- 1. 根管治療後に発生する歯根嚢胞の危険性
- 1.1. 歯根嚢胞は歯根先端に膿が溜まる病気
- 1.2. 歯根嚢胞の症状
- 2. 歯根嚢胞の大小による治療法の違い:レントゲン写真で解説
- 2.1. 歯根嚢胞のレントゲン写真
- 2.2. 歯根嚢胞を根管治療で治癒
- 2.3. 歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術
- 2.4. 小~中程度の歯根嚢胞は根管治療で治します
- 2.5. 根管治療の流れ
- 2.6. 急性症状には歯茎の切開排膿
- 3. 大臼歯の根管治療が困難な5つの解剖学的要因
- 3.1. 大臼歯の根管治療が難しい解剖学的理由
- 4. 江戸川区篠崎で歯根嚢胞の治療をご希望の方へ
- 5. 【動画】歯茎の出来物、フィステル、口内炎、口腔癌の見分け方
- 6. 筆者・院長
根管治療後に発生する歯根嚢胞の危険性
奥歯の根管治療後、痛みを繰り返す!
数年前、奥歯の根管治療をしました。数ヶ月後、柔らかいものでもかめない日が1週間ほど続き、その後症状が消えました。この様な事を数ヶ月に一度繰り返しています。今回は歯茎が大きく腫れて強い痛みが起こっています。これを放置すると抜歯になりますか?
虫歯によって神経を抜く治療を受けると、歯根嚢胞ができる事があります。
歯根先端に膿が溜まる歯根嚢胞は、根管治療が難しい大臼歯に起きやすいこと。急性症状が出た場合には応急処置として切開して膿を出し抗生物質を使うことなど。
歯根嚢胞のレントゲン写真や症状の特徴、原因や治療法などについて解説します。
歯根嚢胞は歯根先端に膿が溜まる病気
歯根嚢胞が出来るメカニズム
虫歯が進行し、歯の神経が死んでしまった場合に抜髄(神経を抜く)を行います。根管治療を受けても歯根の中に細菌が残留し、増殖した細菌が歯槽骨の中まで波及し膿の袋を形成するものを歯根嚢胞と言います。
顎骨に発生する嚢胞では歯根嚢胞が最も頻度が高く、根管治療が難しい大臼歯で多く発生します。
歯根嚢胞は放置しても自然治癒しません
歯根嚢胞は慢性疾患で自覚症状なく何年もかけて大きくなります。その間、痛みが起きにくいのは、歯根嚢胞内の膿がフィステルを介して歯茎の外にジワジワと出ることで内圧が下がるためです。
従って、放置しても自然治癒することはありません。
歯根嚢胞の症状
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小さい歯根嚢胞
概ね無症状で経過します。歯根嚢胞の症状は、あったとしても噛む時の違和感や歯を軽く叩くと少し響く程度です。
そのため発見が遅れ、他の疾患で歯医者を受診した時にレントゲン写真で発見される事が多いです。
歯根嚢胞が成長し大きくなるとレントゲン写真では透過像として黒く写ります。しかし、急性期の歯根嚢胞ではレントゲンに写らないことがあります。
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中程度の歯根嚢胞
柔らかいものでも噛めない日が1週間ほど続き、その後症状が消えます。この様な事を数ヶ月に一度繰り返します。長い場合には数年続くこともあります。
痛みなどの症状が無くなるのはフィステルが形成されるからです。
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大きい歯根嚢胞
ストレスや疲労なので体調が急変した時などに急性症状が起こり、歯茎が大きく腫れて強い痛みが起こります。
上下の歯を少し触れただけでも激痛が走ります。またズキズキとした自発痛もあります。
歯根嚢胞の大小による治療法の違い:レントゲン写真で解説
歯根嚢胞のレントゲン写真
歯根嚢胞の大きさは、米粒大から親指大を超える大きなものまで様々です。卵の大きさを超えるほどの大きな歯根嚢胞になると当該歯の抜歯も必要になることもあります。
中程度の歯根嚢胞
他医院にて前歯の根管治療後、差し歯にした症例です。歯根先端に中程度の歯根嚢胞が出来ています。
中程度の歯根嚢胞
他医院にて一度根管治療を受けていますが、中程度の歯根嚢胞が出来ました。再根管治療を行なっているレントゲン写真です。
歯根嚢胞を根管治療で治癒
中程度の歯根嚢胞であれば、根管治療で完治することも可能です。ただし、大臼歯では不可能な場合があります。
小臼歯の中程度の歯根嚢胞
下顎第一小臼歯、第二小臼歯の2本に中程度の歯根嚢胞が出来ています。
歯根嚢胞が消失
冠やメタルコアを外し、再根管治療を行ない、根管充填後のレントゲン写真です。歯根嚢胞が消えています。
歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術
大きな歯根嚢胞は根管治療では治癒しないことがあります。そのような時は歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術を行います。
大きい歯根嚢胞
大きな歯根嚢胞が2本の歯に跨って出来ています。再根管治療を行なった上、歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術を実施しました。
歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術
歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術で歯根嚢胞はほぼ消えています。
小~中程度の歯根嚢胞は根管治療で治します
根管治療の流れ
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根管拡大
細菌感染した根管壁をファイルという器具で徐々に掻き出していきます。ファイルは最初細いものから使い次第に太いサイズへとステップアップさせ、根管拡大を行います。
根管内を水酸化カルシウム製剤などの薬剤で殺菌し蓋をします。
STEP
根管内消毒
1週間に1回くらいの間隔で、根管から膿の臭いが無くなるまで薬剤で殺菌する根管治療を続けます。治療期間は長いケースだと6ヶ月に及び、治療回数は20回を超えることもあります。
イラストの様に歯根嚢胞からフィステルが形成されていれば、通常は痛みは起こりません。しかし、膿が常時排出されているために臭いが気になるかもしれません。
STEP
根管充填
根管内が無菌的状態になったらガッタパーチャーなどの薬剤で根管を密閉する根管充填を行います。根管充填がうまくいけば数ヶ月後にレントゲンを撮ると歯根嚢胞が消えていることを確認出来ます。
急性症状には歯茎の切開排膿
歯根嚢胞の急性化
虫歯で歯の神経が感染し、歯根嚢胞が出来て歯茎に膿が溜まり大きく腫れる急性症状が起きたら、局所麻酔をかけて歯茎を切開し排膿します。
膨らんだ歯茎を切開し、膿を出すことで強い痛みは引いてきます。同時に痛み止めや抗生物質などの薬を投与します。
切開排膿は、あくまでも一時的な応急処置なので、症状が安定したら根管治療や歯根嚢胞摘出手術、歯根端切除術など歯根嚢胞を治す治療が必要となります。
大臼歯の根管治療が困難な5つの解剖学的要因
大臼歯の根管治療が難しい解剖学的理由
① 湾曲根管
根管が湾曲しているとファイルが途中でぶつかってしまい根尖まで到達しません。根管治療の成功は根尖までファイルが届いて、感染している歯質を完全に除去出来るかにかかっています。
② 根管が細い
根管が細すぎて最も細いファイルさえも入らないことがあります。
③ 根管数が3本~4本
大臼歯の根管数は3本~4本です。すべての根管の治療が適切に行われないと歯根嚢胞が出来ることがあります。
④ 側枝がある
主要な根管以外に側枝と言って木の枝の様な細い根管が無数に存在しています。側枝にはファイルが入らないため薬によって殺菌します。
⑤ ファイルが入りづらい
奥歯になるほど治療器具のファイルが挿入しづらくなります。特に、奥側からファイルを挿入しなければならない近心根(口に近い側の根っこ)などは対合歯が邪魔になって挿入を難しくさせています。
江戸川区篠崎で歯根嚢胞の治療をご希望の方へ
当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しております。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、歯根嚢胞の治療をご希望の方は、ふかさわ歯科クリニック篠崎までお気軽にご相談ください。
【動画】歯茎の出来物、フィステル、口内炎、口腔癌の見分け方
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。