歯周病は、成人が歯を失う主な原因の一つです。しかし、同じように歯磨きをしていても、歯周病の発症や進行のしやすさには個人差があります。

その違いには、プラーク(歯垢)の付着状況だけでなく、喫煙、糖尿病などの全身状態、生活習慣、口腔内の環境、遺伝的な要因など、さまざまな因子が関係しています。

この記事では、歯周病になりやすい人にみられる特徴やリスクを高める要因、予防のポイントについて詳しく解説します。

歯磨きが不十分でプラークが残りやすい人

歯周病の発症には、歯の表面や歯周ポケット内に形成されるプラーク(歯垢)中の細菌が深く関わっています。

プラークは多数の細菌を含むバイオフィルムで、十分に除去されない状態が続くと歯肉に炎症が起こり、歯肉炎から歯周炎へ進行することがあります。

中等度歯周病:右側面
中等度歯周病:右側面
中等度歯周病:正面
中等度歯周病:正面
中等度歯周病:左側面
中等度歯周病:左側面

特に、次のような部位は磨き残しが生じやすいため注意が必要です。

  • 歯と歯の間
  • 奥歯の頬側・舌側
  • 歯が重なっている部分
  • 歯と歯ぐきの境目

プラークの一部は、時間の経過とともに唾液中のカルシウムやリン酸などの成分によって石灰化し、歯石になります。歯石になると歯ブラシでは取り除くことが難しいため、歯科医院での専門的な除去が必要です。

喫煙習慣がある人

喫煙は、歯周病の発症や進行に関係する重要なリスク因子の一つです。

喫煙習慣とタバコのヤニ
喫煙習慣とタバコのヤニ

タバコに含まれるニコチンをはじめとするさまざまな成分は、歯周組織の血流や免疫・炎症反応などに影響を与え、歯周病が進行しやすくなったり、治療に対する反応が得られにくくなったりする可能性があります。

また、喫煙者では歯肉の血管が収縮することなどにより、歯周病があっても歯ぐきからの出血などの炎症所見が目立ちにくい場合があります。そのため、症状だけでは歯周病の進行に気付きにくいことがあります。

さらに、喫煙によって歯の表面に着色(ヤニ)が付着することがあります。ただし、ヤニそのものを歯周病の直接的な原因と考えるのではなく、喫煙習慣そのものが歯周病の重要なリスク因子であることを理解しておくことが大切です。

歯石が付きやすい人

歯石は、歯の表面に付着したプラークが、唾液などに含まれるカルシウムやリン酸などの影響を受けて石灰化したものです。

特に、下顎前歯の舌側や上顎奥歯の頬側は唾液腺の開口部に近く、歯石が形成されやすい部位です。

歯周病になりやすい人の特徴|下顎舌側に歯石がたまりやすい状態
歯周病になりやすい人の特徴|下顎舌側に歯石がたまりやすい状態

歯石そのものが歯周病を直接引き起こすわけではありませんが、表面に凹凸があるためプラークが付着・停滞しやすく、歯肉の炎症が続く環境をつくる要因になります。

歯石は歯ブラシでは除去できないため、付着している場合には歯科医院でスケーリングなどを行います。

ストレスや睡眠不足が続いている人

慢性的なストレスや睡眠不足などの生活習慣は、全身の健康状態や免疫・炎症反応、セルフケアの状態などを介して、歯周病の状態に影響する可能性があります。

また、ストレスが強いときには、

  • 歯ぎしり
  • 食いしばり
  • TCH(歯列接触癖)

などがみられることがあります。

歯ぎしりや食いしばりなどによる過度な咬合力は、それだけで歯周病を発症させる原因ではありません。しかし、すでに歯周組織が弱っている場合には、歯の動揺などに影響することがあります。

そのため、歯周病の治療ではプラークコントロールを基本としながら、必要に応じて噛み合わせや歯に加わる力についても評価します。

糖尿病などの全身疾患がある人

糖尿病と歯周病には相互に関連することが知られています。

特に血糖コントロールが十分でない状態では、免疫・炎症反応や組織の修復などに影響が生じ、歯周病が発症・進行しやすくなることがあります。

また、歯周病による慢性的な炎症が、糖尿病の血糖コントロールに影響する可能性も指摘されています。

糖尿病のある方が適切な歯周病治療を受けることで、血糖コントロールの改善につながる場合があることも報告されていますが、その効果には個人差があります。

そのため、糖尿病のある方は医科での治療と並行して、歯科医院で歯周病の検査や継続的な管理を受けることが大切です。

家族に歯周病の人がいる場合

歯周病の発症や進行には、遺伝的な要因が関係する可能性があります。

細菌に対する免疫反応や炎症反応などには個人差があり、同じような量のプラークが付着していても、歯周組織の反応や歯周病の進行速度が異なることがあります。

ただし、「家族に歯周病の人がいるから自分も歯周病になる」というわけではありません。

家族間では食生活や歯磨きなどの生活習慣が似ることに加え、口腔内細菌を共有する可能性もあります。家族に重度の歯周病の方がいる場合などは、一つの参考情報として歯科医院に伝えておくとよいでしょう。

歯周病に関連する細菌が多く認められる人

歯周炎に関連する細菌群として、「レッドコンプレックス」と呼ばれる3菌種が知られています。

代表的な細菌は次の3種類です。

  • ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)
  • タネレラ・フォーサイシア(T. forsythia)
  • トレポネーマ・デンティコラ(T. denticola)

これらは歯周炎との関連が強い細菌として知られていますが、特定の細菌が存在するだけで歯周病の発症や進行が決まるわけではありません。

歯周病は、口腔内細菌のバランス、プラークの蓄積、宿主側の免疫・炎症反応、喫煙や糖尿病などのリスク因子が複雑に関係して発症・進行します。

当院では、必要に応じてPCR法などを用いた細菌検査を行い、歯周病に関連する細菌の種類や量を調べることがあります。検査結果は、歯周ポケット検査やレントゲン検査などの結果とあわせて総合的に評価します。

間食や甘い飲み物が多い

間食や糖分を含む飲み物を頻繁に摂取する習慣は、特に虫歯のリスクと深く関係しています。

一方、歯周病との関係については、糖分を摂取すること自体を直接的な原因と考えるのではなく、食生活全体や肥満、糖尿病などを含めた生活習慣との関連を考えることが大切です。

スポーツドリンクや清涼飲料水などを頻繁に飲む習慣は、虫歯や酸蝕症のリスクにも関係するため、摂取する頻度や量に注意しましょう。

定期的な歯科受診をしていない

歯周病は初期には自覚症状が乏しく、気付かないうちに進行することがあります。

歯ぐきの腫れや出血などがあっても痛みを伴わないことが多く、歯のぐらつきや噛みにくさなどを自覚した段階では、歯周組織の破壊が進んでいる場合もあります。

自覚症状の有無だけで判断せず、定期的に歯周ポケットや歯肉の状態、歯槽骨などを確認することが早期発見につながります。

「歯周病になりやすい体質」と一言で表すことはできませんが、歯周病の発症や進行には口腔内環境や全身状態、遺伝的背景などの個人差が関係しています。

ドライマウス(口腔乾燥)

唾液には、口腔内を潤したり、食べかすや細菌などを洗い流したりする働きがあります。

唾液の分泌量が低下すると、口腔内の自浄作用が低下し、プラークが停滞しやすい環境になることがあります。

特に口腔乾燥は虫歯のリスク上昇との関連が強く、歯肉や口腔粘膜の健康にも影響するため、口の乾燥が続く場合には原因を確認することが大切です。

歯並びが複雑な人

叢生(乱杭歯)など歯が重なっている部分では、歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークが残りやすくなることがあります。

歯並びそのものが歯周病の直接的な原因というわけではありませんが、セルフケアが難しい状態では歯肉炎や歯周炎のリスクに影響する可能性があります。

歯ブラシだけで十分に清掃できない場合には、デンタルフロス、歯間ブラシ、タフトブラシなどを適切に使い分けることが重要です。

必要に応じて、矯正治療を含めた治療方法を検討することもあります。

全身状態などによって免疫機能に影響がある人

歯周病の進行には、細菌だけでなく、それに対する体の免疫・炎症反応も関係しています。

加齢そのものを歯周病の原因と考えることは適切ではありませんが、年齢とともに全身疾患や服薬、口腔乾燥、セルフケアの難しさなど複数の要因が重なることがあります。

全身状態に応じて、医科と連携しながら口腔内を管理することが重要です。

毎日のプラークコントロールを習慣にする

歯周病予防の基本は、毎日のセルフケアによって歯肉の周囲にプラークをためにくくすることです。

歯ブラシだけでは歯と歯の間などの汚れを十分に除去しにくいため、口腔内の状態に応じて、

  • デンタルフロス
  • 歯間ブラシ
  • タフトブラシ

などを併用すると、より効果的なプラークコントロールにつながります。

ただし、歯間ブラシなどはサイズや使用方法が合っていないと歯肉を傷つけることもあるため、歯科医院で自分に合った清掃方法の指導を受けることをおすすめします。

定期的な歯科メンテナンスを受ける

毎日のセルフケアを丁寧に行っていても、磨きにくい場所にプラークが残ったり、歯石が形成されたりすることがあります。

特に歯石は歯ブラシでは除去できないため、必要に応じて歯科医院で専門的な処置を受けることが大切です。

歯科医院では、歯周組織の状態を確認するとともに、セルフケアでは除去しにくいプラークや歯石を取り除き、患者さんごとのリスクに応じたメンテナンスを行います。

受診間隔は一律に「3〜6か月」と決めるものではありません。歯周病の進行度、治療後の状態、プラークコントロール、喫煙、糖尿病などのリスク因子によって適切な間隔は異なります。

歯科医師や歯科衛生士と相談しながら、自分に合った受診間隔を設定しましょう。

禁煙と生活習慣の見直し

喫煙は歯周病の重要なリスク因子であるため、禁煙は歯周組織の健康を守るうえで重要です。

また、十分な睡眠、栄養バランスを考えた食生活、適度な運動など、全身の健康を維持する生活習慣も大切です。

生活習慣の改善だけで歯周病を治療できるわけではありませんが、適切なセルフケアや歯周病治療と組み合わせることで、口腔と全身の健康維持につながります。

糖尿病などの全身疾患を適切に管理する

糖尿病をはじめとする全身疾患がある場合には、医科で適切な治療を受けながら、歯科でも口腔内の状態を継続的に管理することが重要です。

特に糖尿病と歯周病は相互に関連することが知られているため、血糖コントロールと歯周病治療の両方に取り組むことが大切です。

歯周病のなりやすさや進行のしやすさには個人差があります。

プラークの蓄積を基本として、喫煙、糖尿病などの全身状態、歯並び、口腔乾燥、遺伝的背景、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に関係しています。

そのため、「毎日歯磨きをしているから大丈夫」とは限りません。大切なのは、自分の歯周病リスクを把握し、その状態に合ったセルフケアと歯科医院での継続的な管理を行うことです。

歯周病は早期に発見して適切な治療と管理を行うことで、進行を抑え、歯を長く維持できる可能性が高まります。

歯ぐきからの出血や腫れ、口臭、歯のぐらつきなどが気になる場合はもちろん、自覚症状がない場合でも定期的に歯科医院で歯周組�の状態を確認しましょう。

江戸川区篠崎で歯周病の検査・治療・予防をご検討の方は、まず現在の歯周組織の状態やリスク因子を確認し、ご自身に合った予防・メンテナンス方法について歯科医院へご相談ください。

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歯周病のなりやすさは、歯磨きだけでなく、喫煙や糖尿病、歯並び、口腔環境などによっても異なります。自覚症状がなくても進行していることがあるため、まずは歯ぐきや歯周ポケットの状態を確認することが大切です。

定期的なメンテナンスと専門的な歯周病検査により、歯周病の早期発見・早期治療が可能になります。大切な歯を長く守るために、ぜひ一度お口の状態をチェックしてみましょう。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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