目次

「親知らずを抜いたあとから下唇がしびれている」
「麻酔が切れても感覚が戻らない」
「インプラント手術の前に神経が近いと言われた」

このような経験や説明を受けて、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

下歯槽神経(かしそうしんけい)は、下あごの骨の中を通り、下の歯や下唇、あご先の感覚を伝える大切な神経です。親知らずの抜歯やインプラント治療では、この神経との位置関係が治療計画に大きく関わります。

多くの場合は問題なく治療が行えますが、神経との距離が非常に近い場合には、一時的またはまれに長期間しびれが残ることがあります。

この記事では、下歯槽神経の役割やしびれが起こる原因、検査方法、治療法、予防のポイントについて、専門的な内容をわかりやすく解説します。

下の歯や下唇の感覚を伝える重要な神経です

下歯槽神経は、顔の感覚を支配する三叉神経(さんさしんけい)の一部である下顎神経から枝分かれする感覚神経です。

下顎の後方にある「下顎孔(かがくこう)」から骨の中へ入り、「下歯槽管(かしそうかん)」というトンネルの中を前方へ進みます。

途中でそれぞれの歯へ枝を出し、最終的には「オトガイ孔(おとがいこう)」から外へ出て「オトガイ神経」となり、

  • 下唇
  • あご先
  • 下あごの皮膚

の感覚を伝えています。

つまり、この神経が正常に働くことで、熱さ・冷たさ・痛み・触った感覚などを感じることができます。

なぜ歯科治療で重要なのでしょうか?

親知らずやインプラントの近くを通っているためです

親知らずの抜歯
親知らずの抜歯
インプラント手術
インプラント手術

下歯槽神経は下あごの骨の中を通っているため、次のような治療では位置を十分に確認する必要があります。

  • 親知らずの抜歯
  • インプラント埋入
  • のう胞や腫瘍の手術
  • 下顎骨の手術

特に横向きに埋まった親知らずでは、歯の根と神経が非常に近いことがあります。

そのため、術前にCT検査を行い、神経との位置関係を三次元的に確認することが大切です。

神経が刺激されたり傷ついたりすると、次のような症状が現れることがあります。

  • 下唇がしびれる
  • あご先の感覚が鈍い
  • ピリピリする
  • 電気が走るような違和感
  • 熱さや冷たさを感じにくい
  • 食べ物が付いていても気付きにくい
  • 麻酔が残っているような感覚

症状は片側だけに現れることが多く、程度も人によってさまざまです。

親知らずの抜歯

最も多い原因の一つです。

親知らずの根が神経に近接している場合には、抜歯の際に神経へ刺激が加わる可能性があります。

ただし、多くは一時的な症状であり、時間とともに改善するケースが少なくありません。

インプラント治療

インプラントが神経に近すぎる位置に埋入されると、神経を圧迫したり損傷したりする可能性があります。

そのため、術前CTによる精密な診査が非常に重要です。

下顎孔伝達麻酔

下の奥歯の治療で行う伝達麻酔でも、ごくまれに神経への刺激により一時的なしびれが起こることがあります。

外傷や骨折

交通事故や転倒による下あごの骨折でも、神経が損傷することがあります。

のう胞・腫瘍

病変が大きくなると神経を圧迫し、しびれの原因になることがあります。

下歯槽神経と歯の根が接している
下歯槽神経と歯の根が接している

次のような場合には注意が必要です。

  • 神経と歯の根が接している
  • 横向きに埋まっている
  • 深く埋伏している
  • 高齢で骨と癒着している
  • CTで神経が歯根の間を通っている

このような症例では、CT画像をもとに慎重に治療計画を立てます。

CT検査が重要な理由

パノラマレントゲンでは上下方向の位置関係しか分からないことがあります。

一方、歯科用CTでは

  • 神経との距離
  • 神経がどちら側を通っているか
  • 接触しているかどうか

まで立体的に確認できます。

そのため、神経損傷のリスクをより正確に評価できます。

親知らずの抜歯後のしびれは、決して頻繁に起こるものではありません。

一時的なしびれが生じることはありますが、多くは時間の経過とともに改善します。

一方で、長期間しびれが残るケースは比較的まれです。

神経との位置関係や歯の状態によってリスクは異なるため、一律に判断することはできません。

神経麻痺は治るのでしょうか?

多くの患者さんが最も心配される点です。

神経は完全に切れていなければ回復する可能性があります。

一般的には、

  • 軽度なら数週間〜数か月
  • 中等度では数か月程度
  • 重度では回復まで長期間を要したり、症状が残る場合もある

とされています。

神経は一般的に約1mm/日程度の速度で再生するといわれていますが、実際の回復には個人差があります。

症状がある場合には、

  • 問診
  • CT検査
  • 感覚検査(触覚・温度・痛覚)
  • 必要に応じてMRI検査

などを組み合わせて診断します。

症状や原因に応じて治療法が選択されます。

保存的治療

  • ビタミンB12製剤
  • 消炎薬
  • 神経障害性疼痛治療薬
  • 経過観察

リハビリテーション

感覚を回復させるための感覚再教育が行われることがあります。

外科的治療

神経が重度に損傷している場合には、神経修復術が検討されることがあります。

適応や時期は症例によって異なるため、口腔外科専門医による判断が重要です。

リスクを完全になくすことはできませんが、次のような対策が重要です。

  • 術前にCT検査を受ける
  • 神経との距離を十分評価する
  • 難症例では口腔外科専門医へ相談する
  • 十分な説明を受けたうえで治療を受ける

これらにより、安全性を高めた治療計画を立てることができます。

Q. 麻酔が切れてもしびれが残っています。大丈夫ですか?

数時間で改善することが多いですが、翌日以降も続く場合は治療を受けた歯科医院へ連絡しましょう。

Q. 神経麻痺は必ず治りますか?

必ず改善するとは言い切れませんが、多くは時間の経過とともに改善します。

Q. CTを撮れば神経麻痺は防げますか?

CTはリスクを評価するために非常に重要ですが、神経損傷を完全に防げるわけではありません。

Q. インプラントでも神経麻痺は起こりますか?

神経との距離が近い場合には起こる可能性があります。そのため術前CTが重要です。

Q. しびれが続いたらいつ受診すればよいですか?

症状が改善しない場合や悪化する場合は、できるだけ早めに担当医へ相談しましょう。

下歯槽神経は、下の歯や下唇、あご先の感覚を伝える重要な神経です。

親知らずの抜歯やインプラント治療では、この神経との位置関係を事前に正確に把握することが、安全な治療につながります。

万が一しびれが生じた場合でも、多くは時間の経過とともに改善しますが、症状によっては早期の診断や治療が重要になることもあります。

治療前に不安なことがある方や、術後にしびれが続いている方は、一人で悩まず、担当の歯科医師や口腔外科へ早めに相談することをおすすめします。

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必要に応じてCTによる精密な診査で神経との位置関係を確認し、一人ひとりに合わせた治療計画をご提案します。親知らずの抜歯やインプラント治療について不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。

【動画】横向きに埋没した親知らずの抜き方

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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