舌の表面に赤く平滑な部分が現れ、その周囲を白っぽい縁取りが囲むことで、地図のような模様に見えることがあります。このような状態を**「地図状舌(ちずじょうぜつ)」**といいます。

地図状舌は「良性移動性舌炎」とも呼ばれ、舌の表面にある糸状乳頭が部分的に消失することで、特徴的な赤い斑状の変化がみられます。

見た目の変化が大きいため、「何か重大な病気ではないか」と心配される方も少なくありません。地図状舌そのものは一般に良性の状態で、多くの場合、特別な治療を必要としません。

ただし、舌に生じる赤色や白色の病変には地図状舌以外の病気もあります。見た目だけで自己判断せず、治りにくい病変や痛み、しこり、出血などがある場合は、歯科や歯科口腔外科を受診することが大切です。

地図状舌では、舌の表面に赤く平滑な部分と、その周囲を取り囲む白っぽい境界がみられることがあります。

病変の大きさや位置は一定ではなく、時間の経過とともに形が変わったり、別の場所に現れたりすることが特徴です。

舌の表面に地図のような赤い斑点と白い縁取りが現れる「地図状舌」の典型例。場所や形が日によって変化しますが、ほとんどが良性で心配のない状態です。
舌の表面に地図のような赤い斑点と白い縁取りが現れる「地図状舌」の典型例。場所や形が日によって変化しますが、ほとんどが良性で心配のない状態です。

主な症状

  • 舌に地図のような赤い模様が現れる
  • 赤い部分の周囲に白っぽい縁取りがみられる
  • 模様の大きさや位置が変化する
  • 自覚症状がないことが多い
  • 辛いものや酸味の強いものを食べると、しみたりヒリヒリしたりすることがある
  • 舌の表面がまだらに見える

地図状舌では、病変が同じ場所に固定されず、消失と出現を繰り返しながら位置や形が変化することがあります。このような特徴から「良性移動性舌炎」とも呼ばれています。

地図状舌は、舌背や舌縁、舌尖などにみられます。

赤く平滑に見える部分では糸状乳頭が減少・消失し、その周囲に白色または黄白色の境界がみられることがあります。

右側舌縁に白い縁取りを伴う紅斑を認める地図状舌の所見。
右側舌縁に白い縁取りを伴う紅斑を認める地図状舌の所見。
舌尖部に境界明瞭な紅斑と白色辺縁がみられる典型的な地図状舌。
舌尖部に境界明瞭な紅斑と白色辺縁がみられる典型的な地図状舌。
左側舌縁に複数の紅斑と白色縁取りが帯状に分布する地図状舌の所見。
左側舌縁に複数の紅斑と白色縁取りが帯状に分布する地図状舌の所見。

舌の側縁部

舌の左右の縁に赤く平滑な部分が現れ、その周囲に白っぽい境界がみられることがあります。

舌尖部(舌先)

舌先にも境界の比較的明瞭な赤い病変が現れることがあります。

舌背部

舌の中央から後方にかけて複数の病変がみられ、組み合わさることで地図のような模様に見えることがあります。

病変の範囲や形には個人差があり、同じ方でも時間の経過によって見え方が変化します。

地図状舌が生じる詳しい原因や発症メカニズムは、現在のところ十分には解明されていません。

遺伝的な背景や免疫学的な要因など、さまざまな因子との関連が研究されていますが、特定の原因だけで発症する病気ではないと考えられています。

遺伝的な要因

地図状舌には家族内でみられる例もあり、遺伝的な背景が関係している可能性が研究されています。

ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。

ストレスや体調との関係

患者さんによっては、ストレスや体調の変化などに伴って症状が目立つと感じることがあります。

一方で、ストレスや睡眠不足が地図状舌の直接的な原因であるとは確立されていません。

そのため、「ストレスをなくせば治る」と考えるのではなく、症状がある場合には口腔内の状態を確認することが大切です。

アレルギー疾患などとの関連

地図状舌は、アトピー性疾患などとの関連についても研究されています。

ただし、これらの疾患が地図状舌を直接引き起こすと確定しているわけではありません。

ホルモンなどとの関連

ホルモンの変化を含め、さまざまな全身的要因との関連が検討されていますが、地図状舌との明確な因果関係については十分に分かっていません。

栄養状態との関係

鉄やビタミンB群などの栄養状態と地図状舌との関連について検討された報告もありますが、これらの栄養素の不足が地図状舌の直接的な原因であるとは確立されていません。

そのため、地図状舌があるという理由だけで、自己判断でビタミン剤や鉄剤などを摂取する必要はありません。

舌の痛みや発赤などから栄養不足が疑われる場合には、必要に応じて医療機関で検査を行い、原因を確認します。

溝状舌との関連

地図状舌では、舌の表面に溝がみられる**「溝状舌」**を伴うことがあります。

地図状舌と溝状舌は併存することがありますが、溝状舌が地図状舌の原因というわけではありません。

地図状舌は一般に良性で、自覚症状がなければ治療を必要とせず、経過観察となることが多い状態です。

病変が消失したり再び現れたり、位置や大きさが変化したりすることがあります。

また、地図状舌自体は口腔がんの前がん病変とは考えられていません。

ただし、ここで注意したいのは、舌にできた赤い病変を自分で「地図状舌だから大丈夫」と判断しないことです。

舌の赤色病変や白色病変には、地図状舌以外にもさまざまな原因があります。

歯科・歯科口腔外科への受診を検討したい症状

  • 強い痛みやヒリヒリ感が続く
  • 病変が長期間ほぼ同じ場所に残っている
  • これまでとは異なる変化が現れた
  • 白い部分が厚くなっている
  • 白い部分がこすっても取れない
  • 潰瘍がなかなか治らない
  • 出血を繰り返す
  • 硬い部分やしこりがある
  • 舌の動かしにくさなどがある

このような場合には、地図状舌以外の口腔粘膜疾患との鑑別が必要になることがあります。

症状や所見によっては、口腔カンジダ症、白板症、紅板症、扁平苔癬などを含めた他の疾患との鑑別が必要です。

地図状舌は自覚症状がなければ、通常、積極的な治療を必要としません。

ヒリヒリ感や刺激痛がある場合には、症状を悪化させるものを避けながら経過をみます。

刺激の強い食品を控える

症状があるときには、次のような飲食物によって舌がしみたり、ヒリヒリ感が強くなったりすることがあります。

  • 唐辛子などの辛い食品
  • レモンや酢など酸味の強い食品
  • アルコール飲料
  • 熱すぎる飲食物

すべての方が避ける必要はありませんが、食べたときに症状が強くなるものがあれば、一時的に控えるとよいでしょう。

口腔内を清潔に保つ

歯磨きなどの通常の口腔ケアを行い、口腔内を清潔に保ちましょう。

一方、舌の模様を取ろうとして舌ブラシや歯ブラシで強くこすると、粘膜を傷つけて痛みや刺激を生じることがあります。

地図状舌の赤い部分は汚れではないため、無理にこすって取り除く必要はありません。

体調管理を心がける

ストレスや疲労が地図状舌の直接的な原因であるとは明らかになっていませんが、体調によって口腔内の症状の感じ方が変化することがあります。

十分な睡眠や休養、バランスの取れた食生活など、基本的な体調管理を心がけましょう。

口の乾燥が気になる場合

口腔乾燥があると、舌の刺激感や不快感が強く感じられることがあります。

こまめな水分補給などを行い、必要に応じて口腔用保湿剤を使用する方法があります。

ただし、**保湿剤や洗口剤が地図状舌そのものを治療するわけではありません。**口腔乾燥を伴う場合の症状緩和を目的として使用します。

刺激感がある場合には、アルコールなどを含む刺激の強い洗口剤が合わないこともあるため注意しましょう。

地図状舌は、自覚症状がなければ積極的な治療を行わず、経過をみることが一般的です。

歯科医院や歯科口腔外科では、まず舌の状態を確認し、地図状舌に特徴的な所見がみられるか、他の口腔粘膜疾患の可能性がないかを診察します。

必要に応じて、

  • 病変の経過や症状の確認
  • 歯や補綴物などによる機械的刺激の確認
  • 口腔乾燥など口腔内環境の確認
  • 他の口腔粘膜疾患との鑑別
  • 症状に応じた対症療法

などを行います。

痛みや灼熱感などが強い場合には、症状や口腔内の状態に応じて薬剤による対症療法が検討されることがあります。

**地図状舌に対して一律にビタミン剤を処方するわけではありません。**栄養不足など他の原因が疑われる場合には、必要に応じて検査や適切な診療科への相談を検討します。

また、地図状舌に似た病変の中には別の疾患が含まれることもあるため、典型的ではない所見や治りにくい病変がある場合には、歯科口腔外科などで詳しく調べることがあります。

地図状舌は、舌の表面に赤く平滑な部分と白っぽい縁取りが現れ、時間の経過とともに位置や形が変化することが特徴です。

一般に良性で、症状がなければ特別な治療を必要としないことが多く、地図状舌そのものは口腔がんの前がん病変とは考えられていません。

一方、舌に生じる赤色や白色の病変がすべて地図状舌とは限りません。

病変が長期間同じ場所に残っている、強い痛みが続く、潰瘍が治らない、出血やしこりがあるなど、通常の地図状舌とは異なる変化がみられる場合には、自己判断せず歯科医院や歯科口腔外科を受診しましょう。

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地図状舌は多くの場合、治療を必要としない良性の変化ですが、痛みやヒリヒリ感が続く場合や、舌の見た目に不安がある場合は、ほかの病気との見分けが必要なこともあります。気になる症状を自己判断せず、まずは当歯科医院でご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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