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「子どもの前歯にすき間があるけれど、大丈夫?」

乳歯の歯並びを見て、このように心配される保護者の方は少なくありません。

しかし、乳歯の時期にみられるすき間は、必ずしも悪いものではありません。乳歯列には**「霊長空隙(れいちょうくうげき)」**と呼ばれる特徴的なすき間があり、乳歯より大きな永久歯が生えてくる際に利用される大切なスペースの一つです。

一方、乳歯がすき間なく並んでいる場合でも、必ず将来の歯並びが悪くなるわけではありません。歯並びは、顎と歯の大きさ、成長、永久歯の位置、噛み合わせなど、さまざまな要因によって決まります。

この記事では、霊長空隙とは何か、発育空隙との違い、すき間がない場合の注意点、歯科医院でのチェック、矯正治療を検討するタイミングについてわかりやすく解説します。

霊長空隙とは、乳歯列の特定の場所にみられる生理的なすき間です。

永久歯は乳歯より大きいものが多いため、生え変わりの際には乳歯列にあるスペースや顎の成長などを利用して並んでいきます。

霊長空隙も、そのために利用されるスペースの一つです。

霊長空隙はどこにある?

霊長空隙がみられる代表的な場所は、上顎と下顎で異なります。

写真は3歳の子供の前歯の隙間です。特に矢印の部分にできる隙間を霊長空隙と呼んでいます。
 写真は3歳の子供の前歯の隙間です。特に矢印の部分にできる隙間を霊長空隙と呼んでいます。
  • 上顎:乳側切歯と乳犬歯の間
  • 下顎:乳犬歯と第一乳臼歯の間

乳歯が生えそろう3歳頃には確認できることが多く、その後も顎の成長に伴って歯と歯の間にすき間が生じることがあります。

乳歯の時期に歯と歯の間が空いていても、すぐに「すきっ歯だから異常」と考える必要はありません。

乳歯から永久歯へ生え変わると、歯の大きさや歯列の状態も変化します。

特に前歯の永久歯は乳歯より幅が大きいため、永久歯が並ぶには十分なスペースが必要です。

上顎の霊長空隙
上顎の霊長空隙
下顎の霊長空隙
下顎の霊長空隙

そのスペースは霊長空隙だけで確保されるわけではなく、

  • 乳歯列にもともとあるすき間
  • 顎の成長によって生じるすき間
  • 乳歯と永久歯の大きさの差
  • 永久歯が生える際の歯列の変化

など、複数の要素によって確保されます。

そのため、霊長空隙は永久歯への生え変わりを助けるスペースの一つと考えるのが適切です。

乳歯の間に適度なすき間があることは、永久歯が生えるスペースという点では好ましい状態です。

ただし、

「すき間があれば永久歯は必ずきれいに並ぶ」

というわけではありません。

将来の歯並びには、

  • 顎の大きさ
  • 永久歯の大きさ
  • 永久歯が生える位置や方向
  • 上下の顎の骨格
  • 噛み合わせ
  • 舌や唇などの口腔機能

なども関係します。

反対に、乳歯のすき間が少ない場合でも、その後の顎の成長などによって永久歯が適切に並ぶこともあります。

乳歯のすき間だけで、将来の矯正治療の必要性を判断することはできません。

乳歯列にみられるすき間には、霊長空隙のほかに**「発育空隙」**があります。

どちらも永久歯への生え変わりに関係するスペースですが、意味が少し異なります。

霊長空隙発育空隙
主な場所乳犬歯の前後主に乳前歯部など
特徴決まった位置にみられる特徴的なすき間顎の成長などに伴ってみられるすき間
役割永久歯への交換時に利用されるスペースの一つ大きな永久歯が並ぶためのスペース確保に関係

乳歯列では、こうした複数のすき間が永久歯への生え変わりに利用されます。

霊長空隙がみられない場合、永久歯が並ぶスペースが不足する可能性には注意が必要です。

特に、乳歯がほとんどすき間なく密に並んでいる場合、乳歯より大きな永久歯が生えてくるとスペース不足が生じることがあります。

霊長空隙がない乳歯列

上の歯がぎっしり並び、アーチに余裕がない状態
上の歯がぎっしり並び、アーチに余裕がない状態
乳歯の間にすき間がほとんどない“密な歯列”
乳歯の間にすき間がほとんどない“密な歯列”
下の乳前歯も隙間がなくキュッと詰まった歯列
下の乳前歯も隙間がなくキュッと詰まった歯列

その結果、

  • 永久歯が重なって生える
  • 内側や外側から生える
  • 歯列からずれて生える

といった**叢生(そうせい)**につながることがあります。

叢生(デコボコ歯並び)の原因に

霊長空隙がない、あるいは非常に狭い場合、最もよく見られるのが叢生(そうせい)=歯並びのガタガタです。

霊長空隙がないため永久歯が内側から生えてきた
霊長空隙がないため永久歯が内側から生えてきた
霊長空隙と発育空隙が無い子供の前歯
霊長空隙と発育空隙が無い子供の前歯

ただし、「霊長空隙がない=将来必ず叢生になる」わけではありません。

永久歯が並ぶためのスペースは、顎の成長やほかの空隙なども含めて総合的に評価する必要があります。

霊長空隙がないことだけを理由に、出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)、開咬などになるとはいえません。

これらの不正咬合には、

  • 上下の顎の骨格
  • 遺伝的要因
  • 歯の位置や傾き
  • 舌の位置や動き
  • 指しゃぶりなどの口腔習慣
  • 口呼吸

など、さまざまな要因が関係します。

したがって、霊長空隙の有無だけで将来の噛み合わせを予測することはできません。

乳歯のすき間だけではなく、顎の成長や噛み合わせまで含めて観察することが重要です。

霊長空隙そのものは、ご家庭でも確認できます。

上顎では乳側切歯と乳犬歯の間、下顎では乳犬歯と第一乳臼歯の間を見てみましょう。

ただし、ご家庭で確認してほしいのは「霊長空隙が何mmあるか」ではありません。

次のような状態がないかを見ることのほうが重要です。

  • 乳歯がほとんどすき間なく並んでいる
  • すでに歯が重なっている
  • 永久歯が乳歯の内側や外側から生えてきた
  • 左右で歯並びが大きく異なる
  • 受け口になっている
  • 前歯が噛み合っていない

気になる状態があれば、歯科医院で確認してもらいましょう。

なお、指や綿棒を歯と歯の間に入れて確認する必要はありません。

歯科医院では、霊長空隙だけを見るのではなく、歯列全体の発育を確認します。

口腔内診査

乳歯のすき間、歯の重なり、生え変わりの状態などを確認します。

噛み合わせ

上下の歯の位置関係や、受け口、開咬、交叉咬合などがないかを確認します。

永久歯の生え方

永久歯が生え始めている場合には、生える位置や方向、歯が並ぶスペースなどを確認します。

必要に応じたX線検査

永久歯の位置や数、生える方向などを確認する必要がある場合には、X線検査を行うことがあります。

すべてのお子さんにX線撮影が必要なわけではなく、年齢や歯の生え変わり、症状などに応じて判断します。

乳歯がほぼ生えそろう3歳頃からは、定期検診の際に歯並びや噛み合わせも確認してもらうとよいでしょう。

特に6歳前後になると永久歯への生え変わりが始まり、歯列は大きく変化します。

3〜5歳頃

乳歯列のすき間、受け口、開咬などを確認します。

6〜12歳頃

乳歯と永久歯が混在する混合歯列期です。

永久歯が生えるスペースや方向、噛み合わせなどを継続して観察することが重要になります。

年齢だけで「この時期に必ず矯正を始める」と決めるのではなく、お子さんの歯の生え変わりと顎の成長に合わせて判断することが大切です。

霊長空隙がなくても、すぐに治療するとは限りません。

乳歯列期では、その後の成長や永久歯への生え変わりによって歯列が変化するため、定期的に経過を観察するケースも多くあります。

一方、

  • 永久歯が生えるスペースが明らかに不足している
  • すでに永久歯が重なっている
  • 受け口や交叉咬合などがある
  • 顎の成長に問題が認められる

といった場合には、矯正歯科への相談を検討します。

成長期に歯並びや噛み合わせの問題が認められた場合には、永久歯がすべて生えそろう前に矯正治療を行うことがあります。

ただし、霊長空隙がないという理由だけで早期矯正を始めるものではありません。

治療の必要性は、歯列・噛み合わせ・顎の成長・永久歯の位置などを総合して判断します。

プレオルソなどのマウスピース型装置

症例によっては、成長期の噛み合わせや口腔周囲筋の状態などを考慮して、マウスピース型の装置を使用することがあります。

適応できる症例や治療目標には限りがあるため、診断が重要です。

拡大床などの装置

歯列の幅や永久歯が並ぶスペースなどに問題がある場合、症例に応じて拡大を目的とした装置を使用することがあります。

ただし、装置によって得られる変化には違いがあり、すべての「顎が小さい」「スペースが足りない」ケースに適しているわけではありません。

早期矯正を行ったからといって、将来の矯正治療が必ず不要になるわけではありません。

成長期に治療することで、

  • 噛み合わせを改善する
  • 永久歯が生える環境を整える
  • 顎の成長を利用できる症例に対応する

といったメリットが期待できる場合があります。

一方で、永久歯が生えそろった後にワイヤー矯正やマウスピース矯正などが必要になることもあります。

そのため、「早く始めれば矯正を回避できる」と考えるのではなく、その時期に治療するメリットがあるかどうかを診断することが重要です。

乳歯のすき間や将来の歯並びは、遺伝的な要因だけで決まるわけではありません。

顎の成長や舌・唇・頬などの使い方、呼吸、食事、指しゃぶりなど、日常生活のさまざまな要素が歯列の発育に関係します。

ただし、特定の生活習慣を変えれば霊長空隙が必ずできる、あるいは将来の矯正治療を必ず防げるわけではありません。

お子さんの成長に合わせて、口腔機能が適切に発達できる環境を整えることが大切です。

よく噛む習慣を身につける

成長期には、年齢や発達段階に合った食材をしっかり噛んで食べることが大切です。

柔らかいものだけに偏らず、噛む必要のある食材も少しずつ取り入れましょう。

大切なのは、単に「硬いものを食べれば顎が大きくなる」と考えるのではなく、前歯でかじり、奥歯で噛み、舌を使って飲み込むという一連の動きを身につけることです。

左右どちらか一方だけで噛む癖がないか、丸飲みが多くないかなども確認してみましょう。

指しゃぶり・おしゃぶりは長期間続く場合に注意

乳幼児期の指しゃぶりやおしゃぶりは、成長過程でよくみられる行動です。

そのため、幼い時期から無理にやめさせる必要はありません。

ただし、成長しても強い指しゃぶりやおしゃぶりの使用が長期間続くと、

  • 前歯が噛み合わない「開咬」
  • 上の前歯が前方へ傾く
  • 上顎の歯列が狭くなる

など、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。

なかなかやめられない場合は、強く叱るのではなく、生活環境や心理面にも配慮しながら少しずつ卒業を目指します。

口呼吸にも注意する

普段から口が開いている、寝ているときに口呼吸をしているといった場合には注意が必要です。

口呼吸が習慣化すると、舌が本来あるべき位置から下がりやすくなり、唇や頬、舌から歯列に加わる力のバランスにも影響することがあります。

次のような様子がないか確認してみましょう。

  • いつも口が開いている
  • 鼻ではなく口で呼吸している
  • いびきをかく
  • 鼻づまりが続いている
  • 食事中に口が開きやすい
  • 舌が低い位置にある

鼻炎やアレルギー、アデノイドなどが関係していることもあるため、鼻呼吸が難しい場合には、歯科だけでなく耳鼻咽喉科への相談が必要になることもあります。

「乳歯はいずれ抜けるから、むし歯になっても大丈夫」と考えるのは適切ではありません。

乳歯には、食べる・話すといった役割だけでなく、永久歯が生えてくるまで歯列のスペースを保つ役割があります。

乳歯が重度のむし歯などによって本来の時期より早く失われると、隣の歯が空いた場所へ移動し、後から生えてくる永久歯のスペースが不足することがあります。

その結果、永久歯が本来とは異なる位置から生えたり、歯が重なったりする原因になることがあります。

家庭でできるむし歯予防

乳歯を健康な状態で保つためには、毎日のセルフケアが基本です。

  • 年齢に応じたフッ化物配合歯磨剤を使用する
  • 保護者による仕上げ磨きを行う
  • 歯と歯の間には必要に応じてデンタルフロスを使用する
  • 甘い飲み物や間食をだらだら摂らない
  • 定期的に歯科検診を受ける

歯科医院では、お口の状態に応じてフッ化物塗布やシーラントなどを行い、むし歯のリスクを抑えます。

乳歯を適切な時期まで健康に保つことは、永久歯が生えてくるスペースを守ることにもつながります。

霊長空隙がないと必ず矯正が必要ですか?

いいえ。霊長空隙がないからといって、必ず矯正治療が必要になるわけではありません。

将来の歯並びは、

  • 顎の大きさ
  • 永久歯の大きさ
  • 歯が生えてくる位置
  • 噛み合わせ
  • 顎の成長
  • 口腔習慣

などを総合して判断します。

乳歯がすき間なくきれいに並んでいても、その後の顎の成長によって永久歯が並ぶスペースが確保されることもあります。

一方、永久歯が生え始めた段階ですでにスペース不足が認められる場合には、早めに矯正歯科へ相談したほうがよいケースもあります。

霊長空隙は永久歯が生えてからも残りますか?

霊長空隙は、乳歯列にみられる特徴的なすき間です。

永久歯への交換が進むと、このスペースは永久歯が並ぶために利用され、乳歯列期と同じ形ではみられなくなっていきます。

永久歯が生え始めてからは、「霊長空隙があるか」だけを見るのではなく、永久歯が並ぶスペースや萌出方向、上下の噛み合わせなどを総合的に評価することが重要です。

同じ年齢の子よりすき間が少ないのですが、大丈夫ですか?

乳歯のすき間には個人差があります。

同じ年齢でも、

  • 顎の成長速度
  • 乳歯や永久歯の大きさ
  • 骨格
  • 歯が生える時期
  • 口腔習慣

などによって歯並びは異なります。

そのため、ほかのお子さんとの見た目だけの比較で判断する必要はありません。

ただし、乳歯が隙間なく密に並んでいる、すでに歯が重なっている、永久歯が内側や外側から生えてきた、噛み合わせに左右差があるといった場合には、一度歯科医院で確認しておくと安心です。

霊長空隙がないだけで、すぐに治療が必要になるわけではありません。

ただし、次のような場合には早めの受診をおすすめします。

  • 乳歯がほとんど隙間なく並んでいる
  • 永久歯が乳歯の内側や外側から生えてきた
  • 前歯が重なってきた
  • 受け口や開咬など噛み合わせの異常がある
  • 左右で歯並びや噛み合わせが大きく異なる
  • 指しゃぶりや口呼吸などが長く続いている
  • 乳歯をむし歯や外傷で早く失った
  • 保護者から見ても永久歯が生えるスペースが足りなそうに見える

小児期の歯並びは成長とともに大きく変化します。

「今すぐ矯正するか」だけではなく、「今は経過観察でよいのか」「いつ再評価すべきか」を確認することにも、早めに相談する意味があります。

霊長空隙とは、乳歯列の決まった位置にみられる生理的なすき間です。

乳歯より大きな永久歯が生えてくる際に利用されるスペースの一つであり、乳歯の時期にすき間があること自体は、基本的に心配する必要はありません。

一方で、霊長空隙がないからといって、必ず将来の歯並びが悪くなるわけでもありません。

永久歯がきれいに並ぶかどうかは、霊長空隙だけではなく、顎と歯の大きさのバランス、発育空隙、永久歯の位置、噛み合わせ、顎の成長などによって決まります。

大切なのは、乳歯のすき間だけを見て「正常」「異常」と判断するのではなく、成長に合わせて歯並びと噛み合わせを継続的に確認することです。

特に、乳歯が隙間なく並んでいる場合や、永久歯が重なって生え始めた場合には、早めに歯科医院で相談しておくとよいでしょう。

定期検診を利用しながら、むし歯予防とともに永久歯への生え変わりを見守っていくことが、将来の健やかな歯並びにつながります。

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「乳歯にすき間がない」「永久歯が重なって生えてきた」「このままきれいに生え変わるか心配」子どもの歯並びは、成長とともに大きく変化します。

今すぐ矯正が必要とは限りません。

歯の生え変わりや顎の成長、噛み合わせを確認しながら、今は経過観察でよいのか、矯正相談が必要なのかを判断することが大切です。

気になる歯並びがあれば、当小児歯科でお気軽にご相談ください。

【動画】指しゃぶりや指吸いを止めさせる方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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