目次

「何度も根の治療をしたのに、なかなか痛みや腫れが引かない…」
そんなお悩みを抱える方に知ってほしいのが、**歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)**という治療法です。これは、通常の根管治療では改善しない“根の先の病気”に対して行う外科的アプローチで、歯を抜かずに残すための最後の手段とも言えます。

本記事では、歯根端切除術の流れや適応ケース、治療の成功率や費用について、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。歯をできるだけ残したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

歯根端切除術は、通常の根管治療では治癒が困難な**難治性根尖病変(歯根嚢胞など)**に対して行う外科的歯内療法の一つです。抜歯を回避し、歯の保存を図るための重要な選択肢となります。

🦠 根管治療で改善しない根尖病変

適切な根管治療を行っても、根尖部に感染源が残存する場合があります。これは以下のような要因によります。

  • 根管の複雑な形態(側枝・分岐)
  • 器具や洗浄薬剤が到達できない領域の存在
  • バイオフィルムの持続感染

このような場合、感染源を直接外科的に除去する必要があり、歯根端切除術が適応となります。

上顎前歯(2番)が原因の大きい歯根嚢胞
上顎前歯(2番)が原因の大きい歯根嚢胞
歯根端切除術
歯根端切除術

❌ 再根管治療でも改善しないケース

複数回の再治療にもかかわらず、疼痛や腫脹が持続する場合、内部からのアプローチには限界があります。

特に以下のようなケースでは外科的介入が有効です。

  • 器具破折の残存
  • 根管の閉塞・石灰化
  • 過去の不完全な根管充填

🦷 マイクロクラックや慢性感染の存在

歯根に微細な破折(マイクロクラック)がある場合や、長期にわたる感染により根尖部に肉芽・嚢胞が形成されている場合は、再発リスクが高くなります。

このような症例では、根尖部を切除し感染源を除去することが予後改善に有効です。

歯根端切除術は、精密な診断と慎重な手術操作によって行われる外科処置です。以下に、治療の主な流れをステップごとにご紹介します。

🔪歯肉切開と骨の一部除去

局所麻酔を行ったのち、治療部位の歯ぐきを切開して、病巣に直接アクセスできるようにします

  • 必要に応じて骨の表層を少しだけ削除し、根尖部と病巣を確認します。
  • 患者さんは麻酔が効いているため、痛みはほとんど感じません。

✂️根尖の切除と病巣の除去

露出させた病変部に対し、以下の処置を行います:

  • 感染源である根尖の一部(約3mm)を切除
  • 膿の袋(嚢胞や肉芽組織)を完全に取り除く
  • 必要に応じて、器具の破折片や異物も除去

この段階で、病変の根本的な原因に直接アプローチすることができます。

根尖の切除と病巣の除去
根尖の切除と病巣の除去

🧩逆根管充填のステップ

根尖を切除した部分には、**逆方向から封鎖処置(逆根管充填)**を行います。

  • MTAセメントなどの高い封鎖性を持つ材料を用いて、根の先端をしっかり閉鎖
逆根管充填
逆根管充填

🧬🪡CGF(濃縮成長因子)と人工骨填入のステップ

CGF(濃縮成長因子)と人工骨を併用して欠損部に填入します。

  • CGF(濃縮成長因子)と人工骨を併用して、欠損した骨の部分に補填することがあります。この処置により骨の再生が促進されますが、保険の適用外となります。
  • 歯肉を元に戻し、丁寧に縫合して治療を終了
CGF(濃縮成長因子)と人工骨填入
CGF(濃縮成長因子)と人工骨填入

術後は、消毒や抜糸のための通院が必要となりますが、通常1週間程度で回復に向かいます。

🔴 内出血・腫脹

術後に頬部へ皮下出血が出ることがありますが、1〜2週間で自然消退します。

⚡ 知覚異常

一時的なしびれや違和感が生じることがありますが、多くは可逆的です。

🪥 口腔衛生管理

  • 当日はブラッシング回避
  • 翌日以降は創部を避けて清掃
  • 約1週間後に抜糸

🍽 食事指導

  • 麻酔が切れるまでは飲食禁止
  • その後は軟食から開始
項目根管治療歯根端切除術
アプローチ根管内(内部)根尖外(外科)
適応初回・再治療可能例難治性・再発例
特徴低侵襲直接的病巣除去

👉 両者は補完関係にあり、段階的治療戦略が重要です。

歯根端切除術の成功率は**約70〜90%**と報告されています。

ただし以下の場合は予後不良となる可能性があります。

  • 垂直歯根破折
  • 重度歯周病
  • 病変の取り残し

歯根端切除術の理解をより深めていただくために、実際の症例をもとに治療前後の変化や注意点をご紹介します。目に見える変化を通して、歯を残せる可能性の高さを実感していただける内容です。

📷治療前後のレントゲン比較

以下は、ある患者さまの症例の一例です。

根管治療終了時
根管治療終了
術後6ヶ月のレントゲン
術後6ヶ月のレントゲン

🦷治療前:

  • レントゲンで**根尖部に透過像(黒い影)**が確認される=根尖病変
  • 根管治療を行ったが痛みと腫れが継続

🦷治療後:

  • 歯根端切除術を実施し、病巣と歯根の先端を除去
  • 逆根管充填(MTA)を行い、封鎖性を確保
  • 術後6ヶ月のレントゲンで、骨が再生し黒い影が消失

📌注意点として、すべての症例で必ず成功するわけではありません。
骨の状態や歯の形状、全身の健康状態によっては、**抜歯やインプラントなど他の治療法が適している場合もあります。**治療方法の選択には、十分な診査と専門的な判断が重要です。

⚠️大臼歯の歯根端切除術が困難なケースとは?

大臼歯では歯根嚢胞摘出手術と歯根端切除術が不可能な場合があります。

😣上顎大臼歯にできた歯根嚢胞の注意点

上顎大臼歯で手術不可能な症例
上顎大臼歯で手術不可能な症例

🔍上顎大臼歯の歯根構造について
  • 上顎の大臼歯には通常3本の歯根があります。
      └ 頬側に2根(近心頬側・遠心頬側)
      └ 舌側に1根(口蓋根)
  • それぞれの根に歯根嚢胞ができる可能性があります。
⚠️舌側根にできた歯根嚢胞の特徴と問題点

そのため、舌側根にできた嚢胞は摘出できない場合があるため注意が必要です。

舌側(口蓋側)の歯根に嚢胞ができた場合、外科的なアプローチが難しいです。

通常、歯根嚢胞の摘出は頬側(表側)からアプローチするのが一般的です。

😣下顎大臼歯の舌側根にできた歯根嚢胞について

大臼歯で手術不可能な症例

🔍下顎大臼歯の歯根構造とは?
  • 一般的に**下顎大臼歯は3根(近心2根・遠心1根)**を持つことが多いです。
  • ただし、**約25%の割合で4根(頬側2根+舌側2根)**のケースも存在します。
  • 歯根の形態は個人差があり、治療計画にも影響を与えます。
⚠️舌側根の歯根嚢胞は摘出が困難な理由
  • 歯根嚢胞摘出手術は、通常は頬側(外側)から行います。
  • 下顎大臼歯の舌側にできた歯根嚢胞は、舌側の厚い骨に阻まれ、外科的アプローチが難しいのが現実です。
  • 結果として、舌側根の嚢胞は外科的に摘出できないケースもあります。
💡診断と治療方針のポイント
  • レントゲン検査により歯根の本数と嚢胞の位置を正確に把握することが重要です。
  • 舌側に嚢胞がある場合は、通常の歯根端切除術では対応できない可能性があるため、再植や抜歯を含む治療選択が検討されます。
  • 4根の大臼歯は稀であるため、術前の詳細な診断が非常に重要です。

🚫歯根破折や垂直破折があると保存困難な場合も

歯の根が**縦に割れている(垂直破折)**ようなケースでは、歯根端切除術では対応できず、抜歯を選択せざるを得ないことがあります。

特に以下のような場合は、術前の段階で慎重な判断が求められます:

  • 明らかな歯根の縦割れ
  • 重度の歯周病による骨吸収
  • 歯が大きく揺れている(動揺)
  • このような状態では、外科的に病巣を除去しても再感染や痛みの再発が避けられないため、インプラントやブリッジなど、別の治療法が検討されます。

⚠️ 4・5・6・7番ブリッジ|5番支台歯に歯根破折を認める症例

⚠️ 4・5・6・7番ブリッジ|5番支台歯に歯根破折を認める症例
⚠️ 4・5・6・7番ブリッジ|5番支台歯に歯根破折を認める症例

4・5・6・7番に装着されたブリッジ症例です。6番はダミー(欠損部)で、支台歯である5番の歯根に破折線(矢印)が確認されます。歯根破折は保存が困難なケースが多く、ブリッジ全体の再治療や抜歯を含めた治療方針の見直しが必要となる代表的な所見です。

抜歯後にインプラントを選択した症例(下顎7番)

抜歯後にインプラントを選択した症例(下顎7番)
抜歯後にインプラントを選択した症例(下顎7番)

下顎7番に歯根破折(垂直破折)が認められ、歯の保存が困難と判断されたため抜歯を選択しました。本症例では抜歯後、欠損部にインプラントを埋入し、噛む機能の回復を図っています。

  • 保険診療:約5,000〜10,000円(3割負担)
  • 自費診療:約50,000〜150,000円

👉 使用材料・設備(CT・マイクロスコープ等)により変動します。

歯根端切除術は、通常の根管治療では治癒が難しい症例に対し、歯を保存するための最終的かつ有効な手段です。

適切な診断と術式選択により、高い成功率が期待できますが、すべての症例に適応できるわけではありません。

👉 歯を残すためには、専門的な診査と適切な治療戦略が不可欠です。

江戸川区・篠崎で歯根端切除術を希望される方へ

江戸川区篠崎で歯をできるだけ残したい方へ。根管治療をしても治らない“根の病気”には、歯根端切除術という選択肢があります。歯根端切除術は、精密な診断と経験が求められる治療です。当院では、歯内療法や口腔外科のトレーニングを受けた歯科医師が、患者さまの不安やご希望を丁寧に伺い、抜歯を回避できる可能性を広げています。ぜひ一度ご相談ください。

📍 アクセス:

  • 都営新宿線「篠崎駅」徒歩1分
  • 駐車場完備/ベビーカー・車椅子対応

🔖「抜歯しかない」と言われた方も、**歯を残せる可能性があるかどうか、一度ご相談ください。**私たちは最後まで、あなたの歯を守る治療をあきらめません。

【動画】歯茎の出来物、フィステル、口内炎、口腔癌の見分け方

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!