目次

「この歯は抜かなければいけません。」

歯科医院でそう説明され、不安になった経験はありませんか。

できることなら自分の歯は一本でも多く残したいと思うのは当然です。しかし、無理に歯を残すことで感染が広がり、周囲の健康な歯や全身の健康に悪影響を及ぼしてしまうケースもあります。

一方で、「抜歯しかない」と言われた歯でも、精密な診査・診断によって保存できる場合があることも事実です。

この記事では、抜歯が必要となる歯の特徴や診断基準、歯を残せる可能性があるケース、抜歯後の治療方法まで詳しく解説します。

【🎞️ 26秒】抜歯しない歯医者は本当に良い?健康リスクと正しい判断

歯科医師が抜歯を勧める目的は、単に悪い歯を取り除くことではありません。

大切なのは、お口全体の健康を守ることです。

保存が難しい歯を無理に残してしまうと、

  • 細菌感染が拡大する
  • 周囲の歯を失う
  • 歯槽骨がさらに吸収する
  • 強い痛みや腫れを繰り返す

などのリスクが高くなります。

そのため、当院では「抜歯すること」を目的とするのではなく、「本当に保存できるかどうか」を十分に検討した上で診断しています。

次のような症状がある方は、一度歯科医院で検査を受けることをおすすめします。

  • 歯がグラグラしている
  • 歯ぐきから膿が出る
  • 歯が途中で折れている
  • 根だけ残っている
  • 何度も腫れを繰り返す
  • 噛むと痛い
  • 親知らずが何度も腫れる

2つ以上当てはまる場合は、抜歯が必要となる可能性があります。

① 重度虫歯(C4・残根)

レントゲン上で残根状態+支持骨の欠如が確認される場合、保存価値は低く抜歯が妥当と判断します。

右上顎4番にC4の虫歯
右上顎4番にC4の虫歯

右上顎4番が虫歯C4の残根状態になっています。手前右上顎3番は虫歯C3の虫歯です。

同症例右上顎4番のC4虫歯レントゲン画像
同症例右上顎4番のC4虫歯レントゲン画像

レントゲン画像では残根状態の虫歯C4です。実質欠損が大きく土台としての歯根の価値はありません。抜歯が適当と診断します。

右上顎6番がC4の虫歯
右上顎6番がC4の虫歯

右上顎6番がC4の虫歯になっています。虫歯の中は大量の歯垢があり、細菌の増殖が心配です。

右上顎6番のレントゲン画像
右上顎6番のレントゲン画像

右上顎6番のレントゲン画像からは保存不可能と診断できます。虫歯による実質欠損が歯根の内部まで進行しています。抜歯をお薦めする症例です。

虫歯が神経まで進行し、歯冠がほとんど崩壊して歯根だけが残った状態を「残根」と呼びます。

ここまで進行すると、

  • 歯質がほとんど残っていない
  • 細菌感染が歯根内部まで及んでいる
  • 土台として利用できない

ことが多く、保存は困難になります。

② 重度歯周病

特に骨支持がほぼ消失している症例では、周囲歯への悪影響を避けるため抜歯が推奨されます。

右上顎1番が重度歯周病
右上顎1番が重度歯周病

右上顎1番が重度歯周病で歯茎が大きく腫れて出血が認められます。

同症例右上顎1番のレントゲン画像
同症例右上顎1番のレントゲン画像

レントゲン画像では右上顎1番の歯根周囲の骨は完全に吸収されています。抜歯が適当と診断します。

右上顎6番が重度歯周病のレントゲン画像
右上顎6番が重度歯周病のレントゲン画像

レントゲン画像からは右上顎6番の歯槽骨は吸収が激しくほぼありません。かなり動揺があり歯茎の腫れも認められました。抜歯が妥当と診断しました。

右上顎6番が重度歯周病のレントゲン画像
左上顎6番が重度歯周病のレントゲン画像

レントゲン画像では左上顎6番の歯根先端部に僅かに骨が残っているのみです。抜歯が適当と診断します。

歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が溶けてしまいます。

その結果、

  • 歯が大きく動く
  • 出血する
  • 膿が出る
  • 噛めなくなる

状態となります。

③ 歯根破折

赤矢印の先に見えるのが、縦に割れた5番の歯根。歯根破折は治らないため抜歯が必要です。
赤矢印の先に見えるのが、縦に割れた5番の歯根。歯根破折は治らないため抜歯が必要です。

歯の根が縦方向に割れてしまう状態を歯根破折といいます。

特に神経を取った歯は歯質がもろくなり、強い力で歯根が割れてしまうことがあります。

歯根に細菌が侵入すると感染が広がり、ほとんどの場合は保存が困難になります。

④ 根管治療を繰り返しても治らない歯

根管治療後に再発した根尖病変 ― 予後不良により抜歯となった症例
根管治療後に再発した根尖病変 ― 予後不良により抜歯となった症例

根管治療を行っても、

  • 腫れを繰り返す
  • 根尖病変が改善しない
  • 痛みが続く

場合があります。

原因として、

  • 複雑な根管形態
  • 歯根破折
  • マイクロクラック
  • 持続感染

などが考えられます。

再治療でも改善が見込めない場合には抜歯を検討します。

⑤ 親知らず

親知らずのトラブル(埋伏歯)
親知らずのトラブル(埋伏歯)

親知らずは正常に生えないことが多く、

  • 智歯周囲炎
  • 隣の歯の虫歯
  • 歯周病
  • 歯並びへの悪影響

を引き起こすことがあります。

炎症を繰り返す場合には抜歯をおすすめします。

⑥ 埋伏歯・過剰歯

6・5番部に認められる埋伏過剰歯のX線所見
6・5番相当部に認められる埋伏過剰歯のX線所見

正常な歯列に悪影響を及ぼす埋伏歯や過剰歯は、

  • 歯並びの乱れ
  • 隣の歯の歯根吸収
  • 矯正治療の妨げ

となるため、抜歯が必要になることがあります。

⑦ 嚢胞・腫瘍

歯の根の周囲にできた嚢胞や腫瘍が大きくなると、

  • 骨を溶かす
  • 歯が動く
  • 感染を起こす

ことがあります。

病変の切除とともに抜歯を行う場合があります。

「抜歯しかない」と説明された歯でも、精密検査によって保存できる可能性があります。

当院では症例に応じて、

などを検討します。

歯を残せる可能性があるかどうかは、精密な診断によって判断します。

歯を残す選択肢「エクストルージョン」
歯を残す選択肢「エクストルージョン」

当院では次のような項目を総合的に評価しています。

  • 必要に応じてCTによる三次元診断
  • レントゲン検査
  • 残っている歯質の量
  • 歯槽骨の支持量
  • 歯周病の進行度
  • 噛み合わせ
  • 長期予後

一つの検査だけで抜歯を判断することはありません。

抜歯が必要な歯をそのまま放置すると、

  • 感染の拡大
  • 強い痛み
  • 顎の骨の吸収
  • 隣の歯への感染
  • 歯並びや噛み合わせの悪化

などの問題が起こることがあります。

場合によっては、抜歯する歯が1本から2~3本へ増えてしまうこともあります。

抜歯後を放置すると起こるリスク|歯並び・噛み合わせの変化
抜歯後を放置すると起こるリスク|歯並び・噛み合わせの変化
  • 口腔内の細菌が血流に入り込む現象を**歯原性菌血症(しげんせいきんけっしょう)**と呼びます。
  • 特に免疫力が低下している高齢者や基礎疾患がある方は注意が必要です。
残根で穴があいています
残根で穴があいています
歯原生菌血症の模式図
歯原生菌血症の模式図

歯を抜いたまま放置すると、

  • 隣の歯が倒れる
  • 噛み合う歯が伸びてくる
  • 噛み合わせが乱れる
  • 顎の骨が吸収する
  • 将来インプラントが難しくなる

などの問題が起こります。

そのため、抜歯後は早めに歯を補う治療を行うことが大切です。

抜歯後には次のような治療法があります。

インプラント

健康な歯を削らず、天然歯に近い噛み心地を回復できます。

抜歯後の補綴治療|上顎6番相当部におけるインプラント治療の流れ

抜歯後の選択肢|上顎6番相当部へのインプラント埋入手術
抜歯後の選択肢|上顎6番相当部へのインプラント埋入手術
抜歯後の補綴治療|上顎6番相当部インプラント上部構造装着後のX線所見
抜歯後の補綴治療|上顎6番相当部インプラント上部構造装着後のX線所見

上顎6番を抜歯後、欠損部の機能回復を目的としてインプラント治療を行った症例です。1枚目はインプラント埋入手術時の口腔内写真、2枚目は最終的にインプラント上部構造を装着した後のX線画像を示しています。適切な位置と角度でインプラントを埋入することで、周囲骨との良好な適合が得られ、咬合力を安定して支えられる状態となっています。隣在歯を削る必要がなく、見た目と噛む機能の両立を図れる点が、抜歯後の補綴治療としてのインプラントの大きな特長です。

ブリッジ

固定式で違和感が少ない反面、両隣の歯を削る必要があります。

入れ歯

保険診療にも対応し、多くの症例に適応できます。

患者さんのお口の状態やご希望に合わせて最適な方法をご提案します。

当院では、できる限り天然歯を残すことを大切に考えています。

そのため、

  • レントゲンによる精密診断
  • 拡大視野による治療
  • 歯周病の専門的治療
  • 保存治療の選択肢の提示

を行い、患者さんと十分に相談した上で治療方針を決定しています。

無理に歯を残すことも、安易に抜歯することもありません。

長期的に健康なお口を維持できる治療をご提案いたします。

Q. グラグラする歯は必ず抜歯ですか?

いいえ。歯周病治療によって改善する場合もあります。まずは検査が必要です。

Q. 抜歯は痛いですか?

局所麻酔を十分に行うため、治療中の痛みはほとんどありません。

Q. 「抜歯しかない」と言われましたが相談できますか?

はい。セカンドオピニオンとしてご相談いただく方も多くいらっしゃいます。

Q. 親知らずは必ず抜く必要がありますか?

正常に生えて問題がなければ、必ずしも抜歯する必要はありません。

「抜歯しかない」と言われて不安を感じている方や、できるだけ自分の歯を残したいとお考えの方は、一人で悩まずご相談ください。

当院ではレントゲンなどを用いた精密検査を行い、歯を残せる可能性も含めて丁寧に診断いたします。患者さんにとって最適な治療法を一緒に考え、納得いただいたうえで治療を進めてまいります。

にほんブログ村 病気ブログへ
にほんブログ村

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!