「特に噛んでいるつもりはないのに、気づくと上下の歯が触れている」

このような状態が続いている方は、TCH(Tooth Contacting Habit:歯牙接触癖)の可能性があります。

TCHは近年、顎関節症や歯の痛み、肩こりなどとの関連が注目されている習癖です。わずかな歯の接触であっても、長時間続くことで口腔や全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。

今回はTCHの原因や症状、改善方法について詳しく解説します。

TCH(歯牙接触癖)とは
TCH(歯牙接触癖)とは

TCHとは、上下の歯を無意識に接触させ続ける習慣のことです。

食事や会話以外の時間、本来であれば上下の歯は接触していません。正常な状態では、上下の歯の間に約2〜3mmの隙間(安静空隙)が存在しています。

しかしTCHがあると、軽く歯が触れた状態が長時間続き、咀嚼筋や顎関節に持続的な負荷がかかります。

食いしばりとの違い

TCHと食いしばりは混同されやすいですが、以下のような違いがあります。

TCH食いしばり
軽い力で歯が接触する強い力で噛み締める
主に日中に起こる睡眠中や強い緊張時に多い
長時間持続しやすい短時間でも強い負荷がかかる

TCHは力が弱いため軽視されがちですが、長時間続くことで慢性的な筋疲労を引き起こします。

TCHが注目されるようになった背景

TCHは、現在の 東京科学大学 の顎関節症研究から広く知られるようになりました。

従来、顎関節症は噛み合わせや精神的ストレスが主な原因と考えられていました。しかし研究が進むにつれ、日常的な歯の接触習慣が症状の発症や悪化に大きく関与していることが分かってきました。

「軽く触れているだけだから問題ない」と考えがちですが、筋肉や関節にとっては持続的な負荷となります。

TCHが引き起こす主な症状

顎関節症

TCHによって咬筋や側頭筋が緊張し続けると、顎関節症の原因になることがあります。

主な症状は次の通りです。

  • あごの痛み
  • 口が開けにくい
  • あごを動かすと音が鳴る
  • 咀嚼時の疲労感
  • 朝起きた時のあごのだるさ

顎関節症の患者さんの中には、TCHが背景に存在しているケースが少なくありません。

肩こり・首こり・頭痛

咀嚼筋の緊張は口周囲だけにとどまりません。

咬筋や側頭筋、首の筋肉である胸鎖乳突筋などが緊張し続けることで、

  • 肩こり
  • 首の張り
  • 緊張型頭痛
  • 眼精疲労

などを引き起こすことがあります。

歯や補綴物への悪影響

歯が接触し続けることで、歯や被せ物にも負担がかかります。

その結果、

  • 歯のすり減り
  • 知覚過敏
  • 詰め物や被せ物の脱離
  • 歯のひび割れ
  • 歯根破折

などのリスクが高まります。

また、日中のTCHが夜間の歯ぎしりや食いしばりを助長する場合もあります。

TCHが起こりやすい場面

TCHが起こりやすい場面
TCHが起こりやすい場面

パソコン・スマートフォン操作中

TCHは集中している時に起こりやすい習癖です。

特に、

  • デスクワーク
  • パソコン作業
  • スマートフォン操作
  • 読書
  • 車の運転

などでは無意識に歯を接触させていることがあります。

細かい作業や趣味

以下のような作業中も注意が必要です。

  • 楽器演奏
  • 裁縫
  • イラスト制作
  • 工作
  • 事務作業

真面目で集中力が高い方ほどTCHが習慣化しやすい傾向があります。

自分でできるTCHセルフチェック

次の方法で簡単に確認できます。

自分でできるTCHセルフチェック
自分でできるTCHセルフチェック

STEP1 姿勢を整える

背筋を伸ばし、肩の力を抜いて座ります。

STEP2 口元に意識を向ける

唇を自然に閉じた状態で、上下の歯が触れていないか確認します。

STEP3 安静空隙を意識する

上下の歯の間に約2〜3mmの隙間がある状態を保ちます。

次のような場合はTCHの可能性があります。

  • 気づくと歯が触れている
  • 歯を離すと違和感がある
  • 日中に何度も歯が接触している

「歯を離す」と意識づける

TCH改善で最も重要なのは、自分の癖に気付くことです。

「歯を離す」と意識づける
「歯を離す」と意識づける

「歯を離す」

と書いたメモを、

  • パソコン
  • 洗面所
  • 冷蔵庫
  • スマートフォン
  • トイレ

など目につく場所に貼る方法が有効です。

リラクゼーション訓練

緊張した筋肉をほぐす習慣も役立ちます。

リラクゼーション訓練
リラクゼーション訓練
  1. 肩をすくめる
  2. 軽く噛み締める
  3. 鼻から息を吸う
  4. ゆっくり息を吐きながら全身の力を抜く

これを繰り返すことで、あご周囲の筋肉の緊張を和らげることができます。

姿勢を改善する

猫背や前かがみ姿勢はTCHを助長します。

特にパソコン作業時は、

  • モニターの高さを調整する
  • 背筋を伸ばす
  • 定期的に休憩する

ことを心がけましょう。

TCHはレントゲン検査では診断できません。

そのため歯科医院では、

  • 日常生活の習慣
  • あごの症状
  • 肩こりや頭痛の有無
  • 歯ぎしりや食いしばりの状況

などを詳しく確認しながら診断します。

治療の中心は行動療法であり、

  • TCHへの気づき
  • 歯を離す習慣づけ
  • 姿勢指導
  • 開口訓練
  • 筋肉のリラクゼーション

などを行います。

歯ぎしりや食いしばりを伴う場合には、夜間用マウスピース(ナイトガード)を併用することもあります。

TCH(歯牙接触癖)は、日中に無意識のうちに上下の歯を接触させ続ける習慣です。

わずかな力であっても長時間続くことで、顎関節症や肩こり、頭痛、知覚過敏、歯の破折などさまざまな問題を引き起こす可能性があります。

正常な状態では、上下の歯は安静時に接触していません。まずは「歯は離れているのが正常」ということを理解し、自分の癖に気付くことが改善への第一歩です。

あごの痛みや原因不明の肩こり、歯の違和感が続く場合は、TCHが関係している可能性もあるため、一度歯科医院で相談することをおすすめします。

「気づくと歯を合わせている」「あごが疲れる」「肩こりや頭痛が続く」――その症状はTCH(歯牙接触癖)が原因かもしれません。

TCHは、上下の歯を無意識に接触させ続ける習慣で、顎関節症や食いしばり、知覚過敏、歯の破折などのリスクを高めることがあります。しかし、ご自身では気付きにくいため、長期間放置されているケースも少なくありません。

江戸川区篠崎でTCHにお悩みの方は、日常生活の習慣やあご・筋肉の状態を確認しながら、歯を離すための行動療法やセルフケア方法をご提案いたします。あごの違和感や慢性的な肩こり、歯の負担が気になる方は、お気軽にご相談ください。

【動画】差し歯やブリッジが取れた時の応急処置

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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