ヒューマンブリッジとは

  • ヒューマンブリッジは、前歯・奥歯共に適応出来る接着ブリッジの一種です。
  • 欠損部はセラミック製の白い歯で作るので審美的に美しく仕上がります。
  • 隣接する歯を殆ど削らない耐久性に優れ費用も割安なブリッジですが保険適用外です。
目次

歯を失った所の治療の選択肢にインプラントがありますが、骨の量が少ない、心臓病、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などの基礎疾患があるためインプラントが出来ない方もいらっしゃいます。また、手術が怖いため躊躇する方も少なくありません。

入れ歯やブリッジといった選択肢もありますが、取り外し式には抵抗があるし、ブリッジは健康な歯を削らなければならないなど、どれにすればよいか決めかねてしまいますよね。

そこで、本記事では歯をほとんど削らない接着ブリッジの一種であるヒューマンブリッジをご紹介します。

歯をほとんど削らない!審美性に優れたヒューマンブリッジの魅力

1.ヒューマンブリッジとは?

1.1 ヒューマンブリッジの定義

ヒューマンブリッジは、従来のブリッジ治療とは異なり、健康な歯を大きく削らずに失った歯を補う新しい治療法です。特殊な技術と素材を活用し、審美性と機能性を備えた治療が可能です。

ヒューマンブリッジ
従来のブリッジとの違い
  • 健康な歯を削る量の違い
    従来のブリッジは、隣接する健康な歯を大幅に削る必要がありますが、ヒューマンブリッジでは僅かの削りで済みます。
  • 固定方法の違い
    ヒューマンブリッジは、特殊な構造を使用することで、歯を固定する技術が進化しています。

1.2 ヒューマンブリッジの特徴と構造

大切な歯を虫歯から守るためにはエナメル質を出来るだけ残して治療することが重要です。ヒューマンブリッジは歯の表面に浅い窪みや溝を作るだけで出来る接着ブリッジです。

従来から歯をほとんど削らない接着ブリッジはありましたが、脱離のリスクを伴うものでした。

ヒューマンブリッジは、三つのパーツから成り天然歯のアンダーカットを3次元的に巧みに使うことで脱離のリスクを極力抑えた構造になっています。三つのパーツは、ブリッジの土台になる歯に接着するパーツとセラミック製の人工歯から構成されています。

ヒューマンブリッジは白金加金の適度な硬さと柔軟性を使い、天然歯のアンダーカットを抱きかかえるように装着することで、従来の接着ブリッジにはない維持力の高さを実現しました。

可能な限り金属部は表側から見えない構造になっているので、インプラントが出来ない方や取り外し式の入れ歯では見栄えや噛み心地に満足出来ない方などに適しています。

最終的にセメントで接着するので、取り外し出来ない装置といえます。

1.3 ヒューマンブリッジが注目される理由

  • 患者の負担を軽減する
    健康な歯を削るリスクが低いため、患者に優しい治療法として注目されています。
  • 審美性の向上
    天然歯に近い見た目を実現するため、前歯など目立つ箇所での使用に適しています。
  • 治療のスピード
    手術を必要とせず、比較的短期間で治療が完了する点が人気の理由です。

2. ヒューマンブリッジのメリットと課題

2.1 メリット

利点

 健康な歯を削らないので天然歯へのダメージが少ない

ヒューマンブリッジは、天然歯の表面に浅い溝を掘るだけの治療のため、従来のブリッジ治療に比べて歯へのダメージがほとんどなく、健康な歯を最大限に保存できる画期的な治療法です。これにより、患者様のご負担が大幅に軽減されます。

利点

 土台の歯が虫歯になりにくい

歯の表面のエナメル質は虫歯になりにくい組織です。従来のブリッジはエナメル質だけではなく象牙質まで削って被せ物をします。象牙質は虫歯になりやすい組織なので被せ物の下が良く虫歯になることが多々ありました。

ヒューマンブリッジはエナメル質を殆ど残すので、こういったリスクが軽減されています。

利点

 審美性と耐久性

ヒューマンブリッジでは、天然歯に近い見た目を実現できます。 さらに、高度な材料技術により、耐久性にも優れており、日常生活での使用に十分対応します。

利点

 麻酔の必要が無く手術不要の治療法

歯を僅かに削るだけなので麻酔は必要ありません。従って、治療中の痛みも殆どありません。また、インプラント治療のような外科手術は不要で、治療期間が短く、痛みや腫れなどの術後のリスクも少ないのが特徴です。 忙しい方や手術に不安を感じる方にとって魅力的な選択肢です。

2.2 課題

ヒューマンブリッジは、適応できる症例が限られています。例えば、隣接する歯が著しく損傷している場合や、噛み合い(噛み合わせ)の力が強い場合には適さない場合があります。

課題

 動揺歯は禁忌

歯が動揺していると接着が切れてしまうリスクがあります。従って、歯周病が進行し動揺があるケースでは不適となることがあります。

課題

 欠損部が3歯以上

ヒューマンブリッジが適用出来るのは歯が無い部分が2歯までです。それを超えた場合は、ヒューマンブリッジが外れやすくなるリスクがあります。

課題

 前歯の歯茎が下がっている

前歯の歯茎が下がってブラックトライアングルが出来ているケースだと内側の金属が見えてしまうリスクがあります。

課題

 奥歯でも審美性を要求する場合

奥歯では金色の金属がやや見えます。審美性を追求している患者さんには不向きです。

課題

 上下の噛み合わせがきつ過ぎる

特に上の前歯で起こりやすいですが、下の前歯が上の前歯の内側に強く噛み込んでいる場合には、金属の強度を保つスペースが取れないため適用にならないことがあります。

課題

 土台となる歯が天然歯ではない

土台となる歯が金属冠、メタルボンド、レジン前装冠などが装着されている場合には原則禁忌となります。エナメル質に比べ接着力が劣るからです。

ただし、前装冠やレジン前装冠などを外し、ヒューマンブリッジのメール部分を組み込んだ冠を作れば適応出来るケースもあります。

厳密には模型を製作して精査しなければ分りません。

3. ヒューマンブリッジの治療プロセス

3.1 診断から治療までの流れ

初回診察と診断

治療プロセスは、まずは初回診察から始めます。この段階では、患者の口腔内の状態を詳しく観察し、歯の欠損や隣接する歯の健康状態を確認します。必要に応じてレントゲン撮影を行います。

治療計画の立案

診断結果をもとに、治療計画を立てます。この段階では、ヒューマンブリッジが適応可能かどうか確認し、患者の希望や生活スタイルを考慮して最適なプランを提案します。また、治療費や期間についての説明も行います。

実際の施術とアフターケア

施術では、隣接する歯を少し削り、次に特殊な接着剤を使用してヒューマンブリッジを装着します。施術後は噛み合わせや違和感を確認し、調整を行います。

3.2 前歯の治療手順

前歯が1歯欠損

前歯の一本が無くなった状態の模型です。ここにヒューマンブリッジを入れ修復します。

STEP
1
前歯の裏側に浅い溝を削る

前歯の裏側の2箇所に浅く細い溝を付けます。この状態で型取り(印象採得)を行います。

前歯の裏側に浅い溝を削る
STEP
2
土台となるパーツを接着

写真は裏側から見た所です。白金加金という金属で出来たパーツを歯の裏側に接着性レジンセメントでセットします。

土台となるパーツを接着
STEP
3
人工歯のパーツを接着

写真は裏側から見た所です。人工歯のパーツを接着します。この状態で治療完了です。

STEP
4
土台のパーツが接着された正面観

ヒューマンブリッジの土台となるパーツが接着された状態の正面観です。

STEP
5
ヒューマンブリッジが完成した正面観

ブリッジの真ん中のパーツ(人工歯)が装着されセメントで固定された正面観です。

人工歯はセラミックで作るので天然歯と同じような見た目になります。

STEP
6

3.3 奥歯の治療手順

小さく浅い溝を掘る

隣接する2本の歯の矢印で示した部分に小さく浅い溝を掘ります。この状態で型取り(印象採得)を行います。

小さく浅い溝を掘る
STEP
1
土台のパーツを接着

白金加金で出来た土台となるパーツを接着性レジンセメントで接着します。

それぞれの土台は天然歯のアンダーカットの下に潜り込むように作られていて、セメントがなくても外れにくい構造になっています。

それぞれのパーツからはメール(突起物)が出ています。

土台のパーツを接着
STEP
2
正面から金属は見えない

土台となるパーツは正面から金属は見えません。小臼歯の正面部分は金属が見えないように設計されています。大臼歯は奥なので見えないため、側面の全体を金属が覆うようになっています。

STEP
3
セラミック製の人工歯を装着

セラミック製の人工歯を装着し、接着性レジンセメントで固定します。

人工歯の内側にはフィメール(陥凹部)があり、メール部とぴったりと合う構造になっています。

セラミック製の人工歯を装着
STEP
4

3.4 ヒューマンブリッジ奥歯の症例

ヒューマンブリッジ症例
ヒューマンブリッジ症例咬合面
下顎6番欠損

下顎6番欠損をヒューマンブリッジで治療しました。咬合面から見た所なので金属が見えています。

横から見ると金属はほぼ見えません。

4. 治療期間と費用

4.1 一般的な治療期間

ヒューマンブリッジの治療期間は、通常2~4週間程度です。これは型取り、ブリッジの製作に必要な時間を含みます。インプラント治療に比べて短期間で治療が完了するのが大きな魅力です。

保険適用と自費診療の違い

ヒューマンブリッジは自費診療として提供され、保険適用外となるケースが一般的です。そのため、治療費は使用する材料や技術によって異なります。

  • 保険適用の治療法との比較
    保険適用の従来型ブリッジに比べて高額ですが、歯を削らないことや審美性の高さを求める方には価値があります。

自費治療

当院の費用です。

種類金額 ※単位:円
1歯欠損297,000円
2歯欠損397,000円 (症例により脱離のリスクあり)
※3本以上欠損の場合治療の対象外です。事前の模型診査、型取りや調整などの費用すべて含んだ価格です。

5. ヒューマンブリッジが適している人・適していない人

5.1 適応ケース

健康な歯を温存したい人

ヒューマンブリッジは、隣接する健康な歯をほとんど削らないため、歯を限りなく温存したい人に最適です。将来的な歯の健康を考慮し、歯を削ることに抵抗がある方に向いています。

手術を避けたい人

インプラント治療のような外科手術は不要なため、手術に対して不安や恐怖感がある方におすすめです。また、高齢者や全身疾患がある方など、手術のリスクを回避したい場合にも適しています。


5.2 適応外の場合

周囲の歯の状態が悪い場合

隣接する歯が虫歯や歯周病などでダメージを受けている場合、ヒューマンブリッジを装着するのが難しい場合があります。 周囲の歯がしっかり健康であることが、この治療法成功には重要です。

噛む力が強すぎる場合

噛み合力(噛む力)が非常に強い方では、ヒューマンブリッジにかかる負担がかかるため、適応できない場合があります。このようなケースでは、耐久性の高い治療法(例:インプラント)が検討されます。

6. 寿命(耐久性)

ヒューマンブリッジの寿命

ヒューマンブリッジの寿命(耐久性)について何年持つという事を断定するのはかなり困難です。欠損形態や上下の噛み合わせの状態、歯周病の有無、プラークコントロールの程度など様々な要因が関与するからです。

とは言え、天然歯を殆ど削らないため、仮にヒューマンブリッジが脱離しても、天然歯が虫歯になるリスクはかなり下がります。

そのため、ヒューマンブリッジ本体の寿命というよりも支えになる自分の歯の寿命が保険のブリッジに比べ遥かに長くなることは確実です。

7. お手入れ

お手入れ
お手入れ

デンタルフロスは使えません

一般的なブリッジと同様に3歯が連続しています。そのため、歯の間にデンタルフロスは入りません。

細い歯間ブラシ(ゴムタイプ)なら入ります。通常のブラッシングと同様に行えば問題ありません。

虫歯や歯周病の予防のために使用するポイックウォーター、フッ素入り歯磨き粉、キシリトールなどの使用をお薦めします。

1. 治療手順

手順

歯を削る

従来のブリッジは欠損歯の両隣の歯を削って土台とします。歯型取りと高さ決めを行い、石膏模型を作成してブリッジの作成を技工所に依頼します。

歯を削る
歯を削る

手順

ブリッジを装着

出来上がったブリッジをセメントで装着します。

接着ブリッジを技工所へ依頼

2. 従来のブリッジのデメリット

従来のブリッジは両隣の歯を削って接着剤で固定する方法ですが、最大の欠点は天然歯を象牙質まで大きく削る必要があることです。

象牙質まで削ってしまうと将来的にブリッジの下が虫歯になるリスクが高まります。また、大きく歯を削ることで歯髄炎を起こして神経を抜く治療(抜髄)が必要になったりもします。

1. 保険の入れ歯

歯を削る

寿命(耐久性)

審美性

手術

噛む力

保険適用

2. 保険のブリッジ

歯を削る

寿命(耐久性)

審美性

手術

噛む力

保険適用

3. ヒューマンブリッジ

歯を削る

寿命(耐久性)

審美性

手術

噛む力

保険適用

4. インプラント

歯を削る

寿命(耐久性)

審美性

手術

噛む力

保険適用

ヒューマンブリッジの治療は、従来の治療と比べて痛みが少ないのが特徴です。個人差があるため、施術中や施術後に軽い違和感や痛みを感じる場合もあります。その際は、適切な鎮痛剤や調整で対応可能です。

ヒューマンブリッジの耐用年数は、一般的に7~10年とされています。尚、患者さんの噛み合わせ、口腔の衛生状態によってはさらに伸びる場合もあります。

メンテナンスの頻度
メインテナンスは通常、半年に一度のペースで行うことが推奨されます。 定期的に歯科医でチェックを受けることで、問題の早期発見や治療が可能です。

方法
日常的なケアとしては、専用のデンタルフロスやインターデンタルブラシを使用して、ヒューマンブリッジ周辺の清掃を行うことが重要です。

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【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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