「下の前歯がほとんど見えない」「噛み合わせが深いと言われたことがある」という方は、**過蓋咬合(かがいこうご)**の可能性があります。

過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆っている不正咬合の一つです。見た目だけでは気付きにくいこともありますが、程度や噛み合わせの状態によっては、前歯の摩耗や歯ぐきへの接触などがみられる場合があります。

また、過蓋咬合には歯の位置によるものだけでなく、上下の顎の骨格や歯の生え方など、さまざまな要因が関係しています。そのため、治療が必要かどうか、どのような治療が適しているかは一人ひとり異なります。

この記事では、過蓋咬合の特徴や原因、症状、治療法、子どもと大人の違いについて詳しく解説します。

過蓋咬合とは

過蓋咬合(ディープバイト)とは、噛み合わせたときに上の前歯が下の前歯を垂直方向に深く覆っている状態です。

上下の前歯には通常、適度な垂直的な重なり(オーバーバイト)があります。過蓋咬合ではこの重なりが大きくなり、程度によっては正面から見たときに下の前歯の多くが上の前歯に隠れることがあります。

ただし、「何mm以上なら必ず過蓋咬合」という数値だけで判断するものではありません。

前歯の重なりだけでなく、

  • 上下の顎の骨格
  • 前歯の傾きや位置
  • 奥歯の噛み合わせ
  • 歯列全体の状態
  • 顎の成長
  • 歯や歯ぐきへの影響

などを総合的に確認して診断します。

乳歯列期や混合歯列期の子どもにも、深い噛み合わせがみられることがあります。

症例1:子ども(乳歯)の過蓋咬合
症例1:子ども(乳歯)の過蓋咬合

子どもの過蓋咬合でみられる特徴

  • 噛んだときに下の前歯が見えにくい
  • 上の前歯が下の前歯を深く覆っている
  • 上下の前歯の傾きに特徴がある
  • 下顎が後方に位置して見えることがある
  • 他の不正咬合を伴っていることがある

ただし、見た目だけでは骨格的な問題なのか、歯の位置によるものなのかを判断できません。

子どもの過蓋咬合は早く治療したほうがいい?

子どもの過蓋咬合が見つかったからといって、すべてのケースですぐに矯正治療を開始する必要があるわけではありません。

永久歯への生え替わりや顎の成長によって噛み合わせは変化するため、

  • 年齢
  • 歯の生え替わり
  • 過蓋咬合の程度
  • 骨格的な特徴
  • 前歯の傾き
  • 他の不正咬合の有無
  • 歯や歯ぐきへの影響

などを確認したうえで、治療を開始する時期を検討します。

治療を行わず、定期的に成長や歯の生え替わりを確認する場合もあります。

子どもの過蓋咬合の治療

治療が必要と判断された場合には、原因や成長段階に応じて矯正装置などを使用します。

また、舌や唇など口の周囲の筋肉の使い方に問題が認められる場合には、必要に応じて**口腔筋機能療法(MFT)**などを併用することがあります。

使用する装置や治療開始時期は症例によって異なるため、「過蓋咬合だから特定の装置を使う」と一律に決まっているわけではありません。

成人では顎の成長がほぼ終了しているため、歯の位置や骨格、現在の噛み合わせなどを詳しく調べて治療方針を決めます。

症例2:大人(永久歯)の過蓋咬合
症例2:大人(永久歯)の過蓋咬合

大人の過蓋咬合でみられる特徴

  • 下の前歯が上の前歯に大きく隠れる
  • 上下の前歯の重なりが深い
  • 前歯がすり減っている
  • 下の前歯が上顎側の歯ぐきに接触する
  • 噛み合わせに違和感がある

過蓋咬合の程度が強くても症状がほとんどない方もいるため、噛み合わせの深さだけで治療の必要性を判断するわけではありません。

過蓋咬合が強い場合には、上下の前歯が歯や歯ぐきに接触し、口腔内に影響を及ぼすことがあります。

症例3:大人(永久歯)の過蓋咬合
症例3:大人(永久歯)の過蓋咬合

例えば、

  • 前歯の摩耗
  • 前歯の破折
  • 下の前歯が上顎側の歯ぐきに接触する
  • 上の前歯が下顎側の歯ぐきに接触する
  • 歯肉に傷ができる
  • 噛みにくさを感じる

などがみられることがあります。

ただし、こうした問題がすべての過蓋咬合で起こるわけではありません。

歯ぎしりや食いしばり、歯周病、欠損歯など、ほかの要因が重なっていることもあるため、口腔内全体を確認することが重要です。

軽度で歯や歯ぐきに問題がなく、経過観察が選択されるケースもあります。

一方、噛み合わせが深く、上下の歯や歯ぐきが強く接触している場合には、長期的に負担がかかることがあります。

前歯がすり減ることがある

噛み合わせの状態や歯ぎしり・食いしばりなどの影響によって、前歯の摩耗が進む場合があります。

摩耗が進むと歯の形が変化したり、象牙質が露出して知覚過敏などの症状が現れたりすることがあります。

歯ぐきを傷つけることがある

重度の過蓋咬合では、下の前歯が上顎側の歯肉に接触するなど、歯と歯ぐきが強く当たる場合があります。

接触が続くと、その部分に傷や炎症が生じることがあります。

被せ物などに負担がかかることがある

噛み合わせの状態によっては、特定の歯や被せ物などに力が集中する場合があります。

特に歯の欠損や強い歯ぎしりなどがある場合は、噛み合わせ全体を確認する必要があります。

顎関節に症状がある場合は原因を総合的に調べる

過蓋咬合の方に顎の痛みや違和感がみられることはありますが、過蓋咬合だけを顎関節症の直接的な原因と考えることは適切ではありません。

顎関節症には噛み合わせだけでなく、顎関節や咀嚼筋、歯ぎしり・食いしばりなど複数の要因が関係します。

顎の痛みや口の開けにくさなどがある場合には、噛み合わせを含めて総合的に診断することが大切です。

過蓋咬合そのものが、直接的に歯根吸収を引き起こすと単純に考えることはできません。

そのため、「過蓋咬合を放置すると歯根が吸収される」と考える必要はありません。

一方、矯正治療で歯を移動させる際には、程度に個人差はあるものの歯根吸収が生じることがあります。

歯根の状態などを確認する必要がある場合には、レントゲン検査などを行いながら治療計画を立てます。

過蓋咬合は一つの原因だけで生じるとは限りません。

大きく分けると、骨格的な要因と歯・歯列に関する要因があります。

骨格的な要因

上下の顎の成長方向や位置関係など、骨格的な特徴が深い噛み合わせに関係することがあります。

骨格的な要因が強い場合には、歯の位置だけを確認するのではなく、顎顔面全体を評価することが重要です。

歯・歯列に関する要因

例えば、

  • 前歯の傾きや位置
  • 前歯の萌出状態
  • 奥歯の垂直的位置
  • 歯列の形態
  • 歯の欠損
  • 咬合支持の変化

などが過蓋咬合に関係することがあります。

複数の要因が組み合わさっているケースも少なくありません。

口腔習癖などについて

舌や唇の使い方、歯ぎしり・食いしばりなどが認められることもありますが、これらをすべて過蓋咬合の直接的な原因とみなすことはできません。

必要に応じて口腔周囲筋の機能や生活習慣なども確認し、噛み合わせとの関連を総合的に評価します。

過蓋咬合の治療では、単に「前歯の重なりを浅くする」だけではなく、原因や骨格、歯の位置、顔貌、他の不正咬合などを考慮する必要があります。

過蓋咬合の治療法

子どもの場合

成長期では、顎の成長や永久歯への生え替わりを確認しながら治療方針を決めます。

必要に応じて矯正装置を使用する場合がありますが、治療開始時期や使用する装置は症例によって異なります。

すぐに治療を開始せず、定期的に経過を観察することもあります。

大人の場合

成人の過蓋咬合では、主に矯正治療によって上下の歯の位置や噛み合わせを調整します。

代表的な方法には、

  • ワイヤー矯正
  • マウスピース型矯正装置

などがあります。

ただし、どちらの方法でもすべての過蓋咬合を同じように治療できるわけではありません。

過蓋咬合の程度や骨格、前歯の位置、歯周組織の状態などを確認したうえで治療方法を選択します。

重度の場合

骨格的な問題が大きい場合や、歯の欠損・摩耗・歯周病などを伴っている場合には、矯正治療だけでは対応できないことがあります。

症例によっては、

  • 矯正治療
  • 補綴治療
  • 歯周病治療
  • 欠損歯に対する治療
  • 外科的矯正治療

などを組み合わせて治療計画を立てることがあります。

過蓋咬合の種類や程度によっては、マウスピース型矯正装置で治療できる場合があります。

一方、骨格的な問題が大きいケースや複雑な歯の移動が必要なケースなどでは、マウスピース型矯正装置だけでは治療が難しい場合があります。

そのため、「過蓋咬合だからマウスピース矯正ができる・できない」と一律に判断することはできません。

治療前にレントゲン撮影や口腔内検査などを行い、歯や骨格の状態を詳しく診断することが重要です。

次のような特徴がある場合には、噛み合わせが深くなっている可能性があります。

  • 噛んだときに下の前歯がほとんど見えない
  • 上の前歯が下の前歯を深く覆っている
  • 下の前歯が上顎側の歯ぐきに当たる
  • 前歯がすり減っている
  • 噛み合わせが深いと指摘されたことがある

ただし、セルフチェックだけで過蓋咬合の程度や治療の必要性を判断することはできません。

過蓋咬合は、上の前歯が下の前歯を深く覆っている不正咬合です。

噛み合わせが深いだけで必ず治療が必要になるわけではありませんが、程度によっては前歯がすり減ったり、歯が歯ぐきに接触したりすることがあります。

また、子どもと大人では顎の成長や歯の状態が異なるため、治療を開始する時期や方法も異なります。

「下の前歯がほとんど見えない」「歯ぐきに前歯が当たっている」「前歯のすり減りが気になる」といった場合には、一度歯科医院で噛み合わせを確認してもらうとよいでしょう。

過蓋咬合の治療では、前歯の重なりだけを見るのではなく、骨格・歯並び・噛み合わせ・歯周組織などを総合的に診断し、一人ひとりに適した治療方法を検討することが大切です。

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過蓋咬合は単なる歯並びの問題ではなく、歯の寿命や顎関節の健康にも大きく関わる不正咬合です。特に成長期のお子さまでは早期発見・早期治療が重要です。

江戸川区篠崎の当院では、噛み合わせの診査を行い、お子さまから大人まで一人ひとりに合わせた治療方法をご提案しています。深い噛み合わせや顎の違和感が気になる方は、お気軽にご相談ください。

【動画】アデノイド顔貌

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
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日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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