目次

「上顎の骨が少ないため、インプラントは難しいと言われた」

そのような場合でも、骨の状態によっては**サイナスリフト(上顎洞底挙上術)**によってインプラント治療が可能になることがあります。

サイナスリフトは、上顎の奥歯に十分な骨の高さがない場合に行う骨造成術の一つです。

この記事では、サイナスリフトが必要になる理由から、ソケットリフトとの違い、手術方法、治療期間、痛み・腫れ、リスク、費用まで詳しく解説します。

サイナスリフト(上顎洞底挙上術)は、上顎の奥歯にインプラントを埋入するための骨が不足している場合に行われる骨造成術です。

上顎の奥歯の上には「上顎洞(サイナス)」と呼ばれる空洞があります。

奥歯を失って時間が経つと、歯を支えていた歯槽骨が吸収するとともに、上顎洞が下方へ拡大することがあります。その結果、インプラントを支えるために必要な骨の高さを確保できない場合があります。

サイナスリフトでは、上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)を慎重に持ち上げ、その下に骨補填材などを填入して、インプラントを支える骨を造成します。

なぜ上顎の奥歯は骨が不足しやすい?

上顎の小臼歯・大臼歯の歯根は、もともと上顎洞と近接していることがあります。

さらに歯を失うと、

  • 歯槽骨が徐々に吸収される
  • 上顎洞が拡大することがある
  • 骨の高さや幅が不足する

といった変化が起こり、インプラントを埋入するための骨量が不足する場合があります。

そのため、上顎の奥歯は、下顎などと比較して骨造成が必要になるケースがあります。

サイナスリフトが検討されるのは、主に上顎洞までの残存骨が少なく、そのままでは適切な位置・長さのインプラントを安定して埋入することが難しい場合です。

右上奥歯の骨が不足しています。⇒部を切開してサイナスリフトを行います。
右上奥歯の骨が不足しています。⇒部を切開してサイナスリフトを行います。
サイナスリフトを行い人工骨填入と同時にインプラントを埋入
サイナスリフトを行い人工骨填入と同時にインプラントを埋入

たとえば、

  • 上顎の奥歯を失ってから長期間経過している
  • 歯周病などによって骨が吸収している
  • もともと上顎洞が大きい
  • 上顎の骨量が少ない
  • 複数本のインプラントを埋入するため、広い範囲の骨造成が必要

といったケースが挙げられます。

ただし、必要な骨造成法は骨の高さだけでは決まりません。

CTで骨の高さ・幅・形態、上顎洞の状態、インプラントの埋入位置などを総合的に診断して決定します。

上顎洞付近の骨を増やす方法には、主に**サイナスリフト(側方アプローチ)ソケットリフト(歯槽頂アプローチ)**があります。

項目サイナスリフトソケットリフト
アプローチ上顎洞の側方からインプラント埋入部から
骨造成範囲比較的広い比較的限定的
骨不足大きな骨不足にも対応しやすい比較的軽度の骨不足に用いられる
手術負担比較的大きい比較的小さい
インプラント同時埋入状態によって可能状態によって可能

一般的には残存骨が少ない場合にサイナスリフト、ある程度骨が残っている場合にソケットリフトが検討されます。

ただし、「○mmなら必ずこの術式」と一律に決められるものではありません。

残存骨の高さ・幅・骨質、造成する範囲、上顎洞の形態、インプラントの初期固定が得られるかなどを考慮して術式を選択します。

サイナスリフト症例

サイナスリフト適応症例(骨の高さが5mm未満)
サイナスリフト施術とインプラント埋入

関連記事

ソケットリフト

1.術前検査・診断

まずCTなどを用いて、

  • 残存骨の高さ・幅
  • 上顎洞の形態
  • 上顎洞粘膜の状態
  • 血管などの解剖学的位置
  • インプラントを埋入する位置・方向

などを確認します。

必要に応じて全身状態や服用薬についても確認し、安全に手術できる状態かを判断します。

2.局所麻酔

浸潤麻酔
浸潤麻酔

手術部位に局所麻酔を行います。

麻酔時の痛みに配慮するため、表面麻酔などを併用することがあります。

3.歯肉を切開して上顎洞側壁を開窓

歯肉切開し骨を開窓
歯肉切開し骨を開窓

歯ぐきを切開して骨面を露出し、上顎洞の側壁に小さな窓を形成します。

このとき重要なのが、上顎洞を覆っているシュナイダー膜(上顎洞粘膜)をできるだけ損傷させないことです。

4.シュナイダー膜を挙上

形成した窓から慎重にシュナイダー膜を剥離し、上方へ持ち上げます。

これによって、もともとの骨とシュナイダー膜との間に骨造成のためのスペースを確保します。

5.骨補填材を填入

上顎洞底粘膜(シュナイダー膜)を挙上と骨補填材を填入

確保したスペースに骨補填材を填入します。

症例によって、

  • 自家骨
  • 異種骨
  • 人工骨
  • その他の骨補填材料

などを単独または組み合わせて使用します。

使用する材料は骨欠損の状態や治療計画によって異なります。

6.インプラントを埋入

インプラント埋入
インプラント埋入

残っている骨で十分な初期固定が得られると判断した場合には、サイナスリフトとインプラント埋入を同日に行うことがあります。

一方、残存骨が非常に少ないなど、安定した初期固定を得ることが難しい場合には、まず骨造成を行い、骨の成熟を待ってからインプラントを埋入する二段階の治療を選択します。

治療期間は骨の状態や術式によって大きく異なります。

大まかな流れは、

サイナスリフト

骨の治癒・成熟

インプラント埋入(同時に行う場合もあります)

インプラントと骨の結合を待つ

上部構造(人工歯)の装着

となります。

骨造成後は数か月程度の治癒期間を設けることが一般的ですが、必要な期間には個人差があります。

治療開始から人工歯の装着まで長期間を要することもあるため、治療前に全体のスケジュールを確認しておくことが大切です。

手術中は局所麻酔を使用するため、通常は痛みを抑えながら治療を進めます。

ただし、麻酔が切れた後には、

  • 痛み
  • 腫れ
  • 内出血
  • 違和感

などが生じることがあります。

症状の程度には個人差がありますが、多くの場合は術後数日をピークとして徐々に改善していきます。

処方された鎮痛薬などは、歯科医師の指示に従って使用してください。

なお、腫れや痛みが時間の経過とともに強くなる、発熱する、膿が出る、鼻に異常を感じるなどの場合には、感染などの可能性もあるため、早めに受診してください。

関連記事

インプラント後の痛みや腫れ

サイナスリフトは広く行われている骨造成術ですが、外科手術である以上、リスクがないわけではありません。

主なリスクとして、

  • シュナイダー膜の穿孔
  • 術後感染
  • 上顎洞炎
  • 出血
  • 腫れ・内出血
  • 骨補填材の感染や流出
  • 十分な骨が形成されない
  • インプラントが骨と結合しない

などがあります。

シュナイダー膜が破れたらどうなる?

シュナイダー膜の穿孔は、サイナスリフトで注意すべき合併症の一つです。

小さな穿孔であれば修復して手術を継続できる場合がありますが、穿孔の大きさや状態によっては、骨造成やインプラント埋入を延期することもあります。

サイナスリフト後は、上顎洞に強い圧力が加わらないよう注意する必要があります。

特に術後しばらくは、

  • 鼻を強くかまない
  • くしゃみを無理に我慢しない
  • 激しい運動を控える
  • 飲酒・喫煙を控える
  • 長時間の入浴やサウナを避ける
  • 傷口を舌や指で触らない

など、歯科医院から指示された注意事項を守ってください。

飛行機への搭乗や気圧変化を伴う活動についても、術後の状態によって制限が必要になる場合があります。予定がある場合は事前に担当医へ相談しましょう。

サイナスリフトは、インプラント治療に伴って行われる場合、一般的には自由診療となります。

当院のサイナスリフト費用

内容費用
インプラント1本230,000円(税込253,000円)
インプラント2本290,000円(税込319,000円)
インプラント3本以上310,000円(税込341,000円)

実際の治療費は、インプラントの本数や使用する材料、その他の処置の有無などによって異なります。

治療開始前に、治療内容と総額の見積もりを確認しておくことをおすすめします。

関連記事

インプラントの費用

通常の欠損歯に対して行うインプラント治療および、それに伴うサイナスリフトは、原則として自由診療です。

ただし、顎骨の広範囲な欠損など一定の条件を満たし、所定の施設基準を満たす医療機関で行う治療については、インプラント治療が保険適用となる特殊なケースがあります。

一般的な「奥歯の骨が少ないためサイナスリフトを行う」というケースが、そのまま保険適用になるわけではありません。

関連記事

インプラント保険適用の条件

治療を目的として行うインプラント治療やサイナスリフトは、条件を満たせば医療費控除の対象となる場合があります。

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。

実際の控除額は所得や年間医療費などによって異なります。

領収書などは保管し、詳細については税務署や国税庁の案内をご確認ください。

インプラント治療で骨が不足している場合、必ずサイナスリフトを行うわけではありません。

代表的な骨造成法には、

治療法主な適応
サイナスリフト上顎洞付近で高さ方向の骨が大きく不足
ソケットリフト上顎洞付近の比較的小さな骨不足
GBRインプラント周囲の幅・高さなどの局所的な骨不足
自家骨移植比較的大きな骨欠損など

があります。

どの方法が適しているかは、骨の高さだけではなく、骨の幅・欠損範囲・骨質・上顎洞の状態・必要なインプラントの位置などを総合して判断します。

関連記事

GBR(骨誘導再生術)

サイナスリフトは、すべての方に行えるわけではありません。

副鼻腔に炎症がある

慢性副鼻腔炎などがある場合、そのまま上顎洞へ外科的処置を行うと感染などのリスクが高くなる可能性があります。

必要に応じて耳鼻咽喉科と連携し、副鼻腔の状態を改善してからインプラント治療を検討します。

糖尿病などの全身疾患が十分に管理されていない

糖尿病などの全身疾患が十分にコントロールされていない場合には、感染や創傷治癒の遅延などのリスクが高まる可能性があります。

主治医と連携しながら手術の可否を判断します。

喫煙している

喫煙は創傷治癒や骨の治癒、インプラント治療の予後に悪影響を与える可能性があります。

インプラント治療を検討している場合は禁煙が推奨されます。

骨粗しょう症の治療を受けている

骨粗しょう症があるからといって、必ずしもサイナスリフトやインプラント治療ができないわけではありません。

重要なのは、骨粗しょう症の状態だけでなく、使用している薬剤の種類・投与方法・治療期間などを確認することです。

特に骨吸収抑制薬などを使用している場合は、顎骨への影響を考慮して慎重に治療計画を立てる必要があります。

自己判断で薬を中止せず、必要に応じて骨粗しょう症の主治医と歯科医師が連携したうえで、治療の可否や方法を検討します。

残っている骨が非常に少ない

上顎洞までの残存骨が非常に少ない場合、サイナスリフトと同時にインプラントを埋入しても、十分な初期固定を得られないことがあります。

このようなケースでは、

  • サイナスリフトを先に行う
  • 骨の成熟を待つ
  • その後インプラントを埋入する

という二段階の治療を選択することがあります。

骨が少ないからといって、すぐに「インプラントはできない」と判断するわけではありません。

CTで骨の状態を詳しく調べ、骨造成を含めた治療計画を検討することが重要です。

術後はどのくらい腫れますか?

サイナスリフトは外科手術のため、術後に腫れが生じることがあります。

腫れの程度や続く期間には個人差があり、手術範囲によっても異なります。

大切なのは、術後の注意事項を守り、処方された薬を指示どおり使用することです。

強い腫れが長く続く、いったん改善した腫れが再び悪化する、発熱・膿・強い痛みなどを伴う場合は受診してください。

サイナスリフトとインプラントは同時にできますか?

骨の状態によっては可能です。

残っている骨によってインプラントの十分な初期固定が得られると判断できれば、サイナスリフトとインプラント埋入を同日に行うことがあります。

一方、残存骨が少なく初期固定が難しい場合には、サイナスリフトを先に行い、骨が成熟してからインプラントを埋入します。

どちらが適しているかは、CT検査などをもとに判断します。

骨がほとんどなくてもインプラントはできますか?

骨が大きく不足していても、サイナスリフトやGBRなどの骨造成によってインプラント治療が可能になる場合があります。

ただし、すべてのケースで治療できるわけではありません。

残存骨の量や骨質だけでなく、上顎洞の状態、全身疾患、服用薬、喫煙習慣なども含めて診断する必要があります。

「骨が少ないから無理」と言われた場合でも、骨造成を含めたインプラント治療に対応している歯科医院で相談することが選択肢の一つです。

サイナスリフトをすれば必ず骨ができますか?

骨造成を行っても、すべての症例で計画どおりに骨が形成されるとは限りません。

感染や骨補填材の状態、喫煙、全身状態などによって、十分な骨が得られないことがあります。

その場合には追加の骨造成や治療計画の変更が必要になる可能性があります。

そのため、治療後も定期的に状態を確認することが重要です。

サイナスリフトの成功率はどのくらいですか?

サイナスリフトは確立された骨造成法の一つですが、一律の成功率を示すことは適切ではありません。

治療結果は、

  • 残存骨の状態
  • 上顎洞の状態
  • 使用する骨補填材
  • インプラントの埋入条件
  • 全身状態
  • 喫煙の有無
  • 術後の管理

など、さまざまな条件によって変わります。

「成功率○%だから大丈夫」と考えるのではなく、自分の症例でどのようなリスクがあるのか、治療前に十分な説明を受けることが大切です。

サイナスリフトによって骨を造成し、インプラント治療が完了しても、それで治療が終わるわけではありません。

インプラントの周囲にも天然歯と同じようにプラークが付着します。清掃状態が悪いと、インプラント周囲の組織に炎症が起こり、進行するとインプラントを支える骨が失われることがあります。

長く安定して使用するためには、

  • 毎日の適切なセルフケア
  • 歯科医院での定期的なメンテナンス
  • インプラント周囲の炎症の確認
  • 噛み合わせの確認

を継続することが大切です。

上顎の奥歯は上顎洞に近いため、歯を失ってから時間が経過すると、インプラントを支える骨が不足することがあります。

そのような場合に検討されるのが**サイナスリフト(上顎洞底挙上術)**です。

サイナスリフトによって必要な骨を造成することで、これまで骨量の不足を理由にインプラント治療が難しかった方でも、治療できる可能性があります。

ただし、すべての骨不足にサイナスリフトが必要なわけではありません。

骨の状態によってはソケットリフトやGBRなど、別の骨造成法が適している場合もあります。

大切なのは、「骨が何mmあるか」だけで治療法を決めるのではなく、CTで骨の高さ・幅・骨質、上顎洞の状態などを詳しく確認することです。

また、副鼻腔炎などの鼻の病気、糖尿病、骨粗しょう症の治療、服用薬、喫煙なども治療計画に影響します。

「骨が足りないからインプラントはできない」と言われた場合でも、骨造成という選択肢があります。

まずは精密検査を受け、サイナスリフトが必要なのか、ほかの方法で対応できるのかを診断してもらうことから始めましょう。

関連記事

インプラント
ソケットリフトとは?
ソケットリフトとは?|上顎の骨が足りない場合のインプラント骨造成術
インプラント
GBR(骨誘導再生法)とは?骨が足りないと言われた方へ|骨造成でインプラント治療を可能にする方法
GBR(骨誘導再生法)とは?骨が足りないと言われた方へ|骨造成でインプラント治療を可能にする方法
インプラント
インプラントの費用
インプラント1本の費用はいくら?総額・内訳・追加費用

上顎の骨が少ない場合でも、サイナスリフトなどの骨造成によってインプラント治療が可能になることがあります。

骨の高さ・幅や上顎洞の状態を詳しく確認し、サイナスリフトが必要なのか、ほかの治療法が適しているのかを診断します。

まずは現在の骨の状態を確認することから始めましょう。

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!