上唇小帯(じょうしんしょうたい)とは、上唇の内側と上顎前歯の歯ぐきをつないでいるヒダ状の粘膜組織です。上唇をめくると、前歯の中央から縦に伸びる筋として確認できます。

子供の上唇小帯(正常)
子供の上唇小帯(正常)

上唇小帯はすべての人に存在する正常な組織であり、上唇の動きを安定させる役割を担っています。ただし、付着する位置や太さ、長さには個人差があり、場合によっては歯並びや口腔機能に影響を及ぼすことがあります。

上唇小帯の役割

上唇の安定

上唇小帯は上唇の過度な動きを抑え、口唇の位置を安定させる働きをしています。

発音や表情をサポート

上唇の動きに関与するため、「パ行」「マ行」「バ行」など唇を使う発音を助けます。また、自然な笑顔や表情の形成にも関係しています。

乳児の授乳や口腔発達への関与

乳児期には授乳時の唇の密閉に関与し、成長期には歯並びやかみ合わせの発達にも影響を与えることがあります。

上唇小帯付着異常とは

上唇小帯が通常よりも太く長く、前歯の間に深く入り込んでいる状態を「上唇小帯付着異常」と呼びます。

上唇小帯付着異常
上唇小帯付着異常

以下のような特徴がみられることがあります。

  • 前歯の中央に小帯が入り込んでいる
  • 上唇を持ち上げると歯ぐきが強く引っ張られる
  • 上唇の動きが制限される
  • 前歯のすき間が目立つ

上唇小帯が原因で起こる問題

正中離開(すきっ歯)

最も多くみられる症状が前歯のすき間です。

小帯が前歯の間に入り込むことで歯が接近するのを妨げ、正中離開の原因になることがあります。特に永久歯への生え変わり時期に目立ちやすくなります。

上唇小帯が長く前歯の間まで入り込んでいることが原因と考えられるすきっ歯(正中離開)
上唇小帯が長く前歯の間まで入り込んでいることが原因と考えられるすきっ歯(正中離開)

発音への影響

上唇の可動域が制限されると、唇を閉じて発音する音が不明瞭になることがあります。

授乳障害

乳児では唇を十分に密着できず、母乳やミルクをうまく吸えない場合があります。

表情の違和感

笑った際に上唇が上がりにくく、不自然な表情になることがあります。

上唇小帯は矯正治療に大きく関係します。

特に前歯のすき間を閉じる治療では、小帯が歯の間に入り込んでいると歯の移動を妨げたり、治療後の後戻りの原因になったりすることがあります。

次のような場合には小帯切除を検討することがあります。

  • 小帯が前歯の間まで入り込んでいる
  • 矯正しても隙間が閉じにくい
  • 治療後にすきっ歯が再発した
  • 将来的な後戻りが予想される

歯科医院での診査

歯科医師は以下の点を確認します。

  • 小帯の太さや長さ
  • 付着位置
  • 上唇の可動域
  • 正中離開の有無
  • 永久歯の萌出状況

自宅で確認できるポイント

以下のような症状がある場合は歯科受診をおすすめします。

  • 前歯の中央に大きなすき間がある
  • 上唇をめくると歯ぐきが白く引っ張られる
  • 発音が不明瞭
  • 授乳時に吸い付きが悪い

手術が必要になるケース

次のような場合に上唇小帯切除術が適応となります。

  • 正中離開の原因となっている
  • 矯正治療の妨げになっている
  • 発音障害がある
  • 授乳障害がある
  • 上唇の可動域が著しく制限されている

手術の流れ

  1. 診査・診断
  2. 局所麻酔
  3. 小帯切除
  4. 必要に応じて縫合
  5. 術後経過観察

処置時間は10~20分程度で、多くの場合は日帰りで行えます。

保険適用について

上唇小帯切除術は機能障害や歯列への影響が認められる場合、健康保険が適用されます。

保険診療では3割負担で約2,000~5,000円程度が目安です。

なお、別途初診料・再診料・レントゲン撮影料・投薬料などが必要になる場合があります。

術後の注意点

術後は傷口を安静に保ち、清潔な状態を維持することが重要です。

食事

術後数日は以下のような食事がおすすめです。

  • おかゆ
  • スープ
  • ヨーグルト
  • ゼリー
  • 豆腐

熱い飲食物や刺激物、硬い食べ物は避けましょう。

口腔ケア

歯磨きは継続しますが、傷口を強くこすらないよう注意します。

再診

術後1~2週間程度で経過観察を行い、治癒状態や再癒着の有無を確認します。

必ずしも手術が必要とは限らない

上唇小帯が目立っていても、すべての症例で切除が必要なわけではありません。

上唇小帯は必ず切らなくてよい?前歯が生えるまで様子を見るという選択肢
上唇小帯は必ず切らなくてよい?前歯が生えるまで様子を見るという選択肢
5か月後の上唇小帯の変化:自然に薄く・上方へ移動
5か月後の上唇小帯の変化:自然に薄く・上方へ移動

特に小児では成長に伴い、

  • 小帯が薄くなる
  • 付着位置が上方へ移動する
  • 永久歯の萌出によってすき間が閉じる

といった自然な改善がみられることがあります。

そのため、前歯が生えそろう前の段階では経過観察を選択することも少なくありません。

小児における治療時期の目安

3〜6歳

発音障害や授乳障害など機能的な問題がある場合に治療を検討します。

6〜12歳

永久歯への交換期にあたり、正中離開の状態や矯正計画を考慮して判断します。

特に7〜8歳頃は治療時期を検討する重要なタイミングです。

大人の上唇小帯治療

成人でも次のような理由で治療を受けることがあります。

  • 前歯のすき間が気になる
  • 成人矯正を予定している
  • 発音が気になる
  • 上唇が動かしにくい
  • 歯磨きやフロスがしにくい

局所麻酔による短時間の処置で対応でき、日常生活への影響も比較的少ない治療です。

上唇小帯は上唇と歯ぐきをつなぐ重要な組織ですが、付着位置や形態によっては正中離開や発音障害、矯正治療への影響を引き起こすことがあります。

一方で、小児では成長とともに自然改善するケースも少なくありません。そのため、すぐに手術を行うのではなく、年齢や永久歯の萌出状況、歯並びの変化を総合的に評価して判断することが重要です。

前歯のすき間や上唇の動きに気になる症状がある場合は、小児歯科や矯正歯科で一度相談することをおすすめします。

江戸川区篠崎でお子さまのすきっ歯や上唇小帯が気になる方へ|成長による変化と切除が必要なケース

「前歯のすき間がなかなか閉じない」「学校や健診で上唇小帯を指摘された」「矯正前に切ったほうがよいと言われた」などでお悩みではありませんか。

上唇小帯は上唇と歯ぐきをつなぐ正常な組織ですが、付着位置や太さによっては、すきっ歯(正中離開)や矯正治療後の後戻りに関係することがあります。一方で、お子さまの場合は成長とともに自然に改善するケースも少なくありません。

江戸川区篠崎の当院では、お子さまの成長段階や永久歯の生え変わりの状況を確認しながら、経過観察・小児矯正・上唇小帯切除術の必要性を総合的に判断しています。

「今すぐ切除が必要なのか」「様子を見ても大丈夫なのか」をわかりやすくご説明し、お子さまにとって最適な治療時期をご提案いたします。前歯のすき間や上唇小帯について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

【動画】すきっ歯とは?原因から治療まで徹底解説

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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