「麻酔をしたはずなのに痛かった…」
「下の奥歯だけ麻酔が効きにくいと言われた…」
「親知らずの抜歯で『特別な麻酔を使います』と説明された…」

このような経験や不安はありませんか?

下の奥歯や親知らずの治療では、通常の浸潤麻酔だけでは十分な効果が得られないことがあります。そのような場合に用いられるのが**伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)**です。

神経の根元に麻酔薬を作用させることで、広い範囲をしっかり麻酔できるため、抜歯や根管治療などの痛みを抑えながら治療を行うことができます。

この記事では、伝達麻酔の仕組みや特徴、適応となる治療、痛みや副作用、安全性について、患者さんにもわかりやすく解説します。


伝達麻酔とは、下顎の神経の根元に麻酔薬を注入し、神経の伝達を一時的に遮断する局所麻酔です。

一般的な浸潤麻酔が歯の近くに麻酔薬を注入するのに対し、伝達麻酔は神経そのものをブロックするため、より広い範囲に麻酔効果が及びます。

伝達麻酔の特徴

  • 下顎の奥歯に十分な麻酔効果が期待できる
  • 下顎半側を広範囲に麻酔できる
  • 抜歯や外科処置でも十分な鎮痛効果が得られる
  • 麻酔効果が比較的長く持続する

患者さんから最も多い質問の一つです。

上顎の骨は比較的薄く、麻酔薬が骨の中へ浸透しやすいため、通常の浸潤麻酔でも十分に効果が得られることが多くあります。

一方、下顎の奥歯は骨が厚く硬いため、歯の近くに麻酔薬を注入しても神経まで十分に届かないことがあります。

そのため、神経の入り口である「下顎孔」の近くで麻酔を行う伝達麻酔が選択されます。

下顎7番の虫歯では伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)が採用される場合がある
下顎7番の虫歯では伝達麻酔(下顎孔伝達麻酔)が採用される場合がある

伝達麻酔は次のような治療で行われることがあります。

  • 親知らずの抜歯
  • 下顎の奥歯の抜歯
  • 下顎大臼歯(6番・7番)の虫歯治療
  • 根管治療(神経の治療)
  • インプラント手術
  • 歯根端切除術
  • のう胞摘出術
  • その他の口腔外科処置

炎症が強い歯では通常の麻酔が効きにくく、伝達麻酔を追加することもあります。

比較項目浸潤麻酔伝達麻酔
麻酔する場所歯の近く神経の根元
効く範囲1~数本の歯下顎半側
持続時間約1~2時間約2~4時間
奥歯への効果効きにくいことがある効果が高い
親知らず抜歯状況によるよく使用される

伝達麻酔では、下顎の一番奥にある「下顎孔」と呼ばれる部位の近くへ麻酔薬を注入します。

実際には、親知らずのさらに奥にある粘膜から針を挿入し、骨に触れる位置まで慎重に進めて麻酔を行います。

下顎孔は外から見えず、位置にも個人差があるため、歯科医師は解剖学的な目印をもとに慎重に位置を判断します。

正確に麻酔が行われることで、下顎の奥歯だけでなく、下唇やあご先まで十分な麻酔効果が得られます。

刺入位置と角度

・ターゲット:下顎孔付近の下歯槽神経
・刺入角度:約45度
・骨接触を確認後に薬液注入

神経の位置と針の挿入角度
神経の位置と針の挿入角度

解剖学的知識と経験が成功率を大きく左右します。

「長い針を使う」と聞いて不安に感じる方もいらっしゃいます。

しかし、多くの歯科医院では痛みをできるだけ軽減するために、

  • 表面麻酔
  • 極細の注射針
  • 電動麻酔器
  • ゆっくりとした薬液注入

などを組み合わせています。

そのため、注射時の痛みは比較的少なく、「思っていたより痛くなかった」と感じる患者さんも少なくありません。

伝達麻酔でも、まれに十分な効果が得られないことがあります。

原因として、

  • 強い炎症がある
  • 神経の位置に個人差がある
  • 解剖学的な変異がある
  • 強い緊張や不安がある

などが挙げられます。

その場合は追加の麻酔や、別の方法を組み合わせることで対応します。

伝達麻酔では治療する歯だけでなく、以下の部位がしびれることがあります。

  • 下顎の奥歯
  • 下唇
  • あご先
  • 舌の片側(舌神経にも作用した場合)

これは正常な麻酔作用であり、時間の経過とともに自然に回復します。

しびれはどれくらい続きますか?

個人差はありますが、多くの場合は2~4時間程度で徐々に回復します。

治療内容や使用した麻酔薬によっては、数時間長く続くこともあります。

翌日になってもしびれが改善しない場合には、念のため歯科医院へご相談ください。

麻酔が効いている間の注意点

麻酔が効いている間は感覚が鈍くなっています。

そのため、

  • 頬や唇を噛まないよう注意する
  • 熱い飲み物によるやけどに注意する
  • 小さなお子さんは唇を噛まないよう保護者が見守る

ことが大切です。

感覚が戻ってから食事をすると、誤って頬や舌を傷つける心配が少なくなります。

伝達麻酔は安全性の高い麻酔法ですが、まれに次のような症状がみられることがあります。

  • 一時的な下唇や舌のしびれ
  • 内出血
  • 腫れ
  • 開口時の違和感
  • 麻酔効果が不十分で追加麻酔が必要になること

さらに非常にまれですが、一時的な神経障害が起こることがあります。

多くは自然に改善しますが、症状が長く続く場合には経過観察や追加の診察が必要となることがあります。

オトガイ神経麻痺の可能性

オトガイ神経麻痺
  • 下唇や顎先のしびれ・感覚の低下
  • まれに数週間〜数ヶ月、感覚が戻らないケースも

これは「一時的な神経圧迫または損傷」が原因と考えられます。
通常は自然回復しますが、経過観察が必要なケースもあるため、症状が続く場合は早めに歯科医に相談しましょう。

安全に麻酔を行うためには、歯科医師が適切な手技を行うことが重要です。

当院では、

  • 解剖学に基づいた正確な刺入位置の確認
  • 吸引操作による血管内注入の防止
  • 患者さんの体調確認
  • 全身状態への十分な配慮

を行い、安全性を第一に麻酔を実施しています。

専用注射器の使用

・長針(約35mm)を使用
・吸引機構付きで血管内注入を防止

伝達麻酔用リング付きの専用注射器
伝達麻酔用リング付きの専用注射器
浸潤麻酔用の専用注射器
浸潤麻酔用の専用注射器

吸引操作の重要性

針挿入後に陰圧をかけ、血液の逆流がないか確認します。

誤って血管内に投与すると
→動悸・めまい・血圧変動などの全身症状が出現する可能性

Q. 親知らずでは必ず伝達麻酔になりますか?

症例によって異なりますが、下顎の親知らずでは伝達麻酔を行うことが多くあります。

Q. 麻酔は何時間くらい効きますか?

通常は約2~4時間程度ですが、個人差があります。

Q. 麻酔後に車を運転しても大丈夫ですか?

局所麻酔だけであれば通常は運転可能ですが、しびれが強い場合は十分注意してください。

Q. 授乳中でも受けられますか?

一般的な局所麻酔薬は授乳中でも使用可能とされています。不安な場合は事前に歯科医師へご相談ください。

Q. 妊娠中でも受けられますか?

必要な治療では妊娠中でも局所麻酔を使用できます。妊娠週数や体調を考慮して治療計画を立てます。

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下顎の奥歯は通常の麻酔だけでは十分な効果が得られないことがあります。

そのような場合でも、患者さんのお口の状態や治療内容に合わせて浸潤麻酔と伝達麻酔を適切に使い分けることで、できるだけ痛みを抑えた治療を目指します。

下の奥歯の治療や親知らずの抜歯に不安がある方は、お気軽にご相談ください。

【動画】表面麻酔と針なし注射器シリジェット

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

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日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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