歯は一度完成すると一生使い続けられるものと思われがちですが、さまざまな原因によって「歯の根」が溶けてしまうことがあります。この現象を**歯根吸収(しこんきゅうしゅう)**といいます。

歯根吸収には、乳歯の生え替わりに伴う正常な「生理的吸収」と、永久歯に起こる異常な「病的吸収」、さらに矯正治療に関連して生じる「矯正性吸収」があります。

今回は、それぞれの特徴や原因、治療法について詳しく解説します。

歯根吸収とは?
歯根吸収とは?

乳歯が抜けるために起こる正常な現象

下顎E乳歯の生理的な歯根吸収。後方から萌出する第二小臼歯により、乳歯の歯根が自然に吸収している所見。
下顎E乳歯の生理的な歯根吸収。後方から萌出する第二小臼歯により、乳歯の歯根が自然に吸収している所見。

生理的歯根吸収とは、乳歯から永久歯へ生え替わる過程で起こる自然な歯根の吸収です。

例えば下顎第二乳臼歯(E)の下には、永久歯である第二小臼歯が形成されています。永久歯が萌出する際、その圧力によって乳歯の歯根は徐々に吸収され、短くなっていきます。

生理的吸収の特徴

  • 乳歯のみに起こる
  • 永久歯の萌出に伴って進行する
  • 痛みや腫れはほとんどない
  • X線では均一で滑らかな吸収像を示す
  • 治療の必要はない

生理的吸収の意味

乳歯が自然に抜け、永久歯が正しい位置へ生えるために必要な生理現象です。

レントゲンでは、乳歯の根が先端から均一に短くなっていく様子が確認できます。

永久歯の根が異常に溶ける状態

下顎5番の病的歯根吸収。炎症などにより永久歯の歯根が異常に溶けている所見。
下顎5番の病的歯根吸収。炎症などにより永久歯の歯根が異常に溶けている所見。
下顎6番:根管治療後に認められる病的歯根吸収(矢印部)
下顎6番:根管治療後に認められる病的歯根吸収(矢印部)

病的歯根吸収とは、本来吸収されることのない永久歯の歯根が何らかの原因で溶けてしまう状態です。

生理的吸収とは異なり、自然に停止することは少なく、原因を取り除かなければ進行する可能性があります。

病的歯根吸収の特徴

  • 永久歯に起こる
  • 局所的で不規則な吸収像を示す
  • 境界が不明瞭な透過像として確認される
  • 放置すると歯の保存が困難になることがある

主な原因

根尖性歯周炎

歯の神経が感染すると根の先に炎症が起こり、周囲の組織とともに歯根が吸収されることがあります。

歯の外傷

転倒やスポーツによる衝撃で歯根膜やセメント質が損傷すると、数年後に歯根吸収が発症することがあります。

歯根破折

歯根に亀裂や破折が生じると、周囲に慢性炎症が起こり歯根吸収の原因となります。

嚢胞や腫瘍

顎骨内の病変が歯根を圧迫し、吸収を引き起こすことがあります。

過度な矯正力

過剰な矯正力も病的歯根吸収の原因となります。

「前歯部の病的歯根吸収(矢印)。外傷などによる外部吸収が疑われる不規則な透過像。
「前歯部の病的歯根吸収(矢印)。外傷などによる外部吸収が疑われる不規則な透過像。

前歯の病的歯根吸収では、レントゲン上で歯根表面に不規則な透過像が確認されます。

これは**外部吸収(External Resorption)**と呼ばれ、歯根が外側から溶けている状態です。

外傷との関連

前歯は外傷を受けやすいため、病的歯根吸収の原因として過去の外傷が疑われることが少なくありません。

特に以下のような既往がある場合は注意が必要です。

  • 転倒して前歯をぶつけた
  • スポーツ中の衝突
  • 歯の変色
  • 打診時の違和感

外傷後すぐではなく、数年経過してから吸収が発見されることもあります。

ファイル挿入により根管長を測定。吸収部位の形態を確認しながら作業長を決定。
ファイル挿入により根管長を測定。吸収部位の形態を確認しながら作業長を決定。
根充完了。吸収歯の根管が均一に封鎖され、感染源を除去した状態。
根充完了。吸収歯の根管が均一に封鎖され、感染源を除去した状態。

感染が原因となっている場合は、根管治療が第一選択となります。

根管長測定

まずファイルを用いて根管長を測定し、吸収部位の形態を把握しながら適切な作業長を決定します。

病的歯根吸収では根尖形態が不明瞭になっていることが多く、正確な診断が重要です。

根管充填

感染源を除去した後、根管内をガッタパーチャで緊密に封鎖します。

適切な根管充填によって再感染を防ぎ、吸収の進行停止を目指します。

経過観察

病的歯根吸収の根充後の経過観察像。吸収部の透過像は残存するが、根管は良好に封鎖され安定した状態。
病的歯根吸収の根充後の経過観察像。吸収部の透過像は残存するが、根管は良好に封鎖され安定した状態。

治療後も吸収部位の透過像はしばらく残ります。

しかし、

  • 病変が拡大していない
  • 根管充填が安定している
  • 症状がない

といった条件を満たしていれば良好な経過と判断できます。

経過観察は数か月から数年単位で行われます。

矯正治療に伴って起こる歯根吸収

矯正力の過負荷による前歯の歯根吸収
矯正力の過負荷による前歯の歯根吸収

矯正治療では歯を移動させるために持続的な力を加えます。

その過程で歯根の先端がわずかに吸収されることがあり、これを矯正性歯根吸収と呼びます。

矯正性吸収の特徴

  • 歯根先端が丸くなる
  • 歯根が短くなる
  • 多くの場合は無症状
  • 前歯部に起こりやすい
  • 根尖部に限局することが多い

リスク因子

  • 過度な矯正力
  • 長期間の矯正治療
  • 大きな歯の移動
  • もともと短い歯根

対応方法

矯正治療中に歯根吸収が認められた場合は、

  • 矯正力を弱める
  • 治療を一時中断する
  • 治療計画を見直す

などの対応が検討されます。

そのため、矯正治療中は定期的なレントゲン検査による管理が重要です。

歯根吸収は「歯の根が溶ける現象」の総称であり、生理的吸収・病的吸収・矯正性吸収に分類されます。

乳歯の生え替わりによる生理的吸収は正常な現象ですが、永久歯に起こる病的吸収は歯の寿命に大きく影響する可能性があります。また、矯正治療中にも軽度の歯根吸収が生じることがあります。

歯根吸収は初期段階では症状がほとんどないため、定期検診やレントゲン検査による早期発見が重要です。過去に歯をぶつけた経験がある方や矯正治療中の方は、定期的な経過観察を受けることをおすすめします。

江戸川区篠崎で歯根吸収の早期発見・治療に対応

「歯の根が溶けていると言われた」「レントゲンで歯根吸収を指摘された」そんな経験はありませんか?

歯根吸収は、乳歯の生え替わりで起こる正常なものから、炎症や外傷、矯正治療などによって永久歯の根が溶けてしまう病的なものまでさまざまです。初期にはほとんど症状がなく、気付かないうちに進行することも少なくありません。

江戸川区篠崎の当院では、乳歯の自然な歯根吸収と、永久歯に起こる病的な歯根吸収を正確に見分け、必要なケアだけをご提案しています。お子さまから大人の方まで、安心して相談できる診療体制を整えています。

【動画】ステイン着色汚れをクリーニングするエアフロー

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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