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「歯ぐきの内側に硬いコブのようなものがある…」「これって病気?」
そんな疑問や不安を抱えて検索されている方へ。
それは「下顎隆起(かがくりゅうき)」と呼ばれる、良性の骨のふくらみかもしれません。痛みはないものの、義歯や会話、食事に影響を及ぼすこともあります。
この記事では、下顎隆起の原因・症状・治療の必要性について、歯科医の視点からわかりやすく解説します。

🔍 定義と特徴:骨の膨らみ・良性腫瘍ではない

下顎隆起(かがくりゅうき)とは、下顎の内側(舌側)の歯ぐき近くにできる骨の硬いふくらみのことを指します。医学的には「外骨症(がいこつしょう)」の一種であり、腫瘍ではなく良性の骨の変化です。痛みを伴うことはほとんどなく、多くは健康診断や歯科治療の際に偶然発見されます。見た目にびっくりされる方も多いですが、がんや病気ではないため、慌てて受診する必要はありません。

下顎隆起
下顎隆起

🧬 よくある発生部位と形状:両側対称・片側噛みとの関係

下顎隆起は、犬歯から小臼歯付近の舌側に左右対称に発生することが一般的です。しかし、**片側だけで噛む癖(片側咀嚼)**がある方では、噛む側だけに下顎隆起ができることもあります。形状は丸く硬く、触れるとコリコリとした感触があり、歯ぐきの内側から盛り上がるように成長します。大きくなると食事中の違和感や義歯の装着障害の原因になることもあります。

📈 他の骨隆起との違い(口蓋隆起との比較)

下顎隆起と似たものに「口蓋隆起(こうがいりゅうき)」があります。こちらは上顎の真ん中(口の天井)にできる骨の隆起で、上顎の正中部に単独でできやすいのが特徴です。どちらも外骨症の一種で、遺伝的傾向や咬合圧(噛む力)によって発生します。特に日本人ではこれらの骨隆起の発症頻度が高く、複数の部位に同時に見られることも珍しくありません。

⚙️ 咬合圧による刺激と骨の反応

下顎隆起の最大の要因とされているのが、咬合圧(こうごうあつ)=噛む力による刺激です。特に、強く噛む癖がある方や、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある方は、下顎骨に持続的な圧力がかかり、骨が適応的に肥厚して隆起が形成されると考えられています。これは、骨が過剰な力から歯を守るために自己防衛として厚くなる「生体反応」の一種です。ナイトガード(マウスピース)の使用で進行を抑えることができる場合もあります。

🧬 遺伝の影響|家族に見られる傾向

下顎隆起には遺伝的な素因も関係しています。親や兄弟姉妹に下顎隆起がある方は、同じように骨が隆起する傾向が強くなることがあります。これは体質的な骨の硬さや咬合圧の傾向が遺伝することに起因しています。実際、家族全員に下顎隆起が認められるケースも珍しくありません。したがって、「親も同じ場所に骨の出っ張りがある」と気づいた場合は、自分も注意深く観察するとよいでしょう。

👤 年齢・性別の違いと発症時期

下顎隆起は、子どもや若年層にはほとんど見られず、成人以降に発生するのが一般的です。特に、咀嚼回数が多くなる中年以降に徐々に大きくなるケースが多く報告されています。また、性別による差異も若干あり、男性にやや多く見られる傾向があります。これは、男性のほうが筋力や噛む力が強いためと考えられています。年齢とともに徐々に大きくなることがあるため、定期的な歯科検診が大切です。

😬 痛みや違和感はある?

下顎隆起は通常、痛みを伴わないのが特徴です。そのため、自覚症状がないまま長年経過しているケースも多く、歯科検診で偶然発見されることもあります。ただし、大きく成長した場合や外傷・炎症が起こった場合には、圧迫感や痛み、違和感を感じることがあります。義歯が合わないことによって隆起部分が刺激されると、傷ができて痛みを感じることもあるため注意が必要です。

🗣 会話・発音・食事への影響

隆起が小さいうちは生活に支障はありませんが、ある程度大きくなると会話や発音に違和感を覚えることがあります。特に舌の動きが制限されると、サ行・タ行などの発音がしづらくなることも。また、食事の際に食べ物が隆起部分に引っかかるなど、些細な不快感が生じる場合もあります。違和感が増してきたら歯科での相談をおすすめします。

🦷 義歯やインプラントの適合に与える影響

下顎隆起があると、義歯(入れ歯)のフィット感に大きな影響を及ぼすことがあります。特に総義歯を使用する方の場合、隆起が大きいと義歯の安定が悪くなり、痛みや外れやすさの原因となることも。また、インプラント治療を検討している場合には、事前の診断で隆起の有無を確認し、設計に反映させることが重要です。必要に応じて、骨の形態修正(外科的除去)が行われます。

👄 見た目で気づかれることはある?

下顎隆起は、口の中にできるため、外見上はほとんど目立ちません。そのため、日常生活において他人に気づかれることはまずありません。ただし、患者自身が鏡で口の中を見た際に「歯ぐきの内側にコブがある」と気になり、不安に感じることがあります。悪性腫瘍ではないことを理解し、必要であれば歯科での診断を受けると安心です。

🦷両側に出来た下顎隆起の症例

両側の下顎隆起(小)
両側の下顎隆起(小)

両側の小臼歯部舌側に出来た下顎隆起です。まだ、小さいため自覚症状はなく歯医者で発見されることが多いです。

両側の下顎隆起(大)
両側の下顎隆起(大)

両側の犬歯、小臼歯、大臼歯の部舌側にかけて出来た大きな下顎隆起です。このくらい大きくなると発音障害を起こすことがあります。

🦷片側噛みが原因の下顎隆起

左側の下顎隆起
左側の下顎隆起

左側の小臼歯部舌側に出来た下顎隆起です。左側だけで噛む習慣があるため出来たものと推察されます。

右側の下顎隆起
右側の下顎隆起

右側の小臼歯部舌側に出来た下顎隆起です。大臼歯は欠損してありませんが、何年も前から右側だけの片側噛みが原因と思われます。

👁 視診・触診でのチェック

下顎隆起の診断は、まず歯科医による視診と触診から始まります。口を開けて下顎の内側(舌側)を観察すると、歯ぐきに沿った硬いふくらみが左右にあるか、または片側にだけ存在するかが確認されます。触診では、指で軽く押して骨のように硬く動かない隆起かどうかを確認します。視診と触診だけでも、下顎隆起かどうかはある程度判断がつきますが、より詳細な診断には画像検査が有効です。

🖼 レントゲン・CTでの正確な診断

より正確な状態把握のためには、デンタルX線(レントゲン)や歯科用CTスキャンが用いられます。レントゲンでは、隆起の骨密度や境界の明瞭さ、左右差などを評価できます。また、CTでは三次元的な骨の形態や厚み、周囲組織との位置関係を立体的に確認でき、治療が必要かどうかの判断にも役立ちます。特に義歯やインプラントを予定している場合には、これらの画像情報がとても重要です。

🧪 腫瘍や嚢胞との鑑別ポイント

下顎隆起は良性の骨隆起ですが、腫瘍(例えば骨肉腫)や嚢胞(顎骨嚢胞)などと形状が似ていることがあります。そのため、隆起が急速に大きくなる痛みや出血を伴う柔らかい感触がある、といった場合は注意が必要です。疑わしい所見がある場合には、**精密検査や組織検査(生検)**が行われることもあります。歯科医師が総合的に判断し、必要に応じて口腔外科や専門機関への紹介が行われます。

💡 経過観察で済むケース

下顎隆起は基本的に良性の骨の変化であり、多くの場合、治療の必要はありません。痛みがなく、食事や会話に支障がない場合は、定期的な歯科検診で経過観察を行うだけで問題ありません。見た目の変化や軽度の違和感があっても、生活に支障がなければそのまま様子を見ることが一般的です。定期的にサイズや状態の変化を確認することが大切です。

🏥 手術が必要なケースと判断基準

ただし、以下のような場合には手術による切除が検討されます

  • 義歯の装着が困難で痛みや不安定さがある場合
  • 隆起が大きくなり、発音や咀嚼に支障をきたしている場合
  • 炎症や潰瘍を繰り返す場合
  • 精密検査で他の病変との区別が難しい場合

このようなケースでは、口腔外科的処置が有効です。

🔪 手術の流れ(麻酔・手術時間・回復期間)

手術は通常、局所麻酔で行われ、日帰りで対応可能です。処置時間は30分〜1時間程度で、骨を削り平らに整えます。手術後は縫合し、数日で腫れや軽度の痛みが出ることがありますが、通常は1週間ほどで日常生活に支障がなくなります。抜糸は1〜2週間後に行われるのが一般的です。

💊 術後のケアと再発予防

手術後は口腔内の清潔保持が非常に重要です。指示されたうがいや抗生剤の服用を守り、創部の感染を防ぎます。また、再発を防ぐためには咬合圧のコントロールが必要です。歯ぎしりや食いしばりが強い方は、ナイトガードの装着や生活習慣の見直しが勧められます。

🦷 義歯を使っている場合の対応

義歯を使っている方にとって、下顎隆起は装着や噛み心地に大きく影響する可能性があります。義歯が当たって痛みがある場合は、まず義歯の調整を行い、それでも改善しない場合に隆起の切除手術が検討されます。義歯を新調する際には、隆起の形状を考慮した設計が必要となります。

💰 保険適用の条件とは?

下顎隆起の治療は、症状や目的によって保険適用の可否が異なります。単に見た目の改善や予防的な切除を希望する場合は保険適用外(自費扱い)になりますが、以下のような明確な機能障害がある場合には保険適用の対象となることがあります

  • 義歯の装着に支障をきたしている場合
  • 発音や咀嚼に明らかな障害がある場合
  • 繰り返し炎症や潰瘍を起こしている場合

このような機能的・医療的必要性が認められると、健康保険が適用され、3割負担での治療が可能になります(高齢者の場合は1〜2割負担)。

📄 自費診療との違いと目安費用

一方で、見た目の改善や違和感の解消のみを目的とした希望切除は、自費診療となります。歯科医院によって費用は異なりますが、自費での手術費用はおおよそ5〜10万円程度が目安です(部位数や処置範囲により増減あり)。また、術後のフォローや再診費用も自費となるため、あらかじめ見積もりを確認することをおすすめします。

Q:手術は痛いですか?

A:手術は局所麻酔を使用するため、処置中に痛みを感じることはほとんどありません。術後に多少の腫れや鈍い痛みを感じる場合はありますが、多くの場合は数日で落ち着き、鎮痛剤で十分にコントロールできます。入院は不要で、日帰りでの処置が可能です。

Q:再発の可能性は?

A:再発することはありますが、頻度は低めです。咬合圧(噛む力)が強い方や、食いしばりの癖がある方は再発しやすいため、ナイトガードの装着や噛み合わせの調整などで再発リスクを下げることができます

Q:放置するとどうなりますか?

A:放置しても悪性化することはなく、命に関わる病気ではありません。ただし、大きくなって義歯が合わなくなる、発音や食事に影響が出る、炎症が起こるといった問題が発生することがあります。症状がある場合は早めの相談がおすすめです。

Q:子どもにできることはありますか?

A:基本的に、下顎隆起は子どもには見られません。成人以降、特に中年以降に多く発生します。成長期の子どもに見られる口腔内の膨らみは、別の原因である可能性が高いため、気になる場合は歯科医師に相談しましょう。

📍 江戸川区篠崎で下顎隆起にお悩みの方へ

江戸川区篠崎駅近くにある当院では、下顎隆起(外骨症)の診断から治療、義歯への対応まで丁寧にサポートしております。

「歯ぐきの内側に硬いふくらみがある」「入れ歯が当たって痛い」「見た目が気になる」などのお悩みがある方も、まずはお気軽にご相談ください。経験豊富な歯科医師が、患者様のご希望や症状に合わせて最適なご提案をいたします。

定期検診のついでにチェックすることも可能ですので、気になることがあれば安心してご来院ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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