フィステル(瘻孔)とは、歯ぐきにできる小さな白いできものや膿の出口のことを指します。

多くの場合、虫歯の進行や歯の神経の感染、根の先に炎症が生じる「根尖性歯周炎」が原因となり発生します。感染によって作られた膿が内部に溜まると、体はその膿を外へ排出しようとするため、歯ぐきにトンネル状の通路が形成されます。これがフィステルです。

「ニキビのようなものだから問題ない」「膿が出ているので治っている」と考える方もいますが、フィステルは感染が続いているサインであり、病気が治癒しているわけではありません。

フィステルを放置するとどうなる?

フィステルは痛みを伴わないことが多いため、長期間放置されるケースがあります。しかし、感染源を放置すると次のようなリスクが生じます。

歯を失うリスク

根の先の炎症が慢性化すると、歯を支える骨が徐々に破壊されます。根管治療が必要な状態を放置した場合、最終的に歯の保存が困難となり抜歯が必要になることがあります。

顎の骨へのダメージ

感染が長期間続くと歯槽骨の吸収が進行します。病変が大きくなると顎骨炎や歯根嚢胞を形成し、外科手術が必要になるケースもあります。

全身への影響

慢性的な口腔内感染は、糖尿病や心血管疾患などの全身疾患との関連が報告されています。口腔内の炎症を長期間放置することは、全身の健康管理という観点からも好ましくありません。

口臭や生活の質の低下

膿が排出されることで口臭の原因になることがあります。また、見た目が気になり、人前で話したり笑ったりすることに抵抗を感じる方も少なくありません。

フィステルが形成されると膿の出口ができるため、内部の圧力が逃げて痛みを感じにくくなります。

しかし、痛みがなくても感染源は残ったままであり、根の先では炎症が進行しています。

「痛くない=治った」ではなく、「痛みを感じにくい状態で病気が進行している」と理解することが重要です。

フィステル症例の解説

今回の症例では、上顎右側側切歯(右上2番)に装着されたメタルボンドクラウンの歯ぐきにフィステルが認められました。

フィステルの症例
フィステルの症例

主な所見

  • 上顎右側側切歯にメタルボンド冠を装着
  • 歯周病による歯肉退縮
  • 歯根露出と根面の着色
  • 歯ぐきに赤い膨隆と白色の排膿部位を認める
  • 根尖部感染によるフィステル形成

考えられる原因

  • 根尖性歯周炎
  • 過去の根管治療の再感染
  • メタルコア周囲からの細菌侵入
  • 歯周病による骨吸収

治療方針

まずデンタルX線を行い、病変の範囲を確認します。

保存可能と判断された場合には再根管治療を行い、感染源を除去します。保存が困難な場合には抜歯を検討し、その後にブリッジ・インプラント・部分入れ歯などによる補綴治療を行います。

同時に歯周病治療とプラークコントロールの改善も必要です。

根管治療

最も一般的な治療法です。

感染した根管内を徹底的に清掃・消毒し、細菌を除去したうえで薬剤を充填し再感染を防ぎます。

再根管治療

過去に神経の治療を受けた歯が再感染した場合には、被せ物や土台を除去して再度根管治療を行います。

歯根端切除術

根管治療だけでは改善しない場合に行われる外科処置です。

歯ぐきを開き、根の先端と病変組織を直接除去します。その後、MTAセメントによる逆根管充填を行い、再感染を防止します。

抜歯

歯根破折や重度の骨吸収などにより保存不可能と判断された場合には抜歯を選択します。

抜歯後はインプラント、ブリッジ、部分入れ歯などで咀嚼機能を回復します。

長期間放置されたフィステルでは、根尖病変が拡大し、歯根嚢胞へ進行することがあります。

今回の症例では、上顎犬歯の根尖部に母指頭大の歯根嚢胞が形成されていました。

上顎左犬歯を原因とする歯根嚢胞
上顎左犬歯を原因とする歯根嚢胞

歯根嚢胞は根尖性歯周炎が慢性化して生じる炎症性嚢胞で、放置すると周囲骨の吸収や上顎洞への影響を引き起こすことがあります。

歯根端切除術による治療

上顎犬歯部における歯根端切除術のための開窓
上顎犬歯部における歯根端切除術のための開窓
歯根端切除術と逆根充後に人工骨を填入
歯根端切除術と逆根充後に人工骨を填入

治療では、

  • 歯肉弁の剥離
  • 骨の開窓
  • 嚢胞摘出
  • 根尖切除
  • MTAによる逆根管充填
  • 人工骨填入

を行いました。

術後3か月のレントゲンでは、新しい骨の形成が順調に進行し、良好な治癒経過が確認できました。

歯根端切除術後3か月の経過観察像
歯根端切除術後3か月の経過観察像

フィステルは一時的に膿が排出されることで症状が軽く見えるため、放置されやすい病変です。

しかし、その背後には根尖性歯周炎や歯根嚢胞などの感染病変が隠れていることが少なくありません。

早期に適切な診断と治療を受ければ、多くのケースで歯を保存できる可能性があります。

歯ぐきに白いできものや膿の出口のようなものを見つけた場合は、痛みがなくても早めに歯科医院を受診することをおすすめします。

江戸川区篠崎で歯ぐきの白いできもの(フィステル)が気になる方へ|痛みがなくても放置は危険です

歯ぐきに白いニキビのようなできものができていませんか?それは「フィステル(瘻孔)」と呼ばれ、歯の根の先に膿がたまっているサインかもしれません。

フィステルは膿の出口ができているため痛みを感じにくく、「治った」と勘違いしてしまうことがあります。しかし実際には、根尖性歯周炎や歯根嚢胞が進行し、歯を支える骨が徐々に失われている可能性があります。

江戸川区篠崎の当院では、レントゲンによる精密検査を行い、根管治療や歯根端切除術などを用いて、できる限り歯を残す治療に取り組んでいます。

「痛みがないから大丈夫」と自己判断せず、歯ぐきの腫れや白いできものを見つけたら早めにご相談ください。早期発見・早期治療が、大切な歯を守る第一歩です。

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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