- 1. 下歯槽神経と親知らずの関係
- 2. 神経に近い親知らずを抜くと、しびれが残る?
- 2.1. 神経障害の発生率はどのくらい?
- 3. 抜歯後にしびれが出た場合はどうする?
- 3.1. 薬による治療
- 3.2. 専門医療機関への紹介
- 4. 神経だけではない?抜歯時の出血にも注意
- 5. 上顎の親知らずは「上顎洞」との位置関係に注意
- 5.1. 歯や歯根が上顎洞に入り込むことがある
- 5.2. 口と上顎洞がつながることがある
- 6. 神経損傷のリスクを抑えるための治療方法
- 6.1. 歯冠除去術(コロネクトミー)
- 6.2. 段階的に抜歯する方法
- 7. 神経に近い親知らずはCT検査が必要?
- 8. 神経に近い親知らずは抜くべき?経過観察でもいい?
- 8.1. 抜歯を検討することがあるケース
- 8.2. 経過観察を検討することがあるケース
- 9. 抜歯後のしびれを悪化させないために
- 10. 神経に近い親知らず|歯科医院を選ぶポイント
- 10.1. 必要に応じてCT検査を受けられる
- 10.2. 口腔外科領域の親知らずに対応している
- 10.3. 抜歯以外の選択肢も説明してくれる
- 11. 「神経に近いから抜けない」と言われたら?
- 12. まとめ|神経に近い親知らずは精密な診断が重要
- 12.1. 関連記事
- 13. 「神経に近い親知らず」と言われた方へ
- 14. 【動画】親知らずを抜かなきゃよかったと後悔
- 15. 筆者・院長
- 15.1. 深沢 一
- 15.1.1. メッセージ

「親知らずが神経に近いので、抜歯が難しいかもしれません」
歯科医院でこのように説明され、「抜歯したらしびれが残るのでは?」と不安になった方もいるのではないでしょうか。
下顎の親知らず、とくに横向きに生えているものや骨の中に深く埋まっているものは、下顎の中を通る神経と近接していることがあります。
ただし、神経に近いからといって、必ずしも抜歯できないわけではありません。
親知らずの位置や神経との関係、現在の症状、周囲の歯への影響などを確認したうえで、抜歯・経過観察・歯冠除去術(コロネクトミー)などから治療方針を検討します。
この記事では、神経に近い親知らずを抜歯する際のリスクや検査、治療方法、抜歯後のしびれ、歯科医院を選ぶ際のポイントについてわかりやすく解説します。
下歯槽神経と親知らずの関係

下顎の骨の中には「下顎管」と呼ばれる管があり、その中を下歯槽神経や血管が通っています。
下歯槽神経は、主に下の歯や下唇、顎先などの感覚に関係する神経です。
下顎の親知らずの歯根が下顎管に近接している場合、抜歯の際に神経が圧迫されたり刺激を受けたりする可能性があります。そのため、通常の親知らずよりも慎重な診断と治療が必要です。
とくに、
- 横向きに埋まっている
- 骨の中に深く埋まっている
- 歯根が複雑な形をしている
- レントゲンで歯根と下顎管が重なって見える
といった場合には、必要に応じてCT検査を行い、親知らずと下顎管との位置関係を立体的に確認します。
神経に近い親知らずを抜くと、しびれが残る?
神経に近い親知らずを抜歯した後、一時的に下唇や顎先などにしびれや感覚の変化が生じることがあります。
症状には、
- 下唇がしびれる
- 顎先の感覚が鈍くなる
- 触った感覚がわかりにくい
- ピリピリ・チクチクする
- 普段とは違う感覚が続く
などがあります。
神経への影響の程度は、親知らずと神経との位置関係や抜歯の難易度などによって異なります。
神経障害が生じても時間の経過とともに改善するケースがありますが、回復までに時間がかかる場合や、まれに症状が長期間残る場合もあります。
そのため、神経と近接している親知らずでは、抜歯前にリスクについて十分な説明を受けたうえで治療を検討することが大切です。
神経障害の発生率はどのくらい?
下歯槽神経障害の発生率は、親知らずの位置や埋まり方、神経との距離、手術方法などによって大きく異なるため、一律に示すことはできません。
とくに神経との近接が疑われる症例では、一般的な親知らずよりも神経障害のリスクが高くなる可能性があります。
「何%なら安全」と考えるのではなく、ご自身の親知らずと神経がどのような位置関係にあるのかを確認することが重要です。
抜歯後にしびれが出た場合はどうする?
親知らずの抜歯後、麻酔が切れる時間を過ぎても下唇や顎先などのしびれが続く場合は、抜歯を行った歯科医院へ連絡しましょう。
しびれの範囲や程度、感覚の変化などを確認し、必要に応じて経過観察や治療を行います。
薬による治療
症状や状態に応じて、ビタミンB12製剤などが使用されることがあります。
ただし、薬を使用すれば必ず神経が早く回復するというものではありません。神経への影響の程度を確認しながら、適切に経過をみることが重要です。
専門医療機関への紹介
しびれが強い場合や改善がみられない場合などには、口腔外科をはじめとする専門医療機関への紹介が検討されることがあります。
症状を放置せず、気になる感覚の変化がある場合には早めに相談してください。
神経だけではない?抜歯時の出血にも注意
下顎管の中には神経だけでなく血管も走っています。
そのため、親知らずの歯根と下顎管が近接している場合には、抜歯の際に出血が多くなる可能性も考慮する必要があります。
通常は圧迫や止血処置などによって対応しますが、親知らずの位置や全身状態、服用している薬などによっても出血リスクは異なります。
とくに血液を固まりにくくする薬を服用している方は、自己判断で休薬せず、事前に歯科医師へ伝えてください。
上顎の親知らずは「上顎洞」との位置関係に注意

神経との近接が問題になりやすいのは主に下顎の親知らずですが、上顎の親知らずでは「上顎洞」との位置関係に注意が必要です。
上顎洞とは、鼻の周囲にある副鼻腔の一つです。
上顎の親知らずの歯根が上顎洞の近くにある場合、抜歯によって口腔と上顎洞がつながったり、まれに歯や歯根が上顎洞内へ入り込んだりすることがあります。
歯や歯根が上顎洞に入り込むことがある
上顎の親知らずを抜歯する際、まれに歯や歯根の一部が上顎洞内へ迷入することがあります。
その場合は、位置や症状などを確認し、必要に応じて摘出処置を検討します。
口と上顎洞がつながることがある
親知らずの歯根と上顎洞が近い場合、抜歯した部分と上顎洞が交通する「口腔上顎洞交通」が生じることがあります。
交通の程度によっては、
- 鼻から出血する
- 空気が抜歯した部分を通るように感じる
- 飲んだものが鼻へ抜けるように感じる
などの症状が現れることがあります。
小さな交通では自然に閉鎖する場合もありますが、状態によっては縫合や閉鎖処置などが必要です。
神経損傷のリスクを抑えるための治療方法

親知らずの歯根と下歯槽神経が非常に近く、通常の抜歯では神経への影響が懸念される場合、状態によっては歯をすべて抜かない方法が検討されることがあります。
歯冠除去術(コロネクトミー)
コロネクトミーとは、親知らずの歯冠部分を除去し、神経に近接する歯根を意図的に残す方法です。
歯根を無理に取り除かないことで、通常の抜歯と比較して下歯槽神経への影響を抑えることを目的とします。
ただし、すべての親知らずに適応できるわけではありません。
残した歯根が移動したり、炎症などが生じたりした場合には、後から追加の処置が必要になることがあります。
段階的に抜歯する方法
症例によっては、最初の処置で歯冠部分を除去し、その後の歯根の位置変化を確認してから追加の処置を検討することがあります。
時間の経過とともに歯根が神経から離れる方向へ移動すれば、神経への影響を考慮しながら次の治療を検討できる場合があります。
ただし、適応できる症例は限られるため、CTなどによる診断をもとに判断します。
神経に近い親知らずはCT検査が必要?
通常のレントゲン検査では、親知らずと神経が重なって見えることがあります。
レントゲンは二次元画像のため、
「本当に接触しているのか」
「頬側と舌側のどちらを神経が通っているのか」
「歯根がどのような形をしているのか」
といった情報を十分に把握できない場合があります。
そこで、神経との近接が疑われる場合には、必要に応じてCT検査を行います。
CTでは親知らずや下顎管を三次元的に確認できるため、レントゲンだけでは判断しにくい位置関係を把握するうえで役立ちます。
ただし、CTを撮影すれば神経障害を完全に防げるわけではありません。CTはあくまでもリスクを評価し、より適切な治療計画を立てるための検査です。
神経に近い親知らずは抜くべき?経過観察でもいい?

親知らずは、神経に近いという理由だけで抜歯するものではありません。
反対に、「神経に近いから抜かないほうがよい」と一律に判断することも適切ではありません。
現在の症状や将来的なトラブルの可能性、抜歯によるメリットとリスクを比較して判断します。
抜歯を検討することがあるケース
次のような場合には、抜歯を検討することがあります。
- 痛みや腫れを繰り返している
- 親知らずの周囲に炎症が起きている
- 膿が出ることがある
- 親知らずや手前の歯に虫歯がある
- 周囲の歯ぐきや骨に悪影響が生じている
- 清掃が難しく、炎症を繰り返す可能性がある
とくに横向きの親知らずでは、親知らずそのものだけでなく、手前にある第二大臼歯へ影響を及ぼしていることがあります。
経過観察を検討することがあるケース
一方、
- 痛みや腫れなどの症状がない
- 周囲の歯や歯ぐきに問題がみられない
- 骨の中に完全に埋まっている
- 抜歯による神経障害などのリスクが高い
- 全身状態などから手術の負担を考慮する必要がある
といった場合には、経過観察が選択されることもあります。
ただし、経過観察は「何もしなくてよい」という意味ではありません。
必要に応じて定期的に状態を確認し、変化がみられた場合には改めて治療方針を検討します。
抜歯後のしびれを悪化させないために

抜歯後にしびれが生じた場合、「生活習慣を変えれば早く治る」とは一概にはいえません。
神経の回復には時間がかかることがあり、その経過には個人差があります。
大切なのは、自己判断で様子をみ続けるのではなく、抜歯を行った歯科医院で状態を確認してもらうことです。
また、感覚が鈍くなっている部分は、熱い飲み物でやけどをしたり、唇や頬を誤って噛んだりしても気づきにくいことがあります。
しびれがある間は、口の中や唇を傷つけないよう注意しましょう。
神経に近い親知らず|歯科医院を選ぶポイント
神経との近接が疑われる親知らずでは、抜歯するかどうかだけでなく、どこで診断・治療を受けるかも重要です。
必要に応じてCT検査を受けられる
神経との位置関係を詳しく確認する必要がある場合、CT検査が診断に役立ちます。
レントゲンとCTを使い分けながら、親知らずの位置や歯根の状態を確認してもらえることが一つのポイントです。
口腔外科領域の親知らずに対応している
横向きや深く埋まった親知らず、神経に近接した親知らずなどでは、一般的な抜歯よりも慎重な処置が必要になることがあります。
難しい症例では、口腔外科領域の診療経験がある歯科医師への相談や、必要に応じて病院の口腔外科などへの紹介を受けることも選択肢です。
抜歯以外の選択肢も説明してくれる
親知らずの治療は「抜く・抜かない」の二択とは限りません。
症例によっては、
- 経過観察
- 通常の抜歯
- 歯冠除去術(コロネクトミー)
- 専門医療機関への紹介
など複数の選択肢が考えられます。
それぞれのメリット・デメリットについて説明を受け、納得したうえで治療方法を選ぶことが大切です。
「神経に近いから抜けない」と言われたら?
「神経に近いので、うちでは抜歯できません」と言われても、それは必ずしも「どこでも抜歯できない」という意味ではありません。
安全面を考慮して、設備や治療体制の整った医療機関での処置が適していると判断されている場合もあります。
そのような場合には、口腔外科に対応する歯科医院や病院などで改めて診断を受けることを検討しましょう。
一方で、診断の結果、無理に抜歯せず経過観察するほうが適している場合もあります。
大切なのは、「抜けるかどうか」だけではなく、「今、抜歯する必要があるのか」「抜歯するメリットがリスクを上回るのか」まで含めて判断することです。
まとめ|神経に近い親知らずは精密な診断が重要
下顎の親知らずが下歯槽神経に近接している場合、抜歯によって下唇や顎先などにしびれが生じる可能性があります。
しかし、「神経に近い=抜歯できない」というわけではありません。
レントゲンや必要に応じたCT検査によって親知らずと神経との位置関係を確認し、現在の症状や周囲の歯への影響、抜歯によるメリット・リスクを総合的に判断することが大切です。
症例によっては通常の抜歯だけでなく、経過観察や歯冠除去術(コロネクトミー)などが選択肢となる場合もあります。
「神経に近いと言われて不安」
「抜歯したほうがよいのかわからない」
「難しい親知らずなので抜けないと言われた」
という方は、親知らずの状態を詳しく診査したうえで、ご自身に適した治療方法について歯科医師に相談しましょう。
関連記事
「神経に近い親知らず」と言われた方へ

親知らずと神経の位置関係を詳しく確認し、抜歯の必要性やリスクを慎重に判断します。状態に応じて、できるだけ神経への負担に配慮した治療方法をご提案します。
親知らずの痛みや腫れを繰り返している方はもちろん、「抜くべきか経過観察にするべきか迷っている」という方も、お気軽にご相談ください。
【動画】親知らずを抜かなきゃよかったと後悔
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





