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「麻酔をしたはずなのに痛かった……」

「歯医者の麻酔が効かない体質なのかな?」

「また痛い思いをするのではないかと不安……」

このような経験から、歯科治療に恐怖心を抱いてしまう方は少なくありません。

しかし、歯科麻酔が効きにくくなるのには、医学的にさまざまな理由があります。特に下顎の奥歯や親知らず、炎症が強い歯では、通常より麻酔が効きにくいことは決して珍しいことではありません。

現在では、追加麻酔や麻酔方法の工夫によって、痛みに十分配慮しながら治療を進めることが可能です。

この記事では、歯科麻酔が効きにくい原因や、歯科医院で行われる対処法、患者さんができることについて、専門的な内容をわかりやすく解説します。



まず知っていただきたいのは、

「麻酔が効かなかった=異常」ではない

ということです。

特に次のような場合は、麻酔が効きにくくなることがあります。

  • 下顎の奥歯
  • 親知らず
  • 神経を取る治療(抜髄)
  • 強く腫れている歯
  • 炎症が強い歯

このようなケースでは、歯科医師も最初から追加麻酔が必要になることを想定して治療を行っています。

歯科で使用する局所麻酔は、神経が痛みの信号を脳へ伝える働きを一時的にブロックする薬です。

薬液が神経まで十分に届くことで、治療中の痛みを感じにくくなります。

しかし、

  • 骨の厚さ
  • 神経までの距離
  • 炎症の状態

などによって、薬液が十分に届かないことがあります。

歯槽骨の構造(皮質骨と海綿骨)

歯を支える歯槽骨は、大きく**皮質骨(cortical bone)海綿骨(cancellous bone)**で構成されています。

歯槽骨の構造(皮質骨と海綿骨)
  • 皮質骨:外側を覆う非常に緻密で硬い骨。薬液の拡散を阻害しやすい
  • 海綿骨:内部に存在する多孔質の骨。血流が豊富で麻酔薬が拡散しやすい

👉麻酔が効果を発揮するためには、この海綿骨を通って歯髄まで薬液が到達することが重要です。

① 下顎の骨が硬い

上顎と下顎では骨の構造が異なります

上顎は骨が比較的薄く、内部に海綿骨が多いため、麻酔液が浸透しやすい構造です。

一方、下顎の奥歯では外側を覆う皮質骨が非常に厚く硬いため、麻酔液が内部まで届きにくくなります。

そのため、

  • 第一大臼歯
  • 第二大臼歯
  • 親知らず

では麻酔が効きにくいことがあります。

② 炎症が強い

歯ぐきが大きく腫れていたり、歯の根に膿がたまっている場合には、組織が酸性に傾きます。

局所麻酔薬は酸性環境では神経へ浸透しにくくなるため、十分な効果が得られないことがあります。

特に、

歯周病急性発作(P急発)

歯ぐきが急激に腫れ、強い痛みを伴う状態です。

根尖性歯周炎

歯の根の先に炎症や膿がたまる病気です。

どちらも麻酔が効きにくい代表的な疾患です。

③ 神経まで距離がある

麻酔薬は神経まで到達して初めて十分な効果を発揮します。

下顎の奥歯では、

  • 神経が深い位置にある
  • 骨が厚い

という特徴があり、薬液が十分届かないことがあります。

④ 強い緊張や恐怖

「また痛いかもしれない」

という不安が強いと、自律神経の影響で痛みに敏感になることがあります。

実際には麻酔が効いていても、普段より痛みを強く感じることがあります。

歯科恐怖症の方では、この影響が大きくなることもあります。

⑤ 神経の走行には個人差があります

神経の位置や枝分かれの仕方には個人差があります。

そのため、通常の麻酔だけでは十分に効かず、追加麻酔が必要になることがあります。

真横に埋まった下の親知らず。抜歯時に麻酔が効きにくく強い痛みが出ることがあります。
真横に埋まった下の親知らず。抜歯時に麻酔が効きにくく強い痛みが出ることがあります。

下顎の親知らずは、

  • 深く埋まっている
  • 厚い骨に囲まれている
  • 炎症を起こしやすい

という特徴があります。

そのため、通常の浸潤麻酔だけでは十分な効果が得られないことがあり、追加麻酔を併用することが少なくありません。

治療内容麻酔の効きやすさ
むし歯を削る歯髄への影響次第で痛みの差あり
抜歯歯根膜への麻酔で対応できる → 比較的痛みが出にくい
神経を取る治療歯髄内まで完全麻酔が必要 → 最も痛みが出やすい
親知らず抜歯効きにくいことがある

神経を取る治療では、歯髄内まで十分に麻酔が効いている必要があるため、他の治療より痛みを感じやすいことがあります。

段階的に麻酔を追加します

腫れている部分を避け、効きやすい場所から少しずつ麻酔を広げていきます。

歯根膜麻酔

歯の周囲にある歯根膜へ直接麻酔薬を注入する方法です。

通常の浸潤麻酔で効果が不十分な場合に有効です。

歯根膜麻酔
歯根膜麻酔

下顎孔伝達麻酔

下顎神経そのものを麻酔する方法です。

下顎全体に麻酔が効くため、親知らずの抜歯や難しい治療で行われます。

下顎孔伝達麻酔
下顎孔伝達麻酔

炎症が強い場合は先に炎症を抑えます

感染が強い場合には、

  • 抗菌薬
  • 排膿処置
  • 消炎処置

などを行い、炎症が落ち着いてから本格的な治療を行うことがあります。

治療中に痛みを感じた場合は、

遠慮せずに歯科医師へ伝えてください。

痛みを我慢しながら治療を続ける必要はありません。

歯科医師は、

  • 麻酔を追加する
  • 麻酔方法を変更する
  • 少し時間を置く

など、状況に応じて対応します。

十分な睡眠をとる

睡眠不足は痛みに敏感になる原因になります。

強く腫れる前に受診する

炎症が軽いうちのほうが麻酔は効きやすくなります。

不安なことは事前に伝える

以前麻酔が効きにくかった経験がある場合は、治療前に歯科医師へ伝えましょう。

治療計画や麻酔方法を工夫できる場合があります。

麻酔が効かない体質はありますか?

完全に麻酔が効かない体質は非常にまれです。多くは骨の構造や炎症、神経の位置などが影響しています。

神経を取る治療だけ痛いのはなぜですか?

歯の神経そのものを治療するため、より深い部分まで十分に麻酔を効かせる必要があるからです。

親知らずだけ痛かったのはなぜですか?

下顎の親知らずは骨が厚く、神経まで距離があるため、通常の麻酔では効きにくいことがあります。

麻酔は追加できますか?

はい。患者さんの年齢や全身状態、使用量の上限などを考慮しながら、安全な範囲で追加麻酔を行います。

前回麻酔が効かなかったことは伝えた方がよいですか?

はい。前回の状況を伝えていただくことで、初めから伝達麻酔や歯根膜麻酔など、より適した方法を選択できる場合があります。

歯科麻酔が効きにくい原因は、一つではありません。

特に下顎の奥歯や親知らず、炎症が強い歯では、骨の構造や組織の状態などにより麻酔が効きにくくなることがあります。

しかし現在では、追加麻酔や麻酔方法の工夫により、痛みに十分配慮しながら治療を進めることが可能です。

治療中に痛みを感じた場合は、決して我慢せずに歯科医師へお伝えください。不安や疑問も含めて相談することで、ご自身に合った方法を選択しやすくなり、より安心して治療を受けられます。

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「以前、麻酔が効かなかった」「治療が痛かった」という経験がある方も、一人で不安を抱え込む必要はありません。当院では、お口の状態や治療内容に応じて麻酔方法を工夫し、できる限り痛みに配慮した治療を心がけています。不安なことや気になることがありましたら、治療前にお気軽にご相談ください。

【動画】表面麻酔と針なし注射器シリジェット

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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