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「麻酔をしているのに痛かった…」そんな経験はありませんか?
特に下の奥歯の治療では、通常の麻酔(浸潤麻酔)が効きにくいことがあります。そこで登場するのが「伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)」です。神経の根元にアプローチするこの麻酔法は、広範囲にしっかりと効き、痛みを最小限に抑えることが可能です。本記事では、伝達麻酔の特徴や流れ、注意点、そして安心して任せられる歯科医院の選び方まで、わかりやすく解説します。

歯科治療においては、痛みを抑えるためにさまざまな麻酔方法が用いられます。患者さまの治療内容や体質に応じて、最適な麻酔法を選択することが、安全で快適な治療につながります。

歯科麻酔
歯科麻酔

🧴表面麻酔とは

表面麻酔は、注射の前に使われるジェルやスプレータイプの麻酔で、歯ぐきの表面に塗布することで感覚を麻痺させます。
特に、麻酔注射の痛みを和らげるためや、乳歯の抜歯・口内の小さな処置などで用いられます。針を使わないため、注射が苦手な方やお子様にも安心です。

🪡浸潤麻酔との違い

浸潤麻酔は、治療する歯の周辺の歯ぐきに麻酔薬を直接注射する方法です。歯の根の神経に麻酔が行き届くことで、ピンポイントに痛みを抑えることができます。
一方、表面麻酔は皮膚の浅い部分にしか作用しません。浸潤麻酔は深部まで麻酔が効くため、ほとんどの歯科治療に対応可能です。

🧠伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)の特徴

伝達麻酔は、特に下顎の奥歯の治療に使用される麻酔方法で、「下顎孔伝達麻酔」とも呼ばれます。
これは、神経の分岐点(下歯槽神経)に直接麻酔薬を届けることで、広範囲にわたり感覚を遮断する方法です。

🦷主に使用される場面:

  • 下顎の大臼歯の虫歯治療や抜歯
  • 根管治療

🛑注意点:

  • 麻酔の範囲が広いため、舌や唇のしびれが一時的に続くことがあります。
  • 非常に効果的ですが、神経の位置を把握した高い技術が必要なため、熟練した歯科医師による対応が求められます。

伝達麻酔は、通常の麻酔では十分に効果が得られないケースや、広範囲な無痛状態が必要な治療において選択されます。特に下顎は骨が硬く、麻酔が効きにくいため、下歯槽神経をブロックする伝達麻酔が有効です。

🦷下顎の奥歯(大臼歯)治療時

下顎の大臼歯は、骨の密度が高く、麻酔薬が浸透しにくい部位です。通常の浸潤麻酔では十分に麻酔が効かず、痛みが残る可能性があります。

こうした場合には、神経の根元から感覚を遮断する伝達麻酔が有効です。これにより、痛みをしっかり抑えた状態で安全に治療が行えます。

🧬浸潤麻酔が効きにくいケース

以下のようなケースでは、浸潤麻酔の効果が不十分となることがあります:

  • 🧪 急性炎症がある場合(膿や腫れ)
     → 組織のpHが変化して麻酔が効きづらくなるため。
  • 🧬 神経の走行が通常と異なる解剖学的な個人差がある場合
     → 麻酔ポイントがずれることで効果が得られにくい。
  • 😣 過去の治療経験などで恐怖心が強く、痛みに敏感な方

このような場合、より確実に広い範囲に麻酔を効かせるために伝達麻酔が選択されます。

伝達麻酔は、解剖学的な知識と技術が必要な高度な麻酔法です。使用する器具や手順も通常の浸潤麻酔とは異なります。ここでは、その概要を詳しくご紹介します。

🩺伝達麻酔専用の注射器とは?

伝達麻酔では、リング付きの専用注射器を用いることが一般的です。

伝達麻酔用リング付きの専用注射器
伝達麻酔用リング付きの専用注射器
浸潤麻酔用の専用注射器
浸潤麻酔用の専用注射器
  • 🧷リング型の指掛けにより、安定した操作が可能
  • 💉**細めで長い針(約35mm)**を使用し、骨の深部まで到達できる設計
  • 吸引操作がしやすい構造で、安全性も確保

この専用注射器により、確実に神経付近へ麻酔薬を届けることが可能となり、広範囲な無痛効果が得られます。

🔄血管穿刺防止の吸引確認

伝達麻酔では、神経の近くに大きな血管も存在するため、注射針が血管に入っていないかの確認が必須です。

  • 💉注射針を挿入後、シリンジを引いて吸引
  • 🩸血液が逆流しないかを確認
  • 🔁血液が混入した場合は位置を変えて再挿入

この操作を怠ると、麻酔薬が血管内に入って全身に影響を与えるリスクがあるため、経験豊富な歯科医師による慎重な対応が重要です。

📍神経の位置と針の挿入角度

伝達麻酔の成功は、正確な神経の位置把握適切な挿入角度の確保にかかっています。

神経の位置と針の挿入角度
神経の位置と針の挿入角度
  • 📌ターゲットは「下顎孔」に通じる下歯槽神経
  • 🦷口を大きく開け、内側翼突筋と外側翼突筋の間を通して針を進める
  • 📐約45度の角度で針を挿入し、骨に軽く触れたところで注射

麻酔液が神経に適切に届くと、舌・下唇・奥歯周囲まで感覚が麻痺し、治療中の痛みが軽減されます。

📍下顎孔伝達麻酔を打つ位置

下顎孔伝達麻酔を打つ位置
下顎孔伝達麻酔を打つ位置

白い点の部位から針を挿入

写真の白丸の位置(親知らずのさらに奥) から針先を刺入し、2cm程奥に針を進めます。

下顎孔の位置は個人差が大きく外から見えないため、正確に場所を特定することは出来ません。従って、勘に頼ることになり効果的な麻酔をかけるにはかなりの熟練を要します。

下顎孔を完全に麻酔が出来れば、無痛治療が可能です。

下顎孔伝達麻酔の痛み

下顎孔伝達麻酔を打つ時の痛みはほぼありません。また、薬液を注入する時の痛みもほぼありません。


伝達麻酔は強力な効果を持つ反面、**技術的な難易度が高く、まれに副作用が生じることがあります。**治療前に、リスクについてしっかり理解しておくことが大切です。

🧯麻酔が効かない・一時的な麻痺

伝達麻酔が正確な位置に届かなかった場合、以下のようなことが起こる可能性があります:

  • 😖十分に麻酔が効かず、痛みを感じてしまう
  • 💤下唇や舌にしびれが長く残る
  • まれに麻酔の効果が数時間以上続く

特に麻酔の量が少なかったり、神経への到達が不十分だった場合に起こりやすく、再度の麻酔処置が必要になるケースもあります。

🧠オトガイ神経麻痺の可能性

オトガイ神経(おとがいしんけい)は下顎の前方で感覚を司る重要な神経です。伝達麻酔の影響で、以下の症状が起こることがあります:

オトガイ神経麻痺
オトガイ神経麻痺
  • 💬下唇や顎先のしびれ・感覚の低下
  • 😨まれに数週間〜数ヶ月、感覚が戻らないケースも

これは「一時的な神経圧迫または損傷」が原因と考えられます。
通常は自然回復しますが、経過観察が必要なケースもあるため、症状が続く場合は早めに歯科医に相談しましょう。

🩸血管への誤注射リスク

伝達麻酔を行う位置には、**太い血管(下歯槽動静脈)**が走行しています。

  • 💉誤って血管内に麻酔薬を注入すると、急激な動悸・めまい・血圧低下などの全身症状が出ることがあります。
  • 🩺このため、必ず吸引操作で血管穿刺の有無を確認する手順が重要です。

また、まれに内出血が起こり、頬や顎に一時的な腫れやあざが出ることもあります。


伝達麻酔は多くの歯科治療において有用な方法ですが、歯科医師の技術力とリスク管理が重要です。信頼できる医院で、安全性に配慮した治療を受けることが最も大切です。

歯科で用いられる麻酔には、表面麻酔・浸潤麻酔・伝達麻酔など複数の方法があります。これらの違いを知ることで、ご自身に合った治療選択がしやすくなります。

🔍効果範囲・持続時間の違い

麻酔法効果範囲持続時間
表面麻酔粘膜のごく表面数分~10分程度
浸潤麻酔局所(治療歯周辺の歯・歯ぐき)約1~2時間
伝達麻酔広範囲(下顎の半分・舌・唇)約2~4時間以上

伝達麻酔は、より広い範囲に強く効くのが特徴です。そのため、下顎の奥歯の治療や抜歯などの大掛かりな処置に向いています。

🔬患者への負担

それぞれの麻酔法には、患者にとっての快適さ・安全性・不安の程度が異なります。

  • 表面麻酔:針を使わないため痛みが少なく、歯科恐怖症の方にも適しています。ただし、効果は限定的。
  • 浸潤麻酔:多くの歯科治療に対応可能。針の痛みはあるが、表面麻酔との併用で緩和可。
  • ⚠️ 伝達麻酔:しびれの範囲が広く、違和感が残ることがありますが、治療中の痛みは最も強力にブロックできます。

患者への負担は、治療内容や医師の技術、麻酔時の説明の有無でも大きく変わります。

📊実際の臨床データに基づく比較

🔸ある臨床研究では、浸潤麻酔に比べて伝達麻酔は下顎大臼歯への麻酔成功率が20〜30%高いと報告されています。
🔸また、複数歯の治療を同時に行う場合は、伝達麻酔のほうが麻酔量が少なく済み、患者の全身への影響を減らせるというメリットも。

📌参考文献例:
「Journal of Dental Anesthesia and Pain Medicine」(2020年)

伝達麻酔は、技術と安全性が求められる処置です。そのため、どの歯科医院でも同じように受けられるわけではありません。安心して任せられる歯科医院を選ぶために、以下のポイントを確認しましょう。

🏥下顎孔伝達麻酔の経験豊富な歯科医

伝達麻酔は、神経や血管の位置を正確に把握する解剖学的な知識と、繊細な手技が必要です。

🔍 こんなポイントをチェック:

  • 医師が歯科麻酔に関する専門的な研修を受けているか
  • 口腔外科や抜歯症例が豊富
  • 医院ホームページに**「伝達麻酔」についての記載**があるか

経験豊富な歯科医であれば、麻酔の効果も安定し、副作用のリスクも軽減されます。

🔧設備と安全対策が整っているか

伝達麻酔には、専用の器具や安全確認の体制が不可欠です。

💡チェックしたい設備:

  • 吸引機能付きの専用注射器
  • 血管穿刺を避ける吸引操作の習慣
  • 必要時のための救急対応設備(酸素、AED など)
  • 生体モニターによるバイタルサインの確認

これらが揃っている医院では、安全性の高い処置が期待できます。

💬カウンセリング・説明の丁寧さ

麻酔に対して不安を感じる方は多いため、事前にしっかりと説明してくれる医院かどうかも重要です。

🗣確認したい対応:

  • 麻酔の内容やリスクについてわかりやすく説明してくれる
  • 患者の既往歴や体質を丁寧にヒアリング
  • 「麻酔が効きづらいことがある」など、想定されるリスクの共有

不安や疑問を解消してから治療に臨めることで、心理的な安心感も生まれ、麻酔効果も安定しやすくなります。

伝達麻酔に関する疑問や不安を持たれている方のために、よくある質問をまとめました。初めて受ける方も、治療前にぜひご確認ください。

❓伝達麻酔は誰でも受けられる?

基本的には多くの方に施術可能ですが、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 🩺 抗凝固剤を服用している方:出血のリスクに配慮が必要
  • 🌿 過去に麻酔アレルギーの既往がある方
  • 🧒 小児や不安が強い患者さん:動いてしまうと危険なため要配慮

上記に該当する場合でも、事前の問診や検査により対応が可能なこともありますので、まずは歯科医師に相談を。

❓治療後にしびれは残る?

伝達麻酔後は、下唇や舌、頬の内側に数時間のしびれが残ることがあります。

  • ⏳ 通常は2〜4時間程度で自然に回復します
  • ⚠️ ごくまれに「オトガイ神経麻痺」などで、しびれが数日〜数週間残るケース

症状が長引く場合は、すぐに歯科医師に相談してください。ほとんどのケースでは自然回復が見込めます。

❓保険適用になる?

はい、伝達麻酔は健康保険が適用される麻酔方法です。

  • 🏥 虫歯治療、抜歯、根管治療などの一般的な歯科処置において保険対応
  • 💰 自費診療の一部施術(インプラントなど)に含まれる場合は例外あり

診療内容によっては保険・自費の境界があるため、事前に説明を受けるのが安心です。

伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)は、下顎の奥歯や親知らずの治療において非常に効果的な麻酔法です。
通常の麻酔が効きにくい場面でも、広範囲に確実な無痛効果が得られるため、安心して治療を受けられます。

ただし、神経の近くを狙う処置であるため、高度な知識と技術を持つ歯科医師による施術が重要です。
麻酔の種類やリスクについてきちんと説明を受け、納得したうえで治療を進めることが大切です。

江戸川区篠崎で伝達麻酔に対応した痛みに配慮した歯科治療をお探しの方へ

当院では、通常の麻酔が効きにくい下顎の奥歯や親知らずの治療にも対応できる「伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)」を導入しています。江戸川区篠崎にて、できるだけ痛みを抑えた快適な治療環境を整え、安心して通える歯科医院を目指しています。麻酔が不安な方も、お気軽にご相談ください。

【動画】表面麻酔と針なし注射器シリジェット

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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