目次

歯科医院でよくいただく質問の一つに、

  • 「骨粗鬆症の薬を飲んでいます。」
  • 「抗がん剤治療中ですが歯科治療は受けられますか?」
  • 「顎の骨が壊死することがあると聞いて不安です。」
  • 「インプラントや抜歯はできますか?」

といったご相談があります。

骨粗鬆症やがんの骨転移の治療に使用される**骨代謝調整薬(Bone Modifying Agents:BMA)**は、骨を守るために非常に重要なお薬です。一方で、歯科治療、とくに抜歯や歯周外科治療などの外科的処置を行う際には注意が必要な場合があります。

しかし、「BMAを使用しているから歯科治療は受けられない」というわけではありません。

大切なのは、服用している薬を歯科医師へ正しく伝え、必要に応じて主治医と連携しながら治療を進めることです。

適切な診査・診断と口腔管理を行えば、多くの患者さんは安全に歯科治療を受けることができます。

この記事では、骨代謝調整薬(BMA)の基礎知識から、歯科治療で注意すべきポイント、顎骨壊死(MRONJ)のリスク、予防方法までをわかりやすく解説します。

まず最初に知っていただきたいことがあります。

骨代謝調整薬を使用していても、多くの歯科治療は可能です。

一方で、自己判断で薬を中止したり、「治療ができないだろう」と受診を控えたりすることはおすすめできません。

次の4つを意識していただくことが、安全な歯科治療につながります。

  • お薬手帳を必ず持参する
  • 骨粗鬆症やがん治療で使用している薬を歯科医師へ伝える
  • 主治医との連携が必要な場合がある
  • 定期的な口腔ケアを継続する

これらを守ることで、顎骨壊死などの合併症リスクを減らしながら治療を進めることができます。

骨代謝調整薬(Bone Modifying Agents:BMA)とは、骨が過剰に壊されることを防ぎ、骨の強度を維持するためのお薬です。

私たちの骨は一度作られたら終わりではなく、

  • 古い骨を壊す「骨吸収」
  • 新しい骨を作る「骨形成」

を繰り返しています。

この働きを「骨代謝」と呼びます。

骨粗鬆症やがんの骨転移では、この骨代謝のバランスが崩れ、骨が急速に弱くなったり壊れたりするため、BMAが使用されます。

BMAは、骨を壊す働きを担う「破骨細胞」の活動を抑えることで、骨折や骨の合併症を予防します。

そのため、

  • 骨粗鬆症による骨折予防
  • がんの骨転移による骨破壊の抑制
  • 多発性骨髄腫による骨病変の進行予防
  • 高カルシウム血症の治療

などに広く使用されています。

近年では高齢化に伴い骨粗鬆症の患者さんが増加しており、歯科医院でもBMAを使用されている患者さんを診療する機会が年々増えています。

BMAは大きく分けると2種類あります。

ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)

最も歴史が長く、多くの患者さんに使用されている薬です。

骨に強く結合し、破骨細胞の働きを抑えることで骨吸収を防ぎます。

代表的なお薬には、

  • ボナロン
  • ベネット
  • アクトネル
  • ボンビバ
  • リクラスト
  • ゾメタ

などがあります。

飲み薬だけでなく、点滴や注射で投与される薬もあります。

特にがん治療で使用される点滴製剤は、骨粗鬆症治療よりも高用量となるため、歯科治療ではより慎重な対応が必要になります。

デノスマブ製剤

近年広く使用されている新しいタイプのBMAです。

骨を壊す細胞が作られるために必要な「RANKL」というタンパク質の働きを抑えることで、骨吸収を抑制します。

代表的なお薬には、

  • プラリア(骨粗鬆症)
  • ランマーク(がんの骨転移)

があります。

デノスマブは骨に蓄積する薬ではありませんが、作用中は顎骨壊死のリスクがあるため、歯科治療ではBP製剤と同様に慎重な管理が必要です。

「骨を守る薬なのに、なぜ歯科治療では注意が必要なの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。

その理由は、顎の骨が非常に特殊な環境にあるためです。

顎の骨は、毎日の食事や会話で常に力が加わり、さらに歯を支えるため骨代謝が活発に行われています。

また、お口の中には数百種類もの細菌が存在しており、抜歯や歯周外科などで骨が露出すると、細菌感染を起こす可能性があります。

通常であれば傷は自然に治癒しますが、BMAを使用している患者さんでは骨代謝が抑えられているため、骨の修復が遅れたり、感染が長引いたりすることがあります。

その結果、まれではありますが「薬剤関連顎骨壊死(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)」という合併症が生じることがあります。

ただし、MRONJはすべての患者さんに起こるわけではありません。

口腔内の衛生状態が良好で、歯周病や虫歯などの感染源が適切に管理されていれば、多くの患者さんは問題なく経過します。

そのため現在では、「薬を飲んでいるから抜歯ができない」という考え方ではなく、事前の口腔管理と適切なリスク評価が最も重要であると考えられています。

歯科医師は、お薬の種類や投与期間、全身状態、治療内容などを総合的に評価し、安全性を十分に確認したうえで治療計画を立てます。

MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)とは?

顎骨壊死
顎骨壊死

骨代謝調整薬(BMA)を使用している患者さんが歯科治療を受ける際に、最も注意が必要な合併症が**薬剤関連顎骨壊死(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)**です。

MRONJとは、顎の骨の一部が血流や骨代謝の低下、感染などの影響によって十分に修復されず、壊死した状態を指します。

「顎骨壊死」と聞くと非常に怖い病気のように感じられるかもしれませんが、発症頻度は決して高くありません。また、すべてのBMA使用患者さんに起こるものでもありません。

大切なのは、MRONJのリスクを正しく理解し、適切な予防と口腔管理を行うことです。

MRONJはなぜ起こるのでしょうか?

MRONJは、一つの原因だけで起こる病気ではありません。

現在では、複数の要因が重なって発症すると考えられています。

骨代謝の低下

BMAは骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えることで、骨吸収を防ぐ薬です。

しかし、その作用によって骨の新陳代謝も低下するため、傷ついた骨の修復に時間がかかることがあります。

通常であれば抜歯後の骨は新しい骨へと生まれ変わりますが、骨代謝が抑えられていると修復が遅れ、感染を起こしやすい状態になります。

細菌感染

口の中には数百種類もの細菌が存在しています。

抜歯や歯周外科治療などで骨が露出すると、細菌が侵入し感染を起こすことがあります。

特に、

  • 重度歯周病
  • 根尖病巣
  • インプラント周囲炎

など慢性的な感染がある場合には、MRONJのリスクが高くなることが知られています。

実際には、抜歯そのものよりも、抜歯が必要になる原因となった感染症の方が重要なリスク因子と考えられています。

傷の治りにくさ

顎の骨は毎日食事や会話で強い力が加わります。

さらに歯ぐきは常に細菌にさらされているため、身体のほかの骨よりも傷が治りにくい環境です。

そこへBMAの作用が加わることで、骨が十分に治癒できず、壊死へ進行することがあります。

MRONJの症状

初期にはほとんど自覚症状がないこともあります。

そのため、定期的な歯科受診が重要になります。

症状が進行すると次のような変化が現れます。

初期症状

  • 歯ぐきの腫れ
  • 軽い痛み
  • 歯ぐきから膿が出る
  • 抜歯後の傷がなかなか治らない
  • 違和感が続く

この段階では通常の歯周病や根尖病巣と区別が難しいこともあります。

進行すると…

さらに進行すると、

  • 顎の骨が露出する
  • 強い痛み
  • 顎の腫れ
  • 排膿
  • 歯の動揺
  • 口臭
  • 食事が困難になる
  • 下唇のしびれ

などの症状がみられることがあります。

重症例では顎の骨折につながることもあるため、早期発見・早期対応が重要です。

どのような人がMRONJになりやすいのでしょうか?

MRONJは、お薬だけで決まるわけではありません。

さまざまな危険因子が重なることで発症リスクが高まります。

局所的なリスク因子

お口の中の状態に関係するものです。

  • 重度歯周病
  • 根尖病巣
  • 抜歯
  • 歯周外科治療
  • インプラント周囲炎
  • 合わない入れ歯
  • 口腔清掃不良
  • 長期間放置した虫歯

特に歯周病はMRONJの重要な危険因子とされています。

全身的なリスク因子

全身の病気や治療内容も大きく関係します。

  • がん
  • 高用量BMA投与
  • 抗がん剤治療
  • ステロイド治療
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 高齢
  • 栄養状態の低下
  • 免疫力の低下

これらが複数重なるほど発症リスクは高くなります。

抜歯は本当に危険なのでしょうか?

患者さんから最も多くいただく質問です。

結論から言えば、

必要な抜歯は行った方が安全な場合が少なくありません。

以前は、

「BMAを飲んでいる患者さんには抜歯をしない方が良い」

という考え方がありました。

しかし現在では考え方が変わっています。

例えば、

  • 重度歯周病
  • 根尖病巣
  • 歯根破折

など感染源となる歯を無理に残すと、

慢性的な炎症が続き、

結果としてMRONJのリスクを高める可能性があります。

つまり、

感染源を放置することの方が危険になるケースも多いのです。

そのため現在は、

十分な診査を行い、

感染コントロールを徹底したうえで、

必要な抜歯を安全に実施することが推奨されています。

インプラント治療はできますか?

インプラントについても多くのご質問があります。

骨粗鬆症治療でBMAを使用している患者さんでは、

全身状態や投与期間、口腔内環境を十分に評価したうえで治療の可否を判断します。

一方、

がん治療で高用量のBMAを使用している患者さんでは、

MRONJのリスクが高くなるため、

インプラント治療は慎重な検討が必要になります。

また、すでにインプラントが入っている患者さんでは、

インプラント周囲炎を起こさないことが何より重要です。

インプラント周囲炎は歯周病と同様に細菌感染によって起こるため、炎症が進行するとMRONJ発症のきっかけになることがあります。

そのため、

  • 毎日のセルフケア
  • 定期的なメインテナンス
  • インプラント周囲炎の早期治療

が非常に重要になります。

MRONJは予防できる病気です

MRONJは「薬を飲んでいるから必ず起こる病気」ではありません。

現在の国際的なガイドラインでも、

適切な口腔管理を行うことで発症リスクを大きく減らせることが示されています。

特に重要なのは、

  • BMA開始前の歯科受診
  • 歯周病や根尖病巣の治療
  • 定期的なクリーニング
  • 正しいセルフケア
  • 主治医と歯科医師との連携

です。

薬を必要以上に恐れるのではなく、正しい知識を持ち、予防を継続することが、お口の健康を守る最善の方法といえるでしょう。

抗がん剤治療中はなぜ歯科治療に注意が必要なのでしょうか?

がん治療では、骨代謝調整薬(BMA)だけでなく、抗がん剤や分子標的薬、免疫療法などが併用されることがあります。

これらの治療はがん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を及ぼすことがあり、体の免疫力が一時的に低下します。その結果、口の中の細菌感染が起こりやすくなり、歯周病や根尖病巣などの慢性的な炎症が急速に悪化することがあります。

さらにBMAによって骨代謝が抑制されている場合には、感染した骨の修復が遅れ、MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)の発症につながる可能性があります。

そのため、抗がん剤治療を開始する前から歯科医院でお口の状態を整えておくことが非常に重要です。

骨髄抑制期とは?

骨髄抑制期

抗がん剤治療では、「骨髄抑制」と呼ばれる状態が起こることがあります。

骨髄は血液を作る場所であり、

  • 白血球
  • 赤血球
  • 血小板

を産生しています。

抗がん剤の影響で骨髄の働きが一時的に低下すると、これらの血液細胞が減少します。

特に問題となるのが白血球の減少です。

白血球、とくに好中球が減少すると、細菌に対する抵抗力が弱くなり、通常であれば問題にならないような感染でも重症化する可能性があります。

一般的には抗がん剤投与後約1〜3週間に骨髄抑制がみられ、その中でも約7〜14日後に白血球数が最も低下しやすいとされています。

この時期は歯科治療だけでなく、日常の口腔ケアにも十分な注意が必要です。

観血的処置の安全目安

  • 白血球:2,000/μl以上
  • 好中球:1,000/μl以上
  • 血小板:40,000〜50,000/μl以上

※これらはあくまで目安であり、主治医との連携が必須です。

骨髄抑制期に起こりやすい口腔トラブル

免疫力が低下すると、これまで症状のなかった病変が急激に悪化することがあります。

代表的なものには以下があります。

歯周病の急性増悪

重度歯周病で歯槽骨が吸収
重度歯周病で歯槽骨が吸収

慢性的に進行していた歯周病が急に悪化し、

  • 歯ぐきの腫れ
  • 強い痛み
  • 排膿
  • 発熱

などを起こすことがあります。

歯周病菌は歯ぐきの奥深くでバイオフィルムを形成しているため、免疫力が低下すると一気に炎症が拡大し、顎骨へ感染が及ぶ危険性があります。

根尖病巣の急性化

過去に神経を取った歯や虫歯を放置した歯では、歯の根の先に慢性的な感染(根尖病巣)が残っていることがあります。

普段は症状がなくても、

抗がん剤によって免疫力が低下すると、

  • 激しい痛み
  • 歯ぐきの腫れ
  • 膿瘍形成
  • 顔の腫脹

などを起こすことがあります。

そのため、抗がん剤治療前にはレントゲン撮影を行い、根尖病巣の有無を確認することが重要です。

根尖病巣
根尖病巣

虫歯が歯髄(神経)まで達すると根管内は細菌に感染します。その状態を放置すると細菌は根管から歯槽骨へ出て、炎症を引き起こします。

慢性化すると骨に膿の袋を形成します。これを根尖病巣といいます。上写真の根の周りの黒い部分が根尖病巣です。

抗癌剤の投与前に根尖病巣の治療を完了しとく必要があります。

根管治療で根尖病巣が治癒
根管治療で根尖病巣が治癒

根管治療により根の周りの黒い影が消えているのが分ります。この状態なら抗癌剤の投与により問題が起こることはありません。

根管治療には一定の治療期間が必要な為、抗癌剤の投与のタイミングを待っていられない場合があります。そんな時は、事前に抜歯が推奨されます。

インプラント周囲炎の悪化

インプラント周囲炎による歯槽骨が吸収
インプラント周囲炎による歯槽骨が吸収

インプラントは天然歯と異なり、歯根膜がありません。

そのため、一度感染が起こると炎症が骨へ広がりやすい特徴があります。

インプラント周囲炎が進行すると、

  • インプラント周囲の骨吸収
  • 排膿
  • 動揺
  • インプラント脱落

へ進行する可能性があります。

さらにBMAを使用している患者さんでは、感染した骨の修復が遅れるため、MRONJ発症のきっかけになることもあります。

インプラントを長持ちさせるためにも、日頃から定期的なメインテナンスが欠かせません。

歯周病はMRONJ最大の危険因子の一つです

以前は「抜歯をすると顎骨壊死になる」と考えられていました。

しかし現在では、

抜歯の原因となる歯周病や感染そのものが、より重要な危険因子であることが分かっています。

重度歯周病では、

  • 歯槽骨の吸収
  • 歯の動揺
  • 歯周ポケット内の細菌増殖

が慢性的に続いています。

この状態でBMAを使用すると、感染が骨へ広がりやすくなり、MRONJ発症のリスクが高まります。

そのため、歯周病を放置せず、早期から治療することが何よりも重要です。

根尖病巣は治療しておくことが重要です

根尖病巣とは、歯の神経が細菌感染を起こし、歯根の先に膿の袋ができた状態です。

慢性化すると痛みがないことも多く、患者さん自身が気付いていないケースも少なくありません。

しかし、抗がん剤治療やBMA投与によって免疫力や骨代謝が低下すると、慢性的な感染が急速に悪化することがあります。

そのため、

  • 根管治療で保存できる歯は治療を完了する
  • 保存が困難な歯は治療開始前に抜歯を検討する

ことが推奨されています。

根管治療には数週間から数か月かかることもあるため、がん治療開始までの期間を考慮した治療計画が必要になります。

BMA・抗がん剤治療前に歯科受診するメリット

がん治療や骨粗鬆症治療を開始する前に歯科医院を受診することで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。

具体的には、

① 歯周病の治療

歯石除去や歯周基本治療を行い、慢性炎症を改善します。

② 虫歯の治療

進行した虫歯を早めに治療し、感染源をなくします。

③ 根尖病巣の治療

根管治療や必要に応じた抜歯を行い、急性化を防ぎます。

④ 保存困難歯の評価

将来的に抜歯が必要になる可能性が高い歯については、BMA開始前に治療を済ませておくことが望ましい場合があります。

⑤ 義歯の調整

合わない入れ歯は歯ぐきを傷つけ、慢性的な潰瘍や感染を引き起こす原因になります。

必要に応じて調整や作り直しを行います。

⑥ 口腔衛生指導

毎日の歯磨き方法や歯間ブラシ・デンタルフロスの使用方法を確認し、細菌数を減らします。

セルフケアの質を高めることがMRONJ予防につながります。

主治医と歯科医師の連携が安全な治療につながります

BMAや抗がん剤治療を受けている患者さんでは、歯科医師だけで治療方針を決めることはありません。

必要に応じて、

  • 現在使用している薬剤
  • 投与期間
  • がん治療の予定
  • 血液検査結果
  • 全身状態

などを主治医と共有し、安全な治療時期や治療内容を検討します。

患者さんご自身が「薬を飲んでいること」を歯科医院へ伝えることが、安全な歯科治療への第一歩です。

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は、骨代謝調整薬を使用しているすべての方に起こるわけではありません。むし歯や歯周病などの感染源を早期に治療し、定期的な口腔管理を続けることで、発症リスクを抑えられる可能性があります。

特に重要なのは、薬を必要以上に恐れて歯科受診を避けないことです。お口の中の感染を放置すると、症状が悪化して抜歯などの処置が必要になる可能性があります。

毎日のセルフケアを丁寧に行う

MRONJの予防には、お口の中の細菌を減らし、歯周病やインプラント周囲炎を防ぐことが大切です。

歯ブラシによる清掃だけでは、歯と歯の間や歯周ポケット周辺の汚れを十分に取り除けないことがあります。デンタルフロスや歯間ブラシも使用し、ご自身のお口に合った方法で清掃しましょう。

次のような変化がある場合は、早めに歯科医院を受診してください。

  • 歯ぐきの腫れや痛みが続く
  • 歯ぐきから膿が出る
  • 歯が急に動くようになった
  • 抜歯した部分がなかなか治らない
  • 歯ぐきから骨のようなものが見える
  • 顎や下唇にしびれを感じる
  • 入れ歯が当たって傷が治らない

症状が軽いうちに対応することで、感染の拡大を防げる可能性があります。

定期的に歯科検診を受ける

BMAを使用している方は、症状がなくても定期的な歯科検診を受けることが重要です。

歯周病や根尖病巣、インプラント周囲炎は、初期には強い痛みがないまま進行することがあります。歯科医院では、歯ぐきの状態や歯の動揺、入れ歯の適合などを確認し、必要に応じてレントゲン検査を行います。

BMA投与前に歯科を受診し、むし歯や歯周病、保存困難な歯などを確認しておくことは、顎骨壊死や顎骨骨髄炎の予防につながります。

骨粗鬆症の薬を使用していても歯科治療は受けられますか?

多くの一般的な歯科治療は受けられます。

むし歯治療、歯石除去、歯周病治療、入れ歯の調整などは、口腔内の感染を防ぐためにも重要です。ただし、抜歯やインプラント埋入など、顎の骨に影響する処置では個別のリスク評価が必要です。

受診時には、お薬手帳や注射・点滴の予定が分かる資料をお持ちください。

抜歯をする前に薬を休んだ方がよいですか?

自己判断で薬を中止してはいけません。

国内のポジションペーパー2023では、抜歯前に骨吸収抑制薬を予防的に休薬することは、原則として推奨されていません。休薬によってMRONJを確実に予防できるとは限らず、骨折や原疾患への影響も考慮する必要があるためです。

薬の継続・中断・再開については、処方した医師と歯科医師が、薬剤の種類、使用目的、投与量、全身状態、歯科処置の内容などを確認したうえで判断します。

薬を休めば顎骨壊死を完全に防げますか?

休薬したからといって、MRONJを完全に防げるわけではありません。

特にビスフォスフォネート製剤は骨に長く残る性質があるため、短期間休薬しても作用が直ちになくなるとは限りません。重要なのは、歯性感染症を適切に治療し、良好な口腔衛生状態を維持することです。

骨代謝調整薬を使っていると抜歯できませんか?

必要な場合には、抜歯を検討します。

重度歯周病や歯根破折、根尖病巣のある歯を無理に残すと、感染が持続してMRONJのリスクを高める可能性があります。近年は、抜歯という処置だけでなく、その背景にある歯周病や根尖病変などの感染を重要なリスク因子として考えるようになっています。

治療の必要性とリスクを比較し、感染管理や術後の経過観察を行いながら判断します。

インプラント治療は受けられますか?

使用している薬剤の投与量や目的、全身状態によって判断が異なります。

骨粗鬆症に対する低用量の骨吸収抑制薬を使用している場合、ほかに大きなリスク因子がなければ、インプラント治療が一律に禁忌になるわけではありません。ただし、将来的にインプラント周囲炎からMRONJへ進行する可能性があるため、慎重な治療計画と継続的なメインテナンスが必要です。がん治療で高用量製剤を使用している場合は、さらに慎重な判断が求められます。

顎骨壊死が疑われた場合はどうなりますか?

症状や進行度に応じて、口腔内の洗浄、感染管理、抗菌薬の使用、外科的治療などを検討します。

骨の露出、排膿、治りにくい傷、顎の腫れやしびれなどがある場合は、放置せず早めに受診してください。専門的な治療が必要な場合は、口腔外科を備えた医療機関と連携します。

当院では、骨粗鬆症やがん治療で骨代謝調整薬を使用している患者さんに対し、薬の種類だけでなく、投与目的や投与方法、使用期間、全身状態を確認したうえで治療計画を立てます。

主な対応内容は次のとおりです。

  • お薬手帳と治療歴の確認
  • 歯周病・むし歯・根尖病巣の診査
  • インプラント周囲炎や入れ歯による傷の確認
  • レントゲンなどを用いた顎骨・歯の状態の評価
  • 歯周基本治療と口腔衛生指導
  • 処方医・主治医との情報共有
  • 抜歯などの処置後の継続的な経過観察
  • 必要に応じた口腔外科・高次医療機関への紹介

BMAを使用しているという理由だけで、歯科治療を一律に中止することはありません。患者さんごとのリスクと治療の必要性を確認し、できる限り感染を残さないことを重視します。

骨代謝調整薬は、骨粗鬆症による骨折や、がんの骨転移に伴う症状を防ぐための大切な薬です。

一方で、歯周病や根尖病巣、インプラント周囲炎などの感染があると、MRONJの発症リスクが高まる可能性があります。

安全に治療を受けるために大切なのは、次の3点です。

  1. 骨代謝調整薬の開始前から口腔内を整える
  2. 使用中も定期検診と口腔ケアを続ける
  3. 薬を自己判断で中止せず、医科と歯科が連携して判断する

「骨粗鬆症の薬を使用しているから歯科へ行けない」と考える必要はありません。むしろ症状がない時期から歯科を受診し、感染源を早期に発見・治療することが重要です。

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骨代謝調整薬を使用している方の歯科治療では、お薬の種類や投与目的、お口の状態を確認したうえでの慎重な判断が大切です。

当院では、歯周病や根尖病巣などの感染源を詳しく診査し、必要に応じて主治医や口腔外科と連携しながら治療方針をご提案します。

自己判断で薬を中止せず、お薬手帳をご持参のうえご相談ください。

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筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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