親知らず抜歯後のドライソケット対策:治療の流れと注意点

親知らずを抜歯した所を縫合しましたが、強い痛みが出てきました。ドライソケットになりやすい人はどんな人ですか?

ドライソケット治療の三原則

  • ドライソケット内の洗浄には消毒液を使わず次亜塩素酸水または生理食塩水を使う。
  • ドライソケットに入れる軟膏はステロイド剤が入っているものは禁忌。
  • 適度な湿潤状態を保つ。

抜歯窩の洗浄

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ドライソケット内を次亜塩素酸水で洗浄

ドライソケット内に溜まった食べカスや汚染物を注射器に入れた次亜塩素酸水で3回ほど洗浄します。

次亜塩素酸水にはプラークやバイオフィルムを破壊する効果も期待しています。次亜塩素酸水でなくても生理食塩水でもかまいません。

この時、強い消毒液を使わないことです。消毒液には細胞毒性があり、創傷治癒を遅らせてしまいます。

抜歯窩の洗浄
抜歯窩の洗浄

スポンゼルとプロネスパスタ®軟膏を詰める

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プロネスパスタ®軟膏の役割

局所麻酔軟膏のプロネスパスタ®は、適度な湿潤状態を作り出す目的と早期に痛みを取る効果を期待します。

抗菌剤の入っている軟膏や創傷被覆材のイントラサイトジェルなどでも好成績を収めている報告があります。

この時、使う軟膏としてステロイドホルモンが入っているアフタゾロン軟膏、ケナログ軟膏、テラコートリル軟膏は使用禁忌です。ステロイド剤により激痛が起こるばかりか肉芽組織の形成を抑制し、ドライソケットの治癒を遅らせてしまうからです。

スポンゼルの役割

スポンゼル(アステラス社)をドライソケット内に詰めるのは、プロネスパスタ®軟膏の流出を防ぎ湿潤状態を保つ目的があります。ドライソケットの中を乾燥状態にしない事が最も重要だからです。

スポンゼルは元々、止血剤として抜歯窩に使われる滅菌吸収性ゼラチンスポンジです。水分を吸って膨張するので食べカスが入るのを防いでくれ、 組織に容易に吸収されるので取り出す必要はありません。

ドライソケット内の詰め物としてスポンゼルの代わりにテルプラグやパイテック・デンタルの使用も有効と考えられます。

スポンゼルとプロネスパスタ®軟膏をドライソケットに詰める
スポンゼルとプロネスパスタ®軟膏をドライソケットに詰める

ドライソケットの歯茎を縫合

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抜歯窩を縫合

通常、水平埋伏智歯の抜歯では縫合します。しかし、縫合したからといってドライソケットにならないという保証はありません。

つまり、縫合しても、なる時はなるというのがドライソケットです。

マットレス縫合

抜歯窩に詰めたスポンゼルが外れないようにしっかりとマットレス縫合を行います。特に、斜めに生えた半埋伏の親知らずの場合、第二大臼歯と接する部分の歯茎の量が少ないことが多く、必ずその部分を縫合します。

止血材のパイテック・デンタルで縫合省略も

プロネスパスタ®軟膏を付けたパイテック・デンタルをドライソケット内に挿入すると血液・唾液を吸って、すぐに柔軟なゲル状となります。

組織への接着力が強いため、抜歯後の縫合を省くことも可能な場合があります。

ドライソケットの歯茎を縫合
ドライソケットの歯茎を縫合

投薬

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抗生物質の投薬

難抜歯が予想される時には、抗生物質の術前投与がドライソケットを作らない方法でもあります。

口腔内細菌の状況により、抗生物質や消炎鎮痛剤の種類によっては、全く効かないことがあります。

マクロライド系抗生物質ジスロマックは、速やかに親知らずの炎症が起きた組織へ移行し、長い半減期(7~14日間)を持つため効果の持続性が期待出来ます。

ジスロマックは食細胞に取り込まれ、感染組織へ集結(ファゴサイトデリバリー)します。食細胞から解き放たれ細菌に対して蛋白合成阻害作用を発現します。

消炎鎮痛剤(痛み止め)の投薬

歯医者で使われる消炎鎮痛剤はロキソニンやボルタレンなどが一般的です。

正常な治癒がなされれば痛みや腫れは十分にコントロール出来ます。

しかしドライソケットになると、これらの痛み止めを飲んでも完全に痛みが消失する分けではありません。

消炎鎮痛剤は痛い時だけ飲む"頓服"という飲み方をします。痛みが止まらないからといって飲み過ぎると副作用のリスクが高まります。

特に妊婦では注意が必要です。

痛み止めの飲み方の詳細は下記を参照してください。

ドライソケット治療における再掻爬の役割とリスク

ドライソケットの再掻爬

ドライソケットの治療にはレントゲン検査が重要です。抜歯窩の洗浄だけでは取りきれない歯根の断片や骨片、異物、骨の壊死部分が残っていることがドライソケットの原因になることがあるからです。

しかし、洗浄だけで抜歯窩が綺麗なる場合には基本的に再掻爬は行いません。

再掻爬の目的は再出血させて湿潤状態を作ることですが、再掻爬をすると過剰に再出血したり、激痛が起こり、治りが悪くなることがあります。

再出血させた所にテルプラグを挿入

ドライソケットの再掻爬を行う場合、浸潤麻酔を行い再出血させてテルプラグを挿入します。

テルプラグはスポンゼルと同様、抜歯窩の止血剤です。テルプラグの特徴として抜歯窩の形に似た弾丸型なので抜歯等の閉鎖に向いています。

ただし血液を吸収すると僅かに収縮するので、少し大きめのサイズを選ぶことがポイントです。

ドライソケットの再掻爬
ドライソケットの再掻爬

親知らず抜歯後に避けるべき行動:うがい、歯磨き、喫煙のリスク

抜歯手術後の強いうがいや歯磨きはNG

抜歯後の出血が気になって何度も強くうがいをしてしまうと血餅が洗い流されてしまいます。口腔内には唾液があり、血液が唾液にまじって大量に出血しているかのように勘違いしがちです。

と、教科書には書かれていますが、強いうがいをしたくらいで血餅が流れ出すのかは疑問が残るところです。

ともあれ、血餅は弱々しいものなので、抜歯した後に「吸う行動」、「抜歯側で噛む」、「抜歯した所を強く歯磨きする」ことなどは避けて下さい。

また、術後の強い運動や入浴、飲酒は避けて下さい。心拍数や血圧が上がり、術後出血を起こしやすくなると同時に歯周病菌などの常在菌が手術創部に入り込む可能性があるからです。

抜歯手術後の強いうがいや歯磨きはNG
抜歯手術後の強いうがいや歯磨きはNG

強いうがい薬の使用はNG

抜歯後の強いうがい薬(イソジンなど)の使用は禁忌です。血餅の所に食べカスが付いてしまった場合、当院では次亜塩素酸水で軽いうがいを推奨しています。

強いうがい薬の使用はNG
強いうがい薬の使用はNG

親知らず抜歯手術前後の喫煙はNG

喫煙は術後合併症を引き起こすことが知られています。手術の1ヶ月前からの禁煙が理想的です。また、術後は抜歯創が治癒する1週間後までの禁煙が必要です。

タバコを吸うとニコチンの作用で歯肉の血管が収縮しています。そのため血液の供給量が低下し、血液に含まれる白血球の量や活性度合いも低下していると考えられます。たばこを吸うと歯周病が悪化することもその一例です。

そのため、免疫力が低下し抜歯窩へ口腔常在菌(歯周病菌など)の細菌感染が起こりやすくなります。

親知らず抜歯手術前後の喫煙はNG
親知らず抜歯手術前後の喫煙はNG

冷えピタ

親知らずの抜歯後に痛みや腫れが出てきた時には冷えピタなどの冷湿布を頬に貼ると痛みや腫れが軽減します。

冷やすことで親知らず周囲の歯茎の炎症が抑えられます。

親知らずの抜歯後、腫れた所を氷で冷やしたり、熱いタオルで暖めたりするのはNGです。

24時間以内なら「冷えピタ」のような湿布薬を使うか、水で濡らしたタオルで冷やす程度が良いでしょう。

ただし、24時間を超えてからは行わないようにしてください。血液循環を阻害する可能性があり、治癒を遅らせることになるからです。

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江戸川区篠崎で親知らずの抜歯についてお悩みの方は、ぜひふかさわ歯科クリニック篠崎までご相談下さい。当院では、事前の検査・診断で出来るだけ手術時間を短縮し、リスクや痛みを抑えた親知らずの抜歯を心がけております。他院で抜歯してドライソケットの痛みでお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。また、親知らずの移植や歯髄バンクなどの有効活用も考慮した適切なアドバイスを行っています。

【動画】親知らず抜歯後ドライソケットに! 

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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