- 1. サージカルステントとは?
- 2. サージカルステントの主な役割
- 2.1. 下顎管や上顎洞との位置関係を確認する
- 2.2. インプラントの長さや本数を検討する
- 3. パノラマX線撮影とサージカルステント
- 4. サージカルステントのメリット・限界
- 4.1. メリット
- 4.2. 限界
- 5. CT・CBCTによる三次元的な診断
- 6. サージカルステントとサージカルガイドの違い
- 6.1. サージカルステント
- 6.2. サージカルガイド
- 7. 現在のインプラント治療で活用されるCTとサージカルガイド
- 8. サージカルステントはインプラント治療の診断を支えてきた装置
- 8.1. 関連記事
- 9. 精密な診断から始めるインプラント治療
- 10. 【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?
- 11. 筆者・院長
- 11.1. 深沢 一
- 11.1.1. メッセージ

インプラント治療では、顎の骨の量や形態、下顎管・上顎洞など周囲の重要な解剖学的構造を確認し、適切な埋入位置・角度・深さを検討することが重要です。
その術前診査に用いられてきた装置の一つが「サージカルステント」です。
この記事で紹介するサージカルステントは、主に術前のX線診査に使用する**診断用ステント(ラジオグラフィックステント)**です。金属球などのX線不透過性の指標を設け、パノラマX線画像の拡大率を推定しながら、インプラントを埋入する位置や長さを検討するために使用します。
一方、現在ではCT・CBCTによる三次元画像診断や、コンピューター上でインプラントの位置・角度・深さをシミュレーションする方法が広く活用されています。さらに、術前計画を手術に反映するための「サージカルガイド」が使用されることもあります。
この記事では、サージカルステントの役割やメリット・限界、CT・CBCTを用いた診断、サージカルガイドとの違いについてわかりやすく解説します。
サージカルステントとは?
サージカルステントとは、インプラント治療の術前診査や治療計画を補助するために使用される装置です。
この記事で紹介するタイプは、パノラマX線撮影時に使用する診断用ステントで、インプラント埋入予定部位の骨の高さや、下顎管・上顎洞などとの位置関係を検討する際に利用します。
下の写真は、直径5mmの金属球が2個取り付けられた下顎用のサージカルステントです。
この金属球は、パノラマX線画像に生じる拡大の程度を推定するための基準として使用します。
患者さんにサージカルステントを装着した状態でパノラマX線撮影を行い、画像上の金属球の大きさと実際の直径を比較します。
これにより画像の拡大率を推定し、骨の高さや下顎管などまでの距離を補正して検討することができます。
サージカルステントの主な役割

下顎管や上顎洞との位置関係を確認する
インプラント手術では、周囲にある重要な解剖学的構造を考慮して埋入位置を決める必要があります。
特に下顎の奥歯では、顎の骨の中に下歯槽神経や血管が走行する下顎管があります。
また、上顎の奥歯の上方には「上顎洞」と呼ばれる空洞があります。
インプラントの埋入位置や深さを検討する際には、これらの構造との位置関係を確認することが重要です。
サージカルステントを使用したX線診査は、インプラント埋入予定部位から下顎管や上顎洞までのおおよその距離を検討するための参考になります。
ただし、パノラマX線は二次元画像であり、骨の幅や三次元的な位置関係までは十分に評価できません。
そのため、必要に応じてCT・CBCTによる三次元的な画像診断を行い、より詳細な治療計画を立てます。
インプラントの長さや本数を検討する
インプラントにはさまざまな直径や長さがあります。
インプラントを埋入するには、顎の骨の状態だけでなく、下顎管や上顎洞など周囲の解剖学的構造との位置関係を考慮する必要があります。
サージカルステントを使用したX線診査で骨の高さなどを確認することで、使用するインプラントの長さや埋入位置、本数などを検討する際の参考になります。
ただし、インプラントのサイズや本数はX線画像だけで決定するものではありません。
骨の幅や形態、歯ぐきの状態、噛み合わせ、隣接する歯との位置関係、最終的に装着する人工歯の位置などを総合的に評価して治療計画を立てます。
パノラマX線撮影とサージカルステント

パノラマX線撮影は、上下の歯や顎の骨を広い範囲で確認できる検査です。
一方で、パノラマX線画像には拡大や歪みが生じるという特徴があります。
そのため、画像上で測定した距離が、そのまま実際の距離と一致するとは限りません。
そこで、実際の大きさが分かっている金属球をサージカルステントに取り付け、X線撮影を行います。
例えば直径5mmの金属球が画像上で実際より大きく写っている場合、その大きさを基準として画像の拡大率を推定します。
この拡大率を参考にすることで、骨の高さや下顎管・上顎洞などまでの距離を補正して検討できます。
ただし、パノラマX線には撮影部位による拡大率の違いや歪みがあります。
そのため、金属球を使用して補正したとしても、骨の三次元的な形態や重要な解剖学的構造との位置関係を完全に把握できるわけではありません。
サージカルステントのメリット・限界
メリット
診断用サージカルステントには、次のようなメリットがあります。
- パノラマX線画像の拡大率を推定する基準になる
- 骨の高さを検討する際の参考になる
- 下顎管や上顎洞までの距離を検討しやすくなる
- インプラントの長さや埋入位置を検討する際の参考になる
- 術前の治療計画を立てるための補助資料として活用できる
特にCT・CBCTが現在ほど普及していなかった時代には、インプラント治療の術前診査を補助する方法の一つとして利用されてきました。
限界
一方、パノラマX線と診断用サージカルステントによる評価には限界があります。
主な限界として、次のような点が挙げられます。
- 頬側・舌側方向の骨の幅を評価できない
- 骨の三次元的な形態を把握できない
- 下顎管などの位置関係を三次元的に確認できない
- インプラントの埋入角度を三次元的にシミュレーションできない
- パノラマX線特有の拡大や歪みの影響を完全には除けない
特にインプラント治療では、骨の「高さ」だけではなく「幅」も重要です。
パノラマX線では高さ方向の情報は得られますが、頬側から舌側にかけての骨の厚みを十分に評価することはできません。
そこで現在では、症例に応じてCT・CBCTによる三次元画像診断が活用されています。
CT・CBCTによる三次元的な診断
CT・CBCTでは、顎の骨を三次元的に観察できます。

パノラマX線だけでは把握しにくい、
- 顎の骨の高さや幅
- 骨の三次元的な形態
- 下顎管の走行
- 上顎洞の位置や形態
- 隣接する歯との位置関係
などを確認できます。
こうした情報をもとに、インプラントをどの位置に、どの角度・深さで埋入するかを検討します。
ただし、すべての患者さんに一律に同じ画像検査を行うわけではありません。
必要な画像検査は、治療部位や顎の骨の状態、周囲の解剖学的構造などを踏まえて歯科医師が判断します。
サージカルステントとサージカルガイドの違い
「サージカルステント」と「サージカルガイド」は名前が似ていますが、この記事で紹介している診断用ステントと、手術時に使用するサージカルガイドでは役割が異なります。
サージカルステント
この記事で紹介しているサージカルステントは、主に術前診査を補助するための装置です。
金属球などを取り付けてX線撮影を行い、画像の拡大率を推定したり、インプラント埋入予定部位を検討したりするために使用します。
サージカルガイド
サージカルガイドは、術前に作成したインプラントの埋入計画を、実際の手術に反映するための装置です。
CT・CBCTによる三次元画像や口腔内のデジタルデータなどを利用し、コンピューター上でインプラントの位置・角度・深さをシミュレーションします。
その治療計画をもとにサージカルガイドを作製し、手術時に使用します。
つまり、簡単に整理すると、
サージカルステント:主に診断・治療計画を補助する装置
サージカルガイド:術前の埋入計画を手術に反映するための装置
という違いがあります。
現在のインプラント治療で活用されるCTとサージカルガイド

現在のインプラント治療では、症例に応じてCT・CBCTによる三次元画像診断やデジタルシミュレーションが活用されています。
当院ではCT画像とインプラントシミュレーションソフトを用いて、顎の骨や周囲の解剖学的構造を確認しながら、インプラントの位置・角度・深さを検討しています。
さらに、必要に応じてシミュレーション結果をもとに作製したサージカルガイドを手術時に使用します。
サージカルガイドを使用することで、コンピューター上で立てた術前計画を実際の埋入位置へ反映しやすくなり、フリーハンドによる手術と比較して埋入精度の向上が期待できます。
ただし、サージカルガイドを使用すれば、必ず計画した位置に完全に一致してインプラントを埋入できるわけではありません。
CT・口腔内データの取得、シミュレーション、ガイドの製作精度、口腔内でのガイドの適合・固定状態、手術操作など、さまざまな要因によって術前計画と実際の埋入位置には一定の誤差が生じる可能性があります。
そのため、サージカルガイドを使用する場合でも、下顎管や上顎洞など周囲の重要な解剖学的構造を考慮し、適切な安全域を設定して治療計画を立てることが重要です。
サージカルステントはインプラント治療の診断を支えてきた装置
サージカルステントは、インプラント治療の術前診査や治療計画を補助するために使用されてきた装置です。
パノラマX線撮影時に大きさの分かっている金属球などを指標として使用することで、画像の拡大率を推定し、骨の高さや下顎管・上顎洞などまでの距離を検討する際の参考にできます。
ただし、パノラマX線は二次元画像であるため、骨の幅や三次元的な形態までは十分に評価できません。
現在では、症例に応じてCT・CBCTによる三次元画像診断やコンピューターシミュレーションを活用し、さらに必要に応じてサージカルガイドを使用することで、より詳細なインプラント治療計画を立てることが可能になっています。
インプラント治療では、特定の装置を使用することだけが重要なのではありません。
顎の骨や神経、上顎洞、噛み合わせ、最終的な人工歯の位置などを総合的に診断し、一人ひとりのお口の状態に応じた治療計画を立てることが大切です。
関連記事
精密な診断から始めるインプラント治療

CTとデジタルシミュレーションを活用し、埋入位置・角度・深さを検討。お口の状態に合わせた治療計画を立てます。
インプラント治療をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。




