるので直接見ることはできません。

アデノイドの役割

主な役割:

  • 体内に侵入する病原体をブロック
  • 免疫細胞を活性化し、抗体を作る
  • 口や鼻からの感染防止に貢献
アデノイドの役割
アデノイドの役割

アデノイド肥大とは?

アデノイド肥大とは、アデノイドが通常よりも大きくなった状態を指します。特に幼児・小児に多く見られ、成長とともに自然に縮小する場合がある一方で、重度の場合は症状が発生し、治療が必要になります。

正常なアデノイドと肥大したアデノイドの違い
特徴正常なアデノイド肥大したアデノイド
大きさ小さく目立たない大きくなり、気道を圧迫することがある
呼吸鼻呼吸がスムーズ鼻づまりが起こり、口呼吸になる
影響免疫機能を適切に発揮睡眠時無呼吸、いびき、耳の疾患を引き起こすことがある
乳幼児・子供に多い理由
  • 乳幼児期は免疫機能が未熟であり、アデノイドが活発に働くため一時的に肥大しやすい
  • 成長とともに免疫システムが発達し、アデノイドの役割が低下するため、小学校高学年以降は縮小する傾向

アデノイド肥大と扁桃肥大の違い

アデノイドと扁桃(口蓋扁桃)は、どちらもリンパ組織であり、免疫機能に関与しますが、それぞれの部位や症状が異なります。

それぞれの部位と機能の違い
項目アデノイド(咽頭扁桃)口蓋扁桃(扁桃腺)
位置鼻の奥(上咽頭)喉の両側(口蓋)
役割上気道からの細菌・ウイルスを防ぐ口から入る病原体をブロック
症状鼻づまり・口呼吸・いびきのどの痛み・発熱・嚥下障害
併発するケースについて
  • アデノイド肥大と扁桃肥大は同時に起こることが多い
  • 特に子供では「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきが見られることがある
    • 口呼吸が慢性化し、上顎が狭くなる
    • 歯並びの乱れや出っ歯の原因となる
  • 扁桃肥大を伴う場合、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる
    • アデノイド・扁桃摘出手術が必要なケースも

2. アデノイド肥大の原因

アデノイドと口蓋扁桃の生理的肥大
アデノイドと口蓋扁桃の生理的肥大

十分な解明はされていません

アデノイド(咽頭扁桃)は5歳をピークに、口蓋扁桃(のどちんこの左右にあるリンパ組織)は6歳をピークに生理的に肥大します。その後、年齢と共に縮小していきます。アデノイドの生理的肥大の原因は解明されていません。

15歳を過ぎた辺りでアデノイドの肥大は解消します。従って、大人になるとアデノイドや口蓋扁桃は縮小し正常の大きさになり、治療の対象となることはほとんどありません。

新耳鼻科学第10版 南山堂(切替一郎、野村恭也)より引用改変

遺伝的要因はあるのか?

アデノイド肥大は、遺伝的な要素が関与している可能性があります。

遺伝的な要因とアデノイド肥大の関係
  • 家族歴
    • 両親や兄弟にアデノイド肥大の既往がある場合、子供にも発症しやすい傾向がある
  • 骨格・顔面の形状
    • 上顎が狭く、口呼吸しやすい骨格を持つ子供はアデノイド肥大を起こしやすい
  • 免疫システムの遺伝的要因
    • 免疫反応が過剰に働く体質の場合、リンパ組織が過度に発達しやすい

環境要因(アレルギーや感染症との関係)

アデノイド肥大は、環境的な影響も大きく、特にアレルギー感染症が関与することが多いです。

アレルギーとアデノイド肥大の関係
  • アレルギー性鼻炎などの慢性的な炎症がアデノイドの肥大を引き起こす
  • ダニや花粉、ハウスダストなどのアレルゲンによる長期的な刺激が影響
  • アレルギー性鼻炎を持つ子供は、鼻づまりが慢性化しやすく、アデノイドが大きくなりやすい
感染症との関係
  • 風邪やインフルエンザなどのウイルス感染
    • 風邪を繰り返すことでアデノイドが炎症を起こし、肥大しやすくなる
  • 細菌感染(溶連菌・マイコプラズマなど)
    • 扁桃炎や咽頭炎を伴う感染症がアデノイドの肥大を助長
  • 慢性的な副鼻腔炎
    • 鼻の奥の炎症がアデノイドを刺激し、大きくなる原因になる

アデノイド肥大を引き起こす疾患

アデノイド肥大は、以下の疾患と関連して発症することがあります。

1. 滲出性中耳炎
  • アデノイド肥大によって耳管(中耳と鼻をつなぐ管)が圧迫される
  • 耳の奥に液体が溜まり、聞こえが悪くなる
2. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  • アデノイドが大きくなり、気道を塞ぐことで睡眠時に無呼吸が発生
  • 子供の成長発達に悪影響を及ぼす
3. 副鼻腔炎(蓄膿症)
  • アデノイドが大きくなると鼻の通りが悪くなり、副鼻腔炎を引き起こしやすくなる
4. 口蓋扁桃肥大(扁桃腺肥大)
  • アデノイド肥大と扁桃肥大は併発しやすく、喉の閉塞がさらに悪化
  • 食事や睡眠に支障をきたす

1. 子供によく見られる症状

アデノイド肥大は主に子供に発生し、以下のような症状を引き起こします。

子供によく見られる症状
子供によく見られる症状

慢性的な鼻づまり

  • 鼻の奥にあるアデノイドが肥大することで空気の通り道が狭くなり、鼻づまりが慢性化
  • 鼻水が出ないのに常に鼻が詰まっている状態が特徴
  • 片方の鼻だけでなく両方の鼻が詰まるケースが多い

いびき・睡眠時無呼吸症候群

  • 寝ている間にいびきをかく、呼吸が止まる(無呼吸)
  • 眠りが浅く、頻繁に目が覚める(中途覚醒)
  • 昼間の眠気や集中力低下、成長ホルモンの分泌への影響

口呼吸とその影響

  • 鼻が詰まるため、常に口で呼吸をするようになる(口呼吸)
  • 口の乾燥により、虫歯や歯周病、口臭の原因となる
  • 「アデノイド顔貌(後述)」と呼ばれる特徴的な顔つきになることがある

滲出性中耳炎との関連性

  • アデノイドが耳管を圧迫し、耳の奥(中耳)に液体が溜まりやすくなる
  • 難聴や耳の詰まり感が発生し、言葉の発達に影響を及ぼすことも
  • 風邪やアレルギーの影響で悪化しやすい

2. 大人にも起こる?アデノイド肥大の可能性

アデノイド肥大は子供に多いとされていますが、成人にも発症するケースがあります。

成人のアデノイド肥大と症状の違い

  • 子供とは異なり、成人では慢性炎症やアレルギーが原因で肥大することがある
  • 鼻づまり・睡眠時無呼吸症候群・いびきが主な症状
  • 慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こすこともある
  • 喉の違和感(異物感)や後鼻漏(鼻水が喉に流れる)が続く場合、アデノイド肥大が疑われる

3. 放置するとどうなる?リスクについて

アデノイド肥大を治療せずに放置すると、様々な悪影響が生じます。

睡眠障害

  • 睡眠の質が低下し、昼間の活動に支障をきたす
  • 集中力低下や学習能力の低下を招く
  • 成長ホルモンの分泌が妨げられ、発育が遅れる可能性

発音・言葉の発達への影響

  • 鼻が詰まることで鼻音(「ま行」「な行」など)が不明瞭になる
  • 耳管の圧迫により、聴力が低下し、言葉の発達が遅れることがある

顎の成長への影響(アデノイド顔貌)

  • 口呼吸が続くと、上顎の発育に影響が出る
  • 「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになる
    • 上顎が狭くなる
    • 歯並びが悪くなる(出っ歯)
    • 口元が前に出る
    • 無表情になりやすい

このように、アデノイド肥大の症状を放置すると、睡眠障害・発育障害・顔貌の変化など様々なリスクが生じます。特に子供の場合は早期の診断と治療が重要です。

4. 口呼吸からお口ポカンに!

風邪をひく
風邪をひく

風邪をひくとアデノイドは肥大しやすい

4歳から6歳頃の最もアデノイドが肥大した時期に、風邪などの感染症に罹ると更にアデノイドは肥大します。

アデノイドが大きく肥大した状態では鼻が詰まり、鼻呼吸がしづらくなるので気道抵抗の少ない口呼吸になります。口で容易に呼吸が出来るため鼻呼吸に戻ることはなく、そのまま口呼吸を続けてしまう子供が多く見られます。

お口ポカンから出っ歯やオープンバイトに

口呼吸の子供は、常に口を開けて呼吸するため口唇を閉じる筋肉が緩み、お口ポカン状態になります。唇を閉じる力が弱まり、口唇閉鎖不全の状態が長引くと前歯は徐々に出っ歯になり、前歯の間に隙間が出来てきてオープンバイトになります。

「お口ポカン」は指しゃぶりが5、6歳を超えて続いている場合にも原因となることがあります。

5. アデノイド肥大が引き起こす口呼吸とお口ポカンの悪循環

アデノイド肥大から口呼吸となり舌突出癖が習慣化し、出っ歯や開咬になり歯列は V 字型へ変化し、外見的にはアデノイド顔貌と呼ばれる顔になります。

舌突出癖

「お口ポカン」は唇を閉じる筋力が弱まるのと同時に、舌には「舌突出癖」と呼ばれる癖が現れます。舌突出癖は口腔内を陰圧にするための無意識的な行動で、舌を前歯の隙間に差し込んだ状態で唾液や食べ物を飲み込みます。

STEP
1

出っ歯や開咬

1日に数千回行われる唾液の嚥下により気が付かない内に出っ歯や開咬がさらに悪化します。

STEP
2

歯列は V 字型へ

舌突出癖の舌は沈下し、口蓋から離れています。この状態は、ほっぺたの筋肉が歯列を内側に押す力の方が、舌が歯列を外側に押し返す力より上回っています。すると歯列はだんだん V 字型になり、狭くなってしまいます。

STEP
3

アデノイド顔貌

上顎歯列が狭くなると鼻腔も同時に狭くなり空気の通りが悪くなり、口呼吸の「お口ポカン」はさらに悪化する悪循環へ突入です。そして、外見的にはアデノイド顔貌と呼ばれる締まりの無い顔になってしまいます。

STEP
4

アデノイド肥大の診断には、耳鼻咽喉科での専門的な検査と、自宅での簡単なチェックがあります。適切な診断を受けることで、治療の必要性を判断できます。

耳鼻咽喉科での専門的な検査
耳鼻咽喉科での専門的な検査

1. 耳鼻咽喉科で行う検査

耳鼻咽喉科では、以下の方法を用いてアデノイド肥大の大きさや影響を評価します。

内視鏡検査

  • 鼻や喉に細いカメラを挿入し、直接アデノイドの状態を観察する方法
  • 局所麻酔を使用することがあり、痛みはほとんどない
  • アデノイドの大きさや、周囲の組織への影響を正確に確認できる

レントゲン・CTスキャン

  • 側面から撮影し、アデノイドの肥大具合を確認
  • 鼻咽腔(鼻の奥)を圧迫しているかを評価
  • CTスキャンでは、より詳細な画像が得られるため、重度の肥大や他の疾患との鑑別に有効

鼻咽腔ファイバースコープ

  • 極細のカメラ(ファイバースコープ)を鼻から挿入し、アデノイドの様子を観察
  • リアルタイムで動画を見ながら診断が可能
  • 鼻づまりや口呼吸などの原因を詳しく調べることができる

2. 歯科で行う診断

セファロレントゲン写真による診断

ほぼ正常なアデノイド
ほぼ正常なアデノイド

歯医者では矯正治療の診断に使うセファロレントゲン写真でアデノイド肥大も診断出来ます。

写真は8歳児のレントゲンですが、アデノイドの肥大が僅かに認められるものの気道は十分に広く口呼吸は起こっていません。

耳鼻咽喉科では鼻からファイバースコープを入れて検査する場合もあります。

アデノイド肥大
アデノイド肥大

アデノイド肥大が顕著に起こった症例で、鼻腔がかなり狭くなっています。そのため口呼吸となり、唇の突出感が強く表れています。

3. 自宅でできるチェック方法

アデノイド肥大は自宅での観察によって、ある程度の兆候を確認することができます。

子供の寝ている姿勢や呼吸を観察する

以下の症状が見られる場合は、アデノイド肥大の可能性が高い

  • 口を開けて寝ている(口呼吸が習慣化している)
  • いびきが大きく、夜中に息が止まることがある(睡眠時無呼吸症候群の兆候)
  • 寝相が悪く、よく動く(寝苦しさを感じている)
  • 朝起きたときに口が乾燥している、喉が痛いと言う
  • 日中に眠そうにしていたり、集中力が低下している

💡 簡単なチェック方法

  1. 子供が寝ているときに、口を開けているか確認
  2. いびきを録音し、呼吸が止まっていないかチェック
  3. 鼻をつまんで、鼻呼吸ができるか試す(片方ずつ)
  4. 鼻の詰まりがないか、寝起きに確認

4. 診断のポイント

家庭で異常が見られたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要
検査によって肥大の程度や治療の必要性を判断
睡眠の質や日中の行動変化にも注意を払う

アデノイド肥大は放置すると睡眠障害や発育への影響を及ぼすため、早期発見と適切な対応が大切です。

アデノイド肥大の治療は、症状の重さや影響の程度に応じて、保存療法(薬物治療)と手術療法の選択があります。また、自然に改善する可能性や生活習慣の見直しによって軽減できるケースもあります。

アデノイド肥大の治療法
アデノイド肥大の治療法

1. 保存療法(薬物治療)

アデノイド肥大が軽度で、症状が軽い場合は、薬による治療を試みます。

抗生物質・抗炎症薬の使用

  • 細菌感染が原因の炎症を抑えるために抗生物質を使用することがある
  • ロイコトリエン拮抗薬(抗炎症作用のある薬)が処方されることも
  • 鼻詰まりがひどい場合は、点鼻ステロイド薬を使用し、炎症を抑える

アレルギー対策

  • アデノイド肥大はアレルギー性鼻炎と関連することが多く、アレルギー治療が有効なケースもある
  • 抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬を用いた治療が行われる
  • ダニ・ハウスダスト・花粉などのアレルゲンを減らす環境整備も重要

💡 保存療法のポイント
✔ 症状が軽い場合に有効だが、根本的な解決にはならない
✔ アレルギーや炎症が関与している場合には改善が見込める
✔ 効果が不十分な場合、手術を検討

2. アデノイド切除手術(アデノイド摘出術)

アデノイド肥大が重症で、保存療法では改善しない場合や、日常生活に支障がある場合に手術が検討されます。

手術の適応基準

睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている(いびき・無呼吸・日中の眠気)
慢性的な鼻づまりが続き、口呼吸が常態化している
滲出性中耳炎を繰り返し発症し、聴力低下が起こっている
副鼻腔炎(蓄膿症)や慢性咽頭炎を頻繁に起こしている
歯並びや顎の発達に影響を与えている(アデノイド顔貌)

手術の流れ(術前・術後の経過)

1️⃣ 術前検査

  • レントゲン・内視鏡検査でアデノイドの大きさを確認
  • 血液検査・心電図などの全身状態のチェック

2️⃣ 手術方法

  • 全身麻酔を使用し、口から専用の器具を入れてアデノイドを切除
  • 約30分~1時間程度の手術で、出血は少ない

3️⃣ 術後の経過

  • 手術当日は水分補給をしっかり行う
  • 1週間程度で通常の生活に戻れるが、激しい運動は避ける
  • 痛みが続くことは少なく、食事も早期に再開できる

合併症のリスクと対策

  • 出血(術後まれに起こるため、経過観察が必要)
  • 一時的な鼻声(数週間で改善)
  • 感染リスク(術後の抗生剤投与で対策)

手術を受けるべきかの判断基準

  • 保存療法を3~6か月試しても改善しない
  • 睡眠時無呼吸症候群や中耳炎のリスクが高い
  • 成長や発達に影響が出ている場合、早めの手術が推奨される

💡 手術のポイント
✔ 小児の手術が一般的で、大人では必要なケースが少ない
✔ 入院不要のクリニックもあり、日帰り手術が可能なことも
✔ 早期手術により、睡眠の質向上・健康状態の改善が期待できる

3. アデノイド肥大を自然に改善できる?

アデノイド肥大は、成長とともに縮小するケースが多く、軽度の場合は自然に治ることもあります。

成長とともに小さくなる可能性

  • アデノイドは6~7歳頃が最大になり、その後縮小する傾向がある
  • 10代になるとほとんどのケースで自然に小さくなる
  • ただし、症状が強い場合は成長を待つのではなく治療が必要

生活習慣の見直し(鼻呼吸トレーニング)

  • 口呼吸を防ぐためのトレーニングが効果的
    • 唇を閉じて鼻で呼吸する習慣をつける
    • 「あいうべ体操」などの口周りの筋肉を鍛える運動
  • 部屋の湿度を適切に保ち、鼻の乾燥を防ぐ
  • アレルギー対策を徹底し、鼻づまりを予防する

💡 自然治癒のポイント
✔ 軽度の場合は経過観察が基本
✔ 鼻呼吸を意識し、口呼吸の習慣を改善することが重要
✔ 症状が悪化する場合は、早めに耳鼻咽喉科で診察を受ける


まとめ

🔹 軽度のアデノイド肥大 → 保存療法(薬物治療やアレルギー対策)で経過観察
🔹 症状が重い場合 → アデノイド切除手術を検討(特に睡眠時無呼吸や中耳炎がある場合)
🔹 成長とともに改善することもあるが、生活習慣の見直しが重要

アデノイド肥大の治療法は、症状の程度によって選択肢が異なるため、早めに専門医の診断を受けることが大切です。

アデノイド肥大は単独で問題になるだけでなく、中耳炎や鼻炎、睡眠時無呼吸症候群、発育障害など、さまざまな疾患と関連しています。ここでは、それぞれの関係を詳しく解説します。

1. 滲出性中耳炎との関連性

アデノイド肥大が中耳炎を引き起こすメカニズム

  • アデノイドが耳管(中耳と鼻をつなぐ管)を圧迫
    • 耳管の通気が悪くなり、中耳に液体が溜まりやすくなる
  • 細菌やウイルスが耳管を通じて中耳に入りやすくなる
  • 慢性的な炎症により、滲出性中耳炎を繰り返すことがある

滲出性中耳炎の主な症状

  • 耳が詰まった感じがする(耳閉感)
  • 聞こえが悪くなる(難聴)
  • 痛みがないことが多く、気づきにくい
治療方法
  • アデノイド肥大が原因の場合、アデノイド切除手術を行うと改善することが多い
  • 保存療法(鼻炎治療、耳管通気処置)を行うこともある

2. アレルギー性鼻炎との違い

アデノイド肥大とアレルギー性鼻炎はどちらも鼻づまりの原因になりますが、以下のような違いがあります。

比較項目アデノイド肥大アレルギー性鼻炎
主な原因アデノイドの過剰な成長ダニ・花粉・ハウスダストなどのアレルゲン
主な症状鼻づまり・いびき・口呼吸くしゃみ・鼻水・目のかゆみ
季節性通年性季節性(花粉症) or 通年性(ハウスダスト)
治療方法手術・保存療法(抗炎症薬)抗ヒスタミン薬・点鼻ステロイド

💡 ポイント

  • 両方を併発することもあるため、適切な診断が重要
  • アレルギー性鼻炎がアデノイド肥大を悪化させることもある
  • 鼻炎の治療をするとアデノイド症状が軽減する場合がある

3. 扁桃肥大・睡眠時無呼吸症候群との関係

アデノイド肥大は、扁桃肥大(口蓋扁桃の肥大)と併発しやすく、特に**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**のリスクを高めます。

扁桃肥大とアデノイド肥大の違い

比較項目アデノイド肥大扁桃肥大
位置鼻の奥(上咽頭)喉の奥(口蓋)
主な症状鼻づまり・口呼吸・いびき喉の閉塞・飲み込みにくさ
影響睡眠障害・滲出性中耳炎無呼吸・嚥下障害

睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関係

  • アデノイドや扁桃が大きいと、睡眠中に気道が塞がれ、呼吸が止まることがある
  • 低酸素状態が続くと、成長ホルモンの分泌低下や、集中力低下、学習障害につながる
  • アデノイド・扁桃摘出手術により、症状が改善するケースが多い

4. アデノイド肥大と発育障害の関係

アデノイド肥大が長期間続くと、子供の成長や発育に影響を与える可能性があります。

1. 顎の発育への影響(アデノイド顔貌)

  • 口呼吸が常態化すると、顎の成長に悪影響を及ぼす
  • 「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになる
    • 上顎が狭く、出っ歯になりやすい
    • 口元が突出する
    • 無表情になりやすい

2. 言葉の発達への影響

  • 鼻づまりにより、鼻音(「ま行」「な行」など)が発音しにくくなる
  • 滲出性中耳炎を併発すると、聴力低下により言葉の習得が遅れる

3. 成長ホルモンの分泌低下

  • 睡眠障害によって、成長ホルモンの分泌が減少
  • 身長や体重の発育が遅れることがある

💡 発育障害を防ぐためには?口呼吸を改善し、鼻呼吸の習慣をつける
アデノイド肥大が成長や発達に影響を及ぼす場合は、専門医に相談し、早めの治療を検討


まとめ

🔹 アデノイド肥大は、滲出性中耳炎・アレルギー性鼻炎・扁桃肥大・睡眠時無呼吸症候群と深い関係がある
🔹 放置すると、成長や発育に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な治療が必要
🔹 子供の成長・発達を考え、必要に応じてアデノイド摘出手術を検討する

アデノイド肥大が関連する疾患を理解し、早めの対策を取ることが、子供の健康を守るポイントです。

アデノイド肥大を完全に防ぐことは難しいですが、日常生活の習慣を改善し、リスクを軽減することは可能です。特に、口呼吸を防ぐ・鼻づまりを解消する・感染症予防を徹底することが重要です。

1. 生活習慣の改善(口呼吸を防ぐためにできること)

アデノイド肥大の原因のひとつに口呼吸の習慣化があります。鼻呼吸を促すことで、症状の進行を防ぐことができます。

1. 口呼吸を防ぐためのトレーニング

  • 「あいうべ体操」(口の周りの筋肉を鍛え、自然に鼻呼吸を促す)
    1. 「あー」と大きく口を開ける
    2. 「いー」と口角を横に引く
    3. 「うー」と口を突き出す
    4. 「べー」と舌を下に出す
      → 1日30回程度行うと効果的
  • ガムを噛む習慣をつける(口周りの筋力強化)
  • 鼻で呼吸する練習をする(片方ずつ鼻を押さえて吸う・吐く)

2. 口を閉じる習慣をつける

  • 寝るときに口テープを貼る(口呼吸防止用テープを使用)
  • 食事中によく噛んで食べる(顎の発達を促し、口呼吸を防ぐ)
  • 枕の高さを調整し、自然な鼻呼吸を促す

2. 鼻づまりを防ぐ方法

アデノイド肥大の進行を抑えるためには、鼻の通りを良くし、慢性的な鼻づまりを防ぐことが重要です。

1. 部屋の環境を整える

  • 加湿器を使用して、適切な湿度(50~60%)を維持
  • ハウスダストや花粉を減らす(空気清浄機の使用・こまめな掃除)
  • ペットやカーペットのホコリを減らす

2. 鼻洗浄(鼻うがい)の習慣をつける

  • 生理食塩水や専用の鼻洗浄液で鼻の奥を洗う
  • 特に風邪のひき始めや、花粉症の季節に効果的

3. アレルギー対策

  • アレルギー性鼻炎の治療を適切に行う(抗ヒスタミン薬・点鼻薬)
  • アレルゲンを避ける(ダニ・ハウスダスト・花粉)
  • 布団やカーテンを定期的に洗濯する

3. 風邪や感染症から守るための対策

アデノイド肥大の悪化を防ぐためには、風邪やインフルエンザなどの感染症にかからないようにすることが重要です。

1. 手洗い・うがいを徹底する

  • 外出後は必ず手洗い・うがいをする
  • うがいは水でもOKだが、塩水や緑茶うがいも効果的

2. 免疫力を高める

  • バランスの良い食事(ビタミンC・ビタミンDを含む食品を摂る)
  • 十分な睡眠をとる(成長ホルモンの分泌を促進)
  • 適度な運動をして体力をつける

3. 予防接種を受ける

  • インフルエンザ・肺炎球菌などのワクチンを適宜接種する

まとめ

口呼吸を防ぐトレーニングや環境整備を行う
鼻づまりを解消するために、加湿や鼻洗浄を習慣化する
風邪や感染症を防ぐため、手洗い・うがい・免疫力向上を心がける

アデノイド肥大の予防は、日常のちょっとした習慣の積み重ねが重要です。早いうちから適切な対策を取り、健康な呼吸を維持しましょう!

アデノイド肥大に関する疑問をまとめました。気になる点があれば、専門医に相談することをおすすめします。

1. アデノイド肥大は何歳までに治るのか?

アデノイドは生後2歳頃から発達し、6~7歳で最大になり、その後は思春期(10代前半)にかけて縮小する傾向があります。
ほとんどの子供は10代後半までに自然に縮小し、症状が軽減します。
しかし、重度の肥大がある場合は成長を待つよりも治療が必要になることがあります。
💡 症状が強い場合は、「待てば治る」と考えずに、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

2. 大人のアデノイド肥大は治療が必要?

アデノイドは通常思春期に縮小しますが、まれに成人になっても残存・肥大することがあります。
軽度で症状がなければ、経過観察が基本
以下のような症状がある場合は、治療が必要

  • 慢性的な鼻づまりや口呼吸
  • いびき・睡眠時無呼吸症候群の症状
  • 副鼻腔炎(蓄膿症)や滲出性中耳炎を繰り返す

🔹 治療方法

  • 軽症の場合は保存療法(薬物治療・アレルギー対策)
  • 症状が重い場合はアデノイド摘出手術が検討される

💡 大人のアデノイド肥大は鼻炎や副鼻腔炎と誤診されることがあるため、耳鼻咽喉科でしっかり診断を受けることが重要です。

3. 手術を受けると再発する可能性はある?

アデノイド摘出手術は、基本的に一度切除すれば再発しないとされています。
大半のケースで完全に除去され、再発の心配は少ない
まれに再生することがあるが、特に以下の場合は注意

  • 3歳以下で手術を受けた場合(アデノイドの再生能力が高いため)
  • 手術時に完全に切除できなかった場合

💡 再発が心配な場合は、術後の経過観察をしっかり行い、必要に応じて耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。

4. 手術費用の目安は?保険適用される?

アデノイド摘出手術は、健康保険が適用される手術です。

🔹 手術費用の目安(3割負担の場合)

項目費用の目安
日帰り手術約2~5万円
1泊入院約5~8万円
数日間入院約10~15万円

🔹 高額療養費制度の適用

  • 自己負担額が一定額を超える場合、高額療養費制度で払い戻しが受けられる
  • 乳幼児医療費助成制度が適用される地域もあるため、自治体の制度を確認することがおすすめ

💡 手術を受ける前に、健康保険の適用範囲や医療助成制度を確認しておきましょう。

5. どの病院・診療科に行けばいい?

アデノイド肥大が疑われる場合は、**耳鼻咽喉科(耳鼻科)**を受診するのが基本です。

こんなときは耳鼻咽喉科へ!

  • 鼻づまりが続く、口呼吸が治らない
  • いびきや睡眠時の呼吸異常がある
  • 滲出性中耳炎を繰り返す

🔹 受診の際に確認するとよいこと

  • アデノイドの大きさの測定(内視鏡検査・レントゲン)
  • アレルギーや副鼻腔炎の併発の有無
  • 手術の必要性についての診断

💡 耳鼻咽喉科の中でも、小児耳鼻咽喉科や手術が可能な病院を選ぶと、より適切な治療を受けられます。


まとめ

アデノイドは10代で自然に縮小するが、症状がある場合は治療が必要
大人でも症状があれば、手術や治療の検討が必要
手術後の再発リスクは低いが、まれに再生することもある
手術費用は保険適用され、高額療養費制度を活用できる
受診するなら耳鼻咽喉科(特に小児耳鼻咽喉科や手術対応可能な病院)がおすすめ

アデノイド肥大に関する疑問を解消し、適切な診断と治療を受けることで、快適な生活を取り戻しましょう!

江戸川区篠崎でアデノイド肥大による口呼吸や歯並びの影響を診断・相談できます!

お子さまの口呼吸やいびき、歯並びの乱れが気になる方へアデノイド肥大による口腔トラブルの相談・診断を実施しています。

アデノイド肥大が考える歯科トラブル

  • 口呼吸による虫歯や歯周病のリスク増加
  • 顎の成長不全や出っ歯(アデノイド顔貌)の原因
  • 睡眠の質低下による集中力や成長への影響

当院では、耳鼻咽喉科との連携も可能です。 お子様の歯並びや口呼吸の癖が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください!

【動画】アデノイド顔貌

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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