銀歯は保険診療の虫歯治療で広く使われてきた修復・補綴材料ですが、一度装着すれば永久に使えるわけではありません。

長期間使用していると、銀歯そのものだけでなく、歯との境目や接着に用いたセメント、銀歯を支えている歯などに変化が生じ、二次う蝕(虫歯の再発)や脱離などによって再治療が必要になることがあります。

この記事では、銀歯は何年くらい使えるのか、交換を検討したほうがよいサイン、銀歯をできるだけ長く使うためのポイントについて解説します。

虫歯治療後に装着する銀歯(メタルインレー・メタルクラウン)は、咬む力に耐えやすい材料の一つです。しかし、銀歯だけでなく、銀歯を支える歯や接着部分も長期間にわたってさまざまな影響を受けます。

そのため、「銀歯は○年で寿命を迎える」と一律に決めることはできません。

銀歯がどのくらい使用できるかは、

  • 虫歯の大きさや残っている歯質の量
  • 補綴物の適合状態
  • 口腔内の清掃状態
  • 虫歯や歯周病のなりやすさ
  • 噛み合わせ
  • 歯ぎしり・食いしばり
  • 定期的なメインテナンスの有無

などによって異なります。

「銀歯の寿命は5〜10年程度」と紹介されることもありますが、これはすべての銀歯に当てはまる交換時期ではありません。

5年程度で再治療が必要になる場合もあれば、10年以上良好な状態を維持できる場合もあります。

年数だけで交換を判断するのではなく、歯科医院で銀歯と歯の状態を確認することが大切です。

銀歯の再治療につながる「二次う蝕」

銀歯の寿命と“すき間むし歯”
銀歯の寿命と“すき間むし歯・二次う蝕”

銀歯を装着した歯では、二次う蝕(虫歯の再発)が再治療の原因の一つとなります。

銀歯と歯の境目には段差や適合の変化が生じることがあり、その周囲にプラークが残りやすくなると虫歯のリスクが高まります。

また、長期間の使用によるセメントの変化や銀歯の脱離・破損などによって、歯との間に問題が生じることもあります。

二次う蝕は銀歯の下や境目に発生すると、外から確認しにくい場合があります。

また、

  • 初期には症状がないことがある
  • 銀歯に隠れて見えにくいことがある
  • 痛みがなくても進行している場合がある

といった特徴があります。

虫歯が深くまで進行すると、歯の神経(歯髄)に炎症が及び、根管治療が必要になることがあります。さらに歯質が大きく失われて保存が難しくなった場合には、抜歯を検討せざるを得ないこともあります。

そのため、自覚症状の有無だけで判断せず、定期的に状態を確認することが重要です。

銀歯の交換を検討するサイン

寿命を迎えつつある銀歯の症例
寿命を迎えつつある銀歯の症例

次のような変化がある場合は、銀歯やその周囲の歯に問題が生じている可能性があります。

銀歯が外れた・浮いている

銀歯が外れたり動いたりする場合は、接着に用いたセメントの変化だけでなく、銀歯の下の虫歯や歯の破折などが関係していることがあります。

外れた銀歯を自分で戻したり接着したりせず、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

噛むと痛い

噛んだときの痛みには、二次う蝕、歯の亀裂・破折、歯周組織の炎症、噛み合わせなど、さまざまな原因が考えられます。

「銀歯の寿命」と決めつけず、原因を調べる必要があります。

銀歯の周囲が黒く見える

銀歯と歯の境目が黒く見えても、必ずしも二次う蝕とは限りません。

金属による色調の影響、着色、歯質の変色などによって黒く見える場合もあります。一方で、二次う蝕によって変色している可能性もあるため、見た目だけでは判断できません。

黒ずみが気になる場合は歯科医院で確認してもらいましょう。

口臭が気になる

口臭の原因の多くは、舌苔や歯周病など口腔内にあります。

銀歯そのものが直接口臭を発生させるわけではありませんが、銀歯の周囲にプラークが蓄積していたり、歯周病や二次う蝕などが生じていたりすると、口臭に関係する可能性があります。

歯ぐきが腫れる・出血する

銀歯の周囲にプラークが蓄積すると、歯肉に炎症が生じ、腫れや出血がみられることがあります。

歯周病が進行している場合もあるため、症状が続く場合は歯科医院で検査を受けることが大切です。

長く使用している銀歯では、銀歯そのものだけでなく、周囲の歯や歯肉にも変化が生じることがあります。

二次う蝕

銀歯と歯の境目付近にプラークが残りやすい状態が続くと、二次う蝕が発生することがあります。

銀歯の下に広がった虫歯は外から見えにくい場合があるため、必要に応じてレントゲン検査などを行い、内部の状態を確認します。

ただし、銀歯の境目が黒いという理由だけで二次う蝕と診断することはできません。

プラークの付着

銀歯やブリッジの周囲、歯と歯の間などは、形態によって歯ブラシだけでは清掃しにくいことがあります。

プラークが長期間残ると、

  • 虫歯
  • 歯肉炎
  • 歯周病

などのリスクが高まります。

特にブリッジでは、ポンティック(失った歯を補う人工歯)の下などに汚れが残りやすいため、歯間ブラシなどを用いた清掃が重要です。

歯ぐきの炎症

銀歯の周囲にプラークが蓄積すると、歯肉に炎症が生じて出血や腫れがみられることがあります。

ただし、出血や腫れがあるからといって、必ずしも歯周ポケットの深い部分まで感染が進行しているとは限りません。

歯周病の状態は、歯周ポケット検査や出血の有無、レントゲン検査などを組み合わせて評価します。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりによって大きな力が繰り返し加わると、銀歯だけでなく、銀歯を支えている歯にも負担がかかります。

その結果、銀歯の脱離や変形、歯の亀裂・破折などにつながる場合があります。

プラークコントロールが不十分

銀歯と歯の境目にプラークが残る状態が続くと、二次う蝕や歯周病のリスクが高まります。

特に歯と歯の間は歯ブラシだけでは清掃しにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することが大切です。

定期的なチェックを受けていない

二次う蝕や銀歯の適合状態の変化は、初期には自覚症状がないことがあります。

症状が出てから受診するのではなく、定期的に歯科医院で確認することで、問題を早期に発見できる可能性があります。

丁寧なセルフケア

銀歯そのものを磨くというよりも、銀歯と天然歯の境目や歯と歯の間にプラークを残さないことが重要です。

歯ブラシに加えて、

  • デンタルフロス
  • 歯間ブラシ

などを、口腔内の状態に応じて使い分けましょう。

定期検診・メインテナンスを受ける

歯科医院では、

  • 銀歯の適合状態
  • 二次う蝕の有無
  • 歯肉や歯周組織の状態
  • 噛み合わせ
  • プラークの付着状態

などを確認します。

「3〜6か月に1回」と一律に決める必要はなく、適切な受診間隔は虫歯や歯周病のリスク、治療歴、セルフケアの状態などによって異なります。

歯科医師や歯科衛生士と相談し、自分に合った間隔でメインテナンスを受けましょう。

歯ぎしり・食いしばりへの対応

歯ぎしりや食いしばりによる負担が大きいと判断された場合には、ナイトガード(マウスピース)が選択肢となることがあります。

ナイトガードには歯や補綴物に加わる力を分散・軽減する役割が期待できますが、すべての人に必要なわけではありません。

歯や噛み合わせの状態を確認したうえで、歯科医師と相談して使用を検討します。

使用年数だけで交換を決めない

「銀歯は10年経ったら交換する」といった明確な基準はありません。

長期間使用していても問題がなければ、そのまま使用できる場合があります。

一方、装着してからそれほど年数が経っていなくても、二次う蝕、脱離、破損、歯の亀裂などが認められれば再治療が必要になることがあります。

大切なのは「何年使ったか」ではなく、現在の銀歯と歯がどのような状態にあるかです。

銀歯の再治療が必要になった場合には、歯の位置や残っている歯質、噛み合わせなどによって、さまざまな修復・補綴材料を検討できます。

素材主な特徴
金属材料強度があり、症例によって保険診療で使用できる
コンポジットレジン歯に近い色で修復できるが、適応できる範囲が限られる
CAD/CAM材料保険適用となる場合があり、歯に近い色調で修復できる
セラミック審美性に優れ、変色しにくい
ジルコニア強度が高く、審美性にも配慮できる

「セラミックは10〜15年」「ジルコニアは15年以上」などと耐用年数を一律に示すことは適切ではありません。

補綴物がどのくらい使用できるかは、材料だけではなく、治療する歯の状態、設計、接着、噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、セルフケア、メインテナンスなど多くの要因に左右されます。

そのため、単純に「銀歯よりセラミックやジルコニアのほうが○年長持ちする」と考えるのではなく、それぞれの特徴を理解して選択することが大切です。

セラミック・ジルコニアと金属アレルギー

セラミックやジルコニアを用いた金属を含まない修復・補綴物では、歯科用金属に由来する金属アレルギーのリスクを避けることができます。

ただし、「セラミック治療=必ず金属を使用しない」とは限りません。補綴物の種類や構造によっては金属を併用するものもあります。

金属アレルギーが心配な方は、使用する材料について事前に歯科医師へ確認しましょう。

銀歯交換の流れ

銀歯の再治療が必要になった場合は、一般的に次のような手順で治療を行います。

  1. 銀歯と周囲の歯を診査する
  2. 必要に応じてレントゲン検査などを行う
  3. 古い銀歯を除去する
  4. 二次う蝕があれば感染した歯質を除去する
  5. 歯髄や根管、残っている歯質などの状態を確認する
  6. 必要な治療を行ったうえで新しい修復・補綴物を作製する
  7. 噛み合わせなどを確認して装着する

二次う蝕などの問題を早期に発見できれば、結果として治療範囲を小さくできる可能性があります。

ただし、早期に治療すれば必ず削る量を減らせる、あるいは歯の寿命を延ばせるとは限りません。

問題を早期に発見し、必要な治療を適切な時期に行うことが、できるだけ多くの健康な歯質を残すうえで重要です。

銀歯には「○年で必ず寿命を迎える」という決まった耐用年数はありません。

5〜10年程度が一つの目安として紹介されることもありますが、実際にどのくらい使用できるかは、銀歯の適合状態、残っている歯質、虫�歯・歯周病のリスク、噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、セルフケアやメインテナンスなどによって大きく異なります。

また、銀歯の下や境目には二次う蝕が生じることがありますが、黒ずみや口臭だけで二次う蝕と判断することはできません。

銀歯が外れた、浮いている、噛むと痛い、しみる、周囲の歯ぐきが腫れるなどの症状がある場合は、歯科医院で原因を確認してもらいましょう。

症状がなくても定期的に銀歯や周囲の歯を確認し、必要に応じてメインテナンスを受けることが、銀歯だけでなくご自身の歯をできるだけ長く保つことにつながります。

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銀歯は、使用年数だけで交換時期を判断することはできません。見た目に問題がなくても、銀歯の境目や内部に二次う蝕が生じていることがあります。銀歯が外れた・噛むと痛い・しみる・黒ずみが気になるなどの症状がある方はもちろん、長く使用している銀歯が気になる方も、一度状態を確認してみましょう。

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筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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