目次

ミュータンス菌(Streptococcus mutans)は、口腔内に存在する細菌の一種であり、虫歯(う蝕)の主な原因菌とされています。この菌は糖を分解し、強力な酸を生成することで歯のエナメル質を溶かし、虫歯を引き起こします。

ミュータンス菌
ミュータンス菌

ミュータンス菌の特徴

  • 糖を発酵し酸を作る:主に砂糖(スクロース)をエネルギー源として発酵し、乳酸を生成。
  • 歯の表面に強固なバイオフィルム(プラーク)を形成:菌が歯の表面に付着しやすく、増殖を助ける。
  • 他の細菌と連携して虫歯を悪化させる:ラクトバチルス菌などと共生しながら、虫歯の進行を加速。

どのように虫歯を引き起こすのか?

  1. 糖を摂取する
    • 食事やおやつで摂取した糖分をミュータンス菌が分解。
  2. 乳酸を生成
    • 分解の過程で酸が産生され、口腔内のpHが低下(酸性化)。
  3. 歯のエナメル質が溶ける(脱灰)
    • pH5.5以下になるとエナメル質のカルシウムやリンが溶け出し、虫歯が発生。
  4. プラーク(歯垢)の形成
    • ミュータンス菌は不溶性グルカンという物質を作り、**歯の表面にバイオフィルム(プラーク)**を形成。
    • これにより細菌が保護され、除去しにくくなる。
  5. 虫歯の進行
    • 酸が長時間歯に接触すると、エナメル質に穴が開き(初期虫歯)、その後象牙質・神経へと進行する。

ミュータンス菌の発生原因と感染経路

ミュータンス菌は生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しません。しかし、日常生活の中で親や周囲の人から感染します。

ミュータンス菌の母子感染
ミュータンス菌の母子感染

主な感染経路

  • 母子感染:スプーンや箸の共有、口移しなどで母親や家族から子どもに感染。
  • 飛沫感染:唾液を介して人から人へうつる可能性がある。
  • 環境要因:口腔ケアが不十分だと菌が増殖しやすい。

発生・増殖しやすい環境

  • 甘いものを頻繁に摂取する(糖分がエサになる)
  • 歯磨きが不十分でプラークが溜まる
  • 唾液の分泌が少なく、口が乾燥している(唾液には殺菌・自浄作用がある)

▶ 予防のポイント

  • 歯磨きやフロスでプラークをしっかり除去
  • フッ素を活用して歯の再石灰化を促進
  • キシリトールを摂取し、ミュータンス菌の活動を抑える
  • 家族全員で口腔ケアを徹底し、感染を予防する

このように、ミュータンス菌は単独で虫歯を引き起こすのではなく、食習慣や口腔環境との相互作用によって影響を与えます。次のセクションでは、「ミュータンス菌は本当に殺菌できるのか?」について詳しく解説していきます。

ミュータンス菌は虫歯の主な原因菌ですが、完全に殺菌することはほぼ不可能です。口腔内には数百種類の細菌が存在し、そのバランスが保たれているため、特定の菌だけを完全に除去することは難しいとされています。しかし、ミュータンス菌の数を減らすことは可能であり、虫歯のリスクを大幅に低減できます。

バイオフィルム(プラーク)
バイオフィルム(プラーク)

完全に殺菌することは可能か?

🔹 現時点では完全な殺菌は困難

  • ミュータンス菌は**バイオフィルム(プラーク)**の中に存在し、外部からの殺菌剤が届きにくい。
  • 口腔内は常に細菌が繁殖しやすい環境であり、食事や唾液を介してすぐに再感染する。

🔹 殺菌ではなく「抑制」が現実的

  • 口腔内の細菌バランスを保ちつつ、ミュータンス菌の増殖を抑えることが重要。
  • 歯科医院での専門的な治療と日常のセルフケアを組み合わせることで菌の数を減らす。

口腔外のミュータンス菌なら殺菌可能

消毒・殺菌・滅菌の違い

高圧蒸気滅菌器
消毒

細菌の数を人体に影響の無い程度まで死滅・除去すること。薬事法上「医薬品」や「医薬部外品」のみに使用できます。

殺菌

殺菌は菌を殺すことですが、一部の菌を殺しても殺菌といえます。「殺菌」という言葉は薬機法上「医薬品」または「医薬部外品」や、薬用石けんなどの「医薬部外品」などで使用が可能です。

滅菌

細菌やウイルスを100万分の1以下にすることで、器具などが対象になります。歯科医院では高圧滅菌器などがそれにあたります。

ミュータンス菌を殺菌する温度と時間

煮沸消毒
ミュータンス菌は60℃のお湯なら30分で殺菌可能

ミュータンス菌は、60℃なら30分、75℃なら15分で低温殺菌でき死滅します。

ミュータンス菌以外の口腔内細菌すべてを殺菌するには75度以上で最低20分以上の加熱殺菌が必要です。

ちなみに、歯科医院で使う高圧蒸気滅菌器オートクレーブは、134℃で10分間の設定になっています。

水洗いした食器にミュータンス菌は残る?

食器を洗剤で水洗い
食器を洗剤で水洗い
洗剤を付けて食器を水洗いすれば OK

厳密に実験したわけではありませんが、食器は台所用洗剤で洗うだけで十分だと思います。もちろん多少のミュータンス菌(虫歯菌)は残る可能性は否定出来ませんが、感染するほどの菌量ではないと考えるのが妥当でしょう。また、食器洗い機を使えば、さらに、効率よく除去出来るかもしれません。

ミュータンス菌の付着した食器や歯ブラシなどを煮沸消毒するには60度に加熱したお湯で30分、75度のお湯なら15分で殺菌出来ますが、食事のたびにこれをするのは現実的ではありません。

それよりも、母親の口腔内のミュータンス菌を減らし、子供に移さないようにすることの方がはるかに重要ですし、現実的です。

ミュータンス菌のアルコール消毒は?

食器や歯ブラシなどをアルコール消毒すれば、殺菌出来る可能性がありますが、これも上記の理由で非現実的です。

では、お酒(アルコール)ではどうかという疑問に対しては、アルコール濃度が低く過ぎるため殺菌は出来ません。


次のセクションでは、「ミュータンス菌を減らすために特に有効な生活習慣と予防法」について詳しく解説していきます。

ミュータンス菌を完全に殺菌することは困難ですが、適切な口腔ケアを行うことで菌の数を減らし、虫歯のリスクを大幅に低減できます。ここでは、科学的に効果が認められている方法を紹介します。

1. 歯磨きとフロスの重要性

正しい歯磨きでミュータンス菌を減らす

ミュータンス菌は**バイオフィルム(プラーク)**の中に潜んでおり、機械的な除去(ブラッシング)が最も効果的です。

ポイント

  • 1日2回以上、特に夜寝る前の歯磨きを徹底
  • プラークが残りやすい奥歯や歯の根元を丁寧に磨く
  • 電動歯ブラシを活用するとより効率的

フロス・歯間ブラシの活用

  • 歯間には歯ブラシが届かないため、デンタルフロスや歯間ブラシが必須
  • ミュータンス菌が多く潜む「歯と歯の間」の清掃が虫歯予防に直結
  • 就寝前にフロスを使うと、夜間の菌の増殖を防げる

2. フッ素の効果と活用法

フッ素がミュータンス菌に与える影響

フッ素は単に歯を強くするだけでなく、ミュータンス菌の活動を抑える作用もあります。

フッ素歯磨き粉
フッ素歯磨き粉

フッ素の働き

  • 歯の再石灰化を促進し、酸で溶けた歯の修復を助ける
  • ミュータンス菌の酸産生を抑制し、菌の活動を弱める
  • エナメル質を強化し、酸に対する耐性を向上させる

フッ素の効果的な活用方法

フッ素の種類使い方主な製品
フッ化ナトリウム(NaF)歯磨き粉や洗口液に配合1450ppmの高濃度フッ素歯磨き粉
フッ化第一スズ(SnF2)抗菌作用もある一部の高級歯磨き粉
フッ化物洗口液1日1回のうがいで効果的0.05%ナトリウムフッ化物洗口液

🟢 おすすめの使い方

  • フッ素入り歯磨き粉を使用し、磨いた後は軽くすすぐ(30分間飲食を避けると効果UP)
  • フッ化物洗口液を併用することで、より長時間の抗菌効果を発揮
  • 定期的に歯科医院で「高濃度フッ素塗布」を受ける

3. デンタルリンス・洗口液の活用

デンタルリンス(洗口液)は、ミュータンス菌の増殖を抑える補助的な役割を果たします。ただし、うがいだけでプラークは除去できないため、歯磨きと併用することが必須です。

市販のうがい薬や歯磨き粉の効果

市販のうがい薬や歯磨き粉にも、ミュータンス菌の増殖を抑える成分が含まれているものがあります。ただし、うがい薬だけで虫歯を防ぐことはできず、歯磨きや食生活の見直しと併用することが必須です。

有効成分とその効果

成分名主な効果含まれる製品例
フッ化ナトリウム(NaF)歯の再石灰化を促進、酸の耐性を強化フッ素配合歯磨き粉・洗口液
クロルヘキシジン(CHX)殺菌作用が強い(ただし長期使用不可)一部のデンタルリンス
CPC(塩化セチルピリジニウム)口腔内の細菌の増殖を抑制薬用歯磨き粉・マウスウォッシュ
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)バイオフィルム内部に浸透して殺菌歯磨き粉・洗口液
ラクトフェリン免疫機能を高め、抗菌作用あり乳製品由来の成分を含む歯磨き粉

🟢 おすすめの使い方

  • 歯磨き粉はフッ素入りのものを使用し、ブラッシング後のすすぎは軽めに
  • 殺菌効果のある洗口液を寝る前に使用する(就寝中は唾液が減少し、菌が繁殖しやすいため)
  • 歯科専用の高濃度フッ素ジェルやうがい薬を活用
  • 歯磨き後の仕上げとして使う(単独ではプラーク除去効果はない)

4. キシリトールの摂取

キシリトールがミュータンス菌を抑えるメカニズム

キシリトールは天然の甘味料ですが、ミュータンス菌にとっては代謝できないため、酸を産生できず、菌の活動を弱める効果があります。

キシリトールの効果

  • ミュータンス菌の酸産生を抑制
  • 菌の粘着性を低下させ、プラーク形成を防ぐ
  • 長期間摂取することで、菌の数自体を減少させる

効果的な摂取方法

  • 1日3〜5gを目安に摂取
  • 100%キシリトールガムを噛む(最低5分以上)
  • 食後や歯磨き後に摂取すると効果的

5. プロバイオティクスと口腔内細菌のバランス

口腔内の善玉菌を増やすことでミュータンス菌を抑制

腸内と同様に、口腔内にも「善玉菌」と「悪玉菌」のバランスが存在します。最近の研究では、特定のプロバイオティクス(善玉菌)がミュータンス菌の増殖を抑えることが分かってきています。

有効なプロバイオティクス

善玉菌の種類作用
L. reuteri(ロイテリ菌)ミュータンス菌を減少させる
L. salivarius(サリバリウス菌)口臭や歯周病菌の抑制
B. lactis(ビフィズス菌)口腔内のpHを安定化

摂取方法

  • プロバイオティクス入りヨーグルトやサプリメントを継続摂取
  • 乳酸菌タブレットを活用
  • 発酵食品(納豆・漬物)を食生活に取り入れる

まとめ

ミュータンス菌を減らすには、日常の口腔ケアと生活習慣の改善が必須。
歯磨き+フロスが最も基本的で効果的な対策。
フッ素、デンタルリンス、キシリトールを活用し、菌の活動を抑える。
プロバイオティクスで善玉菌を増やし、菌のバランスをコントロール。

次のセクションでは、「歯科でできるミュータンス菌対策」について詳しく解説していきます。

家庭でのケアだけでは完全にミュータンス菌を抑えることは難しいため、歯科医院での専門的な処置を組み合わせることで、より効果的に菌の数を減らし、虫歯を予防することができます。ここでは、歯科で行われる代表的なミュータンス菌対策について解説します。

1. 3DS(Dental Drug Delivery System)治療とは

3DSとは?

3DS(Dental Drug Delivery System) は、ミュータンス菌を効果的に減少させる歯科医院専用の抗菌治療です。専用のトレーを使い、抗菌剤を歯に直接塗布することで、口腔内のミュータンス菌をピンポイントで除菌します。

3DSの仕組み

  1. 口腔内の細菌検査を実施し、ミュータンス菌の量を測定
  2. PMTC(プロフェッショナルクリーニング)で歯の表面を徹底的に清掃
  3. 専用のマウスピース型トレーを作製
  4. 抗菌剤(クロルヘキシジンなど)をトレーに注入し、一定時間装着
  5. 一定期間継続することで、ミュータンス菌の数を大幅に減少させる

3DSの効果

ミュータンス菌の除去率が高い(約90%減少)
再感染を防ぐ効果が期待できる
虫歯リスクが高い人(高齢者、矯正治療中の人、糖尿病患者)に特に有効

注意点

  • 効果は永久ではなく、定期的な再施術が必要(通常半年〜1年ごと)
  • 3DSだけで虫歯を完全に防げるわけではないため、日常のケアも重要

2. PMTC(プロフェッショナルクリーニング)で菌の抑制

PMTCとは?

PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning) とは、歯科衛生士が専用の機器を使って行うプロフェッショナルな歯のクリーニングです。通常の歯磨きでは取り切れないバイオフィルム(プラーク)やミュータンス菌の温床となる汚れを徹底的に除去します。

PMTCの手順

  1. 歯垢(プラーク)やバイオフィルムの染め出しを行い、汚れの確認
  2. 専用の器具(回転ブラシ・ラバーカップ)で歯の表面を清掃
  3. 研磨剤を使い、歯の表面をツルツルにして菌の付着を防ぐ
  4. フッ素塗布を行い、歯の再石灰化を促進

PMTCの効果

ミュータンス菌が付着したバイオフィルムを徹底的に除去
歯の表面を滑らかにし、新たなプラークの付着を防ぐ
虫歯・歯周病の予防効果が高い

推奨される頻度

  • 3〜6ヶ月ごとの定期的な施術が理想
  • 矯正治療中の人、虫歯リスクが高い人はより短い間隔で実施

3. フッ素塗布とシーラントの役割

フッ素塗布

歯科医院では、市販の歯磨き粉よりも高濃度のフッ素(9,000〜12,000ppm)を直接塗布することができます。

フッ素塗布の効果

歯の再石灰化を促し、初期虫歯を修復
エナメル質を強化し、ミュータンス菌の酸に対する耐性を向上
ミュータンス菌の酸産生を抑制し、虫歯リスクを低減

推奨される頻度

  • 子ども(乳歯・生えたばかりの永久歯) → 3ヶ月ごとに定期塗布
  • 大人(虫歯リスクが高い人) → 6ヶ月ごとに定期塗布

シーラントとは?

シーラント(予防充填) とは、奥歯の溝を樹脂でコーティングすることで、ミュータンス菌が入り込むのを防ぐ方法です。

シーラントの効果

奥歯の溝に菌が溜まりにくくなる
フッ素成分を含むシーラントで歯を強化
虫歯になりやすい乳歯や生えたばかりの永久歯を守る

4. 抗菌薬の使用は有効か?

ミュータンス菌を抑えるために、抗菌薬を使用することができるか? という疑問がありますが、一般的に抗菌薬(抗生物質)によるミュータンス菌の除菌は推奨されていません

なぜ抗菌薬は有効ではないのか?

🚫 理由1:ミュータンス菌はバイオフィルムの中に潜んでいる

  • 抗菌薬は、浮遊している細菌(プラークの外側)には効くが、バイオフィルム内の菌には効果が限定的

🚫 理由2:耐性菌のリスク

  • 抗菌薬を長期間使用すると、耐性菌が発生し、より強力なミュータンス菌が増殖する可能性がある

🚫 理由3:口腔内の善玉菌にも影響を与える

  • 口腔内には、ミュータンス菌以外の善玉菌(プロバイオティクス)が存在し、これらを殺菌してしまうことで、逆に口腔環境が悪化することがある。

抗菌薬を使うケース

  • 重度の虫歯感染があり、歯科治療と併用する場合
  • 手術後の感染予防(抜歯後など)

結論:抗菌薬の使用よりも、フッ素・PMTC・3DSなどの対策を優先するべき


まとめ

歯科医院での専門的なケアを活用すれば、ミュータンス菌を効果的に減少できる
3DS治療は、抗菌ジェルを用いたピンポイント除菌法で高い効果がある
PMTC(プロのクリーニング)は、プラークやバイオフィルムを除去し、菌の増殖を抑える
フッ素塗布とシーラントで、歯の耐性を高めることが可能
抗菌薬の使用は、耐性菌や副作用のリスクがあるため、慎重に判断する必要がある

次のセクションでは、「ミュータンス菌と食生活の関係」について詳しく解説していきます。

食生活は、ミュータンス菌の増殖に大きく影響します。特に糖分の摂取が多いとミュータンス菌が活性化し、虫歯リスクが高まるため、適切な食習慣を身につけることが重要です。

1. 糖分摂取が菌の増殖を促進する理由

ミュータンス菌は、糖分をエネルギー源として代謝し、酸を産生することで虫歯を引き起こします

糖分の摂取がミュータンス菌に与える影響

🔹 スクロース(砂糖)を栄養源として増殖
 → ミュータンス菌はスクロースを分解し、不溶性グルカンを生成。これがプラーク(歯垢)の元となり、歯の表面に強固に付着。

🔹 乳酸を産生し、歯を溶かす
 → 口腔内のpHが低下(pH5.5以下でエナメル質が溶け始める)。

🔹 酸性環境が長時間続くと虫歯が進行
 → 間食の回数が多いと、常に酸にさらされ、再石灰化が追いつかない。

2. 虫歯予防におすすめの食品

ミュータンス菌の活動を抑え、虫歯予防に効果的な食品を積極的に取り入れましょう。

キシリトールガム、キシリトールタブレット
キシリトールガム、キシリトールタブレット
乳製品(チーズ・ヨーグルト)
乳製品(チーズ・ヨーグルト)
緑茶・紅茶
緑茶・紅茶

① キシリトールを含む食品

  • キシリトールガム、キシリトールタブレット
    ✅ ミュータンス菌が代謝できないため、酸を産生しない
    ✅ 継続的に摂取することで、菌の粘着力を低下させる
    ✅ 唾液の分泌を促し、口腔内の自浄作用を高める

② 乳製品(チーズ・ヨーグルト)

  • チーズ、無糖ヨーグルト、牛乳
    ✅ カルシウム・リンが豊富で歯の再石灰化を促進
    ✅ 口腔内のpHを中和し、酸の影響を抑える
    ✅ 乳酸菌が口腔内の悪玉菌の繁殖を抑える

③ 緑茶・紅茶

  • カテキンを含む緑茶、ポリフェノールを含む紅茶
    ✅ 抗菌作用があり、ミュータンス菌の活動を抑える
    ✅ 唾液の分泌を促進し、pHを安定化

④ 食物繊維が豊富な食品

  • 生野菜(セロリ、ニンジン)、ナッツ類
    ✅ 咀嚼回数が増え、唾液分泌を促進
    ✅ 繊維質が歯の表面を自然に清掃し、プラークを減らす

⑤ 水・無糖飲料

  • 水、無糖の炭酸水、ノンシュガーティー
    ✅ 口の中を洗い流し、糖分や酸を除去
    ✅ 唾液の分泌を助け、再石灰化を促す

3. 間食のとり方と菌の増殖リスク

間食の頻度や内容によって、ミュータンス菌の増殖リスクが大きく変わります

間食のリスクを減らすポイント

ダラダラ食べを避ける
 → 食べるたびに口腔内が酸性になり、虫歯リスクが上昇。
 → 1日3回の食事+1回の間食を目安にし、食べる時間を決める。

糖分の少ないおやつを選ぶ
 → キシリトールガム、ナッツ、チーズ、ヨーグルトなどを間食に。
 → 甘いお菓子を食べるなら、食後にまとめて摂取するのがベスト。

食後すぐに水やお茶で口をすすぐ
 → 糖分や酸を洗い流し、pHを素早く回復させる。

寝る前の飲食を控える
 → 就寝中は唾液の分泌が低下し、酸の影響を受けやすいため、寝る前の飲食は避ける。

まとめ

糖分の摂取がミュータンス菌の増殖を促し、虫歯リスクを高める
キシリトール、乳製品、緑茶などの食品がミュータンス菌を抑えるのに効果的
間食の頻度を減らし、糖分の少ない食品を選ぶことで虫歯予防につながる
食後の水分補給や適切な食習慣が、ミュータンス菌のコントロールに役立つ

次のセクションでは、「最新の研究とミュータンス菌の未来」について詳しく解説していきます。

近年、ミュータンス菌を効果的に抑制するための新しい研究が進んでおり、ワクチン開発、バクテリオファージ療法、口腔内マイクロバイオームの調整などが注目されています。これらの技術が実用化されれば、従来の虫歯予防法とは異なるアプローチで、より根本的な虫歯対策が可能になると期待されています。

1. ミュータンス菌ワクチンの開発

ワクチンでミュータンス菌を抑制する可能性

ミュータンス菌ワクチンは、体の免疫システムを活用し、ミュータンス菌の増殖を防ぐことを目的とした予防策です。現在、以下の2つのアプローチで研究が進められています。

① 免疫ワクチン

  • ミュータンス菌の**表面タンパク質(抗原)**を標的にし、抗体を作ることで感染を防ぐ。
  • 鼻腔内スプレーや経口ワクチンとしての投与が検討されている。

② 受動免疫ワクチン

  • すでに作られた抗体を直接投与し、ミュータンス菌の活動を抑える。
  • 人工的に作成した抗体を歯科治療と併用することで、菌の定着を防ぐ可能性がある。

課題と実用化の可能性

🔸 免疫反応の安全性の確保が必要
🔸 ミュータンス菌以外の常在菌への影響を最小限にする必要がある
🔸 臨床試験がまだ十分に進んでおらず、実用化には時間がかかる

2. バクテリオファージを用いた新しい殺菌技術

バクテリオファージとは?

**バクテリオファージ(ファージ)**は、細菌に感染し、それを破壊するウイルスの一種です。特定の細菌だけを標的にするため、抗生物質と異なり、耐性菌のリスクが少ないという利点があります。

ミュータンス菌に対するバクテリオファージ療法
ミュータンス菌に対するバクテリオファージ療法

ミュータンス菌に対するバクテリオファージ療法

特定のミュータンス菌のみを選択的に殺菌
口腔内の善玉菌を維持しながら、虫歯の原因菌のみを除去可能
バイオフィルムの内部に浸透し、従来の抗菌剤よりも効果的に菌を減少

現在の研究状況

  • いくつかの研究で、バクテリオファージがミュータンス菌を効果的に減少させることが確認されている。
  • 歯磨き粉やマウスウォッシュにバクテリオファージを配合する試みも進行中。
  • ただし、人体への安全性や長期的な影響がまだ不明であり、臨床試験の結果待ち。

3. 歯科業界で注目される口腔内マイクロバイオームの調整

口腔内マイクロバイオームとは?

口腔内には約700種類の細菌が存在し、これらがバランスを保つことで健康な口腔環境が維持されています。ミュータンス菌を完全に排除するのではなく、バランスを整えることで虫歯を防ぐという考え方が注目されています。

マイクロバイオーム調整の方法

プロバイオティクスの活用

  • **L. reuteri(ロイテリ菌)やL. salivarius(サリバリウス菌)**がミュータンス菌の増殖を抑えることが研究で確認されている。
  • プロバイオティクス入りの歯磨き粉やタブレットが開発されている。

プレバイオティクス(善玉菌のエサ)を摂取

  • 食物繊維やオリゴ糖を摂ることで、口腔内の善玉菌が増えやすい環境を作る

マイクロバイオーム解析による個別診断

  • 唾液を採取し、口腔内細菌のバランスを分析することで、個々に最適な虫歯予防策を提案する技術が開発中。

まとめ

ミュータンス菌ワクチンは開発中だが、実用化にはまだ時間がかかる。
バクテリオファージを利用した殺菌技術は、選択的にミュータンス菌を除去できる可能性がある。
口腔内マイクロバイオームの調整により、菌のバランスを整えることで虫歯予防を目指す新しいアプローチが注目されている。

今後、これらの技術が実用化されれば、虫歯予防の概念が大きく変わる可能性があり、より効果的で持続的なミュータンス菌対策が実現すると期待されています。

ミュータンス菌は虫歯の主な原因菌であり、口腔内では完全な殺菌は困難ですが、数を減らすことで虫歯リスクを下げることが可能です。フッ素入り歯磨き粉、デンタルフロス、キシリトールの摂取が有効で、歯科医院では3DS治療やPMTC、フッ素塗布が推奨されています。また、バクテリオファージ療法やマイクロバイオームの調整といった新技術も研究されています。

一方で、口腔外のミュータンス菌は消毒・殺菌・滅菌が可能です。例えば、煮沸消毒では60℃で30分、75℃で15分の加熱でミュータンス菌を殺菌できます。**高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)**では134℃・10分の滅菌が可能です。食器や歯ブラシの水洗いでも菌量は大幅に減少し、日常の使用には問題ないレベルに抑えられます。

しかし、食器や歯ブラシを毎回煮沸消毒するのは現実的ではなく、それよりも母親の口腔内のミュータンス菌を減らし、子供に移さないようにすることが効果的です。アルコール消毒は一部有効ですが、通常のお酒のアルコール濃度では殺菌効果は期待できません。日常的な口腔ケアと歯科の専門的な治療を組み合わせ、ミュータンス菌を抑えることが最も現実的な対策となります。

「ミュータンス菌を減らし、虫歯のない健康な歯を維持するために、今日からできることを始めてみましょう!」

江戸川区篠崎で虫歯予防!ミュータンス菌を効果的に抑える歯科ケア

虫歯の主な原因であるミュータンス菌は完全に殺菌できませんが、適切なケアで数を減らすことは可能です。当院では、フッ素塗布、PMTC(プロフェッショナルクリーニング)、3DS治療など、最新の虫歯予防対策を提供しています。

また、江戸川区篠崎にお住まいの皆さまが安心して通えるよう、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。特に、お子さまの虫歯予防には、家族ぐるみでのミュータンス菌対策が重要です。日々の歯磨き指導やキシリトール活用法など、ご家庭でできる虫歯予防もサポートいたします。

「虫歯ができやすい」「お子さまの歯を守りたい」とお考えの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。江戸川区篠崎で信頼できる虫歯予防治療をお探しの方は、当院にお任せください!

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!