目次

◆ シェーグレン症候群とは?

シェーグレン症候群
シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は、ドライマウスやドライアイを主な症状とし、気管・気管支(鼻の乾燥や気管支炎)、消化管・膵臓(胃液や膵液の分泌低下)、膣分泌腺の感染など、全身に影響を及ぼす自己免疫疾患です。主に中高年の女性に多く発症し、単なるドライアイやドライマウスと思われがちなため、発見が遅れやすい病気でもあります。

シェーグレン症候群の患者は悪性リンパ腫に移行するリスクが健常者よりも高いため、一年に一度の検診が必要です。

◆ なぜ今、注目されているのか?

近年は、免疫疾患全体への関心の高まりや、生活の質(QOL)を損なう疾患への社会的理解の進展により、シェーグレン症候群も改めて注目されています。また、指定難病として医療費助成の対象となることから、正確な情報提供や早期診断の重要性が高まっています

◆ この記事が役立つ方

  • 最近、目や口の乾燥がひどい」と感じる方
  • シェーグレン症候群と診断されたが、よくわからない」という方
  • ご家族やパートナーが診断されて不安を感じている方
  • 医療従事者や福祉関係者など、正確な情報を知りたい方

本記事では、原因・症状・検査・治療法・日常の工夫まで網羅的に解説し、読者の疑問や不安をひとつひとつ解消できるよう構成しています。

▶ 原因となる自己免疫反応とは?

シェーグレン症候群は自己免疫疾患のひとつです。本来、私たちの免疫システムは、ウイルスや細菌などの「外敵」から身体を守る働きをします。しかし、シェーグレン症候群ではこの免疫が誤作動し、自分の体の組織――とくに涙腺や唾液腺――を“異物”と認識して攻撃してしまうのです。

この免疫の誤作動により、涙や唾液の分泌が低下し、ドライアイやドライマウスといった不快な症状が現れます。さらに進行すると、関節や内臓など他の部位にも影響が及ぶケースもあります。

▶ 誘因・リスク因子

🧬 遺伝的要因

家族に自己免疫疾患を持つ方がいる場合、発症リスクがやや高まるとされています。特定の**HLA(ヒト白血球抗原)**との関連も研究されています。

♀ ホルモンバランス(特に女性ホルモン)の関与

シェーグレン症候群の患者さんの約90%が女性であり、特に更年期以降に発症することが多いことから、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が発症と関係している可能性が指摘されています。

シェーグレン症候群の患者さんの約90%が更年期以降の女性
シェーグレン症候群の患者さんの約90%が更年期以降の女性

🦠 ウイルス感染との関連

ウイルス感染をきっかけに免疫反応が活性化し、自己免疫疾患を発症するケースもあります。EBウイルスC型肝炎ウイルスなどとの関連が研究対象となっています。


こうした複数の因子が複雑に絡み合うことで、シェーグレン症候群が発症すると考えられています。完全な発症メカニズムはまだ解明されていませんが、早期発見と適切な対応が重症化を防ぐ鍵となります。

シェーグレン症候群は「乾燥症状」だけではありません。 初期症状はあまり目立たず、風邪や加齢と勘違いされがちです。しかし、放っておくと全身にさまざまな不調を引き起こす可能性があるため、早期の気づきがとても重要です。以下に、代表的な症状をまとめました。

▶ 🤕 関節痛・筋肉痛・疲労感

シェーグレン症候群では、関節や筋肉にも炎症が及ぶことがあります。

  • 朝起きたときに手の指がこわばる
  • 膝や肘が腫れて痛む
  • 慢性的なだるさや倦怠感が抜けない

こうした症状が続く場合は、自己免疫性の関節炎を疑う必要があります。

🦴関節リウマチ

Symptoms

手足の指が腫れ変形

関節リウマチは、手指の第二関節から腫れ、下方に広がり滑膜の炎症が起こる疾患です。

関節リウマチで炎症が起きると、指を曲げ伸ばしする時に、腱の動きが悪くなってときに指が伸ばせなくなる「バネ指」と呼ばれる症状が起きます。また、手足の指は様々な形に変形し、生活に支障をきたします。

膝関節も好発部位で、歩行障害が起こることがあります。

シェーグレン症候群の患者では関節リュウマチを30~40%の割合で合併します。

関節リウマチ
関節リウマチ

▶ その他の症状(多臓器への影響も)

🌬️ 鼻腔・皮膚の乾燥

  • 鼻の中が乾いて出血しやすい
  • 肌の乾燥やかゆみがひどくなる

🫁 内臓への影響(重症例)

  • :乾燥性肺炎や間質性肺炎
  • 腎臓:間質性腎炎による尿異常
  • 神経:しびれや感覚異常(末梢神経障害)
  • 消化器:胃腸の不調、膵臓機能の低下

こうした多彩な症状のため、シェーグレン症候群は「見逃されやすい病気」とされています。

「ちょっと乾燥が気になる」「なんとなく疲れがとれない」といったサインを**“年齢のせい”で片づけずに、専門医の診察を受けることが大切**です。

シェーグレン症候群の診断は、ひとつの検査だけでは確定できません。
複数の検査結果と問診を組み合わせて、総合的に診断されます。以下に主な診断の流れを詳しくご紹介します。

▶ 🧑‍⚕️ 問診と身体所見

診察ではまず、現在の症状や持続期間、生活への影響などを丁寧にヒアリングされます。

  • 「目の乾きはいつからか?」
  • 「食事中にむせやすくなったか?」
  • 「他に関節痛や疲労感はあるか?」

また、医師が目や口腔内の乾燥の状態を直接観察することも重要な診断ポイントです。

▶ 💧 涙と唾液の分泌量を測定

◆ シルマー試験(涙の分泌量を調べる検査)

下まぶたに試験紙を挟んで、5分間でどれだけ涙が出るかを測定します。涙の量が5mm以下の場合、ドライアイと判断されることがあります。

シルマーテスト
シルマーテスト

涙液量検査

シルマー試験紙を麻酔薬を用いずに左右の目尻に付け5分間測定し、5ミリ以下の場合であればドライアイ陽性と判定されます。

眼科、歯科で行います。

◆ サクソンテスト(唾液腺機能検査)

ガーゼを一定時間口の中で噛み、唾液の量を計測する簡便な検査です。唾液分泌の低下が見られるかを客観的に確認できます。

▶ 🧪 血液検査での抗体検出

シェーグレン症候群の多くの患者さんでは、特定の自己抗体が血液中に検出されます。

  • 抗SS-A(Ro)抗体
  • 抗SS-B(La)抗体

これらの抗体が陽性であることは、診断の重要な根拠となります。
加えて、**リウマトイド因子(RF)抗核抗体(ANA)**も参考にされます。

🧪 自己抗体検査

自己抗体検査(血液検査)
自己抗体検査
抗核抗体(ANA)

抗核抗体(ANA)は、有核成分の核成分に対する抗体の総称です。シェーグレン症候群を含む膠原病で高率に検出します。

抗La/SS-B抗体

抗La/SS-B抗体は、膠原病を合併していないシェーグレン症候群患者の20~40%に検出されます。全身性エリテマトーデス(SLE)に合併している可能性が高まります。

抗Ro/SS-A抗体

抗Ro/SS-A抗体は、膠原病を合併していないシェーグレン症候群患者の60~80%に検出されます。

▶ 🖼️ 画像・病理検査(確定診断に重要)

◆ 涙腺・唾液腺の画像検査

MRIや超音波検査で、唾液腺の萎縮や炎症の有無を確認します。

🩻耳下腺造影検査
耳下腺造影検査
小唾液腺生検(病理検査)
アップルツリーアピアランス

耳下腺の開口部から造影剤を入れると組織の壊れた所に造影剤が溜まります。りんごの実の様な像になるためアップルツリーアピアランスと呼んでいます。

健康であれば唾液腺の導管部分のみしか造影剤は入りません。

耳下腺造影検査はシェーグレン症候群の確定診断には、必須ではありません。

◆ リップバイオプシー(下唇小唾液腺の生検)

確定診断のために行われることがある検査です。下唇の粘膜から唾液腺組織を採取し、リンパ球の浸潤状態を顕微鏡で確認します。
※この検査は専門施設で行われるため、紹介が必要な場合もあります。

🔬小唾液腺のリンパ球の浸潤の有無
小唾液腺生検(病理検査)
小唾液腺生検(病理検査)

浸潤麻酔を行い、下唇の内側を1cm 程切開してブドウの房の様になった小唾液腺の三つを摘出し、10%中性ホルマリン液で固定します。

歯科大学病院の病理教室に送り、検査してもらいます。シェーグレン症候群の場合にはリンパ球の浸潤が認められます。

4ミリ平方の範囲にリンパ球が50個以上浸潤している場合を陽性所見とします。

さらに、腺房細胞の壊死・腺管の拡張・線維化など、組織学的検討を加えます。

ただし、シェーグレン症候群の確定診断に必須ではありません。


下記4項目をすべて満たせば確定

Standard

 口腔症状

毎日、口腔乾燥感か3ヶ月以上続く。

Standard

 眼症状

毎日続く目の乾燥感が3ヶ月以上。

Standard

 目の他覚的所見

シルマーテストで陽性。

Standard

唾液腺の障害の有無

無刺激な状態での総唾液分泌量(安静時唾液)が15分間で1.5ml以下。

📝 診断には「アメリカ・ヨーロッパ分類基準(AECG)」や「米国リウマチ学会基準(ACR/EULAR)」が用いられます。
これらは複数の項目に基づいて点数化され、一定以上で診断確定となります。


正しい診断を受けることで、早期治療や合併症予防につながります。
「乾燥が気になる」「違和感が続いている」など小さなサインでも、早めの受診をおすすめします。

シェーグレン症候群の治療は、症状の程度や現れている部位に応じてアプローチが異なります。
現在のところ、完全に治すことは難しいですが、適切な治療によって症状を緩和し、日常生活の質(QOL)を維持することが可能です。

▶ 💧乾燥症状に対する対処法

◆ 点眼薬(人工涙液)

  • ドライアイには、防腐剤を含まない人工涙液の点眼が基本です。
  • 症状が重い場合には、ヒアルロン酸点眼薬やジクアス®などの処方薬が用いられます。

◆ 人工唾液や口腔保湿ジェル

  • ドライマウスには、市販のスプレータイプの人工唾液口腔ジェルが有効です。
  • キシリトール入りガムや飴で唾液分泌を促す工夫も効果的。

◆ 生活習慣の見直し

  • 加湿器の使用や、水分補給をこまめに行うことが推奨されます。
  • 喫煙・アルコールの控え刺激の少ない歯磨き粉の使用もポイントです。

▶ 🧠 全身症状が強い場合の治療

関節炎や臓器障害が見られる場合には、内服薬による治療が必要です。

◆ ステロイド(副腎皮質ホルモン)

  • 炎症を抑える強力な薬剤。重症例や急性期に使用されます。
  • 長期使用には副作用のリスクがあるため、医師の管理下で慎重に使用されます。

◆ 免疫抑制剤

  • タクロリムスシクロスポリンなどが選択されることがあります。
  • 全身性の症状や合併症(肺炎・腎障害など)がある場合に用いられます。

◆ 抗リウマチ薬(DMARDs)

  • **ヒドロキシクロロキン(プラケニル)**などは、比較的副作用が少なく、軽度~中等度の症状に用いられることがあります。

▶💊ドライマウスに適した処方薬:サリグレンとサラジェンの使い分け

◆ 唾液の分泌を促進する薬剤(保険適用)

薬剤名用法・用量禁忌と注意事項
サラジェン錠
サラジェン顆粒
5mg 3T 3×食後 31日分
5mg 3包 3×食後 31日分
シェーグレン症候群と
頭頚部の放射線治療後のドライマウスにも適用。
重篤な虚血性心疾患、喘息は禁忌。
サリグレン30mg 3cap 3×食後 31日分シェーグレン症候群のみ適用。
重篤な虚血性心疾患、喘息は禁忌。

◆ 副作用

サラジェン錠、サラジェン顆粒、サリグレンを飲むと汗をかき、心臓がドキドキする副作用が出る患者が20~30%います。

サラジェン顆粒でうがいをする方法

副作用のある方はサラジェン顆粒をペットボトルに溶いてうがいをするという方法があります。うがいをすることで粘膜に沢山存在している小唾液腺を刺激して唾液の分泌を促進することが出来ます。

サラジェン顆粒3包をペットボトルに溶かす
サラジェン顆粒3包をペットボトルに溶かす
サラジェン顆粒3包をペットボトルに溶かす

サラジェン顆粒0.5%3包(1日分)を約120mlのペットボトルに入れ、水を半分程度(60ml )入れて軽く振ります。

白く濁っている状態で問題ありません。ポカリスエットの様な味なので違和感なく続けられます。

うがいの方法
  • 1日に数回行います。
  • 口の中全体に行き渡るようにブクブクします。これを二分間続けて飲まずに吐き出します。
  • うがい薬はその日のうちに使い切って下さい。余った場合は捨てて、翌日よく洗浄したペットボトルで新しいうがい液を作って下さい。

◆ 長期服用薬には漢方薬

唾液の分泌を促進する漢方薬(保険適用)
薬剤名用法・用量禁忌と注意事項
ツムラ白虎加人参湯9g 分3 毎食前or食後 31日分主な副作用として、発疹、かゆみ、蕁麻疹、
食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、口中不快感。
ツムラ五苓散7.5g 分3 毎食前or食後 31日分
(神経性ドライマウスに有効)
主な副作用として、胃の不快感、食欲不振
軽い吐き気、発疹、かゆみ、肝機能異常。
※ 即効性はありませんが、長期間の服用に適しています。体質改善を目的としているので効果が出るまで数ヶ月服用する必要があります。
※ シェーグレン症候群でもノンシェーグレンでも保険適用。

▶ 🧬 新しい治療アプローチ

◆ 生物学的製剤(バイオ製剤)の可能性

  • 関節リウマチなどで使用されるTNF阻害薬や抗IL-6抗体などが、難治性のシェーグレン症候群にも応用され始めています
  • ただし、現時点では保険適用外であることが多く、専門医の判断と施設での使用に限られるケースがほとんどです。

◆ 臨床研究の最新情報

  • 国内外で、B細胞に対する新たな標的療法や、免疫調整作用を持つ薬剤の研究が進行中です。
  • 最新の治験情報や治療選択肢については、大学病院や専門医療機関での相談が推奨されます

「症状が軽いから大丈夫」と思わず、段階に応じた適切な治療を受けることが、合併症予防や生活の質の向上に直結します。

シェーグレン症候群は「乾燥症状だけの病気」ではありません。
進行すると、他の自己免疫疾患や、時には生命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性があります。定期的な検査と早期対応が重要です。

▶ 関連しやすい疾患

シェーグレン症候群は、単独で発症する「原発性」と、他の疾患に合併する「続発性」の2つに分類されます。以下は併発しやすい代表的な病気です。

◆ 関節リウマチ(RA)

  • 最も合併が多い疾患。関節の腫れやこわばり、関節破壊を引き起こす自己免疫疾患です。

◆ 全身性エリテマトーデス(SLE)

  • 発熱、皮疹、腎炎、神経症状など多彩な症状を伴う疾患で、若い女性に多く見られます

◆ 強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病(MCTD)など

  • 他の膠原病との重複症例もあり、複数の自己免疫疾患を併発している場合も珍しくありません。

▶ リンパ腫など重篤な合併症の可能性

シェーグレン症候群の中で特に注意すべきなのが、**悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)**のリスクです。

◆ なぜリンパ腫が起こるのか?

  • 長期間にわたり免疫が活性化され続けることで、B細胞の異常増殖が起こりやすくなります。
  • シェーグレン症候群患者の約5~10%にリンパ腫が発症するとされ、一般人よりリスクが高いと報告されています。

◆ リンパ腫のサイン

  • 顎の下や首のリンパ節が腫れてしこりになる
  • 原因不明の体重減少や発熱、寝汗
  • 唾液腺の腫れが片側だけ大きくなる、硬くなる

このような症状がある場合は、早急に専門医で精密検査を受けることが必要です。


「乾燥」だけでなく、全身の健康を守るためにも、定期的なフォローアップが不可欠です。
自覚症状が少ない場合でも、半年〜1年に1回の通院と検査が推奨されます。

シェーグレン症候群は、患者の約90%が女性とされています。
その背景には、ホルモンバランスや免疫システムの性差が深く関わっていると考えられています。さらに、妊娠・出産に関しても特有の注意点がありますので、妊活中や妊娠中の方は必見です。

▶ 女性に多く発症する背景

◆ ホルモンと免疫の関係性

女性ホルモン(特にエストロゲン)には、免疫系の働きを調整する作用があります。しかし、更年期などでホルモンバランスが崩れると、自己免疫の誤作動が起こりやすくなると考えられています。

◆ 性染色体(X染色体)の影響

X染色体上には、免疫調整に関わる遺伝子が多く存在します。女性はX染色体を2本持っているため、自己免疫疾患にかかりやすい遺伝的背景を持ちやすいという説もあります。

▶ 妊娠中の注意点と治療方針

◆ 妊娠前に確認すべきこと

  • シェーグレン症候群が安定している状態で妊娠を計画することが大切です。
  • 抗SS-A(Ro)抗体や抗SS-B(La)抗体を保有している場合、胎児への影響(新生児ループスなど)もあり得るため、事前の抗体検査が推奨されます。

◆ 妊娠中に注意すべき合併症

  • 胎児徐脈(先天性心ブロック):抗SS-A抗体が胎盤を通過することで、ごくまれに胎児の心臓に影響を与える可能性があります。
  • 早産や低出生体重児のリスクがわずかに高まることも。

◆ 妊娠中の治療と薬の選択

  • 基本的には症状の程度に応じて安全性の高い薬を選択します。
  • **ヒドロキシクロロキン(プラケニル)**などは比較的安全とされ、妊娠中でも継続可能なケースもあります。
  • ステロイドも必要最小限で使用されることがありますが、主治医と産婦人科の連携が不可欠です。

「自己免疫疾患があると妊娠できないのでは?」と不安になる方も多いですが、現在では適切な管理のもとで妊娠・出産を迎えることが十分可能です。

「もしかしてシェーグレン症候群かも…?」
そんな不安を感じたら、まずは専門的な診断ができる医療機関を受診することが大切です。
乾燥症状だけでは診断に至らないこともあるため、シェーグレン症候群の診療経験が豊富な医師に相談するのが安心です。

専門医・医療機関の選び方
専門医・医療機関の選び方

▶ 何科を受診すべきか?

シェーグレン症候群は全身性の自己免疫疾患のため、症状に応じて複数の診療科が関与します。まずは以下の診療科を目安にしてください。

症状受診する診療科の例
目の乾き・異物感眼科(ドライアイの精査・点眼治療)
口の乾燥・口内トラブル歯科口腔外科/耳鼻咽喉科(唾液腺の検査)
関節痛・倦怠感・全身症状リウマチ内科/膠原病内科(診断・全身管理)

💡 総合的に診断・治療を行う場合は「リウマチ内科」や「膠原病内科」が最適です。
大学病院や基幹病院には、これらの専門外来が設置されていることが多く、複数の科が連携した診療が可能です。

▶ 地域別の専門医紹介(※別記事リンクへ)

「どこに相談すればいいのか分からない」という方のために、地域ごとの専門医療機関・外来を別記事にてまとめています。

➡️ [あなたの地域のシェーグレン症候群専門外来一覧はこちら](※外部リンク)

また、以下の公的機関の情報も役立ちます:


**症状が続く、原因がわからない、診断に至らなかった…**そんな時こそ、シェーグレン症候群の専門医へ早めに相談することが、正確な診断と適切な治療の第一歩になります。

シェーグレン症候群の治療は病院だけで完結するものではありません。
毎日の暮らしの中でできる工夫が、**症状の緩和や再発予防につながります。**ここでは、乾燥への対処やストレス管理など、実践しやすい生活のヒントをご紹介します。

▶ 🏠 乾燥を防ぐ生活環境の整え方

シェーグレン症候群の基本症状である「乾き」に対応するために、住環境の湿度管理がとても重要です。

  • 室内では加湿器を使用し、湿度を40〜60%に保つ
  • 冷暖房の風が直接当たらないように配置を工夫する
  • 寝室には濡れタオルや観葉植物を置いて自然加湿
  • 外出時は保湿マスクやサングラスで乾燥から目や口を守る

▶ 🍽️ 食事・水分補給の工夫

唾液の分泌が減ると、食事中に飲み込みづらくなるほか、口内炎や虫歯のリスクも上がります。以下の工夫で、日常の食事を快適に保ちましょう。

  • 水分はこまめに少量ずつ摂取(一気飲みよりも回数が大事)
  • 食事にはとろみをつけることで飲み込みやすくなる
  • 酸味(レモンなど)やキシリトールで唾液分泌を促進
  • アルコール・カフェイン・香辛料など、刺激の強いものは控えめに

また、口腔ケアを丁寧に行うことも乾燥から口を守る大切な習慣です。

▶ 💆‍♀️ ストレスとの関係とメンタルケア

自己免疫疾患は、ストレスとの関係が深いとされています。過度な緊張や不安は免疫バランスに影響を与えるため、心のケアも重要な治療の一環です。

  • 可能な限り睡眠時間をしっかり確保する
  • 音楽・アロマ・軽い運動などリラックスできる時間を日常に取り入れる
  • 症状への不安や孤独感が強い場合は、医療ソーシャルワーカーやカウンセラーに相談を

また、同じ病気を持つ方との交流もおすすめです。患者会やSNSを通じた情報共有は、励みになることも多くあります。


自分の体調と対話しながら、無理せず続けられる工夫を見つけることが、長く安定して過ごすコツです。
「できることから少しずつ」が合言葉です。


シェーグレン症候群は、自己免疫疾患の一つであり、患者さんやご家族にとって、最新の情報や公的支援制度の理解は非常に重要です。ここでは、難病指定の概要、利用可能な公的支援制度、そして国内外の研究の進展についてご紹介します。

▶ 難病指定(指定難病53)とは?

指定難病とは、国が定める基準に基づき、治療法が確立されていない希少な疾病を指します。シェーグレン症候群は、その53番目の指定難病として認定されています。これにより、特定の条件を満たす患者さんは、医療費助成などの公的支援を受けることが可能となります。

▶ 公的支援制度と申請方法

医療費助成制度は、指定難病の患者さんが高額な医療費負担を軽減するための制度です。申請手続きの一般的な流れは以下のとおりです:

  1. 必要書類の準備
    • 臨床調査個人票(診断書):指定医が作成します。
    • 申請書:各自治体の窓口で入手可能です。
    • 健康保険証のコピー:申請者のもの。
    • 住民票の写し:世帯全員分。
    • 課税状況を証明する書類:市町村民税の課税証明書など。
  2. 申請の提出
    • 上記の書類をお住まいの都道府県または指定都市の窓口に提出します。受付窓口は自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。
  3. 審査と受給者証の交付
    • 提出後、審査が行われ、承認されると特定医療費(指定難病)受給者証が交付されます。

注意点

  • 申請は診断後できるだけ早く行うことが推奨されます。申請日から遡って医療費助成が適用される場合もありますが、遡及期間には制限があります。

▶ 国内外の研究の進展

シェーグレン症候群の研究は、国内外で活発に行われています。

  • 国際的な取り組み
    • 国際シェーグレン症候群シンポジウムが2~3年に1回開催され、世界中の医師や研究者が最新の知見を共有しています。これにより、病因の解明や新しい治療法の開発が進められています。
  • 国内の動向
    • 日本シェーグレン症候群学会が中心となり、診断基準の見直しや治療法の研究が行われています。また、患者会として**「シェーグレンの会」**が活動しており、患者さん同士の情報交換や支援が行われています。

最新の研究トピック

  • バイオマーカーの探索:早期診断や病勢評価のための新しい指標の研究。
  • 新規治療薬の臨床試験:生物学的製剤を含む新しい薬剤の効果と安全性の評価。

まとめ

シェーグレン症候群に関する最新情報や公的支援制度を理解し、適切に活用することで、患者さんの生活の質の向上が期待できます。定期的に信頼できる情報源をチェックし、主治医と相談しながら、最適な治療とサポートを受けることが重要です。

Q1. シェーグレン症候群は完治しますか?

A.
現時点では完治させる治療法は確立されていませんが、症状をコントロールする治療法は多数あります。早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、通常に近い生活を送ることが可能です。

Q2. ドライアイやドライマウスだけでも受診すべき?

A.
はい。乾燥症状が長く続いている場合は、自己免疫疾患のサインかもしれません。特に目と口の両方に乾燥を感じている方は、早めにリウマチ内科や膠原病内科を受診して検査を受けることをおすすめします。

Q3. 妊娠中でも治療はできますか?

A.
妊娠中でも、胎児への影響が少ない薬を選んで治療が可能です。特に抗SS-A抗体が陽性の場合、胎児に心臓の合併症(先天性心ブロック)が起こる可能性があるため、産婦人科とリウマチ内科が連携した慎重な管理が重要です。

Q4. 市販薬で乾燥症状は改善できますか?

A.
軽度のドライアイやドライマウスには、市販の人工涙液や保湿ジェルが効果的です。ただし、症状が改善しない・長引く場合は必ず専門医を受診し、根本的な原因を調べることが大切です。

Q5. シェーグレン症候群は人にうつりますか?

A.
いいえ、**シェーグレン症候群は感染症ではありません。**他人にうつることはないので、家族や周囲の方も安心してください。

シェーグレン症候群は、目や口の乾燥といった一見ささいな症状から始まる自己免疫疾患です。
しかしその裏には、全身に及ぶ症状や合併症のリスクが隠れている可能性もあります。

「ただのドライアイかも…」「年齢のせいかな…」と放置せず、気になる症状があれば早めに専門医を受診することが、体と心の健康を守る第一歩です。

本記事では、以下のような情報を網羅しました:

✅ シェーグレン症候群の原因と発症メカニズム
✅ 初期症状チェックと見逃しやすいサイン
✅ 検査・診断の流れと必要な検査項目
✅ 症状別・段階別の治療法
✅ 日常生活でできる対策と生活の工夫
✅ 妊娠や合併症に関する注意点
✅ 公的支援制度や難病指定の情報
✅ よくある質問とその回答


「シェーグレン症候群」は正しく知ることで、きちんと向き合い、対処していける病気です。
信頼できる医療機関での診断と、継続的なケアを通じて、自分らしい暮らしを無理なく続けていくことができます。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の行動への後押しになれば幸いです。

🦷 江戸川区篠崎で、シェーグレン症候群によるお口の乾燥にお悩みの方へ

「最近、口が渇く」「むし歯が増えた気がする」「食べ物が飲み込みにくい」——そんなお悩み、もしかすると
シェーグレン症候群によるドライマウスが原因かもしれません。

当院では、江戸川区篠崎エリアで数少ない、自己免疫疾患に伴う口腔症状への対応経験がある歯科医院として、
シェーグレン症候群による乾燥症状・むし歯・口腔トラブルに幅広く対応しています。

✅ 唾液の分泌検査
✅ 口腔乾燥に対する保湿ケア・指導
✅ 医科との連携(リウマチ内科など)
✅ ご本人だけでなくご家族へのサポートも

「年齢のせい」ではないかもしれない、その乾き。
気になる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
江戸川区篠崎駅から徒歩1分。土日診療あり/予約制でゆったりご案内します。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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