目次

「親知らずが横向きに生えていると言われたけれど、本当に抜いたほうがいいの?」

このような不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

横向きに生えた親知らずは、必ずしもすべて抜歯が必要というわけではありません。しかし、生えている位置や向きによっては、親知らずそのものだけでなく、手前の大切な奥歯に虫歯や歯周病などのトラブルを引き起こすことがあります。

この記事では、横向きに埋まった親知らずの原因や放置するリスク、抜歯を検討するケース、検査方法、抜歯の流れ、抜歯後の注意点や費用についてわかりやすく解説します。

痛みがないからと自己判断せず、まずは親知らずの状態を正しく把握することが大切です。

横向きの親知らずとは

親知らずは「第三大臼歯」「智歯」とも呼ばれ、永久歯の中で最も奥に位置する歯です。

10代後半以降に生えてくることが多いものの、顎の大きさや親知らずの向きなどによって、正常に生えるためのスペースが不足することがあります。

その結果、親知らずが斜めや横向きになったまま、歯ぐきや顎の骨の中に埋まっていることがあります。これを「埋伏智歯」と呼びます。

特に下顎では、親知らずが手前の第二大臼歯(7番)に向かって横向きに埋まっている水平埋伏智歯がみられます。

横向きの親知らずは正常な噛み合わせに参加できないことが多く、位置によっては周囲の歯や歯ぐきに悪影響を及ぼすため、定期的な確認が重要です。

親知らずが生えるスペースが足りない

親知らずは歯列の一番奥に生えてくるため、顎に十分なスペースがないと正常な方向へ生えることができません。

その結果、斜めになったり、横向きのまま骨の中にとどまったりすることがあります。

親知らずが最後に生えてくる

親知らずは永久歯の中でも比較的遅い時期に生えてきます。

その時点ですでにほかの永久歯が並んでいるため、親知らずが正常に生えるスペースが残っていない場合があります。

親知らず自体の向き

親知らずは、顎の骨の中で形成される段階から傾いていることがあります。

親知らずの向きや周囲のスペースなど、複数の要因が関係して横向きや斜め向きになると考えられます。

横向きの親知らずは、歯ぐきの中や顎の骨に埋まっていることがあるため、口の中を見るだけでは正確な位置を判断できません。

一般的にはパノラマレントゲンを撮影し、親知らずの位置や向き、周囲の歯への影響を確認します。

横向きの親知らずのパノラマレントゲン画像
横向きの親知らずのパノラマレントゲン画像

さらに、下顎の親知らずが深い位置にある場合や、神経との位置関係を詳しく確認する必要がある場合には、CT撮影を検討します。

CTでは主に次のような点を確認します。

  • 親知らずの位置・向き
  • 歯根の数や形
  • 下歯槽神経との位置関係
  • 周囲の顎骨の状態
  • 手前の第二大臼歯への影響

特に下顎の骨の中には、下唇や顎周辺の感覚に関係する下歯槽神経が通っています。

親知らずの歯根と神経が近接している場合には、CTによる三次元的な画像を参考に、抜歯方法やリスクを慎重に検討します。

横向きだからといって、すべての親知らずに問題が起こるわけではありません。

しかし、親知らずの一部が口の中に出ている場合や、手前の歯と接触している場合などには、さまざまなトラブルにつながることがあります。

親知らずや手前の歯が虫歯になりやすい

横向きや斜めに生えた親知らずの周囲は、歯ブラシが届きにくく、プラーク(歯垢)がたまりやすくなります。

横向きの親知らずは虫歯や炎症のリスクが高い
横向きの親知らずは虫歯や炎症のリスクが高い

特に親知らずと第二大臼歯(7番)の間は清掃が難しく、

  • 親知らずの虫歯
  • 第二大臼歯の虫歯
  • 歯ぐきの炎症
  • 歯周病

などが起こることがあります。

第二大臼歯の奥側にできた虫歯は自分では気づきにくく、発見されたときには大きく進行している場合もあります。

智歯周囲炎を繰り返すことがある

親知らずが一部分だけ生えている場合、歯と歯ぐきの隙間に細菌や食べかすが入り込み、智歯周囲炎を起こすことがあります。

智歯周囲炎について詳しくはこちら

主な症状には、

  • 親知らず周辺の腫れ・痛み
  • 噛んだときの痛み
  • 口が開きにくい
  • 飲み込みにくい
  • 発熱
  • 頬の腫れ

などがあります。

炎症が強くなると周囲へ感染が広がることもあるため、強い腫れや発熱、口が開きにくいなどの症状がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。

手前の第二大臼歯(7番)に悪影響を及ぼすことがある

横向きの親知らずで特に注意したいのが、手前にある第二大臼歯への影響です。

親知らずが第二大臼歯に接している位置によっては、

  • 第二大臼歯の虫歯
  • 歯周組織の炎症
  • 深い歯周ポケット
  • 歯根吸収

などを起こすことがあります。

第二大臼歯は噛み合わせを支える重要な永久歯です。

親知らず自体に症状がなくても第二大臼歯に問題が生じている場合があるため、レントゲンによる定期的な確認が大切です。

下顎の横向きの親知らずが第二大臼歯(7番)に接しており、接触部分付近に大きな虫歯が認められた症例です。

検査の結果、第二大臼歯の虫歯は歯髄(神経)に及ぶ状態であったため、親知らずの抜歯とともに、第二大臼歯を保存するための根管治療を行いました。

STEP 1|術前の検査

レントゲンで、横向きの親知らずが第二大臼歯に接している状態と、第二大臼歯の奥側に進行した虫歯を確認します。

STEP 2|親知らずの抜歯・第二大臼歯の根管治療

原因となっている親知らずを抜歯し、虫歯が歯髄まで達していた第二大臼歯には根管治療を行います。

親知らずの抜歯と第二大臼歯の治療を行う時期は、炎症の有無や歯の状態などによって異なります。

STEP 3|根管充填

根管内の清掃・消毒を行った後、状態を確認して根管充填を行います。

根管内を適切に封鎖し、細菌が再び侵入するリスクを抑えることが重要です。

STEP 4|被せ物による修復

根管治療後は歯の状態に応じて土台を作り、被せ物で修復します。

保険適用の金属冠で修復

このように、横向きの親知らずによる影響が手前の歯に及ぶと、親知らずの抜歯だけではなく、第二大臼歯にも治療が必要になることがあります。

そのため、症状の有無だけで判断せず、親知らずと第二大臼歯の状態を定期的に確認することが大切です。

横向きの親知らずがあるからといって、必ず抜歯しなければならないわけではありません。

抜歯するかどうかは、親知らずの位置や周囲への影響、年齢、全身状態、抜歯に伴うリスクなどを総合的に判断します。

抜歯を検討することが多いケース

次のような場合には、抜歯を検討することがあります。

  • 智歯周囲炎を繰り返している
  • 親知らずに虫歯がある
  • 手前の第二大臼歯に虫歯や歯周病が生じている
  • 第二大臼歯の歯根吸収が認められる
  • 親知らず周囲に嚢胞などの病変が認められる
  • 今後、周囲の歯に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断される

一方、完全に骨の中に埋まっていて周囲に異常がなく、抜歯によるリスクのほうが高いと判断される場合などには、定期的に確認しながら経過観察することもあります。

「親知らずは痛くなってから抜けばよい」と考える方もいますが、強い炎症が起きている最中には、すぐに抜歯を行わず、まず炎症を落ち着かせる治療を優先する場合があります。

また、親知らずによって第二大臼歯に虫歯や歯周病が生じると、親知らずだけではなく、大切な永久歯の治療も必要になる可能性があります。

そのため、痛みがない段階でも、将来的なトラブルが予想される親知らずについては計画的な抜歯を検討することがあります。

若い時期に抜歯を検討するメリット

親知らずの抜歯は年齢だけで決めるものではありませんが、一般的には若い年代のほうが、加齢後と比較して骨の状態や治癒などの面で有利な場合があります。

一方で、親知らずの位置や歯根の形成状態、神経との位置関係などによって適切な時期は異なります。

「何歳までに必ず抜く」という基準があるわけではないため、レントゲンなどで状態を確認したうえで判断することが大切です。

親知らずの位置や全身状態によっては、設備や体制の整った医療機関での抜歯が適している場合があります。

例えば、

  • 下歯槽神経と親知らずの歯根が近接している
  • 顎の骨の深い位置に埋まっている
  • 歯根の形が複雑
  • 抜歯の難易度が高い
  • 全身疾患や服用薬への配慮が必要
  • 入院や全身麻酔などを検討する必要がある

といったケースです。

当院では診察や画像検査によって抜歯の難易度やリスクを評価し、必要に応じて専門医療機関をご紹介します。

親知らず抜歯の難易度ランク

横向きに埋まっている親知らずは、そのまま引き抜くことが難しいため、必要に応じて歯を分割しながら取り出します。

第2大臼歯(7番)と第3大臼歯(8番=親知らず)のが水平埋伏

実際の処置は親知らずの位置や深さによって異なりますが、主に次のような流れで行います。

1.局所麻酔

抜歯する部分に局所麻酔を行い、麻酔が十分に効いていることを確認してから処置を始めます。

2.歯ぐきの切開

親知らずが歯ぐきや骨の中に埋まっている場合は、必要に応じて歯ぐきを切開します。

3.周囲の骨を削る

親知らずを取り出すために必要な範囲で、周囲の骨を削ることがあります。

4.親知らずを分割して取り出す

横向きの親知らずは一度に取り出すことが難しいため、歯冠や歯根を分割し、少しずつ摘出します。

5.洗浄・縫合

親知らずを取り出した後、抜歯した部分を確認・洗浄し、必要に応じて歯ぐきを縫合します。

処置時間は、親知らずの位置や歯根の形、骨の状態、神経との位置関係などによって異なります。

比較的短時間で終了する場合もあれば、難しい症例では時間を要することもあります。

食事は麻酔が切れてから

麻酔が効いている間は、唇や頬、舌を誤って噛んだり、熱いものによるやけどに気づかなかったりする可能性があります。

基本的には麻酔が切れて感覚が戻ってから食事をとり、抜歯した側ではできるだけ強く噛まないようにしましょう。

抜歯当日は、

  • おかゆ
  • やわらかいうどん
  • 豆腐
  • ヨーグルト
  • ゼリー

など、刺激が少なく食べやすいものがおすすめです。

硬い食べ物や極端に辛いもの、熱すぎるものなど、傷口を刺激する食事は控えましょう。

飲酒や激しい運動、長時間の入浴についても、出血を助長する可能性があるため、抜歯当日は避けるのが一般的です。

強いうがいをしない

抜歯した部分には血液がたまり、「血餅」と呼ばれる血のかたまりができます。

血餅には傷口を保護し、治癒を促す役割があります。

抜歯直後に何度も強いうがいをすると血餅が取れてしまい、治癒が遅れたり、強い痛みを伴うドライソケットにつながったりすることがあります。

抜歯当日は、口の中が気になっても強くブクブクうがいを繰り返さないようにしましょう。

傷口を触らない

抜歯した穴が気になっても、舌や指、歯ブラシなどで傷口を触らないようにしてください。

血餅が取れたり、細菌が入ったりする原因になります。

喫煙を控える

喫煙は傷口の治癒を妨げる要因になるため、抜歯後はできるだけ控えることが大切です。

処方された薬は指示どおり使用する

鎮痛薬や抗菌薬などが処方された場合は、歯科医師の指示に従って服用してください。

抗菌薬はすべての親知らず抜歯で必ず処方されるわけではありません。必要性は感染の状態や処置内容、全身状態などによって判断されます。

薬の使用中に発疹や息苦しさ、強い下痢などの異常がみられた場合は、服用を続けるか自己判断せず、医療機関へ相談してください。

下顎の横向きの親知らずでは、抜歯後に腫れや痛みが出ることがあります。

腫れの程度や続く期間には個人差があり、抜歯の難易度や処置時間によっても異なります。

通常の経過でみられる症状であっても、時間とともに軽減していくことが一般的です。

ただし、

  • 出血がなかなか止まらない
  • 痛みが強くなってきた
  • 腫れが急激に増えてきた
  • 高熱が続く
  • 膿が出る
  • 飲み込みにくい
  • 息苦しい
  • 唇や顎のしびれが強い、または続く

などの症状がある場合は、抜歯を行った歯科医院へ早めに相談してください。

ドライソケットは、抜歯した部分を保護している血餅が失われるなどして、骨が露出した状態です。

通常の術後痛とは異なり、抜歯後しばらくしてから強い痛みが現れたり、痛みが長引いたりすることがあります。

予防のためには、

  • 抜歯当日に強いうがいを繰り返さない
  • 傷口を舌や指で触らない
  • 喫煙を控える
  • 歯科医師から指示された術後の注意事項を守る

ことが重要です。

痛みが強く続く場合は我慢せず、抜歯を受けた歯科医院を受診してください。

横向きに埋まった親知らずの抜歯は、治療目的で必要と判断された場合、健康保険が適用されることが一般的です。

実際の自己負担額は、

  • 親知らずの位置や埋まり方
  • 抜歯の難易度
  • レントゲン・CTなどの画像検査
  • 初診・再診
  • 処方薬
  • 処置内容

などによって異なります。

そのため、一律に「○円」と考えるのではなく、診察後に費用を確認することをおすすめします。

詳しい費用については、こちらの記事も参考にしてください。

親知らずの抜歯費用早見表:日帰り手術と入院手術の違い

横向きでも痛くなければ抜かなくて大丈夫ですか?

痛みがないことだけでは、抜歯が不要とは判断できません。

親知らず自体には症状がなくても、手前の第二大臼歯に虫歯や歯周病、歯根吸収などが起きている場合があります。

反対に、周囲に異常がなく、抜歯に伴うリスクが高い場合には経過観察となることもあります。

レントゲンなどで状態を確認し、抜歯のメリットとリスクを比較して判断します。

横向きの親知らずが歯並びを悪くしますか?

親知らずがあることだけを理由に、前歯の歯並びが悪くなると単純に判断することはできません。

歯並びの変化には、加齢による歯列の変化や噛み合わせなど複数の要因が関係します。

そのため、「歯並びが悪くなるから」という理由だけで親知らずの抜歯を決めるのではなく、周囲の歯への影響なども含めて総合的に判断することが大切です。

横向きの親知らずは自然に生えてきますか?

親知らずの傾きや埋まっている深さによって異なります。

成長とともに位置が変化することもありますが、完全に横向きになっている親知らずが正常な方向へ生えてくるとは限りません。

レントゲンで位置や方向を確認しながら経過をみます。

4本すべて抜く必要がありますか?

必ずしも4本すべて抜く必要はありません。

親知らずは1本ずつ位置や生え方、周囲への影響が異なるため、それぞれについて抜歯の必要性を判断します。

横向きの親知らずは、「横向きだから必ず抜く」というものではありません。

一方で、痛みがなくても親知らずと手前の第二大臼歯の間に汚れがたまり、虫歯や歯周病、智歯周囲炎などが進行していることがあります。

特に注意したいのは、親知らずそのものではなく、手前にある大切な第二大臼歯まで悪くしてしまうケースです。

親知らずを抜くかどうかは、

  • 親知らずの位置・向き
  • 周囲の歯への影響
  • 炎症の有無
  • 下歯槽神経との位置関係
  • 年齢や全身状態
  • 抜歯する場合のリスク

などを総合的に確認して判断します。

「痛くないから大丈夫」「横向きだから必ず抜かなければならない」と自己判断せず、まずは歯科医院でレントゲン検査を受け、自分の親知らずがどのような状態なのか確認しておくことが大切です。

親知らず周辺の腫れや痛みを繰り返している方や、横向きの親知らずを指摘された方は、症状が強くなる前に歯科医院へ相談しましょう。

関連記事

親知らず
智歯周囲炎とは
親知らずの腫れ・痛みは智歯周囲炎?自然に治る?症状・治療・抜歯の必要性
親知らず
親知らずの抜歯難易度
親知らずの抜歯難易度とは?難しいケース・神経との距離・大学病院紹介の目安
親知らず
親知らずの抜歯費用は生え方によって変わる
親知らずの抜歯費用はいくら?保険適用・生え方による料金の違いを解説

痛みがなくても、横向きの親知らずが手前の歯の虫歯や歯ぐきの炎症を引き起こすことがあります。まずはレントゲンで状態を確認し、抜歯が必要かどうかを診断しましょう。

「親知らずが横向きと言われた」「時々腫れる」「抜いたほうが良いのか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

【動画 28秒】下顎7番が痛む原因はこれ!斜めに生えた親知らずの影響

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!