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歯髄炎とは
歯髄炎とは

歯髄炎(しずいえん)とは、歯の内部に存在する「歯髄(しずい)」に炎症が起こる疾患です。歯髄には神経や血管が含まれており、歯に栄養を供給するとともに、冷たい・熱い・痛いといった刺激を感じる重要な役割を担っています。

歯髄炎は主に虫歯の進行によって発症しますが、歯の破折や外傷、詰め物・被せ物の不適合などが原因となることもあります。炎症が進行すると激しい痛みを伴い、神経を保存できなくなる場合があります。

早期に発見し適切な治療を受けることで、神経を残せる可能性が高まります。

歯髄炎の主な原因

虫歯の進行

最も多い原因は虫歯です。

銀歯の下で進行した深いC3虫歯。強い痛みを伴い抜髄が必要な歯髄炎の状態。
銀歯の下で進行した深いC3虫歯。強い痛みを伴い抜髄が必要な歯髄炎の状態。

虫歯がエナメル質にとどまる初期段階では痛みはほとんどありません。しかし、象牙質まで進行すると冷たいものがしみるようになり、さらに歯髄まで達すると炎症が起こり強い痛みが生じます。

歯のひび割れや外傷

転倒や衝突による外傷、歯ぎしりや食いしばりによる歯のひび割れから細菌が侵入し、歯髄炎を引き起こすことがあります。

詰め物・被せ物の劣化

古い詰め物や被せ物の隙間から細菌が侵入し、内部で虫歯が進行するケースも少なくありません。特に銀歯の下で虫歯が進行している場合は発見が遅れやすく、重症化しやすい傾向があります。

細菌感染

口腔内の細菌が形成するバイオフィルム(歯垢)は、虫歯の進行を促進し、歯髄へ感染を広げる原因となります。

歯髄炎の進行と症状

1. 冷たいものがしみる

歯髄炎の初期症状です。

冷たい飲み物や甘いものを口にしたときに一時的な痛みが生じます。この段階では神経を保存できる可能性があります。

2. 温かいものでも痛む

炎症が進行すると、冷たいものだけでなく温かい飲食物でも痛みを感じるようになります。

3. 自発痛が現れる

刺激がなくてもズキズキとした痛みが生じます。

この状態は「不可逆性歯髄炎」と呼ばれ、自然治癒は期待できません。

4. 夜眠れないほどの激痛

炎症がさらに進行すると拍動性の激しい痛みが続き、夜間に症状が悪化することがあります。

5. 突然痛みが消える

神経が壊死すると痛みを感じなくなります。

しかし、これは治癒したわけではなく、歯の内部で感染が進行している危険な状態です。

6. 歯ぐきの腫れや膿が出る

神経が壊死した後も放置すると、根の先に膿がたまり、歯ぐきの腫れやフィステル(瘻孔)が形成されます。

歯髄炎の見た目の特徴

歯髄炎を起こした歯には以下のような変化がみられます。

前歯の歯髄炎の見た目

  • 上顎前歯にできたC3虫歯で、歯が少し欠けて穴が見え始めています。
  • 表面は茶色〜黒色に変色しており、ズキズキとした痛みがあるのが特徴です。
  • 歯髄炎と診断され、早急な治療が必要です。

第二乳臼歯の歯髄炎の見た目(子どもの症例)

  • 第二乳臼歯にできたC3虫歯で、穴が空いて茶色に変色しています。
  • 子どもでも強い痛みが出ることがあり、歯髄炎のサインです。
  • この段階では**根管治療(神経除去)**が必要になるケースがほとんどです。
  • 茶色や黒色への変色
  • 大きな虫歯の穴
  • 歯の一部が欠けている
  • 銀歯や被せ物の周囲の変色
  • 歯ぐきの腫れや膿の排出

前歯でも奥歯でも発症しますが、奥歯は発見が遅れやすい傾向があります。

歯髄炎による強い痛みがある場合、歯科医院を受診するまでの応急処置として正露丸を使用する方法が知られています。ただし、あくまでも一時的な対症療法であり、根本的な治療にはなりません。

虫歯の穴を清掃する

まず、虫歯の穴に詰まった食べカスや汚れを歯ブラシでやさしく取り除きます。汚れによる刺激が減ることで、痛みが軽減する場合があります。

ただし、強くこすりすぎると歯髄を刺激して痛みが悪化することがあるため注意が必要です。

歯ブラシで食べカスを除去
歯ブラシで食べカスを除去

正露丸を虫歯の穴に詰める

清掃後、正露丸を小さくちぎり、虫歯の穴に軽く詰めます。正露丸に含まれる成分によって、一時的に痛みが和らぐことがあります。

ただし、強く押し込んだり大量に詰めたりすると、かえって症状が悪化することがあるため避けましょう。

正露丸を虫歯の穴に詰める
正露丸を虫歯の穴に詰める

正露丸が効かないケース

歯髄壊死が起きている場合

噛むだけで強い痛みが出たり、歯が浮いたような感覚がある場合は、歯髄が壊死し根の先に炎症が広がっている可能性があります。

このような状態では正露丸による効果は期待できず、逆に刺激となって痛みが強くなることもあります。

痛みが続く場合

正露丸を使用しても痛みが改善しない場合は、市販の鎮痛薬を服用して症状を緩和する方法があります。

ただし、鎮痛薬も一時的に痛みを抑えるだけで、歯髄炎そのものを治すことはできません。できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

乳歯には使用しない

乳歯の虫歯に正露丸を詰めることは推奨されません。刺激によって痛みが強くなったり、症状が悪化したりする可能性があります。

お子さまの虫歯による痛みがある場合は、自己判断で処置を行わず、速やかに歯科医院を受診してください。

市販の鎮痛薬を服用する

ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬で一時的に痛みを抑えることができます。

冷却する

頬の外側から冷やすことで症状が緩和する場合があります。

なお、アルコール摂取や長時間の入浴は血流を増加させ、痛みを悪化させることがあります。

歯髄炎による強い痛みがある場合、本格的な根管治療を行う前に炎症を抑えるための応急処置を行うことがあります。CC(フェノール・カンフル製剤)とネオダインを用いた貼薬処置は、その代表的な方法の一つです。

スプーンエキスカベーターによる虫歯除去

まず、スプーンエキスカベーターと呼ばれる手用器具を使用し、軟らかくなった虫歯部分を慎重に除去します。

急性症状が強い場合は、歯髄への刺激を最小限に抑えるため、痛みが出ない範囲で虫歯を取り除きます。無理に深部まで削ると歯髄を露出させ、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。

スプーンエキスカベーターで虫歯除去
スプーンエキスカベーターで虫歯除去

CC+ネオダインの貼薬処置

虫歯除去後、患部にCCとネオダインを貼薬します。

CCには消毒作用があり、ネオダインには鎮静・抗炎症作用があります。これらを併用することで歯髄の炎症を一時的に抑え、痛みの軽減を図ります。

この処置はあくまでも応急的な対応であり、歯髄の状態を安定させながら次回の保存治療や根管治療につなげることを目的としています。

CC+ネオダインの貼薬
CC+ネオダインの貼薬

鎮痛薬の処方

痛みが強い場合には、ロキソプロフェンやボルタレンなどの消炎鎮痛薬を併用します。

鎮痛薬によって症状を一時的に緩和できますが、原因そのものを取り除く治療ではありません。そのため、症状が落ち着いた後も適切な歯科治療を継続することが重要です。

可逆性歯髄炎

炎症が軽度の場合は神経を残せる可能性があります。

治療内容

  • 虫歯の除去
  • レジンや詰め物による修復
  • 覆髄処置による歯髄保護

早期治療によって神経の保存が期待できます。

不可逆性歯髄炎

炎症が重度になると神経を残すことが困難になります。

この場合は根管治療(歯内療法)が必要です。

抜髄(神経を抜く):根管治療(歯内療法)
抜髄(神経を抜く):根管治療(歯内療法)

根管治療の流れ

  1. 局所麻酔
  2. 虫歯と歯髄の除去
  3. 根管内の洗浄・消毒
  4. 根管充填
  5. 被せ物による補強

適切な根管治療を行うことで、多くの場合は抜歯を回避できます。

歯髄炎を放置すると次のような状態へ進行します。

根尖性歯周炎

歯根の先に膿がたまり、歯ぐきの腫れや痛みが生じます。

根尖性歯周炎による歯根嚢胞の形成
根尖性歯周炎による歯根嚢胞の形成

歯髄壊死・歯髄壊疽

神経が死んだ後、内部で細菌が繁殖し腐敗が進行します。

歯髄壊死・歯髄壊疽
歯髄壊疽

フィステル(瘻孔)

膿の出口として歯ぐきに小さなできものが形成されます。

抜歯

感染によって歯や骨の破壊が進行すると、保存が困難となり抜歯が必要になることがあります。

歯科医院では以下の検査を組み合わせて診断します。

問診・視診

痛みの性質や持続時間、虫歯の有無などを確認します。

打診検査

歯を軽く叩き、炎症の広がりを調べます。

レントゲン検査

虫歯の深さや根の周囲の状態を確認します。

深部う蝕が原因で発症した歯髄炎(C3虫歯)
深部う蝕が原因で発症した歯髄炎(C3虫歯)
C2・C3虫歯と歯根吸収が確認できるデンタルレントゲン像
C2・C3虫歯と歯根吸収が確認できるデンタルレントゲン像

CT検査

複雑な症例では三次元的に病変の範囲を把握します。

電気歯髄診・温度診

神経の生死や炎症の程度を評価します。

正しいブラッシング

毎日丁寧な歯磨きを行い、歯垢を除去することが重要です。

デンタルフロスの使用

歯ブラシだけでは落とせない歯間部の汚れを除去できます。

定期検診

虫歯を早期発見し、歯髄炎への進行を防ぎます。

食生活の改善

糖分の摂取回数を減らし、だらだら食べを避けることが大切です。

Q. 痛み止めだけで治りますか?

痛み止めは一時的に症状を緩和するだけで、歯髄炎そのものを治すことはできません。必ず歯科医院で治療を受けましょう。

Q. 神経を取ると歯はどうなりますか?

神経を失った歯は栄養供給が減少し、割れやすくなる傾向があります。そのため、被せ物による補強と定期的なメンテナンスが重要です。

Q. 根管治療後に再発することはありますか?

根管内の再感染や歯のひび割れなどが原因で再発することがあります。精密な治療と定期検診によって再発リスクを減らせます。

歯髄炎は虫歯の進行によって発症することが多く、放置すると神経の壊死や根尖性歯周炎、さらには抜歯へと進行する可能性があります。

冷たいものがしみる、温かいものでも痛む、何もしなくてもズキズキ痛むといった症状がある場合は、歯髄炎のサインかもしれません。

早期に治療を行えば神経を保存できる可能性が高くなります。気になる症状がある場合は、できるだけ早めに歯科医院を受診することをおすすめします。

江戸川区篠崎で歯のズキズキした痛みにお悩みの方へ|歯髄炎は早期治療で神経を残せる可能性があります

冷たいものや温かいものがしみる、何もしなくても歯がズキズキ痛む、そのような症状は歯髄炎(歯の神経の炎症)のサインかもしれません。歯髄炎を放置すると神経が壊死し、根管治療や抜歯が必要になることがあります。

江戸川区篠崎の当歯科クリニック篠崎では、できるだけ神経を残すことを第一に考え、精密な診査・診断のもとで治療を行っています。正確な診断はもちろん、痛みに配慮した治療にも努めています。

「歯がしみる」「夜になると痛みが強くなる」「噛むと痛い」といった症状がある方は、重症化する前にぜひご相談ください。早期発見・早期治療が、大切な歯を長く守ることにつながります。

【動画】歯茎のニキビのような出来物・フィステル

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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