高血圧症患者の歯科治療

  • 高血圧症患者の歯科治療時の偶発症は、局所麻酔後の異常高血圧(意識障害、頭痛、吐き気)が挙げられます。
  • アドレナリン含有の局所麻酔薬は注意が必要です。
  • 異常高血圧の対応は、頭部を高くしますが、血圧が下がらない場合には、ニフェジピンカプセルの内服が有効です。
目次

高血圧の方へ|歯科麻酔・治療中のリスクと当院の安全管理体制とは

🩺 日本における高血圧症の現状

  • 日本の高血圧症患者は約4,300万人と推定されています。
高血圧症
高血圧症

🔍 高血圧症の分類と原因

✅ 本態性高血圧症(約9割)

  • 明確な原因は不明。
  • 遺伝や生活習慣の影響が関与していると考えられています。

✅ 二次性高血圧症(約1割)

  • 腎臓疾患
  • 内分泌系の異常(例:甲状腺、副腎など)
  • 血管の病変
  • 妊娠などが原因となる

⚠️ 高血圧が引き起こす主な合併症

  • 脳血管疾患(脳梗塞、脳出血)
  • 心血管疾患(心筋梗塞、狭心症)
  • 腎臓病
  • 動脈硬化

※血圧が高くてもすぐに発症するわけではありませんが、長期的には深刻なリスクとなります。

🩸 血圧が高い状態が続くことの影響

  • 血管に持続的な圧力がかかり、血管壁がもろくなる
  • 血管の老化が進み、合併症のリスクが高まる

💊 高血圧症の治療法

🏃‍♂️ 生活習慣の改善(軽度の場合)

  • 運動習慣の見直し
  • 塩分・脂質の摂取制限
  • 禁煙・節酒

💊 薬物療法(中〜重度の場合)

  • カルシウム拮抗薬
  • ACE阻害薬
  • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
  • 利尿薬
  • α/β遮断薬

💉 歯科で使用される局所麻酔薬について

🔹 一般的に使われる麻酔薬

  • キシロカイン、オーラ注など
  • アドレナリンを含有

🔹 アドレナリンの役割と作用

  • 麻酔効果を高め、持続時間を延長
  • 血管収縮作用あり
  • 心拍出量の増加により血圧が上昇する可能性

⚠️ 高血圧症患者への注意点

  • アドレナリンの影響で血圧が急上昇することがあるため、投与量や方法に細心の注意が必要

🏥 当院の痛みに配慮した麻酔への取り組み

🌟 表面麻酔の活用

  • 麻酔注射の前に歯ぐきの表面に麻酔を塗布
  • 針の痛みを軽減

🌟 針の無い麻酔器の導入

  • 針を使わずに麻酔薬を注入できる器具を使用
  • 小さなお子様や痛みに敏感な方にも安心

✅ 術前コントロールが良好であれば治療可能

  • 高血圧症患者であっても、血圧が安定していれば治療は可能
  • アドレナリン含有の**キシロカイン(2%リドカイン+1/8万アドレナリン)**が使用可能
  • 抜歯や外科処置も含めた幅広い治療が対象

📊 術中モニタリングの重要性

🔎 必須とされるモニタリング項目

  • 血圧の定期的な測定
  • 脈拍の確認
  • パルスオキシメーターでの酸素飽和度管理
術中モニタリング
術中モニタリング

安全な治療のためには、リアルタイムでの生体情報モニタリングが重要です。

💊 アドレナリン非含有麻酔薬の選択肢

💡 シタネスト・オクタプレシンの活用

  • 主成分:プロピトカインフェリプレッシン
  • アドレナリンを含まないため、心血管系への影響が少ない
  • 高血圧や心疾患の患者で使用を検討
血圧キシロカインシタネスト・オクタプレシン
180/110 mmHg以上原則禁忌(大学病院へ依頼-静脈内鎮静法)
術前コントロール良好使用OK
初回投与量は1.8 mL(1本)まで。
術中に片方でも180/110 mmHgになった場合は、
治療を中断し160mmHg以下になるのを待つ。

キシロカイン投与後に血圧,心拍数の
上昇を認めた場合の追加使用時。
β遮断薬服用者使用OK
初回投与量は1.8 mL(1本)まで。
術中に片方でも180/110 mmHgになった場合は、
治療を中断し160mmHg以下になるのを待つ。

キシロカイン投与後に血圧,心拍数の
上昇を認めた場合の追加使用時。
α遮断薬服用者原則禁忌(アドレナリン反転が起こり血圧の急激な低下)
(高血圧だけではなく精神疾患の薬の中にも含まれる)

🚫 α遮断薬を服用している患者の場合

  • アドレナリン投与によりβ刺激作用が優位になる
  • その結果、血管が拡張し、血圧が低下する危険性あり
  • アドレナリンは**禁忌(使用不可)**となるケースが多い

⚠️ β遮断薬を服用している患者の場合

  • アドレナリン投与によりα刺激作用が優位になる
  • その結果、血管が収縮し、血圧が上昇する可能性あり
  • アドレナリン含有のキシロカインは1.8ml(1本)まで使用可能

💊α/β遮断薬の例

商品名一般名
α遮断薬エブランチル
カルデナリン
デタントール
ミニプレス
ウラピジル
ドキサゾシンメシル酸塩
ブナゾシン塩酸塩
プラゾシン塩酸塩
非選択性β遮断薬インデラル
ナディック
ハイパジール
カルビスケン
ミケランLA
プロプラノロール塩酸塩
ナドロール
ニプラジロール
ピンドロール
カルテオロール塩酸塩

🩺 急性の血圧上昇による緊急病態

  • 収縮期180/拡張期110 mmHg以上の急激な血圧上昇
  • 脳・心臓・腎臓・大血管などに急性の障害を引き起こす可能性あり
  • 速やかな血圧の降下が必要

🔍 異常高血圧の主な症状

  • 意識障害
  • 強い頭痛
  • 吐き気・嘔吐

🦷 歯科治療時に起こりやすい理由

💥 ストレスが引き金に

  • 痛みや不安などの精神的ストレスが原因となる
  • 歯科では以下の処置時に起こりやすい:
    • 局所麻酔後
    • 抜歯などの外科処置
    • TBI(歯磨き指導)
    • 歯周ポケット洗浄などの軽度処置でも発症することがある

🪑 姿勢の調整(座位または半座位)

  • 異常高血圧時は脳への血流が過剰になるため、
    ユニットを起こして座位または半座位に調整
  • 寝かせたままだと脳出血のリスクが高まるおそれあり

💨 酸素吸入の実施

  • 酸素吸入を行い、全身の酸素供給をサポート
  • それでも改善が見られない場合は薬物療法へ移行

💊 ニフェジピン内服による降圧

🔹 使用薬:ニフェジピンカプセル(Ca拮抗薬)

ニフェジピンカプセル
ニフェジピンカプセル
  • 5〜10mgのニフェジピンカプセル(サワイ)を内服
  • 効果は20〜30分かけて徐々に現れる
  • 舌下投与は急激な血圧低下を招くため禁忌
高血圧でも安心して通える歯科医院をお探しの方へ

江戸川区篠崎の当院では、高血圧の患者さまにも安心して歯科治療を受けていただけるよう、血圧管理や麻酔方法に十分配慮した診療体制を整えています。表面麻酔や針のない麻酔器も活用し、痛みや不安を最小限に抑えた治療を提供しています。
持病があって歯科治療をためらっていた方も、まずはお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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