「愛犬とキスするのは普通」「一緒のスプーンで食べさせることもある」――そんな日常のスキンシップ、実は犬の健康を脅かすリスクになるかもしれません。
歯周病は感染症であり、人間から犬に歯周病菌がうつる可能性があります。

この記事では、感染経路・リスク・予防方法を詳しく解説します。大切な家族である愛犬を守るために、ぜひチェックしてください🐾

人間と犬の歯周病の関係
人間と犬の歯周病の関係
  • 歯周病は「細菌感染症」である
  • 人間と犬の口腔内には共通する歯周病菌が存在
  • 飼い主が歯周病だと、犬もリスクが高まる

👉 つまり、飼い主の口腔環境は犬の健康に直結するのです。

歯周病の症例

この画像は、上顎と下顎の歯列および歯肉の状態を示す口腔内写真です。以下のような特徴が見られます。

歯周病の症例
歯周病の症例

🔴 上顎(赤矢印部分)

  • 歯肉に炎症・発赤・腫脹が認められます。
  • 歯と歯の間の歯肉がぷっくりと膨らみ、境界が不明瞭になっています。
  • 歯周炎の中期段階が疑われます。
  • プラーク(歯垢)や歯石の付着が原因で、歯肉が刺激を受けている状態です。

🔵 青矢印部分(右上6番周囲)

  • 歯肉の縁に自然出血が確認されます。
  • この部分は歯周ポケットが深く、歯周病菌の感染が強いことが示唆されます。
  • 歯肉が退縮し、歯根の露出も見られます。進行した歯周炎の可能性があります。

⚪ 下顎前歯部

  • 歯の根元や舌側に**白色の歯石(歯肉縁下歯石)**が大量に付着しています。
  • 歯石は硬く、ブラッシングでは除去できません。
  • この歯石が細菌の温床となり、歯肉炎・口臭・歯周病の進行を引き起こしています。

🦷 総合的な所見

  • プラークコントロール不良による慢性歯周炎の所見。
  • 歯肉出血・腫脹・歯石沈着・歯肉退縮が組み合わさっており、中等度〜重度歯周病が疑われます。
  • 専門的な**歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング)**と、歯周ポケットの精査・細菌検査が必要です。

― 歯科医師としての私の体験談 ―

私は歯科医師として日々、歯周病の治療や予防の大切さを患者さんに伝えています。
しかし、恥ずかしながら、自分の愛犬との関わりで“歯周病菌の感染”を実感することになるとは思ってもいませんでした。

🏠室内犬との生活と「なめられる」日常

私の家には、小型の室内犬がいます。幼い頃から家族同然に育ててきたので、可愛さのあまり、つい顔をなめさせたり、口元をペロッと舐められることもよくありました。
当時は「可愛いスキンシップ」くらいにしか思っていませんでしたが、今思えばこれが“感染の入り口”でした。

🪥歯磨きを嫌がる犬、放置してしまった口内環境

歯科医師として「歯磨きの大切さ」は十分理解しているのに、愛犬は歯磨きを激しく嫌がるタイプ。
「まあ、ドッグフードも噛んでるし大丈夫かな」と、ほとんど歯磨きをせずに放置してしまいました。

気づけば数年の間に、歯石がびっしり
口を近づけると、歯周病独特のあの“生臭いニオイ”が漂ってくるようになりました。

🦷10歳を過ぎて、歯が次々と抜けていく

10歳を迎える頃には、歯ぐきの腫れが目立ち、自然に抜けてしまう歯が出始めました。
動物病院で診てもらうと、
「人間と同じく、歯周病が進行していますね」とのこと。
歯肉は赤く腫れ、歯根が露出しており、典型的な歯周病の症状でした。

🧬人間の歯周病菌が犬にうつる可能性

実は、人間と犬の口内には共通する歯周病菌が存在します。
特に「ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)」などは、人間から犬への感染が報告されています。
口をなめさせたり、同じスプーンや食器を共有することで、菌が移る可能性があるのです。

私自身、日頃から臨床で歯周病菌を扱っていることもあり、改めて“自分の手や口から菌をうつしてしまったかもしれない”と反省しました。

💡今はこうしています

それ以来、私は次のように気をつけています。

  • 愛犬と口を直接触れさせない
  • 歯磨きが苦手でも、デンタルシートや歯磨きガムでケア
  • 定期的に動物病院で歯石除去や口腔チェック
  • 自分自身の口腔ケアもより丁寧に

人間と動物の健康は、密接に関わっています。
飼い主の歯周病予防は、ペットの健康にもつながる――それを、身をもって実感した出来事でした。

🍴 食べ物の口移し

飼い主が噛んだものを与えると、歯周病菌も一緒に伝わるリスク。

🥢 食器やスプーンの共有

人間用の食器を使い回すのは細菌感染の温床。

😘 キスや顔をなめさせる行為

スキンシップのつもりが、口腔内細菌を直接移してしまうことも。

  • 口臭が強くなる
  • 歯ぐきが腫れて出血
  • 歯がぐらぐらして食欲低下
  • 重度では歯が抜け、細菌が血液に入り心臓・腎臓病を引き起こすリスクも⚠️

🪥 飼い主自身の口腔ケア

  • 毎日の歯磨き
  • 定期的な歯科検診
    👉 飼い主が歯周病を予防・治療することが第一歩。

🐶 犬へのデンタルケア

  • 犬専用の歯ブラシ・歯磨きシート
  • デンタルガムや口腔ケア商品を活用

🧼 食器やおもちゃの衛生管理

  • 犬専用の食器を用意し、人間と共有しない
  • おもちゃや水飲み容器も定期的に洗浄
  • スケーリング(歯石除去):全身麻酔下で歯石を除去
  • 抜歯・外科処置:重度の場合は歯を抜くことも
  • 費用相場:軽度で数千円〜、全身麻酔や抜歯で数万円になることも

動物病院での治療は「麻酔リスク」と「費用」を考慮する必要があります。

飼い主が自分の口腔ケアを怠ると、愛犬の健康まで脅かすことになります。
お互いに**「歯周病予防を習慣化」**することで、愛犬の健康寿命を延ばし、長く一緒に過ごせるのです✨

  • 歯周病菌は人間から犬にうつる可能性がある
  • 感染経路は「口移し」「食器共有」「キス」など身近な習慣
  • 飼い主と犬の両方が口腔ケアを続けることが、愛犬の健康を守る最大の予防策

大切なパートナーである愛犬のために、今日からできるケアを始めましょう🐾

犬に歯周病菌が感染する原因は飼い主?家庭でできる予防対策

歯周病は人間だけでなく、愛犬の健康にも影響を与える可能性があります。飼い主さまご自身が歯周病予防・治療に取り組むことで、犬への感染リスクも減らせます。当院では、定期的な歯周病チェックやクリーニングを行い、口腔環境を健康に保つサポートをしています。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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