🚨下顎の奥歯(6番)は根が2本あり、その間に汚れが溜まりやすい構造をしています。今回の症例では、この根の分かれ目「根分岐部」に感染が広がり、骨が溶けてしまっていました。まずは根管治療で歯の中の感染を取り除き、その後、清掃しやすい形態をつくるために歯を2本の根に分ける「根分割」を行いました。治療後は金属冠で連結し、歯間ブラシが通る清掃性の高い形態に整えました。しかし経年的な負担から根の一部が破折し、最終的には抜歯に至り、5番と7番で支えるブリッジで機能回復を行いました。

①下顎6番の根分岐部病変

下顎6番根分岐部に広がる透過像。根分岐部病変を示すX線所見
下顎6番根分岐部に広がる透過像。根分岐部病変を示すX線所見

赤矢印の部分に、下顎6番の近心根・遠心根の間(根分岐部)に透過像(黒い部分)が存在しています。
これは**根分岐部病変(furcation involvement)**で、歯髄感染により歯根周囲の骨が溶けている状態を示しています。

②根尖まで緻密に封鎖された根管治療完了像

複雑な根管形態でも、各根管が適切に清掃・充填されていることが確認できます。
複雑な根管形態でも、各根管が適切に清掃・充填されていることが確認できます。

根管充填材が根尖付近まで適切に到達

赤い矢印で示された領域では、根管内が均一な不透過像(白い充填材)で満たされており、根尖(根の先端)までしっかり届いています。
これは根管治療が適切に完了している重要な指標です。

根分岐部までしっかり清掃・充填

この歯は**根が2つに分かれるタイプ(近心根の二根)**で、根管形態が複雑になりやすい部位です。
画像からは、各根管が独立して適切に充填されていることが読み取れます。

周囲骨に急性の透過像はなし

根尖部の骨には、治癒の妨げとなるような**明らかな透過像(黒い病変)や膿の溜まり(根尖病変)**は確認されません。
治療が適切に行われ、炎症の鎮静化が期待できる状態と言えます。

再感染のリスクを抑える密なシール

根管充填材の緻密性が保たれており、
「隙間がない → 細菌が入りにくい」
という、再感染予防に重要な条件が満たされています。

③ルートセパレーション後の連結補綴:歯間ブラシ通過を可能に

歯根分割後、連結冠で補強した大臼歯。歯間ブラシが通る清掃性の高い設計。

赤矢印の部位では、下顎大臼歯の根が分割(ルートセパレーション)され、それぞれを独立した支台として金属冠で連結補綴されている状態です。

● 歯根分割(ルートセパレーション)

本来1本の歯として存在する大臼歯を、根分岐部病変や支持骨の喪失を理由に、根を分割して別々の支台として保存する処置です。
X線では、分割された2本の根が明瞭に分かれて写っています。

● 金属冠での連結補綴

分割した根の上にそれぞれ形成した支台歯を、金属冠で連結して補強し、力の分散と長期安定を図る補綴設計です。

● 歯間ブラシが通過できる設計

根分割後のスペースが確保されており、
歯根間(furcation area)に歯間ブラシを通せるように設計されているのが特徴です。

その結果、

  • 清掃性が向上
  • プラークコントロールがしやすい
  • 根分岐部病変の再発リスクを軽減

といったメリットが得られます。

④ルートセパレーション歯に生じた遠心根の破折

根分割後に補綴していた遠心根が縦破折し、透過像として確認される。
根分割後に補綴していた遠心根が縦破折し、透過像として確認される。
赤矢印で示された部分は、分割した遠心根側の歯肉縁付近に出血・黒変・隙間がみられる破折を疑う所見です。これは、レントゲンで確認された 遠心根の歯根破折 と一致しています。
赤矢印で示された部分は、分割した遠心根側の歯肉縁付近に出血・黒変・隙間がみられる破折を疑う所見です。これは、レントゲンで確認された 遠心根の歯根破折 と一致しています。

赤矢印で示された部位は、分割された大臼歯の遠心根が破折している所見です。

● 遠心根の破折

今回のX線所見では、
遠心根に縦走する透過像が確認でき、遠心根の歯根破折が強く示唆されます。

破折により:

  • 破折線に沿った透過像(黒く見える線)
  • 周囲骨の吸収
  • 根面の輪郭の乱れ

が生じ、補綴歯の維持力が失われています。

● 歯根破折が起きた背景

歯根分割後の根は、一般的に

  • 支持骨量が限られる
  • 応力集中が起こりやすい
  • 咬合力が分散しにくい
    といった理由から破折リスクが高くなります。

連結冠による補強を行っていても、遠心根は細く脆弱なことが多く、長期的には破折することがあります。

⑤下顎6番抜歯後の抜歯窩を示すX線所見

6番抜歯直後の抜歯窩が黒く透過像として確認される。
6番抜歯直後の抜歯窩が黒く透過像として確認される。

画像中央の矢印で示された部位には、下顎6番(第一大臼歯)を抜歯した後の抜歯窩(ソケット)が認められます。

抜歯窩(ソケット)の特徴

矢印の領域は、周囲骨よりも**透過性が高く(黒く)**写っており、
これは抜歯直後〜初期治癒過程に特有のX線像です。

抜歯後しばらくは、

  • 血餅(血の塊)
  • 線維性組織
  • 新生骨がまだ未成熟
    であるため、骨がまだ十分に白く写りません。

隣在歯の状態

抜歯した6番の**近心側(5番)と遠心側(7番)**は正常に残存しています。
歯根膜腔の幅や歯槽骨に異常な透過像はなく、6番以外に周囲病変はみられません。

抜歯理由との整合性

この症例の流れは、

  • 根分割
  • 遠心根の破折
  • 支台喪失
  • → 抜歯
    という経過です。

画像は、破折により保存不可能と判断された6番を抜歯した直後の明瞭な所見です。

今後の補綴方針

抜歯後は、

  • 7番・5番を支台としたブリッジ
  • インプラント治療
  • 部分義歯
    などが選択肢になります。

抜歯窩の治癒が進むにつれて、数ヶ月かけて徐々に白く(骨で)満たされていきます。

⑥7番と5番を支台とした3歯ブリッジの装着後X線像

7番と5番を支台とし、6番欠損をブリッジで補綴した治療後のX線像。
7番と5番を支台とし、6番欠損をブリッジで補綴した治療後のX線像。

このX線写真には、右側臼歯部(7番・6番・5番)にブリッジが装着されている状態が示されています。

7番と5番が支台歯

画像左側の**7番(第二大臼歯)と右側の5番(第二小臼歯)が支台となり、
その間の6番(第一大臼歯)の位置に
ダミー歯(ポンティック)**が設定されています。

これは、前回の画像で抜歯された6番欠損部の補綴として一般的な治療方法です。

ブリッジのフレームが明瞭

金属の高い不透過像(白い形態)が7番〜5番まで連続しており、
これがブリッジの金属フレームに相当します。

7番と5番それぞれにクラウンが被さり、中央の6番部分は人工歯として連結されています。

6番欠損部の骨は治癒過程

中央部(6番の位置)は、
抜歯窩が骨で満たされてきており、徐々に**透過像が減少(白く)**してきています。
完全な成熟骨に至るには数か月を要しますが、経過として正常な治癒像です。

隣在歯・支持骨に異常所見なし

7番・5番ともに根の周囲に異常な透過像はなく、
支台歯として安定して機能している状態が確認できます。

  1. 下顎6番の根分岐部病変を発見
  2. 根管治療で感染除去
  3. 根分割(ルートセパレーション)で歯を保存
  4. 2本の根を連結冠で補綴し、歯間ブラシが通る清掃しやすい形態に
  5. 数年後に歯根破折が発生
  6. 保存不可となり、6番を抜歯
  7. 7番・5番を支台とするブリッジで機能回復
江戸川区篠崎で「できるだけ歯を残したい」とお考えの方へ✨

江戸川区篠崎の当院では、根分岐部病変のような難症例でも、根管治療や根分割などの保存治療を丁寧に行い、長く使える歯を目指します。
万が一、破折や抜歯が必要になった場合でも、その後のブリッジ治療まで一貫してサポートし、機能と噛み心地の回復を大切にしています。😊

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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